米「債務上限」 デフォルト(債務不履行)の懸念

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年1月8日(火)付
米財政の崖―歩み寄りへの流れを

 米国が「財政の崖」からの転落を何とかまぬがれた。
 減税打ち切りと歳出の自動的な削減が重なる「崖」は米国と世界の景気に打撃を与えかねなかったが、オバマ大統領と連邦議会のギリギリの折衝で、最悪の事態は回避した。
 焦点だった所得税減税(ブッシュ減税)は、年収45万ドル以上の層で打ち切り、国民の98%を占めるそれ未満の層は減税を続ける。米経済の景気後退は避けられる見通しだ。
 ただ、安心はできない。今回は強制的な歳出削減を2カ月延期するなど、課題の多くを先送りしたにすぎないからだ。
 しかも、同じころに連邦政府の債務が上限に達する。次なる「崖」がすでに待ちかまえているわけだ。
 米国では連邦政府の借金の上限額を議会が法律で制限している。上限に達する前に法律を改めて引き上げないと、政府の支払いや債務の返済が滞る。
 一昨年夏に、オバマ大統領と共和党との対立が債務不履行の寸前まで深まり、米国債が初めて格下げされたことは記憶に新しい。このときに決まった16.4兆ドルの上限を、また引き上げなければならない。
 財政をめぐる米国の混迷は、2年余り前の中間選挙で議会が「ねじれ」状態に陥って深まった。上院で民主党が、下院で共和党が多数を占める。共和党では増税に反対する茶会系の勢力が妥協を難しくしてきた。
 この構図は、今月3日から改選議員に入れ替わった新議会でも大きく変わらない。
 だが、大統領選で敗れた共和党内には、かたくなに譲歩を拒む対応に反省の機運もある。
 下院議長には「崖」問題の収拾に奔走した共和党のベイナー議長が再選された。中道穏健派の結集を目指す2期目のオバマ大統領や民主党とも歩み寄り、経済政策を前へ進める流れが生まれることを期待する。
 米国が周期的な財政の緊張にさらされるのは、多くの政策や税制であらかじめ上限や期限が決まっているからでもある。
 ブッシュ減税は当初10年の期限が2年延長された。期限があるから期限切れ問題が生じるのだ。制度を限定的にし、制御不能の危機を避ける政治の知恵ともいえる。
 翻って、財政規律を保つ趣旨だった赤字国債法が政争の具と化し、目先の選挙で負けたくない政権党が財政拡大に流れ続ける国は、大きな危機を育てていると言えまいか。混迷ぶりは似ていても、彼我の差を感じずにはおれない。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130106/amr13010603150000-n1.htmより、
産経新聞【主張】「財政の崖」回避 赤字削減の歩み止めるな
2013.1.6 03:14 (1/2ページ)

