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月別アーカイブ: 12月 2012

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121231/k10014542051000.htmlより、
尖閣諸島沖 中国船対応で越年の巡視船も
12月31日 18時50分

尖閣諸島周辺の海域では、中国当局の船が31日も日本の領海内に侵入しました。
中国当局の船がことし、この海域で領海やすぐ外側の接続水域を航行した日数は、去年の7倍に上っていて、海上保安庁の一部の巡視船は現場で警戒に当たりながら年を越します。
尖閣諸島周辺の海域では、31日午後、中国の海洋監視船3隻が日本の領海内に侵入しました。
海上保安庁によりますと、ことし、中国当局の船が、この海域で領海やすぐ外側の接続水域を航行した日数は、合わせて91日と去年の7倍、日本の巡視船と中国漁船の衝突事件が起きたおととしに比べても3倍以上と、これまでで最も多くなっています。
領海への侵入だけを見ても、23日と過去最多で、海上保安庁は全国の巡視船を投入し、年末年始も態勢を強化し続けています。
静岡県の下田海上保安部から、今月19日に派遣された巡視船「あまぎ」もそのうちの1隻で、乗組員およそ40人は現場で警戒に当たりながら年を越します。
海上保安庁は、今後、尖閣諸島を担当する沖縄の第11管区海上保安本部の巡視船を増やし、各地からの派遣を減らしながら長期化に対応できる態勢を整えることにしています。
一方で、尖閣諸島を巡る事態は、中国側が海洋当局の航空機による領空への侵入や接近を始めたのに対し、海上保安庁ではなく自衛隊の戦闘機がスクランブル=緊急発進するという新たな段階に入っており、日本側は、事態をエスカレートさせず、万全の警戒態勢をとるという難しい対応を迫られています。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121230/plc12123003220005-n1.htmより、
産経新聞【主張】中国機侵入 領空を守る措置は十分か
2012.12.30 03:21

 領空侵犯に対処する航空自衛隊の任務や権限が、曖昧なまま放置されている。
 わが国固有の領土である尖閣諸島をめぐり、中国の国家海洋局所属の航空機が領空侵犯や領空への接近を繰り返している現状を考えれば、対領空侵犯措置は明確にしておく必要がある。
 自衛隊法84条は、外国航空機が国際法に違反して日本領空に侵入した場合、これを着陸させるか領空から退去させるための「必要な措置をとれる」としている。
 空自はこれに基づいて、外国機が日本の防空識別圏に入るたび戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、無線での警告や警告射撃などの段階を踏んで、領空侵犯機に退去や強制着陸を命じる措置をとることになっている。
 だが、警告や警告射撃などの措置は公共の秩序を維持する「警察活動」とされ、武器使用は正当防衛に限られるなど、極めて抑制的にとらえられている。
 実際に警告射撃を行ったのが、昭和62年に旧ソ連の偵察機が沖縄本島上空などで領空侵犯を繰り返した際の一度だけ、ということにも示されている。
 警告を無視して侵犯した外国機に、どう対応するかも考えておかなければならない。その意味で空自の対領空侵犯措置は不十分であり、実効性のある抑止にならないところに問題がある。
 今月13日に初めて領空侵犯した中国国家海洋局のプロペラ機(Y12)は、その後も24日から3日連続で尖閣の領空近くまで接近するなどの行動を重ねている。
 中国機が再び領空侵犯した場合でも、空自は警告射撃を行うことには慎重だという。
 直ちに日本国民の生命や安全が脅かされることはないとの判断もあるようだが、相手の攻撃を受けた場合にどう反撃するかなどは、どうなっているのか。先送りすることは許されない。
 尖閣の「領有権問題」を強調するため、中国側が領空侵犯を繰り返し、空自を誘い出す意図を持っていないのかも警戒すべきだ。そのためにも、どの段階で警告射撃を行うかなどを明確にしておくべきだろう。
 政府公船による領海侵犯などの常態化に加え、空からも尖閣奪取の動きを加速する中国の行動をいかに抑止するかが安倍晋三政権に問われている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121229/plc12122903450002-n1.htmより、
産経新聞【主張】回顧2012 領土を守り自信取り戻せ ものづくりで経済力回復を
2012.12.29 03:18 (1/3ページ)

 日本を取り巻く国際環境がいかに厳しいかを思い知らされた1年だった。3年3カ月の民主党政権による内政・外交の迷走が最大の原因であり、それが国民の自信喪失に追い打ちをかけた。
 これを見透かしたように、習近平新体制となった中国は東シナ海などへの海洋権益拡大の野心をむき出しにした。わが国固有の領土・尖閣諸島の上空を初めて中国機が領空侵犯し、周辺海域を含む公船の侵犯も常態化した。年末の衆院選で復帰した安倍晋三政権に託された使命と責任は大きい。

 ≪国旗奪われて何もせず≫
 尖閣問題は、東京都知事だった石原慎太郎氏が「都で購入する」と表明した後、政府が慌てて国有化したが、実効統治強化に向けた措置を講じようとしなかった。
 中国側は「領土問題では半歩も譲らない」(温家宝首相)と強硬姿勢を強め、中国国内で日本排撃の嵐が吹き荒れた。反日デモで暴徒化した群衆は日系企業やスーパーを襲った。丹羽宇一郎駐中国大使の公用車も襲われ、国旗が奪われたにもかかわらず、日本政府は抗議しただけだった。
 日本領土への挑戦は、中国にとどまらなかった。ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の国後島を再訪問し、韓国の李明博大統領も島根県・竹島に上陸した。北朝鮮は「衛星打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルを発射した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121229/plc12122903450002-n2.htmより、
2012.12.29 03:18 (2/3ページ)
 日本が各国につけ込まれたのは野田佳彦政権が尖閣問題で「平穏かつ安定的な維持管理」を繰り返し、領海・領空侵犯にも明確な対抗措置を取らなかったことが大きい。抑止の源泉となるべき日米同盟は普天間飛行場移設問題が進展しないまま空洞化が進んだ。
 国内で気がかりなのは、多くの国民が長引く経済の沈滞もあって自信を失ってしまったことだ。
 企業の平成24年3月期決算で、電機大手のパナソニックが7721億円、ソニーが4566億円、シャープは3760億円と、いずれも過去最大の最終赤字を計上した。テレビ事業の不振が大きな理由だが、衝撃的な数字である。
 日本は長く家電製品や自動車を輸出して稼いできた。だが、昨年3月の東日本大震災を機に、貿易収支は赤字に転じた。原発再稼働が困難となり、火力発電用の化石燃料の輸入が増え続けている。
 笹子トンネル事故は、日本経済を支えてきたインフラの老朽化に警鐘を鳴らした。ものづくりこそ日本の経済力の中心であり、自信を取り戻さなければならない。
 教育の荒廃も目立った。中2男子が自殺した大津市のいじめ問題は、暴行容疑などで同級生2人が書類送検、1人が児童相談所に送致された。生徒アンケートで「自殺の練習をさせられていた」などの回答も明らかにされ、教育をめぐる問題の深刻さが示された。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121229/plc12122903450002-n3.htmより、
2012.12.29 03:18 (3/3ページ)

