記者の目:医療費の窓口負担割合 鈴木直氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130129k0000m070101000c.htmlより、
記者の目:医療費の窓口負担割合=鈴木直(政治部)
毎日新聞 2013年01月29日 00時14分

 ◇特例は世代間対立をあおる
 政府・与党は70〜74歳の医療費の窓口負担割合(2割)を1割に軽減している特例措置について、13年度も続けることを決め、補填(ほてん)に必要な約2000億円を12年度の補正予算案に計上した。7月の参院選で高齢者の反感を買うのを恐れ、自民、公明両党が厚生労働省の特例廃止案を拒んだ結果だ。むろん財政的な問題もあるが、それよりも私は高齢者を一律に優遇する点が若者の不信を招き、不毛な世代間対立をあおることを懸念する。年齢に関係なく、負担できる人が応分の負担をする仕組みに改めるべきだ。

 ◇年齢で一律の線引きに疑問
 医療機関にかかると、患者は医療費の一部を自己負担する必要がある。負担割合は法律上▽小学校入学前2割▽小学生〜69歳3割▽70〜74歳2割▽75歳以上1割、ただし70歳以上でも高所得者(年金収入のみの単身者なら年収380万円以上)は3割−−と定められている。それ以前、70歳以上は原則1割だったが、小泉純一郎政権は「世代間格差是正」の観点から06年の医療制度改革で高齢者の負担増を決め、08年度から実施する運びだった。
 ところが07年7月の参院選で自民党は大敗し、参院第1党から滑り落ちた。当時の安倍晋三首相の退陣を受けて自民党総裁選に立候補した福田康夫氏は「高齢者医療費負担増の凍結」を掲げて当選、首相になると70〜74歳の窓口負担を1割に据え置いた。その後政権を取った民主党もそれはやめられず、昨年政権に返り咲いた自公両党が再び踏襲することで、来年度、特例は6年目に突入する。
 しかし、厚労省によると、高齢層の収入に占める医療費の自己負担割合は65〜69歳が3.8%、75歳以上が4.6%なのに対し、「1割」の特例措置がある70〜74歳は2.4%と低い。一方、08年秋のリーマン・ショックに伴い、現役世代の賃金は低下している。08年度を境に、大企業中心の健康保険組合の平均標準報酬月額(保険料算定に使うみなし月収)は約37万円から約36万円に、中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)は28万5000円から27万5000円に下がった。
 それでも年1兆円ペースで増加する医療費を賄うには、保険料を大幅にアップせざるを得ない。健保組合の年収に占める平均保険料率は、08年度の7.38%から8.31%まで上昇した。現役の保険料の4割は高齢者の医療費に充てられており、2000億円ものお金があるなら現役の負担軽減にも回してほしいと考える人は少なくないだろう。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130129k0000m070101000c2.htmlより、
 「高齢者はみな厳しくせよ」と言うつもりはない。年齢による一律の線引きに疑問を感じるのだ。高齢者には低年金でつましく暮らしている人もいる半面、資産家も少なくない。高所得者は3割負担とはいえ、年収100万円台の非正規雇用の若者も珍しくない中、380万円近い年金がある人まで優遇の対象とすべきだろうか。富の分配方法が課題だった時代は終わり、「負担の分かち合い」を迫られるようになった今、必要なのは年齢を問わず能力に応じて応分の負担をし、支援を要する人には適切に手を差し伸べることだ。
 そもそも厚労省の特例廃止案は、今1割負担の人が2割になる話ではない。13年度以降70歳になる現在69歳以下の人(3割負担)から順次2割とする内容で、当初より負担の減り幅が小さくなるだけだ。高齢者には長期の診療や投薬が必要なケースも多いものの、毎月の自己負担額に上限を設けている高額療養費を所得に応じたきめ細かい制度に変えることで対応できる。

 ◇「選挙対策」やめ早急に見直しを
 政府は70〜74歳の特例に関し「当面、維持する」と説明し、廃止時期を示していない。だが、来年4月には消費税率が8%に、15年10月には10%へとアップする予定だ。この間は過去の物価下落時に下げなかった年金額の引き下げも実施されるなど、負担ラッシュとなる。そのうち次の衆院選が視野に入ってくるし、16年にはまた参院選がある。選挙をにらんで高齢者への「配慮」を続けるのなら、いつまでも廃止できなくなる。
 それとも、7月の参院選が終わってしまえば負担増に踏み切るのだろうか。それでは中国の故事「朝三暮四」−−サルに「エサを朝に三つ、夕に四つやる」といったら怒ったので「朝に四つ、夕に三つ」とごまかした−−そのものだ。サルと違って人間は「だまし討ち」に怒るだろう。
 田村憲久厚労相も「いずれは2割に戻さなければいけない」と指摘している。それなら参院選にかかわらず年度途中でも特例廃止を決断してほしい。君子であるなら、ここはひょう変すべきである。

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