中国大気汚染 「改善は日中の利益だ」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51332620U3A200C1PE8000/より、
日経新聞 社説 北京のスモッグが問うもの
2013/2/4付

 首都・北京を含む中国の北部はこの冬、有害なスモッグに覆われている日が多い。邦人を含め現地で暮らす人たちの健康被害が心配だ。北京では一部の工場が操業停止に追い込まれ、航空便がキャンセルされるなど、経済への悪影響が出ている。海を隔てたわが国への越境汚染の不安も募る。
 わけても懸念されるのは、PM2.5と呼ばれる微小粒子状物質の影響だ。直径2.5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下ときわめて小さく、肺の奥まで入りやすいため、健康被害も深刻になるおそれが指摘されている。
 中国でPM2.5が注目されるようになったのは、2008年に新築された米国大使館が敷地内の濃度を発表し始めてからだ。地元当局は当時、PM2.5を測定していなかった。
 ところが、政府や当局は「内政干渉だ」などと、米国大使館に反論することに力を注いだ。双方の見解の食いちがいが、市民の不安を招いた。当局は最近になって測定や対策に力を入れ始めたが、後手に回ったのは否めない。
 北京の大気汚染は08年の北京五輪の際も国際的な関心を呼んだ。そのため共産党政権は様々な対策を打ち、五輪の期間中は大きな問題にならなかったが、現状から判断すると当時の対策は小手先にとどまったといわざるを得ない。
 大気汚染が深刻なのは北京だけではない。全土を見渡せば、大気汚染以外の公害も目立つ。胡錦濤国家主席は持続的な成長をめざす「科学的発展観」を打ち出したが、後を継ぐ習近平・共産党総書記はこれを掛け声倒れにしないための実行力を問われている。
 PM2.5の規制は日本でもわりあい最近のことだ。中国からの越境汚染を考えれば、測定体制はさらに充実すべきかもしれない。中国、さらに韓国も含めて、東アジアの環境問題に取り組む一層の努力も必要だろう。北京の米国大使館のように、海外で暮らす邦人のための有意義なサービスを編み出す知恵も求められる。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130202/chn13020203070000-n1.htmより、
産経新聞【主張】中国の大気汚染 越境被害に責任を果たせ
2013.2.2 03:06 (1/2ページ)

 中国各地の自動車排ガスや工場の排煙による大気汚染は、もう限界を超えている。
 肺がんなどを引き起こすという微粒子状物質PM2・5の濃度が東部地域では1月、一時は世界保健機関(WHO)の指針値の数十倍まで上昇した。北京市では呼吸器不調を訴える住民が急増しぜんそく発作で死者も出た。
 有害物質を含んだ濃霧は日本の国土の3倍半に広がった。西日本への飛来も確認され、福岡市などでは日本国内の基準値を超える濃度が観測されている。
 国境を越えての汚染拡大は許されない。温家宝首相は先月29日、「現実的で有効な措置を取らなければならない」と述べたが、中国政府の対応は無責任に過ぎる。世界第2位の経済大国としての自覚をまったく欠いている。
 大気汚染が目に見えて進んだのは1月11日ごろからだ。
 中国環境保護省によると、北京、天津両市や河北、山東両省では6段階の大気汚染指数で最悪の「深刻な汚染」となり、東北地方や内陸部でも2番目に悪い「重度の汚染」となった。放射冷却現象に無風状態が加わり、地表近くの高湿度の空気中に汚染物質が滞留したという。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130202/chn13020203070000-n2.htmより、
2013.2.2 03:06 (2/2ページ)
 だが、自然現象のせいにはできない。30年余り前、改革開放に舵(かじ)を切った共産党政権は国力増強のため、自国内だけでなく、世界中から資源を買い集め、工業生産のために石油・ガスを野放図に消費し続けたからだ。
 汚染物質を大量排出する企業も、取り締まるべき役所も、共に共産党が支配する一党独裁体制の下、「不都合な真実」に蓋をしてきたツケが未曽有の大気汚染となって噴出している。
 北京市当局は100社以上の工場の操業を停止し、公用車の30%使用制限などの緊急措置をとったほか、汚染除去能力が劣る工場の閉鎖などの対策を打ち出した。
 「社説すり替え」問題で注目された広東省の週刊紙「南方週末」は5年前、「中国都市部での大気汚染による死者は毎年約30万人」と報じていた。最近も北京大学と環境保護団体が「北京、上海など4都市で昨年、PM2・5が原因で約8600人が死亡した」とする調査報告を行っている。
 中国政府は真偽のほどを明らかにすべきだ。そして、対策の実効性が問われている。

