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月別アーカイブ: 10月 2012

http://www.nnn.co.jp/rondan/ryoudan/index.htmlより、
一刀両断 -小林 節-
大同小異
日本海新聞 2012/10/30の紙面より

 最近のわが国の政界の状況は、まるで「核分裂」のように、小さな政党が誕生し続けている。

 これは、一面では「正しい」事である。つまり、それぞれの政治家が各自の良心に忠実に行動し、意見(政策)の違いを無視して権力を求めて「野合」しないことであるから。しかし、半面で、これは、政治的には「困った」事である。つまり、それでは国策が決定され難くなる。

 つまり、政界は、学術論争の場ではないのだから、各人や各党派の意見の違いを際立たすことだけに熱心であっては困る。あくまでも、討論を経て、意見の違いを超えて、妥協調整の努力をし、国民たちの現実の必要に対して、具体的な政策を決定・給付し、状況を改善する仕事が政治であろう。

 そういう意味では、それぞれに党内に多様な意見を抱えたままの民主党と自民党は、決して恥じることはない。ただし、見ていると、党内手続きに従って討論の過程を経てひとつの意見に集約して行くことが出来る自民党は「大人」の政党と言えるが、討論を重ねても意見を纏(まと)めることが出来ない民主党は未熟だと言わざるを得ない。

 そのような状況の中で、国家存亡の危機と思われるこの時に大切な事を何も決められない状況を憂いた石原慎太郎都知事がまた新しい旗を立てた。

 それに対して、連繋(れんけい)相手と目される他党は、「野合」だと批判されることを恐れてか、政策が一致しない限り協力しない…との姿勢を表明している。しかし、これではまた、多党乱立に拍車が掛かるだけであろう。

 ところが、それを受けて、石原知事は、政策各論の違いを超えて、「官僚による支配の打破」という大義で連帯出来るはずだ…という提案を返している。

 これはひとつの見識であろう。

 確かに、自民党政権の時代も実はそうであったが、民主党政権の時代になってからはあからさまに官僚支配が強まったように見える。例えば、尖閣諸島に対するわが国の実効支配を強化しよう…という圧倒的な世論と政治の意向を、今、押し留(とど)めているのも、不景気打開のために金融政策の転換を求める世論と政治の意向に抵抗しているのも、自分たちの先例を墨守(ぼくしゅ)しようとする官僚たちである。

 この、民主的正統性のない官僚たちから国の支配権を取り戻すという大義による連立政権が、今、わが国には必要ではなかろうか。
(慶大教授・弁護士)

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http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年10月30日(火)付
臨時国会開幕―報復の連鎖を断ち切れ

 異常な幕開けである。
 きのう、臨時国会が召集され、衆院本会議で野田首相の所信表明演説があった。
 ところが、参院はこれを拒否し、各党の代表質問も行わないという。憲政史上、例のない事態である。
 参院は先の通常国会で首相の問責決議を可決した。だから首相の発言は聞くに値しない。自民党など野党側が、そう唱えたためだ。
 政権にどんな問題があろうとも、あくまで審議を通じてただしていく。それが国会の役割ではないのか。怠慢というほかはない。
 自民党としては、野党が多数を握る参院で野田政権を揺さぶり、衆院の早期解散を迫るのがねらいだろう。
 だが、予算執行に不可欠な赤字国債発行法案や、衆院の一票の格差是正の「0増5減」法案などの処理は喫緊の課題だ。
 参院自民党には、ただちに審議に応じるよう強く求める。でなければ、参院不要論に火をつけ、結局は自分たちの首をしめることになる。
 そもそも「ねじれ国会」が続くなか、参院が政権の命運を左右するほどの力をふるうことが、今回の異常事態を招いたともいえる。
 問責決議を理由に審議を拒んだり、重要法案を人質にとったりするのでは、政治の混迷は深まるばかりだ。
 首相は、所信表明演説で赤字国債法案を駆け引きに使う悪弊を「ここで断ち切ろう」と訴えた。私たちも同感だ。
 赤字国債発行法案は予算と一体で成立させる。問責を決議しても審議には応じる。
 そんな慣例やルールをつくり、政治を前に進める。臨時国会では、そのことに与野党あげて取り組むべきだ。
 一方、首相も野党に求めるだけでなく、譲るべきは譲らねばならない。
 足元の民主党の惨状は目を覆うばかりだ。
 28日の衆院鹿児島3区補選では、民主党推薦の候補が自民党前職に敗れた。離党者も止まらず、きのう新たに2人の衆院議員が離党届を提出し、単独過半数割れまで3議席となる。
 政権に、難局を打開する力が残っていないことは明らかだ。
 自民、公明に再度の党首会談を呼びかけ、解散時期についてより踏み込むなどして、協力を求める。そして互いに報復し合う連鎖を断ち切り、政治を動かす道筋をつける。
 それこそが、野田政権の仕事ではないか。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121030/plc12103003180010-n1.htmより、
産経新聞【主張】首相所信表明 「明日への責任」は解散だ
2012.10.30 03:18

 野田佳彦首相の所信表明演説は、現下の政治課題を列挙しただけで、政権がこれから何に、どう取り組もうとしているのかが見えない。
 首相は「明日への責任」を繰り返し、経済対策や東日本大震災の復興、社会保障制度改革国民会議の設置など、懸案を先送りしない「決断する政治」の重要性を強調した。だが、実現の具体策を明示できないようでは、政権を担う正当性や資格に疑念を持たざるを得ない。
 政権延命のためだけに首相の座にしがみつくのなら、無責任の極みだ。一刻も早く解散・総選挙を行うことこそ、野田首相が掲げる「決断する政治」であり、「明日への責任」の取り方である。
 驚いたのは、尖閣諸島の国有化後、初の国会であるのに「尖閣」という言葉が一度も出てこなかったことだ。中国公船が領海侵犯を繰り返すなど尖閣をめぐる危機は緊迫度を増している。
 首相は「領土・領海を守るという国家としての当然の責務を、国際法に従って、不退転の決意で果たす」と述べた。だが、国民が聞きたいのは、一般論ではない。国難にどう備え、いかに立ち向かうかの具体策だ。国民に理解と覚悟を求めることこそ、最高指導者としての責務ではないのか。
 尖閣を守る上で最重要の日米同盟についても、米兵による集団暴行事件への批判や沖縄の基地負担軽減などにとどまった。首相の持論である集団的自衛権の行使容認など、同盟深化に向けた意気込みをなぜ語らないのか。
 島根県竹島への韓国の不法占拠についても、一切触れなかった。中韓両国を刺激しないことが問題解決の近道と思っているのであれば、大きな間違いだ。
 首相は「現下の最大の課題」として経済再生を挙げた。だが、処方箋には抽象論が並び、日中関係の冷え込みなど具体的な懸案にどう対応するかは示していない。
 臨時国会の焦点である特例公債法案や衆院の「一票の格差」是正についても、「『政局』第一の不毛な党派対立の政治」と野党側を批判するだけで、事態を打開しようという意欲が感じられない。
 所信表明演説からも、野田政権に諸課題をやりこなすエネルギーが残っているとは思えない。国政の停滞を避けるためにも、首相は「近いうちに信を問う」という約束から逃げてはならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012103002000116.htmlより、
東京新聞【社説】臨時国会始まる 政権延命こそ政治空白
2012年10月30日

