東京五輪招致 「なぜ必要なのか分からん」
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50485190Q3A110C1EA1000/より、
日経新聞 社説 五輪の開催で日本を元気に
2013/1/11付
2020年の夏季五輪を目指す東京の招致委員会が計画書を国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。9月の最終選考に向けてイスタンブール、マドリードとの招致競争が本格的に始まった。
東京の計画の特徴は選手村から半径8キロ圏に競技施設の大半を配置する点だ。選手村も16年大会時の計画よりも広げ、選手の立場を重視した五輪を掲げている。
東京は公共交通網が充実し、宿泊施設も整っている。安全で確実な大会運営という面では他の都市よりも優れているだろう。昨年夏のロンドン大会が成功裏に終わったことをみても、「成熟国」で開く利点は小さくない。
五輪の開催は日本の活力を高め、都市のあり方を変える好機になる。経済効果はもちろん、東京を地球環境に優しい都市に再生したり、老朽化したインフラを更新したりするきっかけにしたい。
ほぼ半世紀前に開いた東京五輪では、選手村での食事の提供を通じて外食産業の基礎ができた。競技結果を速報しようとデータの即時伝送システムも開発され、本格的なコンピューター時代が到来した。今回も招致に成功すれば様々な技術革新を促すだろう。
今回の計画では聖火リレーやサッカーの1次リーグなどを東日本大震災の被災地で行う予定だ。前回の五輪が戦災から復興した日本の姿を世界に示したように、20年の大会は震災から立ち直った新しい日本を訴える場にもなる。
まもなくIOCによる現地視察や五輪に対する国民の支持率調査がある。昨年5月の1次審査で東京は高い評価を受けたが、書類審査にすぎない。実際に開催地を決める権限があるIOC委員への働きかけが今後重要になる。
五輪は都市が主役だが、実際には国家間の招致レースだ。日本オリンピック委員会(JOC)や都が中心になるとはいえ、政府も全面的に協力してほしい。日本の外交力が問われているともいえる。
日本を元気にするためにも五輪開催を実現したい。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年1月10日(木)付
東京五輪招致―成熟都市と誇るなら
2020年の五輪・パラリンピック招致の国際広報活動が解禁された。
東京はイスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)と争う。開催都市は9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まる。
東京は会場の約8割が半径8キロ圏に収まるコンパクトさや、4千億円強の開催準備基金が売りだ。猪瀬直樹都知事はいう。「東京は世界をリードするトレンドの中心で、世界でも類を見ない安全性を誇る」
昨夏、3度目の開催だったロンドン五輪が称賛されたのにならい、「成熟都市」の強みで、IOC委員を口説きにかかる。
しかし、招致レースは単純に開催能力の優劣を争うわけではない。
前回の16年大会招致でも、東京は「安全、確実な運営」を打ち出し、計画自体は高く評価されながら、勝者は「南米初」を掲げたリオデジャネイロ(ブラジル)だった。
1964年の東京五輪が「アジア初」だったように、IOC委員は伝統的に「初めて」という大義名分に心ひかれる。
その点では、経済成長が著しく、5度目の挑戦で「イスラム圏初」の悲願をかかげるイスタンブールが有力視される。
東京はどんな「物語」をかたるべきだろうか。
震災からの復興の後押しや、雇用創出、3兆円の経済効果などは国内向けの理屈で、200余の国と地域が集うスポーツ大会の理念としてはインパクトに欠ける。
日本ならではの大胆な発想があっていい。
IOCは子どものスポーツ離れを食い止めようとユース五輪を創設した。では例えば、五輪会場を利用して、シニア世代が集う「マスターズ五輪」の開催を提唱してはどうだろうか。
日本は60歳以上の人口が3割を超える唯一の国だ。世界的にも、50年には60歳以上が20億人を超し、15歳未満を上回るという。シニアの競技人口はこれから激増する。