 ≪国民が結束するときだ≫
 米大リーグで活躍し、ひたむきなプレーで日本人を元気づけてくれた松井秀喜選手が引退を表明した。同選手の引退は残念だが、スポーツや学術・文化の世界では明るい話題も多かった。
 ロンドン夏季五輪で、日本は史上最多の38個(金7、銀14、銅17)のメダルを獲得した。
 競泳男子平泳ぎの北島康介選手は3大会連続2冠の期待があったが、個人種目のメダル獲得はならなかった。その北島選手を「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」と後輩らが勇み立った。メドレーリレーでチームが団結し、みごと銀メダルを獲得した。
 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥京大教授が日本人2人目のノーベル医学・生理学賞を受賞した。山中氏は米国などとの競争に勝つため「オールジャパン体制で研究が必要」と訴えて、国の支援を得た。
 山中教授は「日の丸の支援のおかげで日本が受賞した。世界の難病の方にメード・イン・ジャパンの薬を提供したい」と語ったが、国民が自信を取り戻し、日本を元気にするには全ての分野で「オールジャパン」のアプローチが有効だ。日本人は団結すれば、一人で出せない力を発揮する。
 「再チャレンジ」を掲げて再登板した安倍首相率いる自公新政権にも、同じことがいえる。憲法改正や集団的自衛権の行使容認などの公約を掲げた新政権の課題は多く、震災復興にもスピードが求められる。今度こそ短命政権に終止符を打ち、日本再生を果たしてもらいたい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012122902000135.htmlより、
東京新聞【社説】対中韓外交 着実に現実路線進めよ
2012年12月29日

 安倍政権の外交で取り組むべきは中国、韓国との関係修復だ。経済再生を第一に掲げるのなら、アジアの成長力を取り込む政策が必要になる。隣国との摩擦を拡大せず、協力体制を再構築したい。
 安倍晋三首相はまず韓国との関係修復に動きだした。島根県・竹島(韓国名・独島)について、自民党の衆院選政策集では二月二十二日を「竹島の日」として祝う政府主催の式典を催すとしていたが、来年は見送る方針だ。
 朴槿恵・次期大統領の就任式がその三日後に行われるため韓国側を刺激するのを避けたのだろう。賢明な判断だといえる。
 早期に首脳会談を開き、竹島や歴史問題とともに、日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の進展や北朝鮮の核、ミサイル開発への対応などを話し合うべきだ。
 中国は沖縄県・尖閣諸島周辺の領海や領空への侵犯を繰り返す。安倍政権は海上保安庁の態勢強化を急ぐが、尖閣諸島に公務員を常駐させる案については「中国との交渉カードの一つ」との見解を示すなど、姿勢を軟化させた。
 安倍首相は六年前の就任後、中国との「戦略的互恵関係」を掲げて、小泉政権で悪化した関係の改善に努めた。総選挙中は強硬発言が目立ったが、今回も現実路線を進もうとする姿勢がみてとれる。
 政府は中国の海洋進出を警戒するオバマ米政権と緊密な協議を重ね、同時に習近平新指導部には、暴力的な反日デモを許さず、日本企業の投資環境を保証するよう強く求めたい。日中両国の緊張は、中国経済にとっても大きな損失になるからだ。
 菅義偉官房長官は植民地支配と侵略を認めた村山富市元首相の談話を踏襲するとし、従軍慰安婦で旧日本軍の関与を認めた河野洋平元官房長官談話については、有識者会議での議論が必要だとしながらも、「政治、外交問題にはしない」と述べた。
 二つの談話は歴代政権が継承してきた対アジア外交の基本理念である。見直しを明言すれば、中国や韓国との修復はまた遠のいてしまう。日本との同盟強化を目指す米国にしても、戦前の軍国主義への反省を無にするような歴史認識には厳しい批判があることを忘れてはならない。
 固有の領土を守り安全保障体制を強化しながら、中韓両国とは共通の利益を模索して「右傾化」批判を避ける。現実主義に立脚した外交を展開していきたい。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121226/k10014456161000.htmlより、
中国機 3日連続で尖閣に接近
12月26日 20時28分

尖閣諸島では、26日も中国当局の飛行機が島に接近し、領空侵犯はありませんでしたが、自衛隊機が緊急発進しました。
中国機による尖閣諸島への接近は3日連続で、防衛省は、中国側が定期的な監視飛行を開始した可能性もあるとみて、警戒を強めています。
防衛省によりますと、26日昼前、中国の国家海洋局所属のプロペラ機「Y12」1機が尖閣諸島に北西から接近しているのを、自衛隊がレーダーで確認しました。
航空自衛隊の戦闘機がスクランブル=緊急発進し、中国機は尖閣諸島の北およそ120キロで大きくUターンして、尖閣諸島から遠ざかったということです。
領空侵犯はありませんでした。
中国の同じタイプのプロペラ機による尖閣諸島への接近は3日連続で、いずれもほぼ同じ時間帯に似通ったコースを飛行しています。
中国の国家海洋局は尖閣諸島に海洋監視船を派遣している組織で、今月13日、所属機が初めて日本の領空を侵犯した際、「海と空から立体的なパトロール活動を展開した」と主張しており、防衛省は、中国側が監視船の派遣だけでなく、定期的な監視飛行を開始した可能性もあるとみて警戒を強めています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121224/k10014401841000.htmlより、
中国 報告書“尖閣で衝突も排除できず”
12月24日 23時8分