 臨時国会が召集され、野田佳彦首相が所信表明演説を行った。もはや野田内閣が居座る限り、政治空白は続く。与野党は衆院解散・総選挙に向けた環境整備を急ぎ、速やかに国民の信を問うべきだ。
 振り返れば、八月十日に民主党の二〇〇九年衆院選マニフェストに違反する消費税率引き上げが強行成立した後、日本の政治はどれほど前進したといえるのだろう。
 この間、野田内閣の第三次改造や安倍晋三自民党総裁誕生に伴う顔触れの変化はあったにせよ、政治課題での進展は見られない。むしろ、原発ゼロ政策の「後退」や復興予算流用、日中関係悪化など失政が目に余る。
 財源の四割を占める赤字国債を発行する公債発行特例法案や、最高裁に違憲状態と指摘された衆院「一票の格差」を是正する法案は喫緊の課題とされたにもかかわらず、与野党に歩み寄る兆しがないのはどうしたことか。
 背景には解散時期をめぐる与野党対立がある。首相は所信表明で「やみくもに政治空白をつくり、政策に停滞をもたらすようなことがあってはならない」と述べた。
 野党側が「ねじれ」国会で法的根拠のない問責決議を乱発し、いたずらに政局を混乱させるようなことは厳に慎むべきではある。しかし、首相は自ら懸案処理にどれだけの汗をかいたというのか。
 民主党の苦戦が予想される次期衆院選をできるだけ先延ばしするため、喫緊の課題処理をも放置してきたのではないか。首相が政権延命を図り、居座りを続けることこそが政治空白になっている事実から目を背けてはならない。
 消費税増税という議会制度の成り立ちにもかかわる最重要課題での公約違反が強行された以上、野田内閣は速やかに総辞職するか、衆院解散に踏み切るべきである。
 その環境を整えるためにも、前提となる格差是正法案と公債法案の成立に与野党が協力し、首相はその先頭に立たねばならない。
 所信表明と各党代表質問は、この臨時国会では衆院だけで行われる。憲政史上初の異常事態だという。
 先の通常国会で首相問責決議が可決された参院で野党が開催を拒んだためだが、野党側に今、必要なのは積極的に論戦に挑んで野田内閣の問題点を厳しく追及し、懸案処理を急ぐことではないか。
 首相が解散時期をいたずらに先延ばしできなくなるような環境を野党側が整えることが、結果的に政治を前に進めることになる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121030k0000m070104000c.htmlより、
社説:波乱の臨時国会 眼前の2課題に全力を
毎日新聞 2012年10月30日 02時31分

 臨時国会が召集され、野田佳彦首相による所信表明演説が行われた。衆院解散をめぐる攻防が早くも激化している。参院では首相演説が行われず、衆院のみという憲政史上初の異常な幕開けとなった。
 「近いうちに」衆院を解散するとの約束実現を野党に迫られる中、首相演説は民意を問う覚悟から遠い内容だった。一方で与野党が解散時期の駆け引きだけに明け暮れることは子どもじみている。目の前にある課題の決着にまずは集中してほしい。
 衆院補選に自民が辛勝した直後の召集だ。「安倍自民」がどう国会論戦にのぞむかがさっそく試されるが、参院はさきの首相問責決議を理由に本会議開催を参院自民党など野党側が拒み、演説が行われなかった。参院自らが存在意義を否定するような、職責放棄の愚行である。
 首相演説もピントはずれだった。国会が一日も早く解決すべきなのは違憲状態の衆院「1票の格差」緊急是正と特例公債法案の処理である。
 ところが首相は1票の格差について演説で後半に簡単にふれた程度で、しかも難しい定数削減問題と合わせての結論を説くにとどまった。
 首相は格差是正後の新たな区割りでなくとも衆院解散は可能だと説明している。だが、たとえ次の選挙に区割り改定が間に合わなくとも、最低限の法的措置は講じないと衆院解散は難しいのが現実だろう。「0増5減」の緊急是正の先行になぜ、踏み込まないのか。
 赤字国債を発行するための特例公債法案について自民党内には柔軟論も浮上しているようだ。1票の格差とただちに同時決着させれば年内解散もなお、不可能ではあるまい。
 首相演説からは消費増税法成立を受けた野田内閣の次の目標や、来る衆院選に民主党が何を掲げようとしているかも伝わらなかった。
 エネルギー政策は「原発に依存しない社会の実現に向けて大きく政策を転換」とうたいながら「不断の検証と見直し」も強調し、結局どちらをみているかがよくわからない。積み残された課題である社会保障の全体像を首相がどう考えているかも語られずじまいである。
 首相は演説で持論の「中庸」を説き、「極論の先に真の解決はない」と語った。いわゆる「第三極」へのあてこすりかもしれないが、中庸とは決して足して2で割るような妥協を意味する言葉ではない。政策の中身を具体的に示すべきだ。
 放置し続けた「1票の格差」「特例公債法案」を一日も早く決着させ、国民の審判に足る材料を示すことが与野党の役割だ。1年以内に必ず衆院選は行われる。逃げ腰の演説と、演説拒否ではさみしすぎる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121030ddm003010086000c.htmlより、
クローズアップ2012:臨時国会召集 政権浮揚見えず 「解散先延ばし」限界も
毎日新聞 2012年10月30日 東京朝刊

 29日開会の臨時国会は、参院で野党が野田佳彦首相の所信表明演説を拒否する異例の展開でスタートした。首相は同日の衆院本会議で政権維持へ意欲を示し、早期の衆院解散・総選挙を求める野党をけん制。民主党は「堂々と審議する」(輿石東幹事長)と強硬路線を続ける構えだ。しかし29日も新たに2人が民主党に離党届を提出し、衆院の与党過半数割れが近づく。解散を先送りしても政権運営の展望は開けず、見通しのないまま国会論戦に突入する。

 「信を問うべき時には問うが、やるべきこともやらなかったというのは政権与党として許されないという意味だ」。輿石氏は29日の記者会見で、「政治空白を作らない」と強調した首相の所信表明演説の意図をこう説明してみせた。
 内閣改造後、約3週間で田中慶秋前法相が辞任に追い込まれ、内閣支持率は低迷したまま。衆院解散に踏み切れる状況ではなく、首相は自公両党が求める「近いうち解散」の約束履行をかわすためにも、「次にやるべきこと」を強く打ち出す必要に迫られていた。このため演説では、野党の理解を得やすい経済対策を前面に据え、特例公債法案や衆参両院の「1票の格差」是正にも協力を求めた。
 だが首相が経済再生の具体策として挙げたのは、閣議決定済みの日本再生戦略▽再生可能エネルギーの導入拡大▽環太平洋パートナーシップ協定(TPP)推進などの経済外交−−と従来の政策ばかり。民主党議員からも「説得力がない」と厳しい指摘が出た。藤村修官房長官は同日の記者会見でTPPについて「米国が大統領選とあって停滞している部分もある」と認めるなど、低迷する政権の新たな推進力はみあたらないのが実情だ。
 民主党内では衆院解散について「年内は無理」(輿石氏)と先送りを求める声が強まる一方だ。特例公債法案の成立が遅れれば世論の批判は野党に向くとみて、自公両党が折れるのを待つ強硬姿勢に徹している。衆院の「1票の格差」を是正する法案の成立が遅れていることも「解散先延ばし」の口実に利用する構えだ。
 ただ強硬一点張りでの「解散先延ばし」には足元から限界もしのびよる。
 29日の民主党議員2人の離党届提出で、衆院の与党過半数割れまであと6人となった。党内では「国民の生活が第一」との連携で過半数割れを切り抜ける案も取りざたされるが、生活の小沢一郎代表は協力には厳しい条件をつけるのは確実で、政権にとって容易な道ではない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121030ddm003010086000c2.htmlより、
 首相は29日の演説で「皆さんが願うのは政局ばかりを優先する政治か」と国民に直接呼びかけて野党との対決姿勢も示した。与野党の対話に力点を置いた過去3回の国会演説とは一線を画したが、強気を裏付ける明確な展望があるわけではない。【小山由宇、高橋恵子】

