記者の目:IMF世銀総会を取材して 永井大介氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20121031k0000m070109000c.htmlより、
記者の目:IMF世銀総会を取材して=永井大介
毎日新聞 2012年10月31日 00時56分

 14日に閉幕した国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会を取材した。総会は各国の財務相や中央銀行総裁が出席し、世界経済が抱える問題の解決策を話し合う場だ。

 ◇日本は苦境下でのモデル示せ
 日本での開催は48年ぶりで、政府や中央銀行関係者、金融機関、企業経営者ら約2万人が来日し、会場の東京・丸の内周辺は歓迎イベントなどで華やかな雰囲気に包まれた。一方、総会の議論は世界経済の低迷を反映し、厳しいものだった。IMFのラガルド専務理事は「危機を過去のものとするためには行動が必要だ。協力があれば成功できる」と協調を呼びかけた。だが、各国とも国内経済の立て直しに手いっぱいで、世界経済減速への処方箋を示すことはできなかった。先進7カ国(G7)も、新興国を含めた20カ国・地域(G20)さえもリーダーシップを発揮できない、主導国なき「Gゼロ」の世界に突入したことを実感した。

 ◇主導国なき世界、「Gゼロ」に突入
 08年のリーマン・ショック後の経済危機を、先進各国は大規模な財政出動と中国など新興国の成長で封じ込めようとした。世界経済は一時的に回復の兆しを見せたが、各国の財政赤字は膨張。欧州債務危機をきっかけに、先進国の財政出動も難しくなった。国内の消費と貿易がともに収縮し、世界経済を先導してきた中国など新興国の輸出の落ち込みも引き起こした。
 危機感を強めたIMFは、各国に厳しく財政再建を求める姿勢を修正。IMFの諮問機関「国際通貨金融委員会」が総会でまとめた共同声明は、財政健全化について「効果的かつタイムリーな実施が重要」と指摘し、各国の判断で緊縮を緩めることを認めた。さらに「世界経済を強固で持続可能かつ均衡ある成長の道筋に再び戻すために、断固として行動する必要がある」と、財政健全化路線から、成長重視路線への転換を宣言。各国中央銀行の金融緩和政策も評価した。フランスのモスコビシ財務相は記者会見で「IMFとユーロ圏諸国が同じ方向を向いているのはありがたい。バランスのとれた財政を取り戻すことで欧州は繁栄を取り戻せる」とIMFの変化を手放しで喜んだ。
 もちろん金融危機で疲弊した国内経済の回復は政治の責務だ。失業率が25%を超えるスペインなどの南欧諸国では財政再建のスピードを緩める必要もあるだろう。だが、財政出動と金融緩和が万能薬でないことは今回の総会で改めて見せつけられた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121031k0000m070109000c2.htmlより、
 確かに、米欧の相次ぐ金融緩和を受け、世界の株式相場は上昇基調に入った。半面、インドのチダムバラム財務相は「先進国の量的緩和が物価上昇や穀物価格の高騰を招き、新興国経済に悪影響を与えている」と主張し、ブラジルのマンテガ財務相も「通貨安による輸出競争力底上げを狙った(先進国による)隠れ補助金」との不満を隠さなかった。金融緩和で先進国の金利が低くなれば、相対的に金利の高い新興国にお金が流れ、通貨高を誘発。新興国の輸出競争力が落ちてしまうことへの懸念だ。日銀の白川方明(まさあき)総裁は「すべての通貨を同時に安くさせることはできない」と述べ、金融緩和競争が通貨戦争を引き起こすリスクに言及した。財政についても財務省の中尾武彦財務官がバブル崩壊後に実施した日本の景気刺激策に触れ「その結果として膨大な政府債務を抱えることになった」と強調した。

 ◇万能薬でない金融緩和政策
 前回の総会が東京で開かれた64年、日本は高度成長のまっただ中にあった。シャープは世界で初めて電卓を完成させ、ソニーがホームビデオを発売、日本が「先進国クラブ」と呼ばれる経済協力開発機構(OECD)に加入した年だ。当時の田中角栄蔵相は「日本国民が飢えと荒廃のなかから築き上げた成果をお目にかける」と誇らしげに演説。復興と成長のモデルケースとして、途上国に刺激を与えた。G7など、その後の世界経済のかじ取り役に日本が加わる礎にもなった。
 ソニーやシャープが業績低迷に苦しみ、国・地方を合わせた公的債務が1000兆円を超えるなど、48年後の日本は官民とも苦境下にある。今度は、どのような成長のモデルを世界に示せるのだろうか。白川氏は「金融緩和は時間を買う政策に過ぎず、政府の構造改革を代替しない」と訴えた。だとすれば、打ち出すべきは、金融緩和や経済対策の大きさではない。既得権益に切り込む構造改革を進めるとともに、Gゼロの状況でも新興国と手を携えられる枠組みを作っていくことではないか。先進国と新興国のあつれきを、総会で目の当たりにした日本。取り組むべき課題はより鮮明になったはずだ。(東京経済部)

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