次期日銀総裁 「政治との対話力が重要だ」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51505400Y3A200C1EA1000/より、
日経新聞 社説 難局に向かう日銀総裁に求められる条件
2013/2/8付

 3月に退任する白川方明日銀総裁の後任選びが本格化する。経済が長期停滞から抜け出すには政府だけでなく日銀の役割も極めて重要だ。経済再生という共通目標へ向けて政府と連携し、柔軟に対応する。同時に、必要な場合には政治的反発を恐れずに政策の決断をする胆力も持つ。次期総裁に求められるのはそうした資質である。
 日銀総裁は国会の同意を得て内閣が任命する。安倍晋三首相は「大胆な金融緩和ができる人」という条件で人選を進めるが、与党は参院で過半数の議席を持っておらず、任命には少なくとも野党の一部の同意が必要になる。
 前回の総裁人事では財務省出身者かどうかが大きな焦点になったが、あくまで候補者が個人として必要な資質を持っているかどうかを判断基準にすべきだ。
 政府と日銀は1月にデフレ脱却に向けて2%の物価上昇率目標を設けることなどを盛り込んだ共同声明を発表した。新総裁は声明に沿って成果を出す意欲を持った人材であることが求められよう。
 ただ、その道は決して容易ではない。金利がほとんどゼロに近く伝統的な手段が限られている中で、金融緩和の効果を最大限高めるにはどうすればいいのか。金融政策が財政の穴埋めに使われていると受けとめられ、長期金利の急上昇などを招くような事態をどう避けるか。
 金融政策は物価上昇率が2%になるまでマネーの量を増やし、それを超えたら引き締めに入るといった機械的な操作ですむわけではない。日銀総裁には、生き物である経済と金融市場の動きやリスクに対する深い理解と洞察力が欠かせない。日銀の意図などを市場や国民に正確に伝える強い発信力を持つことも重要だ。
 総裁は世界のどこかで金融危機などが起きれば、海外の中央銀行トップらとただちに連絡を取り合い、議論をしなければならない。その意味では、国際的な信頼を得られる人材でないと務まらないだろう。
 もちろんこうした能力をすべて兼ね備えた人はいないかもしれない。同時に決める2人の副総裁との組み合わせで考えることになろう。とはいえ、危険な副作用を抑えつつデフレを克服するという狭い道を進まねばならない日本経済にとって、日銀新総裁の手腕は重い意味を持つ。将来悔いの残らないよう慎重に人選をしてほしい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年2月7日(木)付
日銀総裁―政府に物申せる人こそ

 日本銀行の白川方明総裁が、副総裁の任期切れにあわせて3月19日に繰り上げ辞任することになった。後任人事をめぐる政府・与党と野党の駆け引きが本格化している。
 安倍首相は「次元の違う金融政策」を求め、大胆な金融緩和策を断行できる人物を選ぶ構えだ。有力候補も、緩和策の強化を唱える学者や官僚OBが取りざたされている。
 しかし、新総裁には今後5年の金融のかじ取りがゆだねられる。緩和一辺倒で済むほど、道は平坦(へいたん)ではないはずだ。特定の政策や経済理論を信奉するか否かではなく、「人選の原点」に立ち、能力や資質をよく見極めてほしい。
 望まれる能力として、金融・財政、経済全般の高い見識を持つことはいうまでもない。市場や政治家との対話力、国際金融界で存在感を示せる説明能力も必要だ。
 白川総裁は専門の知見や論理的な説明力で、国際金融の世界では高い評価を得ていた。それは日本人で戦後初めて国際決済銀行(BIS)の副議長に選ばれたことでも裏付けられる。
 半面、市場との対話は欧米の総裁に比べて精彩を欠くとの批判がつきまとった。
 日銀は国内総生産(GDP)比で欧米をしのぐ緩和をしている。だが、民間資金需要が乏しく、政府の借金も膨大な日本の特殊事情の中で、緩和策の限界や制約に目配りすることが「受け身」の姿勢と見なされた。
 次期総裁には、緩和策が市場から適切に評価されるためのアピール力が求められる。
 むろん、政府の放漫財政や改革の停滞を正当化する「代弁」と見られてはいけない。緩和マネーを民間の資金需要の増加と「良いインフレ」につなげる構造改革を政府に迫ることこそ必要だ。政治との対話力が大事なゆえんである。
 海外当局と渡り合う力も一段と重要になる。緩和策の強化は円安要因となる。「日本は為替操作をしている」という海外の疑念を膨らませないためには、中央銀行の独立性を基盤に信頼関係を築かなければならない。
 何より大切なのは、財政規律について政府にきちんとモノが言える人物であることだ。金融政策が財政赤字の尻ぬぐいをしているという見方が強まれば、金利の急騰から複合的な危機を招く恐れがある。
 首相への忠言を恐れない人物をこそ選ぶ。アベノミクスの信用を維持するには、それが最大の支えになる。首相は、そうした認識に立ってみては。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130207k0000m070108000c.htmlより、
社説:白川総裁辞任へ “重し”とともに失うもの
毎日新聞 2013年02月07日 02時30分

