早期退職 「退職金減額」制度設計に問題あり

http://mainichi.jp/opinion/news/20130202ddm003040113000c.htmlより、
クローズアップ2013:「退職金減額」教員駆け込み退職 政局、地方翻ろう
毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊

 退職金の減額前に、埼玉県で多数の教員が「駆け込み退職」した問題では、6人が翻意したものの、最終的に104人が早期退職を選んだ。同様の事態は徳島県や佐賀県でも起き、行政職員や警察官にも広がっている。国家公務員の退職金引き下げに地方自治体がならった結果だが、年度途中の条例改正には批判も出ている。駆け込み退職が誘発された背景や制度の問題点を探った。【加藤隆寛、林奈緒美、苅田伸宏、木村健二】

 ◇「11月法改正、元日実施」国に準じた措置求められ
 年度末まで勤め上げるより、早期退職の方が「お得」−−。なぜこんな奇妙な制度ができてしまったのか。昨年の政局の影響を、地方がかぶってしまったとの指摘もある。
 そもそも削減の契機となったのは、国が昨年3月に公表した退職金に関する調査結果だ。10年度中の国家公務員の退職金は、民間平均(企業年金含む)を約400万円上回っていることが判明。これを受けて野田内閣は昨年8月、「国家公務員の退職金を13年1月から段階的に引き下げる」と閣議決定した。
 だが、政局の混乱もあって審議は進まず、結局、減額を定めた改正法が成立したのは昨年11月16日。衆院解散当日の「駆け込み成立」だった。改正見送りもささやかれたが、ある中央省庁幹部は「民主党政権に『公務員に甘い』との批判をかわす狙いもあったのでは」と冷ややかに語る。
 改正法は今年1月と10月各140万円、来年7月120万円の3段階での退職金カットを定めた。公布された昨年11月26日、総務省は自治体に文書で「国に準じた必要な措置」(同程度の減額)を講じるよう求めた。国家公務員の退職金減額は今年元日から。ただ、自治体への文書には「求められる実施時期」は明記せず、これが自治体間のバラつきを生んだ。
 「駆け込み退職」問題は埼玉の教員だけにはとどまらず、愛知、兵庫、高知の3県では、警察官でも同様の事態が起きた。埼玉は減額条例施行が2月、愛知、兵庫、高知は3月。いずれも早期退職した方が、3月末まで勤めるより手にする額が多くなる。一方、1月施行の国や東京都は、3月末まで勤めた方が受け取る額が多く、こうした事態は起きなかった。また、多くの自治体がいまだに条例改正をしておらず、模様眺めの形だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130202ddm003040113000c2.htmlより、
 11月下旬に届いた国からの「減額要請」では時期は明示されなかったものの、総務省自治行政局は「国と同様、13年1月からの削減が原則」との立場だ。だが、労組との協議や議会日程との兼ね合いもある。埼玉県の上田清司知事は問題判明後の記者会見で、「最小限の周知期間も必要だった」と批判。一方で、4月施行で減額を遅らせた場合は、人件費負担が約39億円増えると明かし、苦悩をのぞかせた。
 まだ条例改正前の自治体には難しい課題もある。官民格差を調整する引き下げは今回が第1弾で、9カ月おきで後2回。総務省の担当者は懸念を示す。「早く条例改正するほど自治体も多くの財源を確保できる。遅れて仮に1回目の引き下げが5〜6月になれば、2回目は来年2〜3月。同様の駆け込み退職問題が起きる可能性がある」

 ◇退職・翻意、苦渋の決断 生徒に申し訳ない/卒業見届けたかったから
 今年度末の定年退職予定教員1290人のうち104人が早期退職した埼玉県では、退職を決断した教員がいた一方で3月末まで勤務することを選んだ教員もいた。教員最後の年度途中で人生の選択を迫る制度には、そろって疑問の声を上げた。
 退職した県立高の英語科の男性教諭(60)は「損をしないと仕事を続けられない残酷な制度。最後にこんな仕打ちをするのか」と心情を吐露する。「最後まで全うしたかったし、生徒には申し訳ない気持ちでいっぱい」と話す。一方、年度末での定年退職を選んだ別の県立高の男性教諭(60)は、担任する3年生の存在を理由に挙げた。「不条理な制度は不満だが、生徒の卒業を見送らなければと思えば、退職する決断はできなかった」と明かす。男性教諭は「早期退職を奨励するような制度。何でこんなひどいことをしたのか」と嘆いた。
 さいたま市立中の男性教諭(60)も「悩んだが、生徒や同僚に迷惑をかけると辞められなかった。『教員だからどうせ辞めない』とたかをくくっているのだろう」と話す。
 教員が退職した後のケアは、自治体によってまちまち。駆け込み退職した3県のうち、今年1月1日に改正条例を施行した佐賀県と徳島県。佐賀県では養護教諭2人を含む教員25人(うち担任9人)が早期退職したが、うち24人を年度末までの臨時職員として引き続き雇用。栄養教諭2人を含む教員7人(うち教頭1人、担任1人)が早期退職した徳島県は、ベテランを中心に臨時教員を確保できたといい、「学校から『困った』という声は聞いていない」と説明する。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130202ddm003040113000c3.htmlより、
 埼玉県は、年度内は同じ教員の再任用はしない。退職手当に加えて2〜3月分の給料(通常の約7割)も受け取ることになり、年度末まで勤めた教員との間で不公平感が生じるという考え方だ。臨時教員や非常勤講師を新たに確保したり、校務の割り振りを調整して対応するという。

 ◇識者「制度設計した行政に問題」
 埼玉県の上田清司知事が、県政への提案や意見を受け付けるコーナーには100件以上の意見が寄せられた。ほとんどは県の方針への批判で「条例の施行日がおかしい」「児童や生徒に謝るべきだ」などだった。中には「先生は使命感をもってやってほしい」と教員への批判も。一方、同県教委にも150件ほどの意見が寄せられたが、こちらは半数近くが早期退職する教員を問題視する内容だったという。
 埼玉県PTA連合会の長田広(おさだひろし)会長は「年度途中で制度を変えれば、こういう事態は想定できた。先生にも生活がある。不利益を被りながら残ってくれた9割以上の先生には感謝している」と保護者の立場を強調した。
 お茶の水女子大の耳塚寛明(みみづかひろあき)副学長(教育社会学)は「教員が(早期退職という)経済合理的な行動をしたときに悪影響が出るのを予想せず制度設計した行政に問題がある」と指摘。「職務と子供への影響を考えてもらえないかと教員に期待することはできるが、期待を超えて職業的な倫理を強く求めるのは厳しいのではないか」と話している。

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