中国の政府系シンクタンクが、24日、国際情勢に関する報告書を発表し、沖縄県の尖閣諸島について、「島を巡る危機はさらにエスカレートし、衝突が起きる危険も排除できない」などと記述しており、今週発足する安倍新政権へのけん制のねらいもあるものとみられます。
中国の政府系シンクタンク「中国社会科学院」が、24日に発表した報告書「国際情勢白書」は、日本による尖閣諸島の国有化にふれ、「日中関係は国交正常化以来、最も深刻な状況に陥っていて、緊張した局面を外交ルートを通じて緩和させる政策の柔軟性は、大幅に狭まっている」と指摘しています。
また、中国政府は、尖閣諸島沖の日本の領海への侵入を繰り返すなど、領土問題の存在を認めさせようと圧力を強めていますが、報告書では、「日本がかたくなで、強硬な立場を続けていることから、島を巡る危機はさらにエスカレートし、衝突が起きる危険も排除できない」と記述しています。
さらに、報告書は「仮に日本が島に施設の建設や人員の常駐などを進めれば、日中関係や北東アジアの安全と安定は、さらに厳しい挑戦にさらされる」としており、報告書は、尖閣諸島を巡る対応で、今週発足する安倍新政権へのけん制のねらいもあるものとみられます。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012122400275より、
尖閣めぐり衝突可能性も=中国社会科学院が報告書

 【北京時事】中国新聞社電によると、中国社会科学院は24日、最新の国際情勢に関する報告書を発表、現在の日中関係は尖閣諸島の問題をめぐり、国交正常化以降、最も厳しい状況にあるとの見方を示し、「軍事衝突に発展するリスクを排除できない」と主張した。
 報告書は尖閣問題で両国民の反感が高まっているため、外交ルートを通じた緊張緩和策の弾力性が失われていると指摘。日本が「強硬な立場」を維持し、中国も「国家の領土主権を守る決心は揺るぎない」として、衝突の可能性を警告した。
 関係悪化の背景として、中国の国力増強で日中間の力のバランスが崩れたことや米国の「アジア回帰」戦略、日本の「右傾化」といった要素があると分析。日本の政府や「極右」が尖閣諸島への公務員常駐などの行動に出た場合、「中日関係と北東アジア情勢はより厳しい挑戦に直面する」と強調した。(2012/12/24-20:20)

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年12月15日(土)付
領空侵す中国―危機を広げたいのか

 中国国家海洋局の航空機が、尖閣諸島近くの日本の領空を侵犯した。両国の衝突につながりかねない極めて危険な行為だ。
 日本政府が尖閣諸島を地主から買って以来、中国の公船が周辺の領海にくり返し入り、領有権を主張している。だが、空への侵犯は初めてだ。
 領空侵犯は、深刻な新たな局面を招く。
 海の警察である海上保安庁が警戒するこれまでと違い、空の場合は軍事組織である自衛隊が侵入を防ぐ。今回も航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。
 自衛隊機が着いたとき中国機はすでに去っていたが、自衛隊出動という事態は、互いの対立が軍事レベルに拡大しかねない危険をはらむ。
 また、航空機の接近は、接触などの不測の事態もおきかねず、そうなれば直ちに惨事につながる。
 2001年には、中国海南島付近の南シナ海公海上空で、米軍の偵察機に中国軍機が近づいて接触、中国機が墜落する事件があった。
 日中の間で同じようなことがおきれば、国民感情の激化を制御できなくなる恐れもある。そのような事態は、だれの得にもならない。
 中国は尖閣を「中国固有の領土」とし、航空機の活動は「全く通常のもの」と主張した。公船とあわせて「海と空の立体パトロール」だという。
 尖閣諸島は日本が長く実効支配してきた。中国は歴史的な経緯を自国内には伝えず、最近の行動は力で現状を変えようとするものにほかならない。
 侵犯は、日本の総選挙の3日前になされた。
 日本政府は尖閣に「領土問題は存在しない」との立場だが、中国は新政権発足をにらみ、領有権争いの存在をはっきりさせる狙いとも見られる。
 だが、それは新政権の対中不信を招き、政策の選択肢を狭めるだろう。選挙では自衛隊の国防軍化や、憲法改正も論じられている。そうした声がいっそう強まることも考えられる。
 中国は、それを望んでいるとしか思えないようなふるまいだ。
 今回、中国機は低空を飛来したため、自衛隊のレーダーで捕捉できなかった。日本政府は早期警戒機の活用など、監視体制の強化を検討している。備えを万全にするのは当然だ。
 むろん、外交的な解決を探る努力は双方に欠かせない。事態を鎮める環境を整えるためにも、中国は挑発を直ちにやめるべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121215k0000m070121000c.htmlより、
社説:中国機領空侵犯 目に余る挑発行為だ
毎日新聞 2012年12月15日 02時30分

 沖縄県・尖閣諸島の魚釣島付近で13日、中国国家海洋局所属の小型プロペラ機「Y12」1機が領空侵犯した。中国機による日本の領空侵犯は自衛隊が統計を取り始めた1958年以来初めてである。
 日本政府による9月の尖閣諸島国有化後、中国の公船が周辺海域に出没する事態が続いている。13日は海洋局の海洋監視船4隻が領海に侵入した。「海」に加えて「空」からも圧力を加えようとする意図が読み取れ、日本政府は尖閣をめぐる対立が新たな局面に入ったと見ている。
 日本は、領海侵犯には海上保安庁が基本的に対応するが、外国機の領空侵犯には、軍機でなくても自衛隊が対処すると定めている。今回も航空自衛隊のF15戦闘機などが緊急発進(スクランブル)した。
 中国側が、軍出動の口実づくりを念頭に、自衛隊を誘い出す目的で領空侵犯に踏み切ったとすれば、極めて重大だ。今回の領空侵犯は目に余る挑発行為と言わざるを得ない。
 習近平・中国指導部には、尖閣諸島の領有権をめぐる争いがあることを国際的にアピールし、国内向けには強い姿勢を示す狙いがあるのだろう。13日が旧日本軍による南京占領から75年にあたったことも関係しているのかもしれない。衆院選後の日本の新政権が尖閣諸島の実効支配強化に乗り出すことを警戒し、これをけん制する意図があったとの見方もある。軍や海洋局は対日強硬派が主導権を握っているとも言われる。
 しかし、威圧的な行動で尖閣問題を解決しようというのは国際社会のルールに明らかに反する。さらに、領空侵犯が繰り返されるようになれば、一触即発の事態に発展する可能性も否定できない。尖閣問題を収拾させる手段は外交しかない。習指導部はそのことを強く自覚すべきだ。
 日本政府が、領空侵犯について中国政府に抗議したのは当然である。また、一連の経緯は米政府にも説明したようだ。中国の理不尽な行動と尖閣をめぐる日本の立場を、米国やアジアなどの各国に繰り返し説明し、理解を求めなければならない。国際社会の視線は、中国を抑止する大きな力である。
 一方、今回の領空侵犯では課題も浮き彫りになった。自衛隊のレーダーで中国機を捕捉することができず、海上保安庁からの連絡で緊急発進した戦闘機は間に合わなかった。中国機が低高度で飛行したため、沖縄のレーダー網で捉えられなかったと見られる。
 防衛省は今後、空中警戒管制機(AWACS)や早期警戒機(E2C)を活用して固定レーダーを補完するという。今回のような事態を招かないためにも、南西諸島方面の警戒監視強化はぜひ必要だ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121214/plc12121403160002-n1.htmより、
産経新聞【主張】尖閣の領空侵犯 中国への対抗措置を急げ
2012.12.14 03:16 (1/2ページ)