 ◇参院、問われる「あり方」 異例の所信表明拒否
 首相の所信表明演説を聞く参院本会議を拒否した野党の対応には「参院無用論につながる」と疑問視する意見が与野党から出ている。衆参両院でそれぞれ行われる所信表明演説の一本化に参院が反対してきた経緯もあり、参院のあり方を問う声が強まりそうだ。
 「参院の意思」として問責した首相の所信表明を受け入れれば、問責決議の効果が薄まるとの危機感が野党側には強い。だが、そもそも法的根拠のない問責で、憲法に基づいて選ばれた政権に退陣を迫り、審議を拒否することには「参院が衆院解散権を事実上握ることになる」と異議を唱える有識者も多い。
 野党時代の民主党は07年参院選後のねじれ国会で「問責は無視されたら終わりだ。衆院解散に直結する時しか出せない」として閣僚対象の問責は出さなかった。
 提出したのは08年と09年の通常国会会期末の首相問責2本。
 08年に問責された福田康夫首相は間もなく退陣し、09年の麻生太郎首相は問責可決直後に衆院を解散した。
 10年参院選後は民主党政権が問責に苦しみ、これまでに6閣僚が問責を受け内閣改造での交代に追い込まれた。これに続く首相問責への民主党側の反発は強く、閣僚経験者は「問責は受けた人が反省し粛々と仕事をすればいい。野党は乱発しすぎだ」と批判。中堅議員は「参院自民は2院制を否定することを自らやって墓穴を掘っている」と指摘する。
 自民党の参院議員も「そもそも衆院解散は参院の扱う事項ではない。問責の乱発で参院が死んでしまう」と懸念。公明党のベテラン議員も「解散の約束を守らない首相もひどいが、野党も政局優先で何をやっているんだと国民に批判される」と指摘した。【田中成之、中井正裕】

http://mainichi.jp/opinion/news/20121030k0000m070102000c.htmlより、
記者の目:沖縄米軍基地問題=福永方人(西部報道部)
毎日新聞 2012年10月30日 00時04分

 ◇負担軽減 みんなで考えよう
 沖縄県民の反基地感情が最高潮に達している。米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に強行配備され、墜落事故への不安をよそに、日米合意の運用ルール違反とみられる、基地区域外での回転翼(ローター)を上に向けた「ヘリモード」飛行訓練が常態化している。さらに米兵による女性暴行事件も起き、火に油を注ぐ。歴代政権は「基地負担軽減」の甘言を繰り返しながら全国の米軍専用施設(309.64平方キロ)の73.9%が沖縄に集中する現実は動いていない。もはや沖縄から声を上げるだけでは状況は変わらないのではないか。低空飛行訓練が本土にも及ぶオスプレイ問題をきっかけに、沖縄の基地負担をどう軽減するか国民全体で考えるべきだ。

 ◇封鎖から見えたかつてない怒り
 オスプレイが配備された今月1〜6日の前後10日間、普天間飛行場周辺を中心に取材した。これまで、昨年末に政府が普天間移設の環境影響評価書を沖縄県庁に提出した際の攻防などを現場で見てきたが、今回は特に県民の怒りの強さと広がりを感じた。
 象徴的だったのは、配備反対の座り込みをする市民らが普天間飛行場の各ゲートを封鎖した行動だ。市民らは9月29日、台風17号の直撃に伴う暴風雨の中、ゲート前に車を集めてバリケードを張った。翌日、沖縄県警に強制排除された際も激しく抵抗し、怒号や悲鳴が飛び交った。抗議活動をまとめる沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)事務局長は「ここまで激しい闘いは過去にもほとんどない」と話した。
 普天間飛行場の野嵩(のだけ)ゲート前で毎朝開かれた抗議集会には、普段は反基地運動に姿を見せない保守系の首長や県議も集まった。座り込み参加者も労働組合や市民団体だけではない。浦添市のアルバイト、砂川和真さん(21)は初めて反基地運動に参加した。茶髪にピアス。中高年が多い座り込みメンバーの中では異色だ。長男が生まれ「(米軍基地の)フェンスに囲まれて育ってほしくない」と友人を誘って毎日、ゲート前に座り込んだ。短文投稿サイトのツイッターなどでもオスプレイを巡る書き込みが増えたという。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121030k0000m070102000c2.htmlより、
 テレビドラマや映画の「おばあ」役で知られる女優の平良とみさん(83)も声を上げた。普段は基地問題であまり表に出ないが、普天間飛行場の近くに住み、米軍機墜落への不安や騒音に悩まされている。「子供たちの未来のために危険な物は残したくない」と、9月9日のオスプレイ配備反対を訴える県民大会に参加。インタビューにも応じた。住宅密集地にあり「世界一危険」と言われる普天間飛行場の移設は一向に進まない。「基地がなければオスプレイも来ない。お願いだから、人の住んでいない遠い所へ持っていってほしい」と訴えた。
 本土ではこの40年で米軍専用施設の半分以上が返還されたが沖縄では18%にとどまり発展を阻害してきた。沖縄には4万8340人(11年)の米軍構成員(軍人・軍属・家族)がいて、県警のまとめでは米軍構成員の刑法犯検挙件数は復帰翌年の73年から11年までで計約5500件に上る。
 島ぐるみの抗議にもかかわらずオスプレイ配備が強行され深い失望が広がる中、米海軍兵2容疑者による女性暴行事件が起きた。県民からは「県内でいくら騒いでも何も変わらない」「もうどうしようもないのかという気持ちにもなる」との声が漏れた。失望は絶望に変わりつつある。
 こうした空気は本土にはなかなか伝わらない。本紙を含め、沖縄からの距離が遠くなるほど報道も少なくなる。東京出身の私自身、沖縄の人たちの痛みや怒りは現地で取材して初めて、実感として理解できるようになった。

 ◇訓練情報交換し思いの共有化も
 沖縄の声を日米両政府に響かせるには、まず本土に共感を広げることが必要だろう。低空飛行訓練が全国7ルートで予想され、事故などへの不安が波及していくとみられるオスプレイ問題は、その契機になる可能性がある。まずは各地の訓練情報を交換する市民ネットワークを構築してはどうか。沖縄の抗議活動に参加した市民団体「平和フォーラム」(東京都)事務局の八木隆次さん(47)も「沖縄の思いが全国で共有されるよう動いていきたい」と話す。
 沖縄の人たちの我慢は限界に来ていると感じる。基地負担をいかに減らすか本土の人たちも一緒に知恵を絞り、日米両政府に働きかけるべきだ。それは沖縄にさまざまな犠牲を強いてきた本土の務めだろう。議論が活発になるようメディアも努力しなければならないのは言うまでもない。

http://mainichi.jp/area/news/20121029ddf012070018000c.htmlより、
今、平和を語る:神戸大大学院教授、ロニー・アレキサンダーさん
毎日新聞 2012年10月29日 大阪夕刊

 ◇「安全」「安心」の社会は足元から
 ◇愛猫キャラで五感に訴え世界へ
 神戸大学大学院国際協力研究科教授(国際関係論・平和学)のロニー・アレキサンダーさん(56)は、平和活動団体「ポーポキ・ピース・プロジェクト」を主宰している。反戦・反核の平和運動に関わってきて、足元から見つめる平和の大切さに思い至ったからだという。安全で安心できる社会を目指す実践派のアレキサンダーさんに聞いた。<聞き手・広岩近広>

−−「ポーポキ」は2005年に死んだ愛猫の名前だそうですね。
 アレキサンダー ハワイ語で「ねこ」の意味です。最寄りの駅に近いゴミ箱に捨てられていました。神戸大に助手として勤め始めたとき、キャンパスに外国人教員も女性教員も私だけでした。心細かった私を励ましてくれたのがポーポキです。阪神大震災も一緒に乗り切り、私はポーポキをとても愛していました。
 15年間、飼っていたポーポキが死ぬ半年ほど前でした。私が面白い質問をするので、そういう質問を生かして、子ども向けに平和の本を書いたらと、友人から勧められたのです。

−−面白い質問とは。
 アレキサンダー 「平和って、どんな味?」とか「平和には、余裕が必要?」などと、次々に質問していたそうです。でも、どう書いたらいいか悩んでいました。ポーポキが死んで、ベランダに座って風のにおいをかいでいる姿を思い出したとき、ポーポキを主人公にした絵本ならできるかもしれないと思ったのです。昔大好きだった絵描きは、先生に下手と言われ、やめました。

