刑事司法改革 「考え違いを元から正せ」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013020802000123.htmlより、
東京新聞【社説】刑事司法改革 冤罪防止策を固めて
2013年2月8日

 新しい刑事司法制度の基本構想が、八日の法制審議会に報告される。冤罪(えんざい)は深刻な人権侵害だ。この反省に立つはずの改革案に、古い発想がにじんでいる。これで冤罪をなくせますかと問いたい。
 法制審の特別部会がまとめた基本構想は取り調べの可視化について、二つの案を出した。
 一つは原則として、被疑者取り調べの全過程録画を義務づけるとした。ただし、対象事件は「裁判員裁判対象事件を念頭に置き、さらに範囲のあり方を検討する」という内容だ。
 もう一つは、可視化の範囲を「取調官の一定の裁量に委ねる」という案だ。
 裁判員対象事件に限ってしまえば、起訴事件の3%にとどまる。厚生労働省の局長・村木厚子さんが巻き込まれた郵便不正事件や、パソコンの遠隔操作事件などは対象外となってしまう。対象は基本的にすべての事件に広げられるべきだ。可視化は捜査の基本だと発想を大逆転してほしい。
 また、録音・録画を取調官の裁量に任せては、違法・不当な取り調べを抑制することは到底、できまい。「裁量」の文字を入れること自体が、捜査機関側の古い体質が読み取れる。論外だ。
 身柄拘束前の任意段階でも、自白の強要などが行われる捜査実態を考えれば、逮捕時からの録画でも遅いほどである。可視化は最重点テーマだけに、捜査側の都合ではなく、冤罪防止の観点に立って考えられるべきである。
 証拠開示については、「検察官が保管する証拠の標目を記載した一覧表を交付する」案が出た。実現すれば前進になるが、「採否も含めた具体的な検討を行う」とのあいまいな表現が付いた。過去の冤罪事件でも、検察による証拠隠しが問題になった。全証拠のリスト開示は不可欠で、さらに全証拠開示に向かってほしい。
 見逃せないのが、共犯者らの情報提供と引き換えに刑を減免する「司法取引」の導入や通信傍受の拡大、さらに盗聴器を仕掛ける会話傍受の導入などの検討である。これらは警察・検察の捜査力を強化させる“道具”である。
 そもそも特別部会は、自白偏重の捜査が冤罪を生んだ経緯から設けられた。基本構想には、この反省が感じられない。仮に可視化などが中途半端な形で終わり、捜査側が新たな“武器”を得ては、本末転倒になる。今後、分科会で具体案が検討されるが、まず冤罪防止策をしっかり固めるべきだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月6日(水)付
DNA型管理―法律にもとづき厳格に

 この姿勢は腑(ふ)に落ちない。すみやかに見直す必要がある。
 犯罪の捜査や裁判で、きわめて大きな意味をもつDNA型資料の取りあつかいをめぐる警察当局の対応である。
 採取、保管、利用、抹消などに関する法律をさだめ、捜査に役立てつつ、人権侵害がおきない仕組みをつくるべきだ。そんな声に対し、警察庁は「国家公安委員会規則にしたがって適正に運用しており、法制化の必要はない」と反論している。
 新しい時代の刑事司法のあり方を議論する法制審議会の特別部会でも取りあげられた。
 しかし意見が対立したまま方向性を見いだせず、先日まとまった基本構想では、別途検討すべき課題と仕分けられた。「別途」の場が、いつ、どこにできるのかははっきりしない。
 社会の治安と個人のプライバシーという、一人ひとりにかかわる大切な問題だ。
 国民の代表でつくる国会で議論し、その結論を「法律」という形で内外に明らかにして、民主的コントロールの下におく。
 それが当然のことわりではないか。役所の意向でいかようにもなる「規則」で処理し続けるのは、筋がちがう。
 警察も立法に前向きだというのが、つい最近までのおおかたの受けとめだった。
 国家公安委員長が識者を集めてつくった研究会は、昨年2月に報告書を公表している。そこには「法制化をめぐる議論を踏まえ、DNA型データベースの抜本的な拡充をめざすべきだ」とある。席上、どんな法律が考えられるか、警察側がイメージを例示したこともあった。
 それがなぜ変わったのか。
 考えられるのは、法制化によって手足をしばられるのを避けたいという思いだ。
 いざ議論になれば、採取に裁判所の令状を必要とするか▽データベースに登録する容疑者の範囲をどうするか▽冤罪(えんざい)を証明するため弁護側が利用することを認めるようにするか――などの論点が持ちあがるだろう。
 ほとんどの容疑者が任意で採取に応じている現状のほうが、当局には好都合かもしれない。登録件数は先月末の時点で34万件を超え、規則のもとで順調に「拡充」している。
 だが、外国では法律にもとづく運用が当たり前だ。国を超えた捜査協力がますます必要になる時代に、国際標準に届かないやり方が通用するのか。よくよく考えるべきだろう。
 人々の理解と支持があってこその捜査である。「信じよ。任せよ」では立ちゆかない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年1月22日(火)付
刑事司法改革―考え違いを元から正せ