 沖縄県・尖閣諸島の領空を中国国家海洋局所属の航空機が侵犯した。中国機による日本領空侵犯は初めてであり、中国が実力を行使して日本を威嚇した事態といえる。
 力ずくで現状を変更する行動は、地域の平和と安定を覆す脅威であり、日本は断固たる対応を取るとともに、抑止の態勢を強めなければならない。
 日本政府が中国政府に厳重抗議したのは当然だ。しかし、海洋局は「中国領空における海空一体のパトロール」だと発表している。習近平政権はさらなる恫喝(どうかつ)を行うとみられるだけに、日本は毅然(きぜん)と対峙(たいじ)し、屈服してはなるまい。
 今回、航空自衛隊の戦闘機は侵犯機に対し緊急発進した。藤村修官房長官が「主権の侵害に断固として対応する」と述べた通り、政府は警戒監視を強め、領土防衛のための態勢強化を急ぐべきだ。
 衆院選の最中にも、中国は、海洋監視船などにより尖閣周辺海域での領海侵犯を傍若無人に重ねている。今後は、空からの侵犯も常態化する可能性が出てきた。
 空自は無線での警告、警告射撃など段階を踏み、侵犯機に退去や強制着陸を命じる措置を取れる。これらはしかし、警察行動と位置付けられ、武器使用は正当防衛に限られる。法改正で領空を守る任務や権限を明確にしなければ、領空侵犯の繰り返しは防げない。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121214/plc12121403160002-n2.htmより、
2012.12.14 03:16 (2/2ページ)
 今年9月の野田佳彦政権による尖閣国有化以降、中国公船の尖閣周辺の航行はほぼ連日で領海侵犯も13日までに計17回に上る。中国機に対する航空自衛隊機の緊急発進も、今年4~6月は15回しかなかったのが尖閣国有化以降を含む7~9月には54回と急増した。
 海洋権益の拡大を図る中国軍が、尖閣領有の既成事実化を狙って海と空で偵察や訓練を活発化させている事態を裏付ける数字だ。11月には、中国海軍初の空母「遼寧」で艦載機の発着艦訓練を成功させ、約6千トンと中国最大の漁業監視船も就役させている。
 衆院選の政権公約で民主、自民両党や日本維新の会が海上保安庁の人員・装備など警備体制の拡充を掲げ、特に自民党が「南西諸島に警察、海保、自衛隊を重点配備する」としたのは評価できる。
 今日の状況を招いたのは、尖閣で「極端な排外主義に陥ると日本が危ない」などとする政府の姿勢だ。事なかれ外交は日本を危うくしただけだと認識すべきだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012123102000103.htmlより、
東京新聞【社説】大晦日に考える 山中教授の朝のように
2012年12月31日

 「仕切り直しの朝です」。そう言ったのはノーベル賞授賞式翌朝の山中伸弥教授でした。聞いて、思わず気を引き締めた人もいたのではないだろうか。
 その言葉は、日本の記者たちを前に飛び出した。いよいよ新型万能細胞の臨床応用が始まるし、もう仕事の連絡も来ている、これからです、と教授は言うのです。実にまじめで、また良き日本人気質をうかがわせる一言でした。
 前日の晩餐(ばんさん)会では、白いドレスのマデレーン・スウェーデン王女をえんび服姿で導いていました。

◆神戸ビーフを話題に
 千三百人もの祝宴で着いた座席は、中央の栄光のテーブルと呼ばれる場所のさらに真ん中。前菜の北極イワナ、主菜のキジ肉と食事を進めつつ、関西育ちは神戸ビーフを話題にしたそうです。
 何だか痛快じゃありませんか。
 政治の行方はこれからのこととしても、よくないことばかりが続いたような今年。その中で山中教授受賞のニュースは、日本人を少しほっとさせた。まだまだ日本は捨てたものじゃない。そう思い直させたのではないでしょうか。
 失われた二十年という。
 しかし、そう言っているばかりでは安穏にすぎます。格差拡大はとどまらず、未来に踏み出す高校生や大学生の就職内定率は、低すぎる。それは彼らを受け入れるはずの大人が自らの社会的責任をあまりにおろそかにしているからだ。冒険せよとは言わないが、挑戦する精神と活力を忘れかけているからではないか。
 半世紀前、日本の世界的繁栄を予見した英誌エコノミストは、今年、世界の二十年後や四十年後を占って、日本は急速に存在感を失うと予測した。
 新興国の経済が伸びる一方、日本は超高齢化と少子・人口減が進み、二〇五〇年には一人当たりの国内総生産(GDP)が韓国の半分、独仏の七割、中国を少し上回る程度というのです。

◆落胆でなく「警告」と
 だが、欧州の例を見るまでもなく、世界の動向は資源の多消費ではなく少消費の持続可能型、節約型に向かいつつあります。
 エコノミストの予測に落胆するのではなく、それを未来を考える警告と受け取りたいものです。
 山中教授とはむろん、状況が異なりますが、「仕切り直しの朝」こそが今の私たちそれぞれに必要なのではないでしょうか。
 記念講演で、教授は、細胞初期化の先人で共同受賞者の英国人ジョン・ガードン氏らへの謝意とともに、こう述べました。
 「私は(万能細胞を)受精卵からではなく、患者さん自身の体の細胞からつくりたかった」
 受精卵という命のもとを使う、あるいは壊すのではなく、患者の体細胞を用いるということです。
 ここには生命倫理のハードルを越えるというよりも(もちろんそれはあるにせよ)人の命に対する畏敬、また優しさが強く感じられます。より多くの患者をより簡便な方法で救うという医師の使命感をうかがわせるのです。
 それが実に率直に示されたことに、世界は感動し、日本人は感動とともに大きな誇りを感じたのです。つまりわが事のようにすら思ったのです。
 日本は東日本大震災、福島原発事故という大きな不幸に遭った。しかも、その被害はまだ続いている。そういう過酷な現実の中での山中教授の栄誉でした。研究は広く応用の利くもの、また優しさのあるものでした。
 ここに、新しい日本の未来、新しい科学技術の芽は見つからないものでしょうか。
 日本は、欧州などのように少数の超エリートを育てるというよりも、みんな一緒に向上するというほうが、どうも似合うようです。日本には、日本のやり方があり、良さもあるのです。
 引き合いに出すのは、少々気が引けるのですが、山中教授とは、そういう私たちの素晴らしきモデルなのです。