−−完成した自作の絵本「ポーポキ、平和って、なに色?」(エピック)で、ポーポキが言っています。<ぼくたちの生活の中から平和について考えたり感じたりするために、この本を描いてくれた。でも、平和ってなんだろう。ぼくたちと一緒に考えてみよう。あなたはどんな平和を見つけるかな>
http://mainichi.jp/area/news/20121029ddf012070018000c2.htmlより、
 アレキサンダー ポーポキを主人公にすると、素朴な問いかけができるのです。例えばワークショップで「平和って何色?」と質問すると、さまざまな答えが返ってきます。感性だから正解はない。私はどうかと聞かれたら、イメージする色はレインボーだなと打ち明けます。平和を一つの色に限定するのは無理があると考えるからで、それぞれの色を尊重し合うことの大切さを話し合います。個性を尊重し合う、個々の人が持っているものを発揮できる状態って、平和であればこそでしょ。戦争がなくても、差別や貧困があれば、決して平和とはいえません。

−−そもそも平和活動はいつから。
 アレキサンダー ベトナム戦争ですね。なぜ、あのような戦争をしなければいけないのかと疑問を持ち、授業に出なくて反戦デモに行っていました。枯れ葉剤を使ったと知ったときのショックは大きく、国家のすることに対して無力な平和運動ってダメだな、ぬるま湯だなって、とても打ちひしがれました。

−−77年に広島YMCAに派遣されます。その後、米国立公文書館が保存していた被爆直後の広島、長崎の惨状と被爆者を写したフィルムを、市民の募金で買い取って記録映画「にんげんをかえせ」などを製作した「10フィート運動」に参加しました。
 アレキサンダー 広島の反核運動は熱心だと思いました。同時に、なぜ原発のことを言わないの、なぜ環境問題を掘り下げないの、なぜ戦後処理を考えないの、といった素朴な疑問もありました。ベトナム戦争の平和運動と同じで、日本に来てから参加した反核運動も、こんなに頑張っているのに、なぜ成功しないのだろうというジレンマがあったのも事実です。そのうち五感に訴えることが大事ではないか、身近な足元から考える平和が大事ではないか、と思い至るようになりました。

−−幅45センチ、長さ5メートルの布に絵やメッセージを書き込んでいく「ポーポキ友情物語」のプロジェクトは国内外で反響を呼んでいます。東日本大震災の被災地も訪ねました。「ポーポキ友情物語−東日本大震災で生まれた私たちの平和の旅」(エピック)で、こう書かれました。<これらの活動を通して気付いたことは、日々の生活の中でお互いにつながりあうことの重要性と、安全で安心できる社会をつくるには、真の平和な社会を築く必要があるということです>
http://mainichi.jp/area/news/20121029ddf012070018000c3.htmlより、
 アレキサンダー 被災地の人から、高さ18メートルの護岸ができても安心して暮らせないと聞きました。安全かもしれないが、今までのようには海が見えないので、それが不安で、だから安心できないというのです。平和のキーワードは「安全」だけでは不十分で「安心」も必要ではないでしょうか。

−−「ポーポキ・ピース・プロジェクト」は6年を迎えました。
 アレキサンダー 私たちは身体で、ものごとを知り、そのあとで言葉にしたり、書いたりします。しかし、身体を通して経験した大事なことも、言葉になりにくい部分があります。そこにアクセスできるのは五感です。たとえば戦争体験者から私たちが学ぶべきものは本に書かれていない、痛いわ、苦しいわ、泣きたくなる、怖いわ、といった五感に訴えてくるものだと思うのですね。
 ポーポキはそうした五感に訴える活動を担ってくれます。「友情物語」の布は14枚、70メートルになりました。被災地では大勢の人が、文字にできない、口に出せないことを絵に描いて示してくれました。「津波のバカ じしんのバカ」と書いた子もいます。理不尽なことに対して、素直に表現しており五感に響きます。
 世の中の不条理をすべて是正できなくても、おたがいにつながっていれば、目の前にある問題や友だちが直面している問題に一緒に立ち向かうことができるはずです。「ポーポキ・ピース・プロジェクト」はそのことを大事にしたいのです。

−−ところでアレキサンダーさんの「私の平和宣言」のなかに、こうあります。<「国民」を守るために軍隊が必要とか。自衛隊ではなく「自衛軍」だという。私はそうだとは思わない。自衛軍があっても、安心して暮らせるわけではない>。続けて、地震、豪雨、台風、失業、飢餓、貧困、汚染、被ばく、原発事故を例にあげて<これらを防ぐため、自衛軍は何の役にも立ちません>と書いています。軍隊については。
 アレキサンダー ポーポキは戦争が好きじゃない。軍隊があるから、そのぶんだけ戦争がしやすくなるのです。災害救援隊は好きですね。

−−若い世代に一言を。
http://mainichi.jp/area/news/20121029ddf012070018000c4.htmlより、
 アレキサンダー 非暴力を貫くのは非常に難しいと思います。そのためには非暴力の土台をつくらないといけません。本当の「安全」があって、みんなが「安心」できる社会を、国を、力を合わせてつくっていくべきです。ポーポキの仲間である若者たちに、私は期待しています。彼らには、違う者同士の接点づくりの技術を身につけ、平和の土壌づくりを国内外で進めてほしい。(専門編集委員)=次回は11月26日掲載予定

 ■人物略歴
 ◇Ronni Alexander
 1956年、米・ロサンゼルス生まれ。エール大学卒業後、YMCAスタッフとして広島に派遣される。平和を追求するため国際基督教大大学院、上智大大学院で学び、89年に神戸大法学部助手、助教授を経て93年から大学院国際協力研究科教授。「ポーポキ、友情って、なに色?」(エピック)など著書多数。06年1月に「ポーポキ・ピース・プロジェクト」を立ち上げ、国内外で平和活動を展開している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012102902000208.htmlより、
東電女性殺害 検察「被告は無罪」 再審初公判即日結審
2012年10月29日 夕刊

  一九九七年の東京電力女性社員殺害事件で、無期懲役が確定していたネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の裁判をやり直す再審の初公判が二十九日、東京高裁(小川正持裁判長)で開かれた。検察側は「被告人は無罪」と主張し、争点がなくなったことから審理を終え、結審した。マイナリさんは既に帰国しており、出廷しなかった。 
 高裁は判決公判の期日を十一月七日に指定した。無罪に当たる「控訴棄却」の判決を言い渡すのは確実。検察側は最高裁に上告できる上訴権を速やかに放棄するとみられ、その日のうちに無罪が確定する見通し。
 初公判で検察側は有罪主張を放棄したものの、法廷での謝罪はなく、閉廷後に「結果的に申し訳なかった」とコメントを発表した。
 今回の再審は、無罪を言い渡した二〇〇〇年の一審判決を不服として検察側が控訴した状態からやり直された。検察官は、再審開始決定後のDNA型鑑定で、被害女性の爪の付着物からマイナリさんとは別の男性の型が検出された鑑定書を証拠として提出。「別人が犯人である可能性を否定できず、現段階の証拠から有罪だと認めることはできない」と意見を述べた。
 弁護人は「爪の付着物や被害女性の体内にあった精液の存在が、もっと早く判明していれば、無実はより早く証明されていたはず」と検察を批判。逆転有罪を言い渡した〇〇年の高裁判決を「逮捕から十五年数カ月後にようやく無罪が確定する異常事態の元凶」と指摘し、「裁判所も当然批判されなくてはならない」と述べた。
 マイナリさんは〇三年に無期懲役が確定したが、再審請求審で、女性の体内にあった精液と殺害現場に残っていた体毛のDNA型が、マイナリさんとは別の男性の型と一致することが判明。東京高裁は今年六月、「男性が真犯人との疑いを否定できない」として再審開始と刑の執行停止を決め、マイナリさんは釈放された。
 無期懲役以上が確定した事件で、再審無罪となるのは一一年五月の「布川事件」以来。