http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000m030049000c.htmlより、
中国:大気汚染 生活スタイル、発展モデル見直しの声も
毎日新聞 2013年(最終更新 01月31日 21時47分)

 【北京・成沢健一】深刻な大気汚染が続く中国では、生活スタイルや発展モデルを見直そうとする声が高まっている。インターネット上では重度の汚染状態が改善されなかった場合、春節(旧正月、今年は2月10日)の伝統である爆竹や花火の使用を制限すべきだとの意見が支持を集め、長期的な視点での意識改革を呼びかける論調も強まる一方だ。
 北京では昨年の春節の未明、呼吸器などの疾患を引き起こす微小粒子状物質「PM2.5」が1立方メートル当たり1593マイクログラムとなった。1月に入って記録された「深刻な汚染」とされる数値でも1000マイクログラムを超えたケースはなく、専門家らが大都市の中心部での爆竹や花火の使用禁止や削減を提言している。
 中国メディアによるアンケートでは「健康と青空のためには各自の努力が必要だ」などとして3分の2程度の人が提言に賛同しているが、「味気ない春節となってしまう」「1カ月もスモッグに覆われているのに、春節の数日にそこまでの対応が必要なのか」といった反対論も根強い。
 中国紙「中国青年報」は論評で「短期的な問題に過ぎない」と指摘し、環境保護を意識した市民の自発的な行動を訴えた。
 普段は対外強硬論が目立つ国際情報紙「環球時報」も社説で「深刻な大気汚染には合理的でないエネルギー消費や産業の構造、生活スタイルに加え、中国の発展モデルや体制の問題も見える」と強調。「北京五輪の前に外国メディアが北京の大気汚染を書き立て、それには道理があった。あの時にもっと外部の意見を聞いていれば、我々はその後の数年で環境保護に的確に取り組めたはずだ」と率直に認めた。

http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000m030038000c.htmlより、
中国:大気汚染地域さらに拡大 病院に患者相次ぐ
毎日新聞 2013年(最終更新 01月31日 20時27分)

 【北京・工藤哲】中国各地で大気汚染の深刻な地域がさらに拡大し、中国国内の医療機関には、のどや目の痛みを訴える患者が詰めかけている。特に幼い子供や、屋外の活動が多い警察官などの健康悪化が懸念され、当局は対応に追われている。視界不良による交通事故も相次いでおり、影響の広がりに中国国外からも懸念の声が上がっている。
 中国環境保護省によると、1月30日のデータで、大気汚染の高い数値を示しているのは北京や天津、上海、陝西(せんせい)省西安、江蘇省南京、遼寧(りょうねい)省瀋陽、黒竜江省ハルビンなどで約143万平方キロ。日本の面積の4倍近くに達した。
 北京市中心部の朝陽区にある病院では31日午後、家族連れで駆けつけてきたマスク姿の子供の姿が目立った。「幼稚園が休みになった。こんな天気大嫌い」。北京市通州区の平紫※(へい・しき=※は王へんに其)ちゃん(5)はマスク越しに訴えた。父親のタクシー運転手、平海超(へい・かいちょう)さん(29)は「数日前から『のどが痛い』と言い始めた」と不安がる。近くにいた康家麟(こう・かりん)君(4)はへんとうが炎症を起こして水も飲めないため、点滴が必要という。
 各地では、連日の大気汚染が解消されず、外出する人もまばらだ。北京の日壇公園で清掃を担当する男性の王跌東(おう・てつとう)さんは「ここ数日、人の数は半分に減った」と話す。
 中国メディアは31日、視界不良のため北京市中心部の高速道路で車100台が追突事故などを起こしたと伝えた。数百メートル先もはっきり見えない状態が続いており、飛行機が欠航し、主要道路の通行も規制されている。公用車の走行を控える対策も取られているが、北京で公用車875台の違反通行が判明するなど、徹底は不十分だ。
 通行量の多い幹線道路でマスクなしのまま交通整理を担当する警察官らの健康悪化も懸念されている。インターネット上での非難を受け、当局は30日になってマスク着用での勤務を認め始めた。商店ではマスクや空気洗浄機が飛ぶように売れている。
 中国の大気汚染の日本への影響について、加藤勝信官房副長官は31日の記者会見で「現時点でただちに影響があるというレベルではないということだが、引き続き環境省で調査するなど適切な対応を図る」と述べた。