トップアスリートだけではなく、お年寄りや障害者など幅広い層が身近にスポーツを親しめる先進都市を掲げて、街のバリアフリー化や老朽化した競技施設の改修を進める。
同時に、直下型地震に備え、ハード、ソフトの両面で災害に強い都市づくりを急ぐ。
東京が招致に向けて取り組むべきテーマは、猪瀬知事が掲げる「成熟都市」と広く認められるために、乗り越えなければならない課題でもある。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130110k0000m070088000c.htmlより、
社説:20年五輪招致 東京だからこそを示せ
毎日新聞 2013年01月10日 02時32分
東京都が立候補している2020年オリンピック・パラリンピックの国際招致活動が解禁された。開催都市が決まる9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会に向け、成熟都市東京ならではの未来像を世界に示していけるかがカギを握る。
IOCに提出した立候補ファイル(詳細な開催計画)によると、東京は「アスリートファースト(選手第一)」を掲げ、全競技会場の85%が選手村から半径8キロ圏内に集中する「コンパクト五輪」をうたっている。交通機関や宿泊施設が整い、治安もいい世界有数の都市基盤と、さまざまな競技の国際大会を過去に開催した実績を持つ高い運営能力が特徴で、招致できれば同じ先進国で開催された昨年のロンドン五輪に匹敵する成功を収めるだろう。
しかしながら、招致の理念や意義の面では、イスタンブール(トルコ)の「イスラム圏初」というシンプルで強いメッセージに比べると、東京のスローガン「未来(あした)をつかもう」は普遍的であるがゆえに迫力に欠ける。「なぜ東京なのか」という問いへの説得力のある答えは、「南米初」のリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れた前回2016年大会同様、明確ではない。
IOC総会まで約8カ月。国内支持率アップのキャンペーンにも限界がある。目に見えない理念にすがるのではなく、「東京にしかできないこと」を国内だけでなく、海外にも訴えてみてはどうか。
立候補ファイル提出後の会見で東京都の猪瀬直樹知事は「途上国は先進国のモデルを追いかければいいが、先進国は自分で切り開いていかないといけない。東京の未来が世界中のモデルになる」と話していた。例えば、オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、高齢者や障害者に配慮したバリアフリーの都市づくりを強力に推し進めていく。日本が直面している高齢化は先進諸国も避けては通れない。東京が問題を先取りして提示する都市の姿は世界共通のモデルになるはずだ。20年招致に失敗したとしても次回以降の招致に遺産として受け継がれる。
スポーツジャーナリストの玉木正之さんが興味深い提案をしている。オリンピックとパラリンピックの合体だ。「健常者も身障者も一緒に参加する一つの大会こそ、未来のオリンピックの理想形、成熟した都市で行う成熟したオリンピックといえるのではないだろうか」と。同感だ。
運営面で同時開催が無理であれば、オリンピックの前にパラリンピックを開催することを検討してほしい。もし実現すれば東京の名前はIOCが推進するオリンピック・ムーブメントに永遠に刻まれるだろう。
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/130109/oth13010903080001-n1.htmより、
産経新聞【主張】東京五輪招致 国を挙げて発信力を競え
2013.1.9 03:07
2020年夏季五輪開催を目指す東京の招致委員会が、詳細な開催計画を説明する「立候補ファイル」を国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
国際プロモーション活動が解禁され、本格的な招致合戦に突入した。開催地は9月7日、IOC委員の投票で決まる。東京五輪は国内の沈滞した気分を打ち破り、日本の存在感を世界に示す好機ともなるだろう。
イスタンブール(トルコ)とマドリードは、あなどれないライバルだ。政府は国を挙げて、日本と東京の魅力を発信してほしい。