 捜査当局の、捜査当局による、捜査当局のための文書。
 そう言わざるをえない。こんなことで国民の理解が得られると思っているのだろうか。
 新しい刑事司法のあり方を検討している法制審議会の特別部会が、今後の制度づくりのたたき台となる「基本構想案(部会長試案)」を公表した。
 これが目を疑う内容だ。
 部会は、検察の証拠改ざん事件などをうけて設けられた。取り調べ段階での容疑者らの供述を過度に重視してきた捜査・公判を見直し、時代にあった制度をつくるのが目的だ。
 私たちも社説でこの方向性を支持し、諸外国のしくみも参考にしながら、幅広に議論するよう求めてきた。
 構想案に盛られた内容は多岐にわたるが、肝心なのは前提となる現状認識である。これを誤っては、まともな結論が導きだされるはずがない。
 まず、これまでの捜査をどう見ているのか。
 冒頭にこうある。「取り調べによる徹底的な事案の解明と綿密な証拠収集は、国民に支持され、信頼を得て、治安を保つことに大きく貢献してきた」
 そこには、死刑や無期懲役刑の事件が、再審でいくつも無罪になったことをはじめ、過去への反省はひとかけらもない。徹底、綿密といった美辞麗句で、真実を隠すことはできない。
 最近も、パソコンを使ったなりすまし事件など、捜査員が自分たちの都合のいいように供述を押しつけたとしか考えられない例が、相次いで発覚した。
 ところが構想案によると、こうした不当な調べも、取調官が「職務熱心のあまり」おこなったものとされている。甘い評価に驚く。職務熱心でぬれぎぬを着せられてはたまらない。
 一方で、「捜査段階の弁護活動が活発化し、供述の収集が困難化している」と、まるで法律が認める弁護活動が悪の源であるかのような記述がある。
 構想案がとっているスタンスのゆがみは明らかだ。
 こんな具合だから、たとえば取り調べの録音・録画をめぐっても、「対象範囲は取調官の裁量にゆだねる」などという案がしれっと書かれるのだ。
 実際にあった多くの事件をもとに、「当局任せではいいとこ取りを許し、かえって弊害が多い」と、くり返し指摘されているにもかかわらず、である。
 新たな捜査手法はほしいが、手足を縛られるのは困る――。そんな捜査側の思惑ばかり目につく構想案は、根本から書き直されなければならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130119k0000m070096000c.htmlより、
社説:新たな刑事制度 可視化はもっと広く
毎日新聞 2013年01月19日 02時30分

 新しい刑事司法のあり方を検討している法制審議会の特別部会で、基本構想案が示された。
 最大の焦点は、取り調べの録音・録画(可視化)の導入をどういった事件を対象に実施するかだ。この点について、基本構想案では裁判員裁判対象事件で容疑者が逮捕された場合にその全過程について録音・録画を義務づける案と、取調官の一定の裁量に委ねる案を併記して示した。
 足利事件など近年相次いだ再審無罪事件では、強引な取り調べで自白を強要した実態が明らかになった。
 市民が加わる裁判員裁判が始まった中で、刑事司法の最大の課題は冤罪(えんざい)を引き起こさないことだ。適切な取り調べが行われたかをチェックする可視化の役割は重大である。導入する以上は、取調官の裁量を大幅に認めるようなご都合主義的な制度には反対だとまず強調しておきたい。
 また、裁判員裁判の対象でない事件の可視化についても、踏み込んだ検討が必要だ。例えば遠隔操作されたパソコンによって4人が誤認逮捕された事件では、2人が「自白」していた。こうした例は氷山の一角に過ぎないのではないか。
 そもそも裁判員裁判対象事件は、公判請求された事件の約3%に過ぎないのだ。軽微な事件は除くとしても、対象事件以外でも可視化は必要だ。また、過去の冤罪事件で、逮捕前の任意の取り調べで「自白」させられていた例に照らせば、逮捕後だけの可視化では不十分だ。
 18日の会合で、基本構想案について委員から反対意見が相次いだのは当然だろう。
 警察庁が昨年末、録音・録画の下での取り調べ(試行)を担当した捜査員に聞き取り調査した結果、9割以上が可視化は「有効」だと回答した。「可視化は真相解明の妨げになる」といった従来の常識は、現場レベルで大きく変化しつつある。
 試行が広まっている現状も踏まえ検討すべきだ。弁護人の取り調べへの立ち会いを一定の条件で認めることを含め、より広い範囲で可視化を実現する道を探ってもらいたい。
 一方、捜査機関が容疑者の供述に頼らずに客観的な証拠を得やすくするため、新たな捜査手法の導入も部会で検討中だ。その一環として基本構想案では、通信傍受の対象犯罪の拡大を盛り込んだ。具体的には振り込め詐欺や組織窃盗を挙げた。
 時代に見合った捜査手法の導入は社会的な要請だが、要件を厳格に定め適正に運用するのが大前提だ。
 司法取引や刑事免責など部会の委員間で意見の隔たりが大きいテーマも少なくない。人権にも配慮しつつ、どう治安の維持と折り合いをつけるのか。議論を深めてもらいたい。

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