補正予算 早くも参院選対策のバラマキ?

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013010200036より、
補正で地方、中小企業対策を=山口公明代表

 公明党の山口那津男代表は2日、都内で街頭演説し、2012年度補正予算案に盛り込むことを検討する老朽化した社会インフラの改修や新設について「地方の活力を見いだすために防災・減災措置を取るとすれば、地方自治体の負担を国が支援する。こうした交付金制度を充実させたい」と述べた。さらに「中小企業、商店街の活性化のためには、多種多様な取り組みができるように使い勝手のいい交付金も設けなければならない」と指摘、中小企業などへの補助金も手厚くすべきだと強調した。(2013/01/02-12:33)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130102/k10014552251000.htmlより、
安倍政権 財政再建の道筋も課題に
1月2日 4時51分

安倍政権は、緊急経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算案について、国債の新規発行額を44兆円に抑えるなどとした民主党政権の「中期財政フレーム」にこだわらず編成する方針ですが、国の債務残高が今年度末には1000兆円を超えるなかで、財政再建に向けた道筋をどのように描いていくのかも問われることになりそうです。
安倍総理大臣は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、それに、民間投資を喚起する成長戦略によって、内閣の最重要課題と位置づけるデフレからの脱却と日本経済の再生を実現したい考えです。そして、その具体策の第1弾として、緊急経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算案を今月中旬には閣議決定する方針です。
民主党政権は、財政規律を守るため、国債の新規発行額を44兆円に抑えるとした「中期財政フレーム」を予算編成の方針としてきました。これについて、甘利経済再生担当大臣は報道各社のインタビューで、「この縛りを受けることはない」と述べ、こだわらない考えを示しました。
一方で、甘利大臣は「日本国債の信頼性を損なうようなことは、結局、ブーメラン効果で日本に跳ね返ってくる。中長期的な財政再建の方針は堅持する。これは国債の信頼性をおとしめないということで大事だ」と述べました。
安倍政権としては、補正予算案について、自民・公明両党から10兆円規模とするよう求める意見が出ていることも考慮し、財源確保のため赤字国債の追加発行も辞さない考えですが、国の債務残高が今年度末には1000兆円を超えるなかで、来年度の予算編成作業と合わせて、財政再建に向けた道筋をどのように描いていくのかも問われることになりそうです。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2012年12月31日(月)付
農業政策―もうバラマキはやめよ

 限られた予算を有効に使い、経営規模を大きくし、競争力を高めていく――。日本の農業の課題ははっきりしている。
 焦点は、民主党政権が導入した戸別所得補償の見直しだ。
 とくに、米作について一定の条件を満たせば、零細・兼業を含むすべての農家を支払い対象とする仕組みである。田を貸したり譲ったりする動きにブレーキをかけ、規模拡大への妨げになっている。
 自民党は「バラマキだ」と厳しく批判してきたが、どうも雲行きが怪しい。
 総選挙での公約と政策集には次のような文言が並ぶ。
 政権交代後、大幅に削減された予算を復活させる▼農地を農地として維持することに対価を支払う日本型直接支払いの仕組みを法制化する▼コメに加えて麦、大豆、畜産、野菜、果樹など、多様な担い手の経営全体を支える……
 民主党政権が切り込んだ農業関係の公共事業費を元に戻し、農家への支払いはさらに手厚くする、ということか。
 自公政権は07年、すべての農家へ品目別に支払ってきた補助金を改め、1戸あたり4ヘクタール以上(北海道は10ヘクタール以上)の農家に絞って所得補償する制度を導入した。農業の大規模化をめざし、「戦後農政の大転換」と言われた改革だ。
 しかし、農業関係者の反発にあい、同年の参院選で敗北する一因となった。その後、制度は骨抜きになっていく。
 09年には当時の石破農水相が生産調整(減反)の義務づけをゆるめる「減反選択制」に意欲を見せたが、党内や農協の反対で断念した。この年の総選挙で惨敗し、政権を明け渡した。
 今回の公約は、農業票を強く意識した結果だろう。しかし、わが国の財政に大盤振る舞いする余裕はない。バラマキが農業の体質を一層弱めかねない危うさは、自民党が最もよくわかっているはずだ。
 民主党政権は、コメ農家などの経営規模を20~30ヘクタールと現状の10倍程度に広げる目標を打ち出した。農林漁業に加工と販売を組み合わせる「6次産業化」推進のためのファンドや、新規就農者に年150万円を出す給付金制度も立ち上げた。
 大規模化への障害は何か。ファンドや給付金は一時的なバラマキに終わらないか。これらの点検も必要だ。
 選挙のたびのバラマキ合戦に終止符を打ち、農業の再生に必要な政策を練り直す。「責任政党」を自覚するなら、まっとうな姿勢を見せてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012122802000107.htmlより、
東京新聞【社説】経済政策の課題 古い自民では失望招く
2012年12月28日