【解説】証拠の抱え込み 改めよ
 検察当局が初めて公の場でマイナリさんが無罪と認めた。再審開始決定後に新たに実施した被害女性の爪のDNA型鑑定で第三者のDNA型が検出されたためだ。この鑑定は弁護側が再審請求審で再三、必要性を訴えてきた経緯がある。開示義務がないのを盾に、無罪につながる可能性のある証拠まで抱え込む姿勢は改めるべきだ。
 マイナリさんが再審請求した二年後の二〇〇七年には、弁護側は手の爪の鑑定書があれば開示するよう、検察側に求めていた。爪には、女性と最後に接触した第三者の痕跡が残っている可能性があるからだ。だが「関連性がない」と取り合わず、裁判所に促されても「鑑定書はない。爪には何も付着してない」の一点張りだった。
 再審開始が決まり無罪が濃厚になると、検察側は逆転を図るため、一転して鑑定に踏み切った。「何も付着していない」と強弁したのは、第三者の痕跡が見つかるのを恐れていたからではないか。そんな疑念さえ残る。
 公権力の行使で集めた証拠を自らの都合だけで利用したり、しなかったりすることは許されまい。裁判員制度を見据え〇四年に新設された公判前整理手続きでは、殺人事件などの一審では一定の条件付きで、開示義務が生じている。
 潮流に逆行するような小出しの証拠開示が、いまだにマイナリさんの無罪が確定しない事態につながった。検察当局は検証に後ろ向きだが、問題点の洗い出しは急務だ。(池田悌一)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012102900026より、
検察側が無罪主張=東電女性社員殺害で再審-即日結審、来月7日判決・東京高裁

 東京都渋谷区で1997年、東京電力の女性社員=当時(39)=を殺害し、現金を奪ったとして、無期懲役が確定したネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の再審第1回公判が29日、東京高裁(小川正持裁判長)で開かれた。検察側は「別人が犯人の可能性を否定できず、有罪とは認められない」と意見陳述し、無罪を主張した。
 再審は即日結審し、判決期日は11月7日に指定された。検察側は判決直後に最高裁への上訴権を放棄する方針で、同日に無罪が確定するとみられる。
 公判は、一審無罪判決に対して検察側が控訴した段階からやり直された。帰国しているマイナリさんは出廷しなかった。検察側は法廷でマイナリさんへの謝罪はしなかったが、閉廷後、「長期間身柄拘束したことは誠に申し訳なく思っている」とコメントした。
 再審で検察側は、再審請求審や再審開始決定後に行ったDNA型鑑定の結果、マイナリさんとは別人の第三者(X)が犯人である可能性が浮上したため、証拠上、マイナリさんを有罪と認めることはできないと主張した。
 弁護側は、新たなDNA型鑑定はもっと早期に実施できたはずだと指摘し、「検察は捜査や公判の全資料を明らかにし、第三者機関による検証など徹底的な原因究明をすべきだ」と主張した。(2012/10/29-12:18)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121029/k10013082511000.htmlより、
東電事件再審 検察“マイナリさん無罪に”
10月29日 10時52分

平成9年に東京電力の女性社員が殺害された事件で、無期懲役が確定していたネパール人男性の再審=やり直しの裁判が東京高等裁判所で行われ、検察は、無罪を求める異例の意見を述べました。
審理は30分ほどで終わり、来月7日に無罪の判決が言い渡されて確定することになりました。
平成9年に東京電力の39歳の女性社員が殺害された事件では、東京高等裁判所がことし6月、無期懲役が確定していたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の再審を認める決定を出しました。
29日午前、東京高等裁判所で始まったやり直しの裁判には、すでに釈放されネパールに帰国したマイナリさんは出席せず不在のまま審理が行われました。
この中で、検察は「被害者の爪の付着物などの鑑定で別の男のDNAが新たに検出されたことなどから被告を有罪と認めることはできないと判断した。無罪の意見を述べる」として、無罪を言い渡すよう求めました。
これに対して、弁護士は「無罪は当然だが、検察はそれだけで責任を免れることはできない。事件の捜査や裁判について検証が必要だ。また、誤った裁判をした裁判所も批判されるべきだ」と述べ、審理は30分ほどですべて終わりました。
判決は、来月7日に言い渡される予定です。
異例の経過をたどり社会の注目を集めた裁判は、事件の発生から15年を経て、ネパール人男性の無罪が確定することになりました。

弁護団“第三者で事件検証を”
裁判のあと、弁護団は会見で第三者が参加して事件の検証を行うよう強く求めました。
このうち神山啓史主任弁護士は「検察官の無罪主張は遅きに失したと思うが、マイナリさんが犯人ではないということが明らかになってよかった」と話しました。
また、石田省三郎弁護士は「今回の事件の問題点について検察内部での検証だけではまた同じようなえん罪が発生するだろう。第三者の専門家が参加して捜査や裁判がなぜ誤ったのか原因を究明することが必要だ」と話しました。

検察“捜査に特段問題はなかった”
東京高等検察庁の青沼隆之次席検事は「主張を変更したのは、科学技術の進歩によって当時は困難だった鑑定が可能になったことなどが理由で捜査や公判活動には特段問題がなかったと考えている。しかし結果として無罪と認められる男性を長期間拘束をしたことは誠に申し訳なく思っている」というマイナリさんに対して謝罪する談話を出しました。
また、本人に直接、謝罪するかどうかは「本人の意向を確かめたうえで考えたい」と述べました。
そのうえで青沼次席検事は、今回の捜査や公判活動を今後、検証するかどうかについて「これまで1年以上にわたって検察内部で検討しており、改めて検証したり、詳細を公表したりするつもりはない。今回の事件を通じて得た教訓は、研修などを通じて現場に周知していきたい」と述べました。

警視庁は再捜査へ
東京電力の女性社員が殺害された事件のやり直しの裁判で男性の無罪が確定する見通しになったことを受けて、警視庁は、真犯人の特定に向けて再捜査する方針を固めました。
警視庁は、今後、被害者の体に残された体液や爪の付着物から検出された別の男のDNAの型について照合を進めるほか、現場付近の関係者などから改めて話を聞くことにしています。
最高裁判所によりますと、戦後起きた事件で死刑か無期懲役が確定したあとやり直しの裁判で無罪となった事件は7件ありますが、いずれも時効が成立しています。
東京電力の女性社員が殺害された事件は、時効を迎える前に殺人事件などの時効が廃止されたため、警視庁による捜査が続けられます。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012102701001378.htmlより、
東電女性社員殺害、再捜査へ 無罪確実で警視庁
2012年10月27日 11時10分

 1997年3月に起きた東京電力女性社員殺害事件で無期懲役となったネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の再審無罪が確実になったことを踏まえ、警視庁捜査1課が新たに検出された第三者のDNA型を照会し、再捜査することが27日、捜査関係者への取材で分かった。
 事件当時の刑事訴訟法であれば今年3月に公訴時効が成立したが、2010年4月の法改正で強盗殺人罪など凶悪事件の時効が撤廃され、この事件でも再捜査が可能となった。
 捜査関係者によると、被害女性の爪の付着物から検出したDNA型が体内に残っていた第三者の男性の精液と一致した。(共同)

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121021/trl12102103180000-n1.htmより、
産経新聞【主張】OL殺害無罪へ 捜査と公判の徹底検証を
2012.10.21 03:18

