桜宮高校体育科が断絶させられた理由 小林節氏

http://www.nnn.co.jp/rondan/ryoudan/index.htmlより、
一刀両断 -小林 節-
桜宮高校体育科が断絶させられた理由
日本海新聞 2013/2/5の紙面より

 大阪市立桜宮高校の体育科が事実上、解体された。つまり、体育科の定員が普通科に振り替えられて、全体として、一括して募集され、教員も大幅に人事異動になるとのことである。これで今の体育科は存在しなくなる。

 この原因は、ある体育教師による執拗(しつよう)な体罰(暴行・傷害)に精神的に追い詰められた生徒が自殺したこと(傷害致死?)にある。

 こういう話になると、必ず、「あの先生は良い教師(熱血教師)だった」、「あの先生のおかげでスポーツの強豪校になれたのだ」、「あの先生の指導を受けたくて準備している受験生がかわいそうだ」といった反対論が出て来るものである。

 人間は本来的に不完全な存在で、皆、それぞれに個性があるので、その教師の生徒に対する対応も一様でないし、生徒の側の受け止め方も一様ではないだろう。そして、自由な社会である以上、多様な意見が表明されることは自然である。

 しかし、それでも、桜宮高校体育科の解体は回避し得ないであろう。

 まず、教育現場における体罰は法律上は禁止されているが、それでも、伝統的に体罰が存在していることは皆が知っている。しかし、近年、さまざまな事件の発覚を切っ掛けとして体罰の問題が見直され、既に結論が出たと思われる。つまり、指導方法としての体罰は有効ではなく、それは単なる犯罪である。教師は言葉の説得力と正しい実演で指導すべきで、体罰は、教師の能力の限界を露呈したものである。

 その上で、今回のような不幸な刑事事件が発覚した場合、もちろんその加害者はその教師個人であるが、それは、実態として巨視的に見れば、その学校(校長・教頭・教科主任)、その部活動(他の生徒たち・保護者たち・OBOGたち)が全体としてその教師の体罰を容認しているからこそ行える体罰なのである。

 だから、一つの大きなシステムとしての学校、学科、部活が1人の少年の生命を奪った…という因果関係がそこに存在する。それは、集団による人権侵害以外の何ものでもない。しかも、その集団としての加害者のほとんど全員が加害者としての自覚を有していない。

 だからこそ、その学校について管理責任を有する教育委員会がその加害の「システム」を事実上解体した決定は正しいことになる。
(慶大教授・弁護士)

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