記者の目:京都議定書採択から15年 田中泰義氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20121228k0000m070130000c.htmlより、
記者の目:京都議定書採択から15年=田中泰義
毎日新聞 2012年12月28日 00時35分

 京都議定書が先進国に初めて義務づけた温室効果ガスの排出削減期間は年末で期限切れとなる。東京電力福島第1原発事故が起こした電力不足への不安から地球温暖化問題は忘れられがちだが、経済・エネルギー政策と密接に絡み軽んじてはならないテーマだ。世界は、温暖化と原発双方のリスクに直面する日本の針路に注目している。そこで各国が集う2017年の国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)を福島で開くことを提案したい。
 1997年のCOP3。京都議定書の採択を目指した交渉は夜を徹して続いたが、溝は埋まらないまま最終日の12月10日を迎えた。会場の内外で、世界中から集った若者が地球の未来を語り合っていた。その熱気に後押しされたのだろう。11日午後、採択にこぎつけた。議定書には日本の削減量(90年比6%減)など国別の目標が書き込まれた。温暖化防止には不十分だが事前の見通しより踏み込んだ内容。交渉担当者は「温暖化を防いでほしいという市民社会の潮流を無視できなかった」と明かす。採択の瞬間、会場で取材していた私は「世界は最後には協調するんだ」と驚き、安堵(あんど)した。
 だが、議定書はその後も議論の的であり続けた。途上国は先進国への削減義務づけを評価したが、米国は2001年、議定書から離脱。中国は途上国として削減義務を負わないまま経済成長を迎え、07年には世界最大の排出国になった。採択時には妥当だった富裕国と貧困国の線引きは、時代遅れとなった。

 ◇加速する温暖化
 採択から15年、事態は悪化へ向かっている。「地球環境のセンサー」と呼ばれる米アラスカ州の大学に98年から1年間留学したが、温暖化で増えたキクイムシによって森林は広範囲に枯れていた。師事した教授は「温暖化は生態系のバランスを壊し、温暖化がさらに加速するだろう」と心配していた。それが現実になったことを示す分析結果を今年11月、米加のチームが英科学誌に報告した。アラスカ州に隣接するカナダの森林が同じ理由で枯れ、10年までの11年間に、夏の気温を1度上昇させる影響があった。
 留学中に訪れたグリーンランドでは、見上げるほどの氷床に圧倒された。あの時は「これが解けるのか」と信じられなかったが、米航空宇宙局は今年7月、かつてない氷床の大規模な融解を人工衛星で観測した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121228k0000m070130000c2.htmlより、
 国連環境計画によると、1880年以降の年間気温トップ10は1998年以降に集中している。この20年間で二酸化炭素排出量は36%増え、自然災害の件数は倍増した。飢饉(ききん)につながる干ばつは民族や国同士の争いを生む。海外の政府関係者から「温暖化は安全保障にとって重要な問題だ」と聞かされた。

 ◇社会も企業も変わり始めた
 進行する温暖化を前に、国益を背負った交渉は硬直化し難航しているが、社会は変わり始めている。
 今年6月、ブラジルで開かれた「国連持続可能な開発会議(リオプラス20)」では、4万数千人の参加者の7割が政府関係者以外、つまりNGO(非政府組織)と、かつて「環境対策に消極的」とされた企業だった。現地で講演した関正雄・損保ジャパン理事は「10年前には考えられなかった事態」と言う。「環境悪化で資源や水が得られなければ企業活動は成り立たない。増加する自然災害は企業に莫大(ばくだい)な損害を与えている」と、企業の「転向」を解説する。
 産油国のアラブ首長国連邦(UAE)では、太陽光などを駆使し「排出ゼロ」をうたう都市建設が進む。08年に現地を訪れた際、責任者は「石油はいずれ枯渇する。引き続きエネルギー分野で主導権を取る」と意気込んでいた。
 日本でも潮目は変わりつつある。環境NGOは1万団体を超え、「環境報告書」を作成する企業はこの10年余りで約6倍に増えた。国連の「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル」のパストール事務局長は「石油危機を教訓に、日本は世界トップの省エネ国になった。東日本大震災を踏まえ、新たな国家像を示してくれるはず」と期待を寄せる。
 各地域持ち回りで開催されるCOPは17年、アジアでの開催が予定される。20年に発効する「ポスト京都」の国際ルールが具体的に話し合われるだろう。議長国として京都議定書を採択に導き、原発事故を経験した日本が、その「現場」の福島を舞台に交渉をまとめる意義は大きい。
 市民には交渉を前進させる力があることを、私は京都で体感した。福島への誘致は、よりよい世界を築くための日本の貢献となるはずだ。(東京科学環境部)

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