◆町工場に育った少年
 彼自身、自分は科学者というよりも技術者である、と言ったことがある。父親はミシン部品の町工場を営み、その息子は機械に魅せられた少年でもあったということです。
 そう考えてくると、そのノーベル賞とは、天才のひらめきのゆえというよりも、日本のよき土壌、歴史、精神風土から生まれたのではないか。もしかしたら、教授のノーベル賞とは日本人全体に贈られたのではないか。そんなふうにも想像されてくるのです。
 もう一度、思い起こしてみましょう。「仕切り直しの朝」という実直で気迫のこもった教授の言葉を。そこに、私たちの失われし時を超えて、思い出すべき、また奮起すべき、何ものかが潜んでいるのではないだろうか。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年12月31日(月)付
年金の周知度―利点を知らせる工夫を

 障害年金をご存じだろうか。
 重い障害を負った場合、月約6万5千~8万2千円が一生受け取れる制度だ。若者でも実感できる国民年金加入の大きなメリットである。
 ところが、厚生労働省の最新の実態調査によると、「知っている」のは54.1%で、6年前より5ポイントほど減った。
 そもそも国民年金の半分は税でまかなわれる。民間保険ではありえない「お得な制度」だが、こちらは33.4%しか知らず、6年前から7ポイント低下した。
 再来年からの消費増税のうち約1%分は年金に投じられる。もし、無年金になれば、税の払い損になってしまう。
 一方、国民年金の未納者(保険料を2年間、全く納めていない人)のうち、民間の個人年金に入っている人が8.6%もいて、月平均で1万4千円の保険料を払っている。国民年金の1万5千円と、ほぼ同じだ。
 こうした不合理な行動が起きるのは、制度を周知させる努力が足りなかったからだ。
 国民年金の被保険者のうち、未納者(455万人)の割合が過去最高の26.2%に達した背景にも、年金への認識不足があろう。仕組みについて、広報や教育など地道な仕事を軽視してきたツケである。
 民主党政権は、事業仕分けで年金の広報・教育の予算(09年度で約3億4千万円)を廃止した。削りっぱなしではなく、内容の改善を促すべきだった。
 二つのルートで取り組みを強化してはどうか。
 まずは、市町村との連携強化である。年金事務所よりも住民にとって身近であり、所得情報を活用して所得の低い人には保険料の免除を勧めるなど、効果的な対策がとれる。むろん、個人情報の保護には細心の注意が必要だ。
 市町村にとってもプラス効果がある。無年金や低年金の住民が減れば、生活保護の財政負担も減るからだ。
 3年後には、年金受給に必要な加入期間が25年から10年に短縮される。この周知や相談態勢の整備にも、市町村の力を借りる必要があろう。
 もう一つのルートは、学校教育だ。若者の間では非正規雇用が増えている。企業が様々な社会保障の手続きをしてくれる正社員よりも、自分の身を守る意識と知識が必要になる。
 学校現場は忙しいが、教え子を無防備のまま社会に送り出すことは避けたいはずだ。
 年金制度を維持していくために、政府全体で取り組むべき課題である。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121231/crm12123103000000-n1.htmより、
産経新聞【主張】特定暴力団の指定 健全な社会守る法整備を
2012.12.31 03:06

 北九州を中心に、暴力団によるとみられる無法な事件が続いている。
 暴力団同士の抗争事件だけではなく、その牙は、暴力団排除の標章を掲げた飲食店関係者ら一般社会にも向けられた。彼らは健全社会の敵である。あらゆる法令を駆使して排除すべきだ。
 福岡、山口両県の公安委員会は改正暴力団対策法に基づく「特定危険指定暴力団」に「工藤会」(北九州市)を指定した。福岡など九州4県も同法に基づく「特定抗争指定暴力団」に「道仁会」(福岡県久留米市)と「九州誠道会」(同県大牟田市)を指定した。指定は全国初だ。
 「特定危険」に指定された組織の組員が不当な要求をすれば、中止命令を経ずに逮捕できるなど、規制の強化が期待できる。
 だが、道仁会が「特定抗争」に指定されることが決まった20日夜、道仁会系事務所に手投げ弾とみられる爆発物が投げ込まれた。指定をあざ笑うかのような、やりたい放題の犯行である。9月には九州誠道会幹部が所有するビルに火炎瓶が投げ込まれ、福岡県警が道仁会系幹部を放火未遂などの容疑で逮捕していた。
 福岡県の暴力団排除条例に基づいて「暴力団員立入禁止」の標章を掲げた北九州市の飲食店では、経営者や女性従業員に対する殺人未遂事件やビルの不審火が相次いだ。「次はお前じゃ」といった脅迫電話も繰り返された。標章を外す店も増えている。
 警察庁は全国の警察から福岡県に応援を送り、暴力団の封じ込めに必死だが、十分な効果をあげているとは言い難い。
 福岡県の小川洋知事は暴対法の改正に加え、おとり捜査や通信傍受といった捜査手法の導入も国に求めてきた。新たな「武器」を与えなくては、警察の努力だけでは限界がある。暴力団の恐怖におののく一般人を守るための法整備を急ぎたい。
 一方、東京・六本木のクラブで客の男性が金属バットなどで武装した集団に襲われ死亡した事件では、暴走族「関東連合」のOBらが関与したとみられる。一昨年、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが暴行された事件でも、別の元メンバーが逮捕された。
 「半グレ」とも呼ばれる暴力団組織に属さない、または境界があいまいな犯罪集団を法の網から逃さないための整備も急務だ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年12月28日(金)付
暴力団排除―福岡での無法を許すな

