もう冷めかかっている 与良正男氏
http://mainichi.jp/opinion/news/20130123k0000e070204000c.htmlより、
熱血!与良政談:もう冷めかかっている=与良正男
毎日新聞 2013年01月23日 13時26分
鉄は熱いうちに打てという。でも、もう冷めかけてしまっているのでは、と言ってみたくなる話が一つある。国会議員の定数削減である。
日本維新の会は議員定数と報酬、政党交付金をそれぞれ3割削減する法案を近く始まる通常国会に提出するという。しかし、報道によれば、橋下徹共同代表は先週開かれた国会議員団の政策研修会で、こう語ったそうだ。
「3割はきついので10%で、と(自分たちが)思わないうちに(早く法案を)出してもらいたい。どうせ否決されるんですから。皆さんの身分は安定するから大丈夫」
1割削減とかで妥協せず、方針通り3割削減の法案を出して姿勢だけは示した方がいいという話。冗談とはいえ「成立しないから安心しろ」とは身もふたもないなあとあきれる半面、削減法案が成立しないという見通しは確かに間違っていないとも思う。定数削減話を忘れ去ってしまったかのような今の政界の空気を表してはいる。
そもそも、先の衆院選のきっかけが何だったか、思い出そう。
昨年11月、当時の野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁との党首討論で、野田氏は「大幅な定数削減を次の通常国会で図ると約束してくれたら今週、衆院を解散してもいい」と持ちかけた。自民党も消費増税で国民に負担増をお願いする以上、国会議員自ら身を切る覚悟が必要と協力を約束した。だから解散に至ったのではなかったか。
ところが、選挙が終わればこの有り様だ。
大幅な定数削減には選挙制度の見直しが必要だ。自民党と公明党は3月中に与党案をまとめるといっているが、仮にまとまったとしても他野党が納得する保証はない。
民主党は比例代表を大幅に削るというが、衆院選では小選挙区で大敗し、比例代表で生き延びた議員も多いだけに、方針を貫けるのかどうか。逆に共産党と社民党は比例代表中心の選挙制度を主張している。各党とも定数削減と選挙制度見直しは党の存亡にかかわるから、利害は容易に一致しない。
定数と選挙制度をどうするかは国の政治はどうあるべきかの話に直結するから拙速はいけない。だが、当事者の現職議員で協議してもまとまるはずがないのは分かっているはずだ。それなら早いところ、第三者機関の協議に委ねた方がいいと私は思う。「面倒な話だから」と、わざと忘れ去ってしまうのが一番いけない。(論説委員)