 第二次安倍内閣が始動した。市場は円安・株高が進む歓迎ムードである。期待を裏切らないためには、公共事業のばらまきや既得権益保護といった旧来の自民党政治とは違う姿を示す必要がある。
 経済再生を最優先課題に掲げるだけあって重厚な布陣には見える。「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢で経済政策を力強く進める」という安倍晋三首相の意気込みも伝わってくる。だが、それでも気がかりがある。民主党に政権を譲る前に閣僚を務めた顔触れも多く、民意が一度ノーを突き付けた「古いままの自民」の復活ではないかとの不安である。
 見極めるポイントは二つある。一つは、「安全・安心のため」といった美名の下に無駄や優先度の低い公共事業までもばらまくのではないかという懸念だ。まずは十兆円規模といわれる大型補正予算の中身が試金石になる。
 確かに高度成長期に整備された道路や橋などのインフラは半世紀近くたって老朽化が目立ち、補強・改修は最優先で取り組むべき公共投資である。しかし、緊急性が低かったり、非効率な事業がなし崩し的に行われれば、財政赤字が積み上がるばかりとなる。事業の峻別(しゅんべつ)を厳格に行い、財政規律への目配りも欠かせない。
 民主党政権は、無駄な事業を減らすために予算編成過程を可視化する改革(二〇〇九年十月の閣議決定)を実現した。「各目明細書」や「行政事業レビュー」を公開させ、国民は各省庁がどんな事業にどれだけの予算を獲得したかがインターネットで閲覧可能となった。かつてとは違い、国民のチェックが届きやすくなったことを自民党は肝に銘じる必要がある。
 もう一つは、規制改革を幅広く進めるといいながら、はたして農業や医療、電力など、これまで既得権益を守ってきた分野に切り込めるかという点だ。例えば、有望な成長分野になりうる農業に株式会社の参入を全面解禁するのか。地域独占などさまざまな規制を温存してきた電力体制の改革を本気で進める覚悟があるのか。
 経済界の雄だった電力会社や農協、医師会などの有力スポンサーと「持ちつ持たれつ」の関係こそが自民党政治だった。しかし、そういう非効率な部分にメスを入れていかないかぎり、確かな経済成長など望めないのは明らかだ。長期低迷する日本経済の浮上には、自民党の体質改善が欠かせない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121228k0000m070132000c.htmlより、
社説:安倍政権と経済 「世界の中の日本」自覚を
毎日新聞 2012年12月28日 02時33分

 日本経済は米国、中国に次ぐ3番目の規模を持つ。「転落した」と悲観する向きも国内にはあるが、世界は「3位の経済大国」として注目している。さまざまな影響が国外にも及ぶからだ。安倍政権には、その責任を忘れず主要経済国としての自覚を持った政策を遂行してほしい。
 そこでまず注文しておきたいのは、早期に財政健全化のルールを明示することである。
 安倍晋三首相が目指す「強い経済」は、日本はもちろん、世界にとっても望ましい。しかし、歯止めなき借金による財政出動では、本当の意味の強い経済は実現できまい。
 12年度補正予算について首相は、民主党政権が決めた「年44兆円の新規国債発行枠」にとらわれることなく大型化するよう指示した。株式市場は好感し、公共事業関連銘柄を中心に連日値上がりしているが、借金頼みのバブル経済は早晩、行き詰まる。そうなれば、世界経済にも迷惑をかけることになる。
 財政再建は主要国が合意した共通の目標だ。10年にカナダで開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で先進国は、財政赤字の半減目標を掲げた。日本は財政が悪すぎるため、ハードルを下げた独自目標で例外扱いしてもらったが、「44兆円枠」さえ守れないようでは、その達成も困難になろう。
 あからさまな円安誘導も、経済大国として誇れる政策ではない。為替相場は、経済の実態から極端にかけ離れた行き過ぎや乱高下といった場合を除き、市場に委ねるのが国際社会の了解事項だ。首脳や経済閣僚が具体的な相場水準に言及して誘導するようなことはしないものである。
 安倍首相には、円高・ドル安につながる米国の大規模な金融緩和に対抗すべきだとの考えがあるようだ。しかし、効果の限界や弊害が指摘されている他国の政策は本来、追随して対抗するのではなく、第三国と協調して修正を促すべきだろう。
 すでに一部の国から懸念の声が出ているが、通貨安競争に拍車をかけ、途上国や新興国に混乱が及ぶようなことは、責任ある先進国のとるべき行為ではない。中国に人民元の自由化など求めていく上でも不都合だ。
 マネーは地球規模で動いている。積極的な金融緩和と円安政策により、円を借りて海外の高い運用先に投資する流れが活発化する可能性がある。日本経済を強くする投資にお金が向かわず、海外でバブルなどひずみを生むだけかもしれない。
 安倍政権は日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にしたいとも言っている。大胆な規制緩和や透明な制度、構造改革を通じ、この目標にこそ力を入れてほしい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.htmlより、
朝日新聞 社説 2012年12月25日(火)付
アベノミクス―「危ないミックス」は困る