 東京都渋谷区のアパートで平成9年、東京電力の女性社員が殺害された事件で無期懲役とされたネパール人の元被告の再審公判に向け、東京高検は無罪を求める意見書を東京高裁に提出した。
 検察側が誤りを認めたことで、29日に予定される再審初公判は即日結審し、元被告の無罪が確定する見通しだ。
 元被告は再審開始の決定とともに刑の執行が停止され、すでにネパールに帰国しているが、逮捕から15年に及ぶ捜査と公判については、徹底的な検証が必要だ。
 元被告は捜査段階から一貫して犯行を否認していた。アパートの現場には元被告の体液、体毛が残されていたが、1審は第三者による犯行の可能性を指摘し、無罪とした。2審はその可能性を否定して逆転有罪を言い渡し、最高裁で無期懲役が確定した。
 元被告は17年3月、東京高裁に再審を請求した。再審請求審で開示された証拠のDNA型鑑定で、被害者の体内から検出された体液のDNA型が、現場に残された元被告以外の男性の体毛と一致したことなどから今年6月、再審開始が決定した。
 その後の東京高検の鑑定で、被害者の爪の付着物からこの男性と同じDNA型が検出された。新事実を明らかにしたのは、科学の進歩によるところが大きい。事件当時は困難だった微量の資料鑑定も可能で、DNA型鑑定は現在、約4兆7千億人に1人の確率で個人識別ができるようになった。
 そうした点を差し引いても、有罪主張に固執するあまり、不都合な事実に目をつぶることはなかったか、検証を尽くすべきだ。
 決め手となった爪の付着物の鑑定は、再審開始決定後に行われた。もっと早く鑑定を行っていれば、結論を出す時期も大きく異なっていたはずだ。
 大阪地検特捜部による郵便不正事件と押収資料改竄(かいざん)・犯人隠避事件を検証した最高検は、「検察再生」のキーワードに「引き返す勇気」をあげた。
 最近も、遠隔操作ウイルスに感染したパソコンから脅迫の書き込みなどが繰り返されていた事件で、警察が誤認逮捕を認める事例が相次いでいる。捜査当局は改めて、このキーワードに思いを致すときだ。いまだ信頼回復の途上にある検察は、いっそう厳しく自らを律しなくてはならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012080102000111.htmlより、
東京新聞【社説】東電女性殺害 検察の異議こそ問題だ
2012年8月1日

 東京電力の女性社員殺害事件の再審開始決定を東京高裁はあらためて支持し、検察の異議を退けた。再審公判は長引かせてはならず、犯人とされたネパール人男性に早く無罪の声を届けるべきだ。
 六月に出た再審開始決定から、二カ月足らずで、これを全面的に支持する高裁の決定が出たことは、一刻も早く裁判をやり直し、しかも無罪を出すというメッセージに他ならない。
 再審は確定的だ。今、求められているのは、強盗殺人罪で無期懲役の確定判決を受けたネパール人男性の名誉回復である。
 そもそも再審開始に異議を申し立てた検察こそ問題である。被害者の遺体に残っていた精液について、捜査当局は長い間、DNA型は調べていなかった。
 再審を求める過程で、弁護側がその証拠開示を求めた。そして、三年八カ月も経てから、検察側はDNA型を調べ、「第三者」の存在が明らかになったのだ。
 高裁の二つの刑事部は、この第三者が「犯人である可能性を示している」と明確に述べた。ネパール人男性には「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」にあたるとも判断している。新たな証拠評価に疑義の余地はなかろう。
 これは速やかに無罪を言い渡さないと、著しく正義に反する。検察もそれを肝に銘じるべきだ。
 大阪地検の証拠改ざん事件のときも、厚生労働省の元局長が裁判で「無罪」を言い渡されるまで、検察は撤退しなかった。明らかなでっち上げ事件なのに、公訴を取り消すことも、無罪の論告もしなかった。だから、最高検の検証結果で、「引き返す勇気」を再発防止策に挙げたのだ。
 新たに作った「検察の理念」にも「冤罪(えんざい)防止」や「有罪判決の獲得のみを目的とすることのない公正な裁判」を掲げた。東電女性殺害事件で異議を唱えては、「理念」も単なるお題目にすぎないのかと疑われる。「引き返す勇気」で再審公判に臨んでほしい。
 犯人とされた男性は、約十五年間も身柄を拘束されていた。これほどの人権侵害はない。「再審無罪」は見えている。どうして冤罪を生んだのか。捜査や証拠評価のどこに問題があったのかを徹底的に検証せねばならない。
 一九九七年に起きた事件は、殺人の時効が撤廃され、犯人追及は可能だ。捜査を断念せず、真犯人の可能性のある第三者を捜しだし、真相を解明してほしい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年6月8日(金)付
再審開始―検察の異議はおかしい

 15年前にあった東京電力の女性社員殺害事件で、無期懲役刑が確定したネパール国籍の元被告について、東京高裁は裁判をやり直すことをきめた。
 疑わしきは被告人の利益に、という裁判の鉄則をふまえた判断だ。検察側の求めに応じ、十分に主張・立証させたうえで導き出した結論でもある。
 にもかかわらず、検察はただちに異議を申し立てた。理解しがたい対応というほかない。
 元の裁判でも一審は無罪だった。二審で有罪になったが、証拠関係はいかにも脆弱(ぜいじゃく)で、疑問はくすぶり続けた。
 裁判をやり直すか否かをさらに争っても、検察はもちろん、刑事司法全体への不信を一層深めるだけだ。不祥事を受けて昨年制定した「検察の理念」で、「有罪そのものを目的とする姿勢」を厳しく戒めたのに、あれは口先だけだったのか。
 再審開始の決め手の一つは、被害者の体内に残った体液だった。そのDNA型と、殺害現場の部屋にあった第三者の体毛の型が一致し、高裁は「被害者と第三者が部屋で性交渉した可能性を示す」と判断した。有罪の前提だった「被告以外の男が部屋に入ったとは考えがたい」との認定に疑いが生じた。
 この体液は、事件当時は血液型が鑑定されただけで、DNA型は調べられていなかった。捜査を尽くしていれば、と思わずにはいられない。
 問題はそれだけでない。
 体液が冷凍保管されているのを検察側が明らかにしたのは、再審請求の弁護人が証拠開示を求めた3年8カ月後だった。さらに遅れて、別の遺留物についても弁護側に有利な警察の鑑定書が存在することがわかった。
 あまりにひどい話だ。
 どうしてもっと早く開示しなかったのか。裁判所もなぜ、もっと強く促さなかったのか。省みる点はたくさんある。
 驚くのは、「それでも体液がしっかり保管され、開示されたのだから良かった」との声が専門家から聞かれることだ。他の同種事件がおかれている厳しい状況をうかがわせる。
 一連の刑事司法改革で法律が改められ、裁判員裁判などでは証拠隠しができないようになった。検察当局の意識も変わりつつある。だが再審請求段階については定めがなく、現場の運用にゆだねられている。早急な手当てが求められる。
 真相を解明し、無実の人を罰しない。それは、検察官、弁護人、裁判官の立場をこえて、刑事裁判に関わるすべての人の、そして社会の目標である。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120608/trl12060803140001-n1.htmより、
産経新聞【主張】東電OL殺害再審 新証拠吟味し真相解明を
2012.6.8 03:14

 東京都渋谷区のアパートで平成9年、東京電力の女性社員が殺害された事件で無期懲役が確定したネパール人の元被告について、東京高裁は再審開始を決定した。
 刑の執行も停止され、元被告は釈放された。再審請求審で開示された証拠のDNA型鑑定から、殺害現場に第三者の存在が強く疑われる以上、再審開始の決定は妥当だろう。
 東京高検の異議申し立てを受けて、高裁の別の裁判官が再審開始の可否を審理することになる。だが1、2審で争われなかった重大な新証拠がある以上、検察側は再審の場で主張を展開すべきだ。
 再審請求審の鑑定で、被害者の体内に残された体液から第三者のDNA型が検出され、殺害現場に残された体毛と一致した。被害者のコートについた血痕からも同型のものが検出された。第三者の犯行を疑うのは自然な判断だ。
 検察側はなお、さまざまな状況証拠から「確定判決は揺るがない」としている。そうであるならば、新証拠を踏まえたうえで、第三者の犯行があり得ないことを、再審の場で論理的に証明する必要がある。
 被害者の体内から検出された体液については、捜査時の鑑定は行われなかった。コートの血痕の鑑定などは、1、2審の公判段階では証拠開示されていなかった。再審の行方とは別に、警察、検察には事件対応を検証することも強く求められる。
 再審開始の決定を導いたのは、証拠開示の流れと科学の進歩だったといえる。
 司法改革の一環で公判前整理手続きが導入され、証拠の開示も義務づけられた。再審請求審には証拠開示の規定はないが、高裁は検察側に、積極的に証拠を開示するよう促した。新証拠はこの過程で明らかになったものだ。
 捜査当局は、否定的材料も含めたすべての証拠について検証を尽くすことが必要になる。
 DNA型鑑定の進歩はめざましい。現在では約4兆7千億人に1人の確率で個人識別を行うことが可能だという。すでに殺人などの凶悪事件から窃盗事件まで、検挙に効果をあげている。
 欧米に比べて立ち遅れているとされるDNA型データベースの拡充も急ぎたい。事件解決のためだけでなく、冤罪(えんざい)防止にも役に立つはずだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012060802000152.htmlより、
東京新聞【社説】東電女性殺害 早く無罪を確定させよ
2012年6月8日