http://mainichi.jp/select/news/20130131k0000e040166000c.htmlより、
中国大気汚染:流入の西日本「物質濃度が急上昇」
毎日新聞 2013年(最終更新 01月31日 11時59分)

 中国で深刻化する大気汚染が「越境汚染」として西日本に流入した影響で、30〜31日にかけて近畿地方で大気汚染物質「硫酸塩エアロゾル」の濃度が急上昇したとみられることが、国立環境研究所の分析で分かった。地上の実測速報値も、環境基準を超す地点があった。
 硫酸塩エアロゾルは、石炭などの燃焼で発生し、濃度が高くなると、ぜんそくなどの呼吸器疾患を起こす恐れもある。
 国環研のシミュレーションでは28日午後以降、大陸から九州地方に流入し、30日夜から31日早朝には、大阪府や奈良県などで微小粒子状物質「PM2.5」が、環境基準(1立方メートル当たり1日平均値35マイクログラム以下)を超すレベルになったことが示された。30日午後6時の地上観測点の実測速報値も阪神地区などで基準を超え、予測結果をほぼ裏付けた。ただ、基準は1日平均値を基に判断するため、基準を超えたとはみなされない。
 中国では近年、石炭など化石燃料の大量消費が原因の大気汚染が社会問題化している。国環研は、東アジア地域で大気汚染物質の濃度を推定。風向や風速などの気象データを加えて移動状況をシミュレーションし、公表している。ただ汚染の全てが中国由来ではなく、国内の暖房使用や自動車の排ガスなども影響しているとみられる。
 国環研は「濃度上昇の予測結果は、大陸の大気汚染物質が流れ込んだためと解釈できるが、国内の濃度は中国の汚染レベルに比べると格段に低く、健康な大人が気にするレベルではない」と説明している。【江口一】

http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2013013000960より、
大気汚染対策、効果に疑問も=公用車禁止や工場操業停止-北京

 【北京時事】中国では自動車の排ガスや石炭燃焼などを原因とした深刻な大気汚染が連日続き、市民生活にも影響を及ぼしている。北京市は29日に公用車の3割の使用中止など緊急対策を取ったが、抜本的な改善にはつながっていない。
 北京では1月に入ってからほとんど晴天は見られず、中国メディアによれば、スモッグが発生したのは25日間にも及ぶ。視界が悪い状態が続き、市当局は市民に外出を控えるよう呼び掛けた。マスク姿の市民の姿も増えたほか、呼吸器に異常を訴えるケースも急増している。
 大気汚染は排ガスなどに含まれる直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が高まることで発生。北京市当局は濃度を抑えるため、公用車の使用禁止に加えて、100以上の工場の操業停止、工事現場での一部作業中止などの対策を指示した。(2013/01/30-20:14)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130130/k10015171161000.htmlより、
中国大気汚染深刻 警報を新設
1月30日 17時9分

