時代を画す東浩紀他「新憲法」草案 小林節氏

http://www.nnn.co.jp/rondan/ryoudan/index.htmlより、
一刀両断 -小林 節-
時代を画す東浩紀他「新憲法」草案
日本海新聞 2012/07/31の紙面より

 7月8日に、『日本2・0 思想地図βvol・3』(ゲンロン)という本が刊行された。

 その中に、「新日本国憲法ゲンロン草案」という提案が載っている。新しい改憲試案である。その起草の中心人物は、東浩紀(あづま・ひろき)早大教授(42歳・東大出身の哲学者)である。

 日本国憲法が、昭和21年(1946年)に制定されて以来、今日まで一度も改正されておらず、すでにさまざまな不都合が生じていることは周知の事実である。憲法9条と自衛隊の矛盾、先行きが不安な天皇制、プライバシーなど新しい人権の規定の不存在、政策を決められない二院制、リーダーシップが生まれ難い議院内閣制、十分に機能しない違憲審査制、一向に前進しない地方分権等、全て、憲法改正の課題である。

 にもかかわらず、これまでの憲法論議は不毛で、だからこそ、憲法は一度も改正されず、そういう意味で、日本国憲法は今では世界最古の憲法になってしまった。

 その不毛の原因は、東西の冷戦を前提とした改憲対護憲の論争が噛(か)み合っていなかったことにあるのだろう。冷戦時代のイデオロギーを前提とした論争は、相手が「敵」だと認定したら、以後、一切聞く耳を持たず自己の主張だけを言い合う非生産的なものであった。代表的な改憲派は、占領軍により押し付けられた憲法は無効だから明治憲法に戻るべきである…という主張で、これ以外の意見に対しては聞く耳を持っていない。対する代表的な護憲派は、9条が改正されたらまた戦争になる…という主張で、異なる意見の者との論争自体を避けてきた。これでは何も生まれないはずである。

 本来、憲法は、主権者・国民大衆が幸福に暮らすために、サービス機関としての国家を管理するマニュアル(手引書)のようなものである以上、時代状況の変化の中で常に微調整が続けられるべきものである。

 その点で、東・新憲法草案は実用的で優れている。事実上の大統領と天皇制の両立、侵略戦争の放棄と自衛隊の両立、住民代表議会に対する真の賢人会議による牽(けん)制、広範囲な人権保障と人権制約の基準の明確・厳格化、真に実用的な地方自治制度の提案等、まさに、目から鱗(うろこ)が落ちる試案である。

 やはり、イデオロギー論争後の時代に育った知性だからこそ考え得る提案であろう。この真摯(しんし)な問いかけを無視すべきではない。
(慶大教授・弁護士)

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