計画では、中央区晴海に建設する選手村から半径8キロ以内に競技会場の85%を配置するコンパクトな五輪を打ち出した。
東日本大震災からの復興を開催意義に盛り込み、サッカーの1次リーグを宮城県で実施することも記している。
昨年5月の第1次選考時のIOC報告書では、東京が総合評価で最上位に位置した。心配材料は住民による開催支持率の低さで、2都市が70%を超えているのに対し東京は47%にとどまった。
だが、ロンドン五輪で史上最多の38個のメダルを獲得した日本選手団の活躍もあって、招致委の昨年末の調査では、66%まで上昇している。
東京・銀座でのメダリストらの凱旋(がいせん)パレードに繰り出した約50万人の映像は、いかに日本人が五輪を愛しているかを物語る格好の材料となるはずだ。
昨年末の東京都知事選で、招致推進の猪瀬直樹氏が「ゼロベースでの見直し」を訴えた候補を大きく引き離し、史上最多の票を獲得した事実も、広く世界に訴えるべきだ。
IOCの報告書には、「国のエネルギー基本計画に注視が必要」という記述もあった。ずばり、大震災後の日本の電力事情に懸念を表明したものだ。
開催地決定を目前に控えたこの夏、国内が計画停電に陥るようなことがあれば、五輪招致の実現は限りなく遠のいてしまう。
エネルギーの安定供給は国の責任である。自民党は衆院選の政権公約で、「東京五輪招致のための国立霞ケ丘競技場の全面改修と被災地での競技開催」をうたっていた。政府はこの夏までに、エネルギー問題でもIOC委員を安心させる答えを用意してほしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013010902000132.htmlより、
東京新聞【社説】東京五輪招致 足元の支持を広げたい
2013年1月9日
二〇二〇年夏季五輪開催をめぐる国際招致合戦が本番を迎えた。一六年招致に失敗した東京は国内支持率が低調だ。なぜ再び東京なのか。その魅力を説得力のある言葉で語らねば機運は高まるまい。
東京の招致委員会は開催計画をまとめた立候補ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に出し、公表した。ライバル都市はイスタンブール(トルコ)とマドリード(スペイン)。九月七日のIOC総会で開催都市が決まる。
東京の街角では「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ。」のうたい文句が目立つ。だが、なぜ必要なのか伝わらない。そこに招致合戦を勝ち抜く鍵が潜んでいるのではないか。
東京の開催計画の特徴は、半径八キロ圏内に競技会場の八割を収めるコンパクトさだ。選手の負担を軽くする気配りでもあり、一六年五輪の招致のときも好評だった。
ところが、足元の支持率が低迷している。昨年五月に公表されたIOC調査ではイスタンブールの73%、マドリードの78%と比べて東京は47%と大きく下回った。
右肩上がりの成長を誇った一九六〇年代とは異なる。比類のない速さで高齢化が進む日本にとって、六四年に続く東京五輪にどんな意義があるのか。内外にしっかりと訴えねばならないだろう。
およそ三兆円の経済効果をもたらし、十五万人以上の雇用を生み出すと試算されている。日本を覆う閉塞(へいそく)感を首都東京から打ち破る機会となるかもしれない。
呼び込んだ投資を刹那的な事業にばかり費やしては元も子もない。首都直下地震への備えや、高齢者や障害者、外国人に優しいユニバーサルデザインの街づくりにつなげる知恵と工夫がほしい。
東日本大震災からの復興支援の視点も肝要だ。聖火ランナーが被災地を巡り、宮城県でサッカー予選を行うだけでは物足りない。
東京と被災地が一体となって産業や観光、文化を育て、スポーツや国際交流を振興する仕組みが欠かせない。原発事故を収束させて除染を急ぐ。原発に頼らず省エネや再生エネを中心に電力を賄えば再生の象徴となるだろう。
財政危機にあえぐマドリードよりも、イスラム圏初の五輪を目指すイスタンブールが手ごわい。東京は前回、南米初を掲げたリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れてもいる。
成熟社会のあるべき姿を世界に先駆けて表現する。二度目の東京五輪の強みはそこにこそある。