 今週発足する安倍新政権は、「デフレ脱却」を最大の政策課題に掲げる。
 財政・金融のマクロ経済政策では、前の自公政権下で司令塔となった経済財政諮問会議を復活させる。
 同時に「日本経済再生本部」を新設し、国際競争力の強化やエネルギー政策など、産業や企業により近いミクロ政策を担わせる。双方の連携をとる経済再生担当の大臣も置く。
 意気込みが伝わってくる陣立てではある。

■プラスの循環つくれ
 大事なのは、財政と金融の刺激策を、企業や家計に浸透させるという政府の責任をきちんと果たすことだ。
 次代を開く新しい市場と産業を創出し、若い勤労者層を中心に収入と消費を増やし、実体経済の活性化を通じて、物価が上がっていく。そんなプラスの循環をつくる必要がある。
 金融・証券市場では、公共事業を中心とした財政拡大と金融の大幅な緩和を柱とする安倍氏の経済政策を「アベノミクス」とはやし、円安、株高が進んでいる。
 一方、人口減少とグローバル化が進み、国の借金が国内総生産の2倍に達する日本で、財政と金融のバラマキはリスクが大きいとの見方も強い。
 財政支出と金融緩和という手法それぞれは、景気対策として目新しいものではない。
 それが、ある人には希望に見え、別の人には危うく映るのは、峻別(しゅんべつ)すべき財政政策と金融政策を、ごちゃまぜにしているからだろう。
 中央銀行を財布代わりに財政を拡大するのは、財政と金融の「危ないミックス」と言わざるをえない。国債金利の急騰から財政破綻(はたん)を招きかねず、歴史の経験から慎重に避けられてきた道だ。
 すでに日銀は大量の国債を買い込み、資産規模は来年末に200兆円を突破する。
 財政政策と金融政策の分担を明確にし、それぞれの規律を守って、国民や世界からの信用を失わないことが大切だ。

■潜在需要を引き出す
 それには、マクロ経済対策が波及効果をうみ、投資が増え、産業の変革が着実に進んでいることを内外に示さなければならない。
 問われるのは、公共事業の選別であり、規制や制度の見直しを通した構造改革である。
 第1次安倍内閣では、羽田空港の国際化を軸とした「アジア・ゲートウェイ構想」を打ち出した。格安航空会社の参入を促し、航空業界の競争地図を塗り替えた。公共投資と規制緩和が実を結んだ好例だろう。
 こうした潜在的な需要を掘り起こすとともに、グローバルに活躍する企業の本拠地としてもふさわしい市場を構築していく必要がある。
 期待されるのは、電力や省エネ・環境、農業、医療・福祉、観光などの分野だ。いずれも国民のニーズは高く、収益の見通しがつけば資金需要が生まれる余地は大きい。
 旧来型のお金のバラマキで古い経済構造を温存しないためにも、政府が新分野のビジョンを描き、規制や制度の改革を進めて、民間の創意と競争に委ねていくべきだ。
 心配なのは、自民党がこれらの分野で既得権益を持つ層の支持を得て衆院選で大勝したことである。選挙中も目ぼしい政策を語っていない。
 こうした展望のなさが、安易な公共事業と金融緩和頼みとの危惧を高めている。