大気汚染が深刻な状態が続いていることから、中国の気象当局は、大気汚染に関する警報の出し方を見直し、新たに外出を避けるよう呼びかける最高レベルの警報を設け、警戒を呼びかけています。
中国では今月に入ってから、東部や内陸部を中心に広い範囲で車の排気ガスなどに含まれるPM2.5という極めて小さな粒子の濃度が高く、大気汚染が深刻な状態が続いています。
呼吸器系の被害を訴える人も後を絶たないことから、中国気象局は、大気汚染に関する警報の出し方について、これまでの2段階から、PM2.5の濃度などを踏まえて、さらに高いレベルの警戒を呼びかける警報を新たに設け、3段階に見直しました。新たに設けられた最高レベルの警報では、大気汚染が深刻だとして、外出を避けるよう呼びかけるものとなっています。
30日は、東部の山東省や内陸部の安徽省などで最高レベルの警報が出されました。
中国では、深刻な大気汚染を受けて、温家宝首相が汚染物質の排出を減らすなど、有効な措置を取るよう指示を行い、公用車の利用の削減や工場の操業の停止など、緊急の措置が取られていますが、依然として大気汚染が深刻な状態が続いています。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年1月30日(水)付
中国大気汚染―改善は日中の利益だ

 中国の大気汚染が深刻だ。北京などの広い範囲が、有害物質を含んだ濃霧にたびたび覆われている。
 ひとごとではない。中国の汚染が風に流されて日本に影響する「越境汚染」も起きている。両国経済は緊密で、中国で暮らす日本人は14万人に上る。
 中国政府は、改善を急ぐべきだ。日本が優れた環境技術で協力すれば、双方の利益になる。
 尖閣諸島の問題で関係はぎくしゃくしたままだが、こうした面での協力はどんどん進めるべきだ。両国の関係を前に進める力にもなり得る。
 ひどい大気汚染は、今年始まった話ではない。
 問題になっている汚染物質は直径が千分の2・5ミリ以下の微小粒子状物質、PM2・5だ。
 粒が小さいため、呼吸器の奥深くまで入り込み、ぜんそくや肺がんなどの病気にもつながるとされる。
 自動車や工場の排ガス、暖房用ボイラー、火力発電所などが主な発生源だ。暖房が多く使われ、空気が滞る気象条件が重なる冬場に悪化しやすい。
 汚染がひどいときは学校が屋外での活動をやめるなど、日常生活にも支障が出ている。
 経済成長に突き進んだ中国では日本の高度成長期のように、環境対策は置き去りにされてきた。もうけを優先し、規制を守らない企業も多い。
 だが、環境に対する市民の意識は大きく変わりつつある。
 中国政府はもともと、PM2・5の数値を明かしていなかった。ところが、北京の米大使館が独自に公表していた数値に市民の関心が高まり、政府も発表せざるを得なくなった。
 環境への影響を心配して、工場建設に反対する運動も、各地で相次いでいる。
 中国政府は、成長一辺倒から生活の質を重視する方針を掲げるようになり、省エネや環境分野での外資導入も奨励する。昨年11月の共産党大会では「エコ文明建設」が強調された。
 公害に取り組んできた日本の経験は、中国にとって大いに参考になるはずだ。中国への政府の途上国援助(ODA)はほとんど打ち切られたが、民間で出来ることも多い。
 日本の自治体が呼びかけ、中国との環境ビジネス拡大を目指す動きも出ている。先端技術を守る工夫は必要だが、日本企業にとってビジネスチャンスでもある。大学など研究機関の連携も有益だ。
 日本政府はODAで培った経験も生かし、積極的に橋渡しや後押しをするべきだ。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130129/k10015148561000.htmlより、
中国の大気汚染 帰省にも影響
1月29日 19時21分