 何とも皮肉な現象である。日銀の白川方明(まさあき)総裁が任期満了より約3週間早く辞任する意向を表明したところ、一段と円安が進み、日経平均株価が400円以上値上がりした。
 すべてが総裁辞任のお陰ではないにせよ、白川氏の“重し”が早めに外れることで、安倍政権が推進する大胆な金融緩和が一気に勢いを増すとの予測が強まったようである。金融緩和でさらに円安となれば輸出企業の利益が膨らむ。それを期待して株価が値上がりすること自体を否定するつもりはない。だが、政治による金融政策の支配が強まり、通貨が一方的に売られて価値を下げていくことを、果たして喜んでよいものなのかと問いたい。一時的な熱狂の陰で大事なものを失おうとしていないか、冷静に見つめる必要がある。
 ねじれ国会の下で同意人事が難航し、混乱の末に就任して以来、白川総裁は政治の風圧にさらされ続けた。だがそんな中でも、デフレの複合的な要因やバブルと金融政策の関係などについて、わかりやすいことばで国内外に発信を続けた。
 長期的な人口減少の影響や財政再建が遅れる危険性、構造改革の必要性など、中央銀行の専任領域を超えて、問題提起や時に警告も行った。これ以上金融緩和に頼っても、本当の問題が解決しないばかりか、必要な改革を遅らせたりバブルを生んだりと弊害を招く−−。訴えたかったのはそういうことだったのだろう。
 リーマン・ショック後の経済の混乱と国内政治の混乱の中で、正論を唱える中央銀行総裁に恵まれたことはある意味で幸運だった。だが、強まる一方の政治の圧力に押され、譲歩する形で結果的に主張と反する追加緩和を重ねざるを得なかった。
 白川総裁からすれば、緩和努力を見せることで、政治の介入に歯止めをかける狙いがあったかもしれない。だが、譲歩を続けた結末が、「物価上昇目標2%」の導入だと言われても仕方ないだろう。さらに「政治圧力がかかれば最後は折れる日銀」といった印象を国内外に与え、将来、もっと介入を招く土台を築いてしまった。単独で抗しきれる流れではなかったかもしれないが、自己の信念に正直で頑固な、もっと重たい重し役を果たしてもらいたかった。
 白川氏の辞任表明を受け、副総裁候補と合わせた後任人事が加速しよう。だが、これで金融政策を思うように動かせると考えてもらっては困る。安倍政権が日銀に緩和圧力をかけていることには、すでに海外からも懸念の声が上がっている。「政府の言うことをよくきく」と受け取られる人物を選ぶことが、果たして日本の国益にかなうだろうか。安倍政権は静かに考えてみるべきだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130116/plc13011603330005-n1.htmより、
産経新聞【主張】次期日銀総裁 政治との対話力が重要だ
2013.1.16 03:32 (1/2ページ)

 4月で任期が切れる白川方明日銀総裁の後任選びが本格化してきた。安倍晋三首相を中心に経済ブレーンの浜田宏一内閣官房参与らが15日に行った次期総裁についての協議はその号砲だ。
 デフレ脱却を最優先課題に掲げる安倍政権の経済政策で次期総裁の担う役割は大きい。それだけに、既に首相は「大胆な金融政策が実行できる」「2%上昇の物価安定目標や雇用最大化に理解を示す」などを条件とする発言を繰り返している。
 次期総裁が引き続き、目の前のデフレとの戦いに全力を挙げるのは当然だ。しかも、近く政府と日銀は物価上昇目標などを盛り込んだ政策協定を結ぶ。つまり、これは誰が総裁に就任しても守るべき政府との約束なのだ。
 そこで、ここではあえて5年間という任期を見据えた人選が必要であることを強調したい。その際に最も重視すべきは「対話をする力」である。
 中央銀行が求められる政治からの独立は、決して政治との対立を意味しない。その一方で、市場が「日銀は政治圧力に弱い」とみると信頼性は失われ、国債市場や外国為替市場を混乱に陥れる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130116/plc13011603330005-n2.htmより、
2013.1.16 03:32 (2/2ページ)
 「独立性」と「政治との協調」の両立には政治と対話し、十分に意思疎通できている姿を市場に見せるしかない。それが政治や市場と信頼を醸成する対話力だ。
 気になることがある。これまで首相以外にも有力政治家が総裁人事に言及するたびに「財務省OBは是か非か」の議論に傾斜しがちなことだ。金融政策の舵(かじ)取り役の条件として財務省OBかどうかがそれほど重要な問題だろうか。
 その背景には、参院で自民、公明の両党が過半数を確保しておらず、官僚の天下りに批判的なみんなの党などの協力が必要という政治的な思惑が透けて見える。
 国会同意人事である日銀総裁は衆参両院の賛成が必要だ。平成20年の交代時には参院で民主党など野党が政府案を次々に否決して総裁空席の事態が生じ、当時の福田康夫内閣が窮地に追い込まれた。「日銀総裁人事は政局に利用できる」ことを見せてしまったことも今回、影響しているようだ。
 日銀総裁人事は世界の金融・市場関係者が注目している。最もふさわしい人物を選ぶことを最優先し、間違っても政争の具にするようなことがあってはならない。

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