■雇用への目配りを
 日本経済の再生には、お金の流れ方を大きく変えていかなければならない。
 これまでの金融緩和が効かないのは、金利を下げても借金で事業を広げる企業が少ないからだ。内部留保をため込んで無借金を誇る傾向も強い。
 企業は利益確保のために賃金を抑え、収入が伸びない家計は節約する。このため、企業の売り上げが伸びない。「合成の誤謬(ごびゅう)」である。
 前回、安倍氏が首相を務めていた06~07年は、02年から始まった戦後最長景気のピークに当たり、円安で輸出が伸び、日経平均株価が1万8000円を超す局面もあった。
 だが、株価が上がっても内需は低迷したままだった。その根底には、働く人の所得が増えない構図があった。
 高齢化で現役人口が減っているうえ、非正規雇用の拡大で低賃金労働が増えている。資産をもつ高齢者も、将来不安があれば貯蓄を消費に回さない。
 アベノミクスの狙い通り、インフレになっても、国民の収入が増え、将来不安が薄まらなければ、消費は一段と手控えられるだけだ。
 非正規雇用の待遇改善や、女性の就労を増やす子育て支援、富裕層の貯蓄を動かす税制改革など、幅広い目配りが求められている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121223k0000m070109000c.htmlより、
社説:農業政策 ばらまきは許されない
毎日新聞 2012年12月23日 02時32分

 自民党は、今回の総選挙で民主党の農業者戸別所得補償制度を「ばらまき」と批判し、「力強い日本農業の構築」を農政の目標に掲げた。
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの自由貿易交渉もにらみ、国内農業の競争力強化は避けて通れない。新政権は「ばらまき」から脱却し、構造改革による農業の体力強化を進めるべきだ。
 自民党の安倍晋三総裁は総選挙後の会見で、「ばらまき政策に国民がはっきりノーといった」と民主党の政策を批判した。
 確かに、民主党政権の戸別所得補償制度は、耕作規模や専業・兼業の区別なく一律に補助金を支給する仕組みだ。その結果、片手間でコメを作る零細な兼業農家を温存し、意欲ある農家への農地の集約を妨げているとの批判がある。農水省内でも政策効果を疑問視する声が出ているほどで、見直しは不可避といえる。
 しかし、自民党が今回掲げた公約にも「ばらまき」を加速させかねない施策が並んでいる。その代表が、戸別所得補償制度に代わるとされる「多面的機能直接支払い」制度だ。これは、農地を農地として維持することに対する補助金で、コメに限らず、麦・野菜などの畑作や畜産農家を含む全農家が対象になる。
 規模も作目も問わない補助金が、競争力強化につながるとは思えない。やる気のある農家が、より意欲を持てるような支援にするよう制度の再検討を求めたい。
 農村での公共事業である農業基盤整備事業の強化を打ち出していることも気がかりだ。これは、民主党政権が大幅に削減した事業の復活を意味する。農業の規模拡大や効率化に資する事業を厳しく選別しなければ、ばらまき復活との批判は避けられないだろう。
 安倍総裁は1回目の首相の時に臨んだ07年の参院選で、敗北した。その選挙前に農業の競争力強化を目指して、規模の大きな農家に絞った補助金制度を導入したところ、小規模農家の反発を受け、農村部で大きく議席を減らした。前回総選挙ではマニフェストの目玉の一つとして戸別所得補償を掲げた民主党に大敗した。
 結果として、3年余りの野党生活を余儀なくされたわけだが、その反省の成果が「ばらまき復活」であってはなるまい。
 自民党は、農家の高齢化、担い手不足への対策として若者を中心とした新規就農者支援の大幅拡充や、生産から加工・販売まで一貫して手がけることで付加価値を高める6次産業化の推進なども打ち出している。
 7月の参院選を意識した人気取りに走らず、農業の強化につながる農政改革を期待する。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年12月20日(木)付
政府と日銀―金融緩和は魔法の杖か

 次期政権を担う安倍自民党総裁が、日銀に大胆な金融緩和を迫っている。日銀の白川方明総裁との会談で、政府と協定を結び、2%のインフレ目標を設けるよう求めた。日銀も来月には協[記事全文]
一票の格差―「解消済み」は考え違い
国会議員が真剣にとり組まねばならない課題がある。一票の格差の解消だ。「それは前の国会で処理済みだ」。そう考える議員がいたら認識が甘いというほかない[記事全文]
政府と日銀―金融緩和は魔法の杖か