 大型減税失効と歳出の強制削減が重なって、景気が崖から落ちるように悪化する、米国の「財政の崖」がひとまず回避された。
 所得税減税の延長対象を限定して富裕層増税を図る一方、強制削減を2カ月凍結することなどが決まったのである。
 増税と歳出削減のどちらを重視するかで対立する民主党と共和党のぎりぎりの調整の結果であり、歓迎したい。
 ただ、今回の回避策はあくまでもその場しのぎだ。強制削減の凍結期限である2カ月後には再び危機的状況を迎える。
 次の焦点は、10年間で4兆ドルの財政赤字削減策の取りまとめと、法律で定める債務上限の引き上げだ。特に連邦債務はすでに上限の16・4兆ドルを突破し、このままでは、国債発行で資金調達できずに債務不履行に陥る恐れがある。
 これらがまとまらなければ、歳出の強制削減が始まる。米国の景気失速と、財政への信認低下による金融市場の混乱は、欧州債務危機を上回る衝撃を世界経済に与えよう。国防費も機械的に削減される。米軍のアジア太平洋での展開に支障が生じれば、日本の防衛政策の根幹を揺るがしかねない。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130106/amr13010603150000-n2.htmより、
2013.1.6 03:14 (2/2ページ)
 民主、共和両党が党派を超えて協力し、包括的赤字削減策などで合意するのが望ましいのはいうまでもない。
 しかし、対立の根源は両党の伝統的な価値観の違いにある。民主党は税収を確保し、社会保障などを充実させる「大きな政府」志向だ。共和党は税も含め規制など政府の国民生活への介入を最小限にする「小さな政府」を目指す。
 このことを考えると、2カ月で最終的な赤字削減策をまとめるのは難しいかもしれない。債務上限引き上げは絶対条件だが、両党が市場の目を意識しつつ、最悪の事態を避ける妥協を徐々に積み重ねるのが現実的にもみえる。
 具体的には、増税対象の拡大や所得控除幅縮小による税収増、社会保障への切り込みなどでの歳出減に一歩でも踏み出すことだ。
 幸い、米国経済は住宅投資が回復に向かうなど好転しつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)も金融緩和で後押ししている。
 時間稼ぎは悪いことではない。その間に景気を軌道に乗せ、政治は休むことなく財政赤字削減への歩を進める。それが世界最大の経済大国の責務である。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50249910U3A100C1PE8000/より、
日経新聞 社説 米国は包括的な財政再建策の合意急げ
2013/1/4付

 米国で急激な財政引き締めが今月から始まる「財政の崖」が土壇場で回避された。米景気の失速や金融市場の混乱を招き、世界経済全体を危機的な状況に追い込むという最悪の事態だけは免れた。
 しかし急場しのぎの対応に追われ、財政再建の包括策を先送りしたのは残念だ。与党・民主党と野党・共和党は景気動向にも配慮しながら、抜本的な税制改革と歳出削減の合意を急ぐ必要がある。
 米国では大型減税の失効や強制的な歳出削減などが重なり、6000億ドル(約52兆円)規模の財政引き締めを迫られる恐れがあった。法的な手続きは年明けにずれ込んだが、与野党が危機回避に動いたことをひとまず歓迎したい。
 焦点の所得税減税については、年収45万ドル以下の世帯に限って延長し、それ以外の世帯は打ち切ることになった。給与税(社会保障税)の減税延長は見送り、歳出の強制削減は2カ月間凍結する。
 米国では家計の債務返済や住宅市場の調整が進み、景気回復の基盤が固まり始めている。今回の措置で富裕層を中心とする個人の負担は増えるが、米経済に強い負荷がかかるのを避けるためには、やむを得ない選択といえるだろう。市場もおおむね好感している。
 だが強制的な歳出削減の凍結は単なる時間稼ぎにすぎない。与野党が財政再建の包括策で合意できない限り、2カ月後には国防費などの機械的なカットが始まる。
 米国の連邦政府が抱える債務は、法定上限の16.4兆ドルにほぼ到達した。こちらも2カ月以内に引き上げの合意に達しなければ、債務不履行の危険にさらされる。
 社会保障などの歳出削減に慎重な民主党と、個人の増税に強く反発する共和党の対立は根深い。それでも不毛な政争に明け暮れ、米国の経済政策を機能不全に追い込むことは許されない。
 米国の経済課題は成長と財政再建の両立に尽きる。短期的には財政緊縮のペースを調節しながら、景気の下支えに万全を期すべきだ。同時に増税と歳出削減のバランスがとれた中長期の財政再建策を示し、年1兆ドルを超える財政赤字を削減しなければならない。
 まもなく2期目に入るオバマ大統領は、今後10年間で4兆ドルの財政赤字を削減する方針を表明した。与野党は党派の対立を乗り越え、その詰めを急ぐべきだ。改選後の新議会に「決められない政治」を持ち越してはならない。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130103/mcb1301030501003-n1.htmより、
抜本改革先送り、膨らむ連邦債務 米「崖」回避も一時しのぎ (1/2ページ)
2013.1.3 05:00