深刻な大気汚染が続く中国では、29日も広い範囲で最悪レベルの汚染を記録し、視界不良のため各地で高速道路が通行止めになるなど、旧正月をふるさとで過ごす人々の帰省の足にも影響が出ています。
このうち北京では、車の排気ガスなどから出るぜんそくや気管支炎を引き起こすPM2.5という極めて小さな粒子の濃度が最高で東京の年間の平均値の20倍以上に達し、大気汚染の基準となる指数も6段階のうち最悪のレベルとなりました。
このほか、河北省や山東省、それに安徽省など東部や内陸部もスモッグに覆われ、気象当局は警報を出して住民に外出や車の利用を控えるよう呼びかけています。
中国では来月9日から始まる旧正月の大型連休を前に大規模な帰省ラッシュが始まっていますが、視界不良のため高速道路が通行止めになり一部の長距離バスが運行を取りやめたほか、空の便も欠航や遅れが相次いでいて、帰省の足にも影響が出ています。
観測史上、最悪とされる大気汚染の原因について、北京市は「例年以上の冷え込みで暖房用の石炭の使用が増えたほか、湿度が高く風が弱い気象条件の中で、車の排気ガスなどに含まれる汚染物質が拡散されなかったためだ」としていています。
中国では大気汚染による健康への影響に懸念が高まっており、北京市は自動車に新たな排出基準を設けるなどして、2020年までに汚染物質の濃度を平均で2%減らすとしています。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50788280Q3A120C1PE8000/より、
日経新聞 社説 労働人口減が問う中国の成長エンジン
2013/1/20付

 中国の国家統計局は、2012年の国内総生産(GDP)が物価の動きを考慮した実質で前年に比べ7.8%増えたと発表した。成長率が8%を割り込んだのは、アジア通貨危機の影響が色濃かった1999年以来、13年ぶりだ。
 足元では景気が回復する兆しも見える。12年10~12月期の成長率は8四半期ぶりに、前の四半期に比べ上昇した。ただ、2ケタ成長が当たり前だった2000年から07年までのような勢いは、もはや期待できないようだ。
 一つには、労働人口(15歳以上60歳未満)がついに減り始めたことがある。12年1年間で345万人減った。馬建堂・統計局長は2年ほど前、労働人口が13年までに減少に転じるとの見通しを示していた。想定の範囲内とはいえ、比較的早く転機が来たといえる。
 中国経済の高成長を引っ張ってきた最大の原動力の一つは、豊富で比較的低賃金の労働力だった。馬局長によれば労働人口の減少は「少なくとも30年ごろまで」は続く見通し。いわば最強の成長エンジンが、当分の間は弱まり続けるとみなければならない。
 高成長を引っ張ってきたもう一つの重要なエンジンである投資にしても、過度の期待はできない。過剰設備の問題が深刻なうえ、国民の反発が強い不動産バブルの再燃を招くおそれがあるからだ。
 中国経済は新たな成長エンジンを必要としている。すでに共産党政権は技術革新や新産業の育成といった方針を打ち出し、なかでも個人消費の拡大を重視している。そして個人消費の振興には、成長の果実が低所得層にも行き渡るような改革が欠かせまい。
 馬局長はGDPの発表にあわせて、中国の貧富の格差がかなり深刻なことを裏付けるデータも明らかにした。格差を是正して、高まる一方の社会的な緊張を和らげるためにも、低所得層の収入を増やす必要がある。
 胡錦濤国家主席が率いていた前指導部はかねて、賃金制度や税制など包括的に所得分配のあり方を見直す改革案を検討してきた。遅くとも12年中には改革案を発表したい意向とも伝えられていた。
 しかし、具体的な成果を出せないまま、前指導部は昨年11月の共産党大会で第一線を退き、新年を迎えた。習近平・共産党総書記が率いる新指導部は、前指導部から持ち越された「宿題」に断固として取り組まなければならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013010802000105.htmlより、
東京新聞【社説】中華ばかり言うなかれ 習体制が始動へ
2013年1月8日

 中国では今春、習近平体制が本格始動する。一党独裁維持のため排外的な民族主義を強めるのでなく、周辺に脅威を与えぬ平和発展の道を歩んでほしい。
 昨年秋の党総書記の就任会見で最も耳目を集めたのは、習氏の「中華民族の偉大な復興を果たそう」との呼び掛けだった。
 民族主義を鼓舞するような訴えはその後も続き、年末の重要講話では「中華民族の偉大な復興を実現するには、すべての中華子女が手を携えて努力する必要がある」と強調した。

