人口減国家の債務解消 ジャック・アタリ氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20121223ddm002070108000c.htmlより、
時代の風:人口減国家の債務解消=仏経済学者・思想家、ジャック・アタリ
毎日新聞 2012年12月23日 東京朝刊

 ◇技術革新と成長不可欠
 日本にとって一番の問題は人口だ。この問題こそ国民的議論が必要だ。16日の衆院選で、日本の人口が多すぎるので1億人まで減らそうという政党があっても良かったし、年金制度や労働力を維持するために強い人口増加策を取るべきだと掲げる政党があってもよかった。人口が1億人を割るのも一つの選択肢だが、人口が減少し続けると、歯止めがきかなくなるかもしれない。急降下する飛行機に墜落しない保証がないようなものだ。人口政策には、比較的少ない人口での安定、出生率向上、移民受け入れ、女性の労働参加率向上などの戦略がある。人口増加には住宅政策や家族手当など、あらゆる社会政策が必要だ。だが私の知る限り、今回の選挙で人口政策は重要な争点にはならなかった。そのことに驚いている。

 人口が減少している日本では、将来の世代の債務負担は重くなっていく。だが債務の深刻さを直視していない。これは非常に危険なことだ。

 債務危機の表れ方は国ごとに異なる。以前は債務を抱えていたのは貧困国だったが、今は先進国だ。同じ債務国でも米国、欧州と日本ではそれぞれ全く状況が違う。米国は目もくらむほどの債務を抱えているが、無限に通貨を発行することができる。日本の債務は国内総生産の2倍だが、低金利で国内市場から資金調達ができる。だが最終的には米国は破産するかもしれないし、日本もこの状態を長期間続けることはできない。というのは、日本は国内の貯蓄すべてを国債の購入に回さなければならなくなるので、産業へ投資できる資金が減っていくからだ。一方、欧州の場合は、債務が国内総生産の8割程度と比較的少なく、人口の減少も日本ほど壊滅的ではない。

 (衆院選で勝利した)日本の自民党政権は2%のインフレターゲットを掲げている。歴史上、国家の債務を解消するには、増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、国外からの援助、デフォルトの八つの戦略がある。このうちインフレは歴史的にも非常に頻繁に使われる方法だ。インフレは債務を実質的に最小限に減額する効果が期待できるが、その分のツケを誰かに支払わせる。物価が上がる分だけ人々の購買力は低下する。金利が一定なら、貨幣価値が下がる分だけ公的債務の実質額が下がる半面、債権者、預金者は損をする。

 日本のような高齢化社会では高齢者が得をし、若い世代は損をし続ける。高齢者施設を訪問する政治家は多いが、保育園を訪問する政治家は少ない。乳幼児に投票権はないのだ。本来、高齢者は孫たちのことを思う祖父母のように行動しなければならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121223ddm002070108000c2.htmlより、
 世代間格差の解消という意味では、インフレ政策は所得再分配機能を持つ。預金を目減りさせることで、若い世代より預金額の多い高齢者が損をし、預金が比較的少なくローンを抱える場合の多い若者に有利になる。

 インフレ政策とは債権者、預金者にツケを支払わせる、暗黙の債務帳消しなのだ。道徳的な問題があるにもかかわらず、債務問題の解決策として非常によく用いられてきたゆえんだ。

 ただ注意しなければならないのは、もしインフレ政策に伴って金利が上がれば、全員が損をするということだ。金利上昇分だけ、政府が支払うべき債務も膨らむ。諸外国と違い、日本の公的債務の債権者はほとんどが日本人であるため、金利の抑制は他国よりは比較的容易だ。とはいえ、もし金利が上がれば、日本にとって致命的になる。インフレ政策で公的債務を解消するには、金利の上昇を防ぐことが何より重要だ。

 通常、インフレは円の価値を下げるが、物価上昇率と為替レートは、それぞれが独立している。円が高すぎるのは事実で、輸出を促進するために円安に誘導することは重要だ。今のところ世界経済は、第二次大戦の一因となった1930年代のような通貨切り下げ競争にはなっていない。だが、今後切り下げ競争が起きる可能性は否定できない。各国の保護主義につながれば世界経済を破局に導く恐れがある。また円安は原油の輸入コスト上昇につながるため、エネルギー消費を大幅に削減することができなければ脱原発との両立は難しい。

 一方、債務の解消には経済成長も重要だ。だが公共事業の拡大は多額の公的債務を抱えた国には不適切だ。それをまかなう増税が前提となる。日本の場合、課税水準が低すぎるのは明らかで、例えば消費税率は欧州と同水準の20%前後が必要だ。

 成長のために日本が取り得る政策は、欧州と同じように、技術革新の促進だ。未来につながる神経科学やナノサイエンス、ロボット、遺伝子関連、エネルギーなどで日本は世界をリードしている。今後、日本がやるべきことは簡単で、若い研究者を育てることだ。少子化が進めば、技術革新を進める研究者がいなくなってしまうかもしれないからだ。=毎週日曜日に掲載

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