 米与野党の合意で「財政の崖」は土壇場で回避されたが、危機が去ったわけではない。抜本的な税財政改革は先送りされ、連邦債務も法定上限に再び達し、「新たな崖」(米メディア)としてのデフォルト(債務不履行)危機が再燃しているためだ。米財政は依然、不安を抱えたまま新年を走り出した。
 財政の崖をめぐる大詰めの協議で米議会の空気が張り詰めていた12月31日。ほとんど注目されなかったが、もう一つの重大リスクがついに表面化した。
 「公務員の年金基金などへの投資を凍結する」
 ガイトナー財務長官が議会幹部に送った書簡は、連邦債務が法定上限の16兆4000億ドル(約1400兆円)に到達し、デフォルト回避の緊急措置を財務省が発動したことを告げていた。
 債務は2011年夏にも上限に達し、米国史上初のデフォルト危機として世界を揺るがした。急遽(きゅうきょ)、上限が今の額に引き上げられ乗り切ったが、津波のように膨れあがる債務は新たなダムをのみ込みつつある。
 財務省は緊急措置で「年初はしのげる」(ラザフォード次官補)とするが、シンクタンクなどの予測ではそうした措置も2月中で効果が切れる。議会が同意すれば再び債務上限を引き上げられるが、野党共和党は「歳出拡大に歯止めがかからなくなる」と慎重だ。
 間が悪いことに、デフォルトが懸念される2カ月後は「財政の崖」回避策で延期された国防費などの自動的な歳出削減が発動される時期と重なる。共和党のマケイン上院議員は「崖をめぐる与野党合意は、債務上限引き上げ問題をめぐる新たな攻防の幕開けだ」と眉間にしわを寄せる。

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130103/mcb1301030501003-n2.htmより、
(2/2ページ)2013.1.3 05:00
 先進国でも最悪水準の財政の再建に向けた税制改革や歳出削減策などは、今回の与野党協議では折り合いがつかず先送りされた。
 財政の崖の回避策をめぐっても、共和党内には「富裕層増税が先行し、歳出削減が不十分」との不満がしこりで残り、財政運営をめぐる与野党のせめぎ合いはむしろ激しさを増しそうだ。
 崖からの転落こそ免れたものの、一時しのぎの感は否めず、米国債の格下げ観測もくすぶる。迷走する米財政が今後も世界を危険にさらさぬ保証はない。(ワシントン 柿内公輔)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130103/k10014560281000.htmlより、
オバマ政権 財政運営が当面の課題に
1月3日 4時11分

今月下旬に2期目が始まるオバマ政権は、巨額の財政赤字の削減策や、法律で認められた政府の債務の上限を引き上げる問題などで、議会との厳しい交渉を迫られる見通しで、財政運営のかじ取りが当面の課題になります。
アメリカ経済は、低迷が続いていた住宅市場が去年の秋から改善傾向を示し、自動車の販売台数が増えるなど、個人消費にも持ち直しの動きが見られ、金融危機以降の停滞から脱しつつあります。
一方で、アメリカの財政は、毎年度1兆ドルを超える巨額の赤字が続き、今月下旬に2期目が始まるオバマ政権にとって、財政再建が大きな課題です。
ようやく決着した財政の崖の協議では、予算の大規模な強制削減の実施が2か月先送りされたため、この間に代わりの削減策の検討を進める必要があります。
また、政府の債務の総額は、法律で認められた上限に達し、来月末までに上限の引き上げが議会で認められなければ、政府が債務不履行に陥って、金融市場が混乱するおそれがあり、回復基調の経済にも悪影響を与えかねません。
財政の崖の協議で、議会との対立が改めて浮き彫りになっただけに、オバマ政権は、財政運営で難しいかじ取りを強いられそうです。
また、オバマ政権は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定のことし中の妥結を目指して交渉を加速させる方針で、交渉参加に向け協議している日本が対応を迫られることも予想されます。

http://mainichi.jp/select/news/20130103k0000m020048000c.htmlより、
財政の崖:辛うじて回避も赤字削減策は先送り 課題山積
毎日新聞 2013年(最終更新 01月03日 00時49分)

