時代の風:NPO、成果実らすたため 西水美恵子氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130106ddm002070143000c.htmlより、
時代の風:NPO、成果実らすため=元世界銀行副総裁・西水美恵子
毎日新聞 2013年01月06日 東京朝刊

 ◇自由な寄付こそ、厳しさを
 世直しの力は、若者、よそ者、変わり者にある。世界中どの国でも、NPO(非営利組織)はまさにその集団だ。
 官民ともにNPOに関する理解度が低いと言われてきたわが国でも、東日本大震災がひとつの大きな転機になった。NPO法人を設立する若いリーダーが増え、就職先に望む優秀な若者も多くなっていることは、喜ばしい。
 NPOの頭痛の種は資金難というのが通説。事実、会員費のみで活動するNPOは世にまれで、ほとんどが寄付に頼り、「わが国には寄付文化がないから厳しい」という文句をしばしば聞く。しかし、活動と資金調達のつりあいを見極めるビジネス戦略をたてればすむことだ。資金難は症状。頭痛の種ではあっても、問題そのものではない。
 経営品質の向上が課題となるNPOもあるだろうが、やる気さえあれば解決のすべは組織内にある。NPOにとって、今のところどうすることもできない問題は、寄付の在り方であろう。
 政府や民間財団はもとより、個人の寄付も、多くが何に使うかを具体的に制限し、たいていは活動経費のみに限っている。そのうえ、人件費や義援物資などと、対象になる経費の内訳まで細かく指定する寄付も少なくない。
 目に見えるモノに使われれば、安心して寄付ができるのだろうか。それとも、NPO法人の会計監査を信用しないのだろうか。理由はどうあれ、用途を制約する寄付は、草の根のニーズに迅速かつ柔軟に応じるのが本領なはずのNPOの手足を縛り、せっかくの寄付の効果を下げかねない。
 日本だけの問題ではない。インドのスラム街で出会った某NPO会長は、小学校の給食に使える寄付がないと嘆いていた。立派な校舎や、設備、教師、教材はそろっても、貧しい子供たちの極端な栄養失調を改善しなければ、貧困から脱出する力となる学習効果が期待できないからだ。「わが国の贈与者は寄付金の用途ばかりにうるさくて、その結果生じる成果には無関心!」と、憤慨していた。
 その「成果」を実らすために最も効率的なのは、自由に使える寄付だ。が、規制するなと言うつもりは毛頭ない。自由に使える寄付だからこそ、厳しくなければならない。
 何よりも大切なのは、NPOを率いるリーダーシップの善しあしと経営品質を吟味することで、寄付の唯一の条件と言っても過言ではない。評価できる内容でなければ、活動にどれほど賛同しようとも、寄付はよすほうがいい。
 寄付後は、会計管理などの運営状態に、株主的な目を光らせるのが当然だ。活動が生み出す成果も追跡し、しっかり評価をしてもらいたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130106ddm002070143000c2.htmlより、
 それは厳しすぎると悲鳴をあげるNPOも、少なからずあるだろう。しかし、寄付とは、人様の大切なお金を無償、返済免除でいただくことだ。金融業以上に厳しく自己管理をして、良い経営にいそしむのは、ごくあたりまえである。
 いい成果を生むNPOほど、自分に厳しい。世界で指折りの例は、バングラデシュ農村向上委員会(略称BRAC)。用途を細かく制限する寄付はもちろんのこと、自由に使える金でも、ビジョンと価値観の異なる組織や個人からの贈与は断る。自国政府の助成金も、頑として受けない。
 BRACの経営品質は、世銀もかくありたいと思うほど素晴らしかった。資金調達戦略も見事で、自転車操業的な経営状態でいい仕事ができるわけはないと、長年自己資本づくりに専念してきた。農民の現金収入を増やしながらBRAC資本金の糧にもなるさまざまな事業を起こし、成功を収め続けている。手織り・手刺しゅうの民族衣装や小物類を扱う会社は、今やあの国の高級ブランドだ。
 もうひとつの例は、拙著「国をつくるという仕事」で紹介したブータンのタラヤナ財団。寒村社会の自助自立と発展を目的に、斬新な活動を続けるNPOだ。民間企業顔負けの経営戦略と会計管理、優秀な活動成果とその広報など、大変な努力を重ね、自己資本による組織の持続性を確立。今では、資本を活用した投資のおかげで、寄付金総額以上を支援活動に生かす。
 財団の総裁が希有(けう)なリーダーだからこその結果であり、財政が火の車時代から続けてきた私の寄付もそれゆえだ。私ごと、拙著の印税と日本でいただくもろもろの謝礼全額を寄付している。しかし、もしも経営品質や会計管理に支障が起きれば、改正を要求し、満足できない場合は寄付を停止するつもりである。財団は、この意図を深く理解し、歓迎してくれている。
 先日、タラヤナ財団総裁から、昨年送金した寄付への礼状が届いた。署名の下に、彼女の手書きで、こう記されてあった。「寄付で伝える優しい心に、優しいからこその厳しさが加わらないと、結果的に困るのは、自助自立精神に目覚めた草の根の民です。来年も、私たちの活動をより一層厳しく見守ってくれるよう、心より願っています」=毎週日曜日に掲載

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