 次期政権を担う安倍自民党総裁が、日銀に大胆な金融緩和を迫っている。
 日銀の白川方明総裁との会談で、政府と協定を結び、2%のインフレ目標を設けるよう求めた。日銀も来月には協定を結べるよう検討に入ったという。
 実勢から外れた高すぎるインフレ目標は現実的でないとしてきた日銀にしては、何とも素早い身のこなしである。
 来年3~4月に白川総裁と2人の副総裁の任期が相次いで切れる。政界では早くも後任人事の話題が熱い。日銀法を改正して、言うことをきかせようとする動きもある。
 日銀には、政府や国会の機嫌を損ねるのは得策でない、という政治判断もあろう。臨機応変さも必要だ。しかし、変わり身の早さだけでは、中央銀行としての信用を失いかねない。
 選挙中から、もっと緩和さえすれば景気は良くなるかのような主張が飛び交った。
 だが、金融緩和は魔法の杖ではない。日銀も、高いインフレ目標を無理に達成しようとすると、さまざまなリスクや副作用を招くと指摘してきた。
 収入が増えない家計が物価高を警戒して節約に走れば、景気はさらに悪くなる。企業に設備投資などの資金需要がない中で大量にお金を流しても、効果は乏しい。緩和が空回りしたまま日銀が国債を買い続ければ、財政不安が高まる――。いずれももっともな目配りである。
 残り任期が少ない白川総裁にとって、金融政策の役割と限界を、政治家と国民に納得させることも大事な使命だ。
 逆に安倍氏には、金融緩和に伴うリスクをどう考えるのか、説明する義務がある。
 さらに、規制や制度の改革などで企業の資金需要を刺激し、金融政策の効果を引き出す責任は政府にあることを、明確にすべきだ。
 政府と日銀との協定も、デフレの複雑さを直視し、金融政策の効果と限界を踏まえ、政府と日銀の適切な役割分担を実現させるためなら意味をもつ。
 政府の怠慢を、緩和の「ノルマ」として日銀にツケをまわす内容は許されない。公共事業の拡大に向けて、日銀に事実上、国債を引き受けさせるような発想は問題外だ。
 一連の経緯からは、日銀法にうたわれた独立性が、実態としては決して高くないことが分かる。放漫財政に目をつける市場から金利急騰のしっぺ返しを受けないために、法改正より、むしろ日銀の政府への従属が強まらないよう注意が必要だ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年12月19日(水)付
補正予算―またも公共事業頼みか

 衆院選での大勝を受けて連立政権を発足させる自民、公明両党が、大型の補正予算の編成で一致した。
 柱は公共事業の積み増しだ。
 総選挙の公約として、自民党は「国土強靱(きょうじん)化」を、公明党は「防災・減災ニューディール」を掲げていた。
 中央自動車道のトンネルで天井の崩落事故が起き、インフラの老朽化も問題になった。
 確かに重要な課題だ。高度成長期に集中的に建設した社会基盤が、次々と更新期を迎える。
 既存の施設を修繕する「長寿命化」でしのげるものはどれぐらいあるのか。一からの造り直しは、どの分野を優先するのか。人口減や財政難を踏まえ、工程表作りを急ぐ必要がある。
 ところが両党の議論では、こうした検討は置き去りにされ、「いくら増やすか」ばかりが先行している。景気のてこ入れには公共事業が手っ取り早い。そんな旧態依然とした発想だと言わざるをえない。
 わが国の財政悪化の一因は、公共事業を景気対策に使ってきたことだ。当初予算では財政再建を掲げて事業費を抑制しながら、短期間でバタバタと編成する補正予算で増やす手法がまかり通ってきた。残されたのは、必要性に疑問符がつく社会インフラと借金の山である。
 同じ過ちを繰り返さぬよう、自公両党に再考を求める。
 東日本大震災の復興予算をめぐっては、被災地以外へのバラマキが問題となった。被災地限定だった原案から対象を全国へ広げるにあたって、自公両党も民主党との3党協議で深くかかわった。国民の強い批判をもう忘れたのだろうか。
 両党が大型の補正予算編成を急ぐのは、14年4月からの消費増税も念頭にあろう。
 増税の可否を来年秋に最終判断する際、カギになるのは8月に発表される4~6月期の経済成長率だ。予算成立から実際に資金が流れ出すまでのタイムラグを踏まえ、今回の補正予算に注目が集まる。
 しかし、増税できる環境を整えるために財政支出に頼るのでは本末転倒だ。補正が大規模になれば、剰余金や当初予算の使い残し分では財源が足らず、国債の追加発行を迫られる。財政規律はどこへ行ったのか。
 ましてや来夏の参院選を意識したバラマキなら論外だ。
 公共事業の積み増しで、景気は一定期間、押し上げられる。しかし、規制緩和などの活性化策を欠いたままでは長続きしない。これまでの数々の失敗を通して得た教訓である。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中