 東京電力の女性社員殺害事件で、再審開始の決定が出た。DNA型鑑定結果など新証拠で、第三者が犯人である疑いが生じたためだ。審理を長引かせず、早く元被告の無罪を確定させるべきだ。
 強盗殺人罪で無期懲役の確定判決を覆し、再審開始決定の決め手になったのは、被害者の遺体に残っていた精液だ。
 再審を求める過程で、弁護側が精液のDNA型鑑定を求めたところ、ネパール人元被告のものではなかった。そのうえ、殺害現場の部屋に残されていた体毛とも精液のDNA型が一致した。
 昨年七月に判明した、この事実が指し示すのは、元被告とは別人の「第三者」が殺害現場にいた可能性があることだ。東京高裁はこの点を最も重視し、「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠に当たる」と明快に認めた。しかも、この第三者が「犯人である疑いがある」とも述べた。
 なぜなら、被害者の頭や顔に殴打された痕があり、血痕が付いたコートもあった。第三者が性交後に被害者を殴打して、コート背面に血液を付着させたとみるのが自然だと、高裁は考えたわけだ。
 だが、この決定で再審が始まるわけではない。検察側が異議の申し立てをしたため、高裁の別の裁判部で、あらためて再審の可否が審理されるのだ。そこで再び再審決定が出たとしても、検察側は最高裁に特別抗告ができる。
 元被告が逮捕されて十五年、有罪判決の確定からも八年半がたつ。さらに長期間の審理を要しては、深刻な人権侵害にもあたりうる。元被告は釈放されたが、速やかに無罪を確定させる手続きに入るべきなのだ。
 足利事件や布川事件、福井の女子中学生殺害事件、大阪の放火殺人事件…。再審無罪や再審開始決定が続いている。捜査機関は犯人特定を急ぐあまり、証拠の評価が粗雑になっていないか。無実を訴えているのに、犯人と決め付けては、真実は見えない。検察が被告に有利な証拠を隠せば、公正さを欠く。裁判官も曇りのない目で裁いてきただろうか。
 今回の事件でも、問題の精液や血痕付きコートの証拠などを検察側は長く出し渋っていた。もっと早い段階で証拠開示され、鑑定が行われていれば、有罪の確定判断も変わった可能性が高い。もともと一審無罪の事件でもある。もはや問われているのは、検察や裁判所の良心ではないのか。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120608k0000m070117000c.htmlより、
社説:マイナリ元被告 早期の再審決着目指せ
毎日新聞 2012年06月08日 02時33分

 97年に起きた東京電力女性社員殺害事件が新展開を見せた。無期懲役が確定したゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者が求めた再審請求を東京高裁が認める決定をしたのだ。
 昨年、弁護団の要請で実施したDNA型鑑定の結果、被害女性の体内の精液やコートの血痕からマイナリ元被告と異なる第三者のDNA型が検出され、殺害現場の部屋に落ちていた体毛の型とも一致した。
 こうした鑑定結果について、決定は「(マイナリ元被告以外が現場の部屋にいた可能性を否定した)確定判決の有罪認定に合理的な疑いを抱かせる」と結論づけた。最新の科学技術の成果を踏まえた新証拠との判断であり、妥当な結論である。
 さらに決定は踏み込んでいる。
 現場の状況や被害者のけがの状態も考慮した上で「第三者の男が被害女性と性的関係を持った後に殺害した疑いがある」と、マイナリ元被告の冤罪(えんざい)の可能性を指摘したのだ。コートの血痕は、男が被害者を殴って出血させた際に付着したと見るのが自然だと主張する。
 現場である東京都渋谷区のアパートの部屋のトイレに残されていた精液のDNA型がマイナリ元被告と一致したことや、部屋の鍵を持っていたことなどの状況証拠が逮捕・起訴の決め手になった。
 だが、決定の指摘を踏まえれば、初動捜査での容疑者の絞り込みが適切だったのか疑問が残る。警察は捜査の経緯を再点検すべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120608k0000m070117000c2.htmlより、
 また、検察側の対応にも問題を残した。事件当時、被害女性の胸などから、マイナリ元被告とは異なる血液型の唾液などを検出しながら、弁護側に証拠開示しなかった。
 昨年、検察がこれらの証拠の存在を明らかにして追加でDNA型鑑定を実施したところ、第三者の男に由来するDNA型が検出された。
 マイナリ元被告以外が被害者と接触した可能性を示すこういった重要な証拠が公判時に開示されていれば、公判の行方に影響を与えていた可能性は否定できない。05年の再審請求から6年以上たっての開示も遅すぎる。全面的な証拠開示の仕組みがやはり必要だ。
 被害女性の体内に残っていた精液などのDNA型鑑定がやっと昨年になって実現したことにも疑問が残る。なぜ、もっと早くできなかったのか。近年、鑑定の技術や精度が飛躍的に向上しているだけに、捜査側にとって都合のいい試料だけを鑑定するようなことがあってはなるまい。
 1審で無罪が言い渡された事件でもある。裁判をやり直すか否かで時間をかけるべきではなく、検察の異議申し立ては疑問だ。裁判所は早期の再審での決着を目指してほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102902000116.htmlより、
東京新聞【社説】日本の航空産業 世界需要が待っている
2012年10月29日

 ものづくりの中でも航空宇宙産業は最先端分野である。先日開かれた展示会の盛況ぶりは、将来性のある成長産業であることを示した。今後の飛躍へ向けて、官民を挙げて奮起したい。
 今月中旬に名古屋などで開かれた国際航空宇宙展には、三十二カ国・地域から六百六十五の企業や団体が参加、過去最大の規模となった。来場者も六日間で十六万人余りに上り、当初目標を約七万人上回った。
 日本の航空宇宙産業は、国防のための航空機を中心に発展してきたが、最近は民間需要が防衛需要を逆転、旅客機の生産を柱に民需が成長のけん引役となっている。精密で高度な技術が求められる研究開発型の産業であり、科学技術基盤と質の高い人材を有する日本に適した産業といえる。
 ただ売上高は一兆三千億~一兆四千億円で、世界市場の六十兆円に占める割合はわずか。米国のおよそ十五分の一ほどで、英仏にも遠く及ばない。日本の自動車産業と比べても四十分の一程度で、市場規模は小さい。裏返せば、まだまだ成長の余地が十分あるといえる。今後二十年で新規に旅客機など三万機前後、約三百兆円の民間需要が生まれると予測され、世界市場は拡大が続く。日本企業も、参入のチャンスをつかんでいかなければならない。
 航空宇宙展で三菱航空機は、開発を手掛ける国産旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の客席の実物大模型を展示。富士重工業は、米ボーイングの最新鋭旅客機787の基幹部品を造る半田工場(愛知県半田市)を公開した。MRJは低燃費・低騒音、787の部品には金属よりも軽くて強い炭素繊維複合材が使われる。いずれも世界の最先端技術で、次世代の航空機に求められる経済性や環境対応性をアピールできた。中小企業をはじめ、商談会も四千件近くに上り、日本を売り込む情報発信の絶好の場となった。
 航空宇宙産業で培われる技術や部品・素材の高度化は、自動車や鉄道、医療機器などの他分野に波及し、日本の製造業の発展につながる。ものづくりは、台頭する韓国や中国などの新興国に迫られており、航空宇宙産業も例外ではない。
 国際競争に勝ち残るため、技術面の強みをさらに磨くとともに、情報発信などによる海外企業との連携の支援や人材育成などに、官民が協力して取り組み、産業の裾野を広げていきたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121029/stt12102903310003-n1.htmより、
産経新聞【主張】与党の補選敗北 首相の逃げが不信高めた
2012.10.29 03:31 (1/2ページ)