 暴力団による発砲や住民への襲撃が続く福岡県で、とくに凶悪な三つの「特定暴力団」が指定された。全国で初めてだ。
 これを暴力団を封ずる新しい手立てにし、警察は住民や企業を守らなくてはならない。
 特定暴力団の制度は、暴力団対策法の改正で定められた。以前からある「指定暴力団」のなかから、市民や企業を襲った前歴のある団体などを指定する。
 全国には22の指定暴力団がある。福岡県には全国で最も多い5団体が本部をおく。そのなかの工藤会を福岡、山口両県の公安委員会が「特定危険」の暴力団に指定した。道仁会と九州誠道会は福岡、佐賀、長崎、熊本4県の公安委が「特定抗争」の暴力団に指定した。
 新しい制度では、縄張りを中心とする区域を警戒区域と定める。その区域で、組員が飲食店に用心棒代などを要求したようなとき、それだけで犯罪とみなされる。指定区域で組事務所の新設や抗争相手へのつきまといなども禁止できる。どちらの場合も、違反した場合には直ちに逮捕できる。
 これまでの暴対法では、いったん中止を命令し、それに違反した場合にようやく摘発ができた。今後は、犯罪を早く止められるようになる。
 新しい仕組みが地域の安全に役立つためには、通報する住民の協力が欠かせない。
 住民は暴力団から報復される恐れを知りながら捜査に協力することになる。警察が守り抜かなくてはならない。
 福岡県内では昨年以降、22件の発砲事件が起きた。しかし、容疑者が逮捕されたのは3件だけだ。
 福岡県では今年、飲食店に組員の立ち入りを禁ずるステッカー(標章)を掲げる制度が始まった。その後、北九州市などで標章を使った飲食店主らが顔を切りつけられる事件や、店への不審火が相次いでおきた。このような住民への加害事件も未解決が多い。
 県警は、標章がなくても店に立ち入った組員を取り締まれるようにする暴力団排除条例の一部を改める検討をしている。その改正も急ぐけれど、不安な思いの飲食店主らを保護することは、さらに大切だ。
 20年前に指定暴力団の制度ができたときも注目されたが、決め手にならなかった。制度も大切だが、警察が確実に守ってくれるという信頼を保てなくては暴力団を抑えられない。
 凶暴な犯罪が続く福岡で、警察はまず、安全を取り戻す実績を示さなくてはならない。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121106/crm12110603070000-n1.htmより、
産経新聞【主張】改正暴対法 健全な社会への正念場だ
2012.11.6 03:07 (1/2ページ)

 改正暴力団対策法が施行された。暴力団で特に危険な組織を「特定危険指定暴力団」に指定し、組員が不当な要求をすれば、中止命令を経ずに逮捕できる直罰規定が盛り込まれた。
 改正暴対法が暴力団封じ込めの切り札として効力を発揮するためには、国民や企業の協力が欠かせない。協力者の保護が徹底されなくては、改正法は絵に描いた餅に終わる。反社会勢力との対決は、ここが正念場だ。
 「みかじめ料」などの不当要求を警察が把握するためには民間からの通報が必要だ。だが、暴力や報復の恐怖を克服して通報するには高いハードルがある。
 8月に暴力団排除条例に基づいて、「暴力団員立入禁止」の「標章」制度を始めた福岡県では、標章を掲げた飲食店が狙われる被害が続出している。
 特に北九州市では、経営者や女性従業員に対する殺人未遂事件やビルの不審火が相次ぎ、「次はお前の番だ」といった脅迫電話が100件以上、集中的にかかってくる。怖くないはずがない。標章を外す店も増えているという。
 警察庁は捜査員や機動隊を福岡県に派遣して態勢を強化しているが、一連の事件で検挙者はいない。身辺保護の対象は多く、警戒先は店の周辺から、自宅まで広げなくてはならない。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121106/crm12110603070000-n2.htmより、
2012.11.6 03:07 (2/2ページ)

 一方で、田中慶秋前法相が暴力団との交際を認めて辞任した。福岡県警では7月、捜査員が覚醒剤事件の家宅捜索情報を暴力団幹部に漏らしたとして地方公務員法違反罪などで起訴された。
 直接の恐怖にさらされている福岡県の住民が「本当に守ってもらえるのか」と不安に思うのも無理はない。それでも警察は、この戦いに勝たなくてはならない。
 警察が民間から信頼され、改正暴対法に基づく摘発の成果を重ねなくては、福岡県が陥っている事態は全国に広がる恐れがある。
 改正暴対法の施行を受け、福岡県の小川洋知事は「警察は改正法を駆使して県民の安全確保に努めてほしい」と語るとともに、おとり捜査や通信傍受といった捜査手法の導入を国に要望していく姿勢も示した。
 全国すべての都道府県で暴力団排除条例が施行されて1年が過ぎ、資金源の先細りから犯行の凶悪化が進む可能性もある。警察にも新たな捜査手法が必要だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121003k0000m070140000c.htmlより、
社説:暴排条例1年 警察は全力で市民守れ
毎日新聞 2012年10月03日 02時30分

 全都道府県で暴力団排除条例が施行されて1日で1年がたった。
 各地の条例では、企業や自営業者らに暴力団への利益供与を禁止し、暴力団排除の推進などが市民の責務として規定されている。
 警察庁によると、今年8月までに113件の勧告が実施された。トラブル解決のために組員に用心棒代を支払ったり、暴力団事務所の水道代を肩代わりしていた会社の経営者や役員らが対象になった。また、暴力団排除特別強化地域で、暴力団幹部に用心棒代を払った飲食店店長が検挙された例もある。
 一方、取引先などが暴力団と関係があるのか判断が難しいとの声も聞かれる。警察は必要な情報提供をしたうえで、条例の趣旨を丁寧に説明する努力を粘り強く重ねるべきだ。
 暴力団排除活動の前提となるのが、「自分たちを守ってくれる」という市民の警察への信頼だろう。その屋台骨が大きく揺れている。
 北九州市で8月から先月にかけ、飲食店関係者が刃物を持った男に連続して4件襲われたのだ。
 いずれも、暴力団組員の立ち入りを禁止するステッカーを店に掲げる「標章制度」の対象地区の店関係者だという。その後、同市内では「また切りつけるぞ」との内容の脅迫電話が数十店にかかった。
 福岡県警は、地元の指定暴力団が関与しているとみて捜査している。短期間に連続して事件を起こし不安をあおる手口は卑劣極まりない。一刻も早い容疑者の逮捕に全力を尽くさねばならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121003k0000m070140000c2.htmlより、
 標章を張った店に暴力団員が来店した場合、福岡県暴力団排除条例に基づき、県公安委員会が中止命令を出せる。県警は、暴力団員の入店を断るきっかけになると飲食店側にアピールしていた。結果的に裏目に出て、経営者らが矢面に立たされているとの批判も出ている。
 これ以上、市民の犠牲が続いてはならない。県警の警部補が暴力団と癒着した贈収賄事件も摘発されたばかりだ。市民の信頼を失っては暴力団排除は望めない。そのためにも、警察が前に立つ覚悟が必要だ。
 福岡県警には、警視庁や他県警などから暴力団捜査に精通した捜査員らも多数投入された。保護対象者の範囲や警備体制についても見直し、警察の総力を挙げて再犯を阻止すべきなのは言うまでもない。
 凶暴化した組織を指定し、規制を強めることを柱とした改正暴力団対策法も前国会で成立し、今月施行される。市民や企業家らをターゲットにした襲撃事件が相次いだ福岡県の要望が法改正のきっかけになった。法に基づき、必要な指定や措置を迅速に行ってもらいたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121231k0000m070059000c.htmlより、
社説:普天間問題 「そこにある危険」除け
毎日新聞 2012年12月31日 02時31分

