記者の目:パレスチナ問題 花岡洋二氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130131k0000m070089000c.htmlより、
記者の目:パレスチナ問題=花岡洋二(エルサレム支局)
毎日新聞 2013年01月31日 01時07分

 イスラエル国会(定数120)の総選挙が22日に投開票され、ネタニヤフ首相らが率いる与党統一会派「リクード・わが家」が第1会派を維持した。対パレスチナ強硬路線のネタニヤフ首相が続投する見通しで、中東和平交渉の前進は望めないのが現状だ。一方、パレスチナは昨年11月末、国連総会で「オブザーバー国家」の地域に格上げされた決議採択を受けてイスラエルに「勝利」を宣言した。
 だが、こうした皮相的な「政治的戦果」は、戦火の現場の前ではむなしく響く。昨年11月、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルとが8日間、戦火を交え、停戦にこぎつけた現場を取材した。そこで見た人々の苦しみは今後も続くからだ。

 ◇ガザ地区「封鎖」 住民に影響甚大
 昨年11月中旬。イスラエルによるガザ空爆が始まった2日後、ユセフ・アラファトさん(30)とガザで会った。自宅を爆撃され、次女ラナンちゃん(6)を亡くした。長男(9)がショックに苦しむ様子や、家を失い、日雇い労働で仕事もほとんどない絶望を語った。イスラエルとは将来どのような関係を望むか尋ねると、「かつての父と同じように、イスラエルで働きたい」と答えた。ガザで何度も聞かされてきた言葉だ。
 以前は多くの住民がイスラエルに通い建設現場などで働いた。00年、ガザからイスラエルに入る人は1日平均2万6000人だった。だがイスラエルが07年までにガザに対し陸・海・空から人と物の出入りをふさぐ完全封鎖を実施。住民はどこにも出られなくなり11年は平均170人だ。
 ガザへの物資輸入が部分的に緩和される直前の10年6月。ガザ市内の国連機関で会ったシャディ・アルヘシさんはコメや小麦粉、砂糖など援助物資の入った袋を地面から拾い上げると「うれしい」と言ったが、やがて「俺は漁師だったけど、もう漁には出られない」と怒りの声をあげた。
 海上封鎖で漁業区は沖合3カイリ(約5キロ)に制限され、漁業は壊滅的な打撃を受けた。アルヘシさんは食糧支援を受け始めて3年たっていた。妻と生後6カ月の長男には、外国からの援助品を食べさせている。自ら働いて家族を養う機会と尊厳のある日常は、ここにはない。
 イスラエルは1967年の第3次中東戦争でガザを占領したが、2005年に地上軍と入植者を引き揚げた。代わりに90年代から徐々に封鎖を強めていた。「武器の密輸を防ぐ」など安全保障を理由としている。だが、「封鎖」がパレスチナ市民生活に与える影響は甚大だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130131k0000m070089000c2.htmlより、
 国連報告書によると、ガザの農地の35%と漁場の85%がイスラエルの規制で完全か部分的に利用できない。衣類や家具、果物などのイスラエルやヨルダン川西岸への出荷は1日平均でトラック1台分しか認められない。07年の完全封鎖直前の平均の3%以下だ。ガザの失業率は34%で、住民の80%は食糧などの援助を受けている。報告書は封鎖が「持続可能な経済成長を妨げ、高い失業率や食糧不安、援助への依存を固定化している」と結論づけた。
 10年の緩和で消費財の輸入は増えたが、十分ではなく、現金がイスラエルに流出するだけというのが実態だ。昨年11月の停戦で漁業区は沖合6カイリ(約11キロ)へと拡大された。評価したいが、ガザと西岸をパレスチナ自治区としたオスロ合意(93年)と一連の協定では、沖合20カイリ(約37キロ)を漁業区とすることが明記されている。

 ◇イスラエル説得 国際社会の役割
 支配下で、ガザの武装勢力はロケット弾攻撃を仕掛け、イスラエル軍が空爆する「報復合戦」が繰り返される。ガザへの空爆で殺された軍事リーダーの葬式でパレスチナ人少年(14)は「報復」を笑顔で望んだ。イスラエル南部オファキムでは、自宅にロケット弾を撃ち込まれたユダヤ人少年(16)が「地上侵攻してハマスを壊滅させたらいい」と主張した。停戦しても、武器を使った暴力の連鎖はいつ再開されてもおかしくない。
 パレスチナの国連外交への「報復」として、イスラエルは西岸への新たな入植住宅の建設計画を発表した。国際法違反の入植は西岸の経済活動を阻害する要因の一つだ。だが、国際社会も、米国がイスラエルの肩を持ち、イスラム諸国が反発する構図は揺らがない。不条理の連鎖を断つには、イスラエルが人々の日常を支配する「暴力」をまずやめるべきだ。でないとパレスチナにもイスラエルにも「平和」は訪れない。米国や日本を含む国際社会は、それを粘り強くイスラエルに伝えていくしかない。

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