風知草:ど根性路線への疑問 山田孝男氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130114ddm002070069000c.htmlより、
風知草:ど根性路線への疑問=山田孝男
毎日新聞 2013年01月14日 東京朝刊

 「民主党革命」の合言葉「コンクリートから人へ」は忘れられ、緊急経済対策の公共事業費は4・7兆円と決まった。コンクリートの逆襲である。
 「自民党反革命」の合言葉は国土強靱(きょうじん)化だが、この造語は引っかかる。靱は靱帯(じんたい)。関節の骨をつなぐ結合組織繊維で、弾力に富む。強靱化と聞いて私が即座に思い浮かべたのは、往年の人気漫画「巨人の星」の主人公が装着していた、バネじかけの筋力養成ギプスだった。
 人は大地に生まれ、大地に返る。そもそも大自然の一部である人間が、母なる大地に手を加え、立派な大地にしてやろうという発想自体が思い上がりである。公共事業批判の行き過ぎの是正なら分かるが、ど根性路線のリベンジで環境破壊の昔へ戻るという選択肢はない。
 ともに選挙を勝ち抜き、公共事業拡大で足並みをそろえた自民、公明両党の違いは何か。投資の規模と対象である。
 自民党の「10年間で200兆円」に対し、公明党は「10年間で100兆円」。自民案は「高速道路網構築」「日本海国土軸と太平洋国土軸の連携」も加えて高度成長時代の懐メロ調を帯びるが、公明案は違う。
 公明党の合言葉は「国土強靱化」ならぬ「防災・減災ニューディール(新政策)」だ。老朽化施設の安全点検と補修に力点を置いている。補修重視の公明案と懐メロ調の自民案が混じり合っているのが、新政権の公共事業政策の特徴である。
 新政権の国土交通相には公明党の太田昭宏元代表(67)が起用された。太田はかつて公明新聞の記者だったが、元をただせば京大工学部土木工学科卒、同大学院修了(耐震工学)。大震災のアフターケアを「オレがやらずに誰がやる」という学歴である。太田に聞いてみた。
−−「国土強靱化」ってヘンだと思いませんか?
 「強靱化? ああ、うむ、しなやか(=靱か)な国土ってのはいいと思いますがね」
−−景気対策としては筋が悪いと思いませんか?
 「防災で(経済)V字回復みたいなことはまったく考えてませんよ。すべて現場からの(必要な施策の)積み上げ。バラマキじゃないんだ。経済活性化という角度(思惑)が強くなると問題でしょうけどね」

 民主党を厄介払いして霞が関は晴れ晴れしていると言われるが、そうとも限らない。国土行政に詳しい旧知の官僚に尋ねると、たちまち国土強靱化計画の問題点を並べ上げた。
 「防災事業は必要ですが、防潮堤のようなハード(設備)中心じゃない。地域防災力強化などソフト(情報、知識)が大事です。ハード面は100年単位で安定的に取り組む。短期集中投資で安全性が向上するということはありませんよ」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130114ddm002070069000c2.htmlより、
 「道路にしても、計画は(中国自動車道に対する山陰自動車道のように)並行路線の整備が主体です。何もないところに新しい道路を造る場合と違い、経済効果が小さい。当面はカネが回るが、国債発行による借金を埋めるだけのリターンを期待できない。しかも公共事業は始めたら途中でやめられません。結局、消費税で埋め合わせるという結末になりかねない」
 民主党公約の財源の矛盾をあれほど責めた世論も、国債増発に開き直った自公政権には寛容だ。国土強靱化は、与党の参院選対策としては周到、防災対策としては過剰、景気対策としては危険である。念入りなチェックが必要だ。(敬称略)(毎週月曜日掲載)

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