 沖縄・米軍普天間飛行場の移設問題では、安倍自公政権も、日米両政府の合意通り名護市辺野古への「県内移設」を目指すという。
 安倍晋三首相は就任直前、「基本的には辺野古に移設していく方向で地元の理解を得るため努力していきたい」と語った。
 しかし、その後も、仲井真弘多沖縄県知事は「県外移設を求める私の考えは変わらない。県議会、県内全41市町村の首長や議会がすべて(辺野古移設に)反対だ。政府が仮に工事をしようとしてもスムーズに進まない」と述べている。
 防衛省は辺野古移設に必要な知事の公有水面埋め立て許可に向けた申請準備を進めているが、知事や名護市長をはじめ、沖縄の理解が得られるとは到底思えない。
 衆院選で自民党は沖縄県の4小選挙区のうち3選挙区で勝利し、残る一つも比例代表で復活当選した。いずれの候補も党沖縄県連も「県外移設」を公約に掲げていた。
 石破茂自民党幹事長は「最終的に県外移設というゴール」を目指すのだから「党本部と沖縄県連に齟齬(そご)はない」と言う。だが、県連や候補者の「県外移設」公約は辺野古移設後の将来の目標だった、というのは沖縄の有権者を裏切る詭弁(きべん)である。
 沖縄では、「県外移設」が知事、自民党を含めた県議会、各自治体の総意であり、辺野古移設の見通しが立たないという現実は変わらない。とすれば、安倍政権がまず取り組むべきなのは、移設が実現するまでの間、普天間飛行場周辺住民の危険性を早急に除去・軽減する手立てを講じることだろう。これは、鳩山政権による「普天間の迷走」以降、問題解決に消極的になった民主党政権が放置してきた課題である。
 普天間飛行場は宜野湾市の人口密集地にあり、周辺には約9万人が居住し、120以上の公共施設が張り付いている。墜落など万一のことがあれば重大事故につながる。
 沖縄県によれば、10月に普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、安全確保のため日米両政府が合意した運用ルールに違反するとみられる飛行が11月末までに318件あった。政府は違反の有無を検証し、違反があれば米側に厳重に改善を申し入れるべきだ。
 安倍政権が検討しているオスプレイの本土への訓練移転は、沖縄の負担軽減に結びつくが、訓練にとどまらず、普天間飛行場の基地機能を分散移転すれば、周辺住民の危険性は大幅に軽減できる。
 小野寺五典防衛相は普天間飛行場の固定化回避を強調している。同時に、「今そこにある危険」を除去する方策を真剣に検討してほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012123002000100.htmlより、
東京新聞【社説】年のおわりに考える 「未定」で生きている
2012年12月30日

 東日本大震災から二度目の年の瀬です。復旧復興はままならず、生活再建に遠い厳冬です。被災者たちの「希望」の声に政治は応えねばなりません。
 浜辺にある巨大な白い漆喰(しっくい)壁は、山を背に、青い海に向かっています。氷点下の風が鳴り、打ち寄せる波が轟音(ごうおん)を立てます。
 石巻市雄勝町(宮城)にある「希望のキャンバス」は、高さ四メートル、長さ四十メートルもあります。がれきの木材などを骨格にして、地元の土が塗られています。岐阜県の左官職人・挟土(はさど)秀平さんらが今月初めに作りました。
 <父さん 大波 小波に負けず頑張ります><じいちゃんから学んだこと(中略)生きる姿勢 継いでいきます>
 きっと家族を亡くした人なのでしょう。被災者たちの思いの言葉が墨で書かれています。
 宮城県の左官業・今野等さん(45)も手伝いました。石巻市にあった自宅は、大津波に流され、母親を亡くしました。大勢の児童が犠牲になった大川小学校から約五百メートルの距離でした。
 「津波の後、船を出したら、周りは遺体ばかりでした。中にはまだ生きている子どももいて、おんぶして、搬送しました」
 仙台や石巻のアパートから妻と子で、同県内の家に移ったのは今年五月です。父親はまだ仮設住宅に住んでいます。
 「約百四十人いた地区住民の半分は亡くなりました。仮設の人の望みは何といっても、住む所です。自立したいのに、代替地がない。何年、待ったらいいのか…。海の人たちは強く、前向きですが、今は足踏み状態です。ストレスがたまっています」

◆心が「難民」の状態で
 今野さんは「みんな『予定』がなくなり、『未定』になった」と言います。確かにわれわれは「予定」の世界で生きています。学校を卒業したら、結婚したら、定年を迎えたら…。将来を描き、予定を立て、日々を営んでいます。
 大震災はそんな「予定」をぶち壊し、先の読めない「未定」の世界に放り込んでしまったのです。
 福島第一原発の被災者たちも同じです。原発のある福島県大熊町の人々の96%は「帰還困難区域」に家があります。
 「ほとんどの人は家に帰るのは、もう無理だと思っています」と語るのは、同町でただ一人の司法書士・菅波佳子さん(42)です。各地に散りぢりになった町民の相談にのっています。
 相続登記や賠償金の案件が多いそうです。不動産の所有者が誰かはっきりしないと、賠償金の支払いが受けられないからです。
 「問題は今後、自分がどこに落ち着いたらいいのか、わからないことです。多くは役場機能にくっついて、会津若松(福島)やいわき(同)の仮設住宅に入っているだけです」
 大熊町の役場は出張所が会津若松市、連絡事務所がいわき市にあります。でも、そこが自分の場所とは考えられないのです。
 「心が『難民』の状態なのです」とも菅波さんは言いました。「自立したくとも、見つかる仕事は多くはアルバイト程度です。先が見えません。これからどう生きていっていいのか、誰もが心が定まらないのです」
 原発被害の精神的損害への賠償がなされています。その五年分を一括払いし、不動産も事故前の公示価格で買い取る案があります。でも、「町民は誰も納得していない」と聞きました。
 「なぜ公示価格なのか」「町ごと買い取ってほしい」などの声が上がっているそうです。根本はお金の問題ではありません。むしろ、「今までの生活に戻してほしい」という気持ちが強いのです。
 原発事故の恐ろしさは、生活も環境もすべて根こそぎ壊したことです。古里を喪失した理不尽さから逃れられないまま、「仮設」という中ぶらりんの空間で暮らしています。だから、心が「難民」状態なのでしょう。
 菅波さんは「私自身も心が定まりません」とこぼします。