 【ワシントン平地修】米国の「財政の崖」問題は、年収45万ドル未満の世帯への減税維持などを柱とする法案の議会通過で、急激な財政緊縮につながる最悪の事態は回避された。しかし、自動的な歳出削減については発動時期が2カ月延期されただけで、肝心の財政赤字の削減策は与野党協議の迷走の末にほとんどが先送りとなった。オバマ大統領と議会には税制改革や歳出削減策など取り組むべき課題が山積みになっている。
 「中間層の犠牲の下に富裕層が優遇されてきた税制を変更するという私の約束は達成された」。オバマ大統領は1日深夜こう語ったが、終始厳しい表情のまま法案可決を受けた声明を読み上げた。
 米議会予算局によると、与野党が合意に至らず年明けからすべての所得層の増税が実施されていた場合の影響は、13会計年度(12年10月〜13年9月)の財政赤字削減額だけで約5030億ドル(約43兆7000億円)規模に上った。日本の1年間の新規国債発行額に相当する赤字を一気に削る内容だ。
 1〜2%の富裕層を除く中間所得層への減税継続が決まったことで、回復途上にある米経済が再び景気後退に陥る事態は回避されるが、その見返りで財政赤字削減など健全化への道筋が足踏みすることになった。
 同予算局は1日、全面的な増税など財政の崖が現実化した場合に比べ、10年間で4兆ドル近い財政赤字が積み上がるとの試算を公表した。年収45万ドル以上の富裕層向け増税などで10年間で約6200億ドルの歳入増が見込まれるものの、大統領が当初提案していた1.6兆ドル規模の歳入増には遠く及ばず、歳出削減策はほとんど盛り込まれなかった。
 消費に対しても一定程度のマイナス要素がある。オバマ大統領が富裕層増税の実現を優先し、給与から天引きされる社会保障税(給与税)の減税措置の打ち切りが与野党協議で決まったためだ。
 景気対策として4.2%になっている給与税の税率は、13年から本来の6.2%に引き上げられる。米国の勤労世帯の平均とされる年収5万ドル(約435万円)層で年間1000ドル(約8万7000円)程度の負担増になる。

 ◇債務上限 新たな火種に
 「財政の崖」を巡る交渉は、与野党の対立の深さを改めて浮き彫りにした。3日からは昨年11月の選挙を受けた新議会に移行するが、年末に到達した債務上限の引き上げが目前の課題となり、今後も激しい攻防が続きそうだ。

http://mainichi.jp/select/news/20130103k0000m020048000c2.htmlより、
 当初は歩み寄りがみられたオバマ大統領とベイナー下院議長の交渉は、下院共和党の抵抗などで難航。下院では、いかなる増税にも反対する財政保守派の不満が爆発し、「歳出削減が少なすぎる」「増税はのめない」と上院共和党の大多数が賛成した法案への反対論が広がった。
 頭を抱えたベイナー下院議長は、上院案と修正案の2種類を示し「修正案は成立の見込みがなく、国民の批判にさらされる」と説いて回った。結局、上院案で採決に踏み切り257対167で可決したが、民主党の多数が賛成したのに対し共和党は過半数が反対。幹部間でも票が割れ、最後まで綱渡りが続いた。
 昨年末には米政府の債務が、法定の約16.4兆ドルの上限に達した。緊急措置で2カ月程度の資金繰りが可能だが、両党の合意で債務上限を引き上げなければ、両党が激しい駆け引きを繰り広げた一昨年の上限引き上げの際と同様に米政府はデフォルト(債務不履行)の懸念が高まる。
 オバマ大統領は「この問題で議会と交渉しない」との姿勢を示すが、共和党側は債務上限引き上げを材料に歳出の大幅削減を迫るとみられ、再び米経済を揺るがす事態も予想される。

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