 野田佳彦政権の発足後初の国政選挙となった衆院鹿児島3区補選で、民主党が推した国民新党の新人が自民党公認候補に敗れた。
 与党候補の敗北は、赤字国債発行に必要な特例公債法案の成立など必要最小限の課題も片付けずに、「近いうち」の衆院解散から逃げ回っている野田首相に対し、有権者が厳しい判断を突きつけたといえよう。
 マニフェスト(政権公約)になかった消費税増税法を成立させたことや、「無駄の削減で16・8兆円を生み出す」とした約束を果たせなかったことなど、政権の正統性の喪失を如実に見せつけた。
 この結果を受け、首相は選挙情勢が厳しいとして衆院解散をさらに先へ延ばす方向に傾くかもしれない。しかし、年内解散を明示した上で、与野党が協力して内外の懸案を解決する状況を作り出すしか政権の信頼を得る道はない。
 補選は国民新党の松下忠洋前金融担当相の死去に伴って行われた。民主党は閣僚や党幹部を現地入りさせるなど自党の公認候補並みの支援態勢を敷いた。
 選挙区内には、九州電力川内原発1、2号機がある。両候補とも安全性確保を前提に、再稼働を容認する見解を示していた。進出企業の相次ぐ撤退で、雇用不安への対応も大きな課題だった。
 これらの論点で明確な違いがなかった分だけ、「民主党政権の継続か、自民党の政権復帰か」という政権選択がより問われたことが今回の補選の特徴ともいえる。
 にもかかわらず、与党議席を守れなかったことで、民主党は国民新党と合わせても衆院の与党過半数割れまで9議席と追い込まれ、政権運営の痛手となった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121029/stt12102903310003-n2.htmより、
2012.10.29 03:31 (2/2ページ)

 自民党にとっては、安倍晋三総裁の就任まもない国政選挙を「政権交代の前哨戦」と位置づけてきただけに、追い風となろう。
 29日召集の臨時国会で、自民党は予算委員会での質疑を中心に野田政権の問題点を追及する。首相が年内解散を明示していない段階でも、審議拒否は行わないとの方針に転じたためだ。
 だが、参院では首相の所信表明演説聴取や各党代表質問を行わないなど、冒頭から正常とはいえない国会運営になりそうだ。
 審議に応じる以上、現政権の問題点をただすだけでなく、政権の受け皿となる政策を提示し、信頼感を高めてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012102902000117.htmlより、
東京新聞【社説】衆院補選 政策を競い合わぬ不毛
2012年10月29日

 衆院鹿児島3区補選は、自民党候補が与党候補らを破った。次期衆院選の前哨戦という位置付けだったが、自民、与党両候補間に政策の顕著な違いはなく、マニフェストづくりに課題を残した。
 国民新党の松下忠洋金融・郵政担当相死去に伴う今回の補選は、昨年九月の野田佳彦首相就任後、また今年九月の安倍晋三自民党総裁誕生後、初の国政選挙だ。
 共産党と諸派を含め四候補が立候補したが、松下氏の政策秘書だった国民新党新人、野間健氏(54)=民主党推薦=と、前回衆院選で松下氏に敗れた自民党元職、宮路和明氏(71)=公明党推薦=との事実上の一騎打ち。
 一補選の結果で全国情勢を語るのは無謀だが、内閣と民主党の支持率の低迷に伴い、自民党が復調したことは読み取れる。
 「近いうち」の衆院解散を明言した首相に年内解散を迫る自民党は、安倍総裁自ら候補者応援に駆けつけた。新体制発足後初の国政選挙を制したことは、政権奪還に向けた弾みとなるだろう。
 公認候補並みに応援態勢を敷いた民主党には手痛い敗北だ。党勢立て直しのために、解散先延ばし論が勢いづくかもしれない。
 ただ選挙戦では、消費税増税や選挙区内にもある原発の再稼働の是非、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題など国政上の重要課題は争点化しなかった。
 両候補の訴えが、消費税増税と原発再稼働に賛成、TPPに反対と、同じだったからだ。
 もともと自民党の地盤が強い選挙区で、野間氏が遺志を引き継ぐとした松下氏も同党出身。両陣営は政策の違いよりも「世代交代」(野間陣営)「政権奪還」(宮路陣営)など政策以外に訴えの重点を置いた。主要政策に違いがなければ政策論争となりようがない。
 補選とはいえ、政党同士が政権を目指して政策を競う小選挙区制の本来の在り方からは程遠い。
 衆院議員の任期満了まで一年を切り、各党はマニフェストづくりを進めている。有権者が政権を選択するには、判断材料となる理念・政策と、その実現に向けた具体的な道筋、特に財源の捻出方法が重要だ。
 既成政党はもちろん新たに国政進出する日本維新の会、減税日本、石原慎太郎東京都知事率いる新党も同様である。政策の一致なき連携は野合との誹(そし)りを免れない。マニフェスト破りの消費税増税を強行した民主党の轍(てつ)を踏まぬよう、政策の詰めを急ぐべきである。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121029k0000m070144000c.htmlより、
社説:自民が補選勝利 「勢い」と勘違いするな
毎日新聞 2012年10月29日 02時31分

 次期衆院選の前哨戦として注目された衆院鹿児島3区補選は、自民党前職の宮路和明氏(公明党推薦)が国民新党の新人(民主党推薦)らを破って当選した。自民党はこの勝利により、29日から始まる臨時国会で早期の衆院解散・総選挙を一段と強く求めていくと思われる。
 だが、見逃してはならないのは、当初は宮路氏の圧勝と見られていたにもかかわらず、予想以上の接戦だったことだ。各種世論調査を見ても自民党が全国的に復調傾向にあるのは確かだが、それをもってして自民党への信頼が完全に回復したとはいえない。むしろ、民主党への失望感が日々、増幅しているという「敵失」による勝利といった方がいいのではないか。自民党はそれを勘違いしてはならない。
 「勘違い」の最たるものが、臨時国会冒頭で自民党など野党が何とも奇怪な対応をしようとしていることだ。野田佳彦首相の所信表明演説は与党が多数を占める衆院では29日に行う日程が決まったが、野党多数の参院では演説を拒否するというのである。先の通常国会終盤で、参院は首相に対する問責決議を可決したからというのがその理由だ。首相演説に対する本会議での代表質問もしないという。
 過去例のない異常な事態である。ただし、審議の全面拒否は国民からの批判が大きいことは自民党も分かっているのだろう。その後の予算委員会質疑には応じるというのだから、ますます分かりにくい。
 法的根拠のない問責決議を乱用すべきではないと私たちはかねて主張してきた。首相演説と代表質問拒否の前例ができれば参院不要論にもつながると、なぜ考えないのか。野党は直ちに方針を撤回すべきだ。
 今回の補選は野田政権発足後、初であり、自民党総裁に安倍晋三元首相が返り咲いてから初めての国政選挙だった。石原慎太郎東京都知事が新党結成を表明し、第三極の結集を呼びかけ始めた直後の投票ともなった。ここで自民党が過信して不毛な強硬路線に走るようでは、今後、民主でも自民でもない第三極に再び有権者の期待が高まる可能性がある。
 今年度の赤字国債発行に必要な特例公債法案がいまだに成立していない影響が地方自治体では既に出始めている。ところが自民、公明両党は年内解散を確約しないと成立させないとの立場を崩していない。この姿勢にも批判が強まろう。
 一方、民主党の「解散恐怖症」は収まる気配がない。しかし、もう腹をくくる時期だと改めて指摘しておく。衆院小選挙区の1票の格差是正のための立法措置など、これ以上の先送りは許されない。