◆浜辺に書かれた古里
 雄勝町の浜辺にある漆喰壁には、こんな言葉もありました。
 <ふるさと とわに>
 <現在・過去・未来。いつも いつでも 故郷はここ雄勝>
 お正月はとりわけ古里が恋しい季節です。でも、大震災と原発事故は、古里の風景も、「予定」も奪いました。いまだに避難者は約三十二万一千人もおり、約十一万四千人が仮設住宅で生活しています。住宅や雇用、教育…。「未定」という空白を急いで埋める政策こそ、希望につながる道です。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121230ddm002070085000c.htmlより、
時代の風:政権交代時代=前岩手県知事・増田寛也
毎日新聞 2012年12月30日 東京朝刊

 ◇合意、積み上げる政治に
 総選挙は自民党が圧勝し、安倍政権が再スタートした。今年は「指導者交代の年」といわれ、各国で新たな指導者が誕生したが、わが国では安倍晋三氏が再登場した。

 選挙結果は民主党に対する「懲罰投票」となった。「街頭演説に誰も聞く耳を持たなかった」との声が物語るように、マニフェストを実現できず離党者が相次ぐ民主党に、有権者が完全に愛想を尽かした。小選挙区と比例代表との並立を認める現行制度では小政党が出現しやすい。その第三極が分裂してお互いにつぶし合いを演じた結果、比例代表で自民党は惨敗した2009年選挙よりも票を減らしたにもかかわらず、小選挙区で圧倒的な勝利を収めた。

 小選挙区での自民党の得票数は民主党の約2倍、これが議席数では約9倍もの差になること、小選挙区で大差で敗れながら比例区で復活当選することについては違和感を覚える有権者も多いのではないか。衆議院の選挙制度については、定数削減だけでなく現行制度の問題点について幅広い検討が必要である。

 安倍氏は選挙直後「自民党が国民に信頼されたわけではない。民主党が自滅した結果だ」と述べた。これは大方の自民党議員が感じていることだろう。今後は「自民党がどう変化したのか」が問われる。昔に戻したり派手な演出に走るのではなく、新しいながらも自制心ある大人の振る舞いと長い間政権政党として培ってきた蓄積を見せてほしい。

 新内閣は手堅い布陣で慎重にスタートした。しかし、前途は多難である。国会は依然として参議院で少数与党である。デフレ脱却・成長戦略、社会保障、外交・安全保障で成果を上げるには安全運転に徹するだけでは済まない。まず、「霞が関」の機能を引き出すことだ。政治は新規施策の方向付けとダイナミックな方向転換の役割を担い、執行は官僚に委ねる。「政治主導」と称して余計な口出しは慎むべきだ。新内閣はハネムーン期間もなく年明けからは批判の嵐と向き合う。わが国は非常時であるとの危機感と謙虚な姿勢を持続させながら、懸案に果敢に取り組んでもらいたいと思う。

 09年と今回の選挙を通じて、国民はいずれも政権交代を選択した。他国での選挙による政権交代を別世界の出来事のように見ていた時期もあったが、わが国でもいよいよ「政権交代時代」に入った。選挙により容易に政権交代が起こることは民主主義が正常に機能している証しであり、政治に緊張感をもたらす。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121230ddm002070085000c2.htmlより、
 しかし、政権政党が頻繁に交代して、重要政策が変更されるのであれば国は安定しない。議員は与党として生き残ることだけを優先し、大衆迎合に走る。そうでなくても6人の首相が1年ごとに交代したわが国に対して「誰を相手に話したらいいのかわからず、日本とは本音で外交ができない」とは外国から見た日本への嘆きである。短期間での首相交代や重要政策の変更による弊害は言をまたない。外交や社会保障分野は長期にわたる政策の安定性が必要であり、政治的対立の渦に巻き込むテーマではないだろう。

 このことは、与党の栄光と野党への転落による挫折を経験した自民、民主両党とも痛感しているはずだ。今後も政権交代が起こることを前提に、与野党間の争点にすべき課題と政争の具に供すべきでないものを峻別(しゅんべつ)し、後者については政党間の合意を取り付けて推進するという「政党合意政治」のリズムを作り出すべきである。与野党間で派手な対決を演じて相手を負かせた側が国民の喝采を期待する−−そんな瀬戸際政治は要らない。地道に粘り強く合意を積み上げる政治の王道を歩んでほしい。

 政治の不安定化要因はねじれ国会の存在である。手っ取り早くねじれを克服するには、与党が野党に譲歩妥協するしかない。その道のりを党員や支持者の納得の上で作れるかどうかである。自民党は昭和30年代から内閣が政策決定する場合、党による事前審査制を設けている。これを柔軟かつ透明性が高い運用とし、野党への譲歩による政策変更やその場合の説明責任を十分に果たすことが必要である。国会の両院協議会の運用も見直すべきだ。現在は慣例でそれぞれの院の議決を支持する会派から委員が選ばれるため、協議前から決裂が見えており、形骸化している。

 惨敗した民主党は風任せではなく、地域に根付いた活動が必要だ。地方組織が脆弱(ぜいじゃく)過ぎる。地域の政策課題について地方議会での活動を充実させるなど地に足が着いた姿が見たい。現行制度で最低の投票率となったのは有権者の責任である。ただじっと待って、政治に青い鳥を求めるのは危うい。主権者が積極的に権利を行使しないと政治を動かすのは難しい。震災後初の総選挙だったにもかかわらず、原発や復興が大きな争点とはならなかった。復興の遅れが目に余る。今年も間もなく終わる。来年こそ被災地に笑顔が戻る年になりたい。=毎週日曜日に掲載