◆党に最も重要なことは
 その狙いは二つあるであろう。大陸では、漢族を中心に少数民族などとの団結を強め、内なる安定を図ること。さらに、香港、台湾の同胞や、東南アジアなどの華僑や華人に中華圏としての連帯感を呼び掛けることである。
 中国共産党にとって最も重要なことは、一党独裁体制の堅持であろう。これは誰が総書記になっても変わらない。
 もしも、民族主義を色濃く打ち出すことで、独裁の維持と国内や地域の安定を図ろうとするのなら、世界は誤った選択と見るに違いない。
 歴史を振り返れば、中華民族の復興という言葉は、中国革命の父といわれた孫文が唱えていた。
 確かに、孫文が掲げた三民主義の一つである民族主義には、漢族中心の考えも色濃い。
 だが、孫文は一九二四年に神戸で有名な「大アジア主義講演」をした。日本に対し「西洋覇道の走狗(そうく)となるのか、東洋王道の守護者となるのか」と問いかけた。
 習指導部には、孫文が欧米の帝国主義に対し、東洋の平和主義や日中友好の大切さを説いた歴史も思い起こしてほしい。
 つまり、中華民族の復興というスローガンばかりを強調すれば、排外主義や極端な対外強硬路線につながりかねないという危うさをはらんでいるのだ。

◆民の不満は臨界点に
 中国は経済では世界第二の大国になった。大国にふさわしく、周辺地域に脅威を与えるような方法でなく、平和的、共存的に発展する道を歩んでほしい。
 特に、尖閣の問題では、自民党の新政権にも注文がある。
 日本に主権があることは明白であり、譲る必要はない。だが、民主党政権時代の「領土問題はない」との主張は今や、国際的には説得力を持たない。
 米国は沖縄と一緒に尖閣の施政権を返還したが、主権問題では立場を表明しなかった。「棚上げ論」などのあいまいさは、外交では一つの知恵であった。
 自民党政権は、対中外交では歴史的に太いパイプを築く努力をしてきた。その人脈を生かして局面打開を図ってほしい。「外交上の係争」が存在することは認めるなど政治の知恵を使い、対話に踏み出すことが重要だろう。
 中国内政では、習指導部が真っ先に取り組むべきは汚職腐敗の一掃と貧富の差の改善であろう。
 中国の研究者などの調査によると、デモや暴動は近年、年間十八万件に迫っているといわれる。だが、中国政府は二〇〇五年を最後にデータを公表していない。
 所得格差を示すジニ係数についても、社会的騒乱が多発するとされる〇・四を超えた〇〇年以降は公表をやめた。
 臭い物にふたをするような秘密主義や、腐敗幹部が党員のままで企業を私物化し富を得られるような社会構造にしてしまったことに対し、民の不満は臨界点に達している。
 汚職撲滅では、昨年秋の党大会以降、各地で汚職官僚の摘発が続いている。
 しかし、摘発されたのは昨秋引退した胡錦濤前総書記が率いる共産主義青年団派に連なる官僚が目立つ。
 もしも、腐敗撲滅を隠れみのにした党内の政治闘争にすぎないのであれば、民心は安定しない。
 人治から法治への転換も、難しいが避けられない政治課題である。言論や報道の自由を尊重し、党の権力への監視を進めることが、その一歩となろう。

◆木で鼻をくくる対応
 改革派で知られる北京大学教授ら七十人が昨年末、政府に表現の自由を求める呼び掛けをネットで発表した。
 中国外務省は「中国で言論の自由を抑圧するという問題は存在しない」と、木で鼻をくくったような対応だった。
 憲法で保障されているはずの言論の自由は、「党の指導」の名の下に有名無実である。
 そうした建前と実態の乖離(かいり)が問題なのであると、率直に目を見開いてほしい。
 民意を反映できるような選挙制度の確立や司法の独立も急務であろう。中国人民のためであり、世界もそうした改革を望んでいる。

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