女子柔道暴力事件 「体質そのものを見直せ」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月10日(日)付
女子柔道暴力―黙認の体質こそ解明を
指導陣の交代で問題は終わらない。15人の女子選手が「決死の思いで」発した告発に本気でこたえ、安心できるスポーツ環境を作らねばならない。
国内柔道で最高峰にある日本代表チームで、暴力やハラスメントが繰り返され、黙認されてきたのはなぜか。調査と、再発防止の対策はこれからだ。
代表チームの監督につづき、全日本柔道連盟の強化担当理事とコーチが辞任した。選手を強化する責任者や指導者たちだ。
全柔連の動きは後手にまわっている。外部有識者による調査委員会の設置を決めたものの、時期や改善策として明確なものは打ち出せていない。
「人としての誇りを汚されたことに対し、ある者は涙し、ある者は疲れ果て、またチームメートが苦しむ姿を見せつけられることで、監督の存在におびえながら試合や練習をする自分の存在に気づきました」
全柔連と日本オリンピック委員会(JOC)に告発した15人の言葉はとても重い。
こんな心理状態になりながら金メダルを期待される重圧に耐えていた。選手たちの苦しみは想像を超えるものだ。
15人が求めたのは、暴力をふるった監督らの更迭にとどまるものではない。勇気を出して訴えたのに、全柔連もJOCも公になるまできちんと取り上げなかった理由と責任を明らかにし、強化の方法や組織を改めてほしいと言っている。
30人の全柔連理事枠に外部理事を招き、現在はゼロの女性理事を入れることも必要だ。
全柔連の上にたつJOCは、選手15人から聞き取る緊急プロジェクトを始める。JOC理事4人と弁護士1人があたる。
対象は選手に限るという。しかし、全柔連の幹部からも聞かなければ、調査が形だけのものになるのは明らかだ。
双方の証言をつきあわせ、おきたことを確定しなければ、防止策も始まらない。選手とともに苦しんでいたコーチから聞くのも当然だ。
JOCも初めは選手たちの訴えに自ら動くことに消極的だったのだから、そうした理由も説明しなくてはならない。調査を透明で説得力のあるものにするためには、調査は利害のない第三者にゆだね、JOCはそれに協力する形にすべきだ。
スポーツでの暴力や体罰問題の発覚が相次いでいる。JOCは柔道以外の競技団体の調査を始めた。五輪種目に限定せず、全国の体育連盟も加わって、大学や中学・高校の部活動での実態も広く調べる方がいい。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130210k0000m070086000c.htmlより、
社説:柔道暴力問題 勇気ある告発者を守れ
毎日新聞 2013年02月10日 02時30分
「アスリートファースト(選手第一)」は2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会がしばしば強調するコンセプトだ。招致を推進する人たちはスポーツ界の暴力根絶に向けて行動する際にもこのことを肝に銘じてほしい。
柔道女子日本代表監督の暴力指導などを選手15人が告発した問題で、自民党の橋本聖子参院議員が先日、15人の名前は公表されるべきだと受け取れる発言をした。
「プライバシーを守ってもらいながらヒアリングをしてもらいたいということは決してよいことではない」「あまりにも選手のプライバシーを守ろうとする観点から、15人の選手が表に出ていないことをどう判断するか。非常に大きな問題だ」
この発言は告発への抑止効果を持つ。柔道と同様の問題を抱えている競技で告発を考えている選手の側に立てば、名前がさらされることで不利益を被ることを恐れて二の足を踏むことが十分予想される。
元オリンピック選手で日本オリンピック委員会(JOC)の理事も兼ねる橋本氏は今回の柔道暴力問題では選手の聞き取り調査をするためにJOCが設置した「緊急調査対策プロジェクト」のメンバーでもあることを自覚すべきだ。選手の名前はすでにJOCが把握している。だれに対して公表するのか。公表するメリットは何か。弱い立場にある選手に寄り添うというより、突き放すような態度の橋本氏に対して選手たちは心を開けるだろうか。
その後、橋本氏は報道各社にコメントを送り、「氏名を公表すべき」とする発言は行っていないとしたうえで、「オリンピック強化には税金が投じられており、その公益性に対する一定の責任を理解すべきという指摘もあり、そうした意見を受けての発言でした」と釈明した。
確かに橋本氏が指摘するように強化費や遠征費などの名目で選手たちには税金が投入されている。選手たちが競技だけでなく、相応の社会的責任を有することは言うまでもない。社会の模範的存在として、例えば被災地などを訪れてボランティア活動などに励むことこそが責任を果たすということであり、告発に対する報復措置への不安が消えない中で名前を公表することではない。
06年4月施行の公益通報者保護法は企業の法令違反や不正行為などを告発した労働者を保護する法律だ。今回のケースが該当するかは別にして法の精神に照らして言えば、勇気ある告発に踏み切った彼女たちは保護されなければならない。スポーツ基本法も「スポーツを行う者の権利利益の保護」をスポーツ団体に課していることを付け加えておく。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130206k0000m070109000c.htmlより、
社説:柔道暴力問題 五輪招致とからめるな
毎日新聞 2013年02月06日 02時30分
柔道女子日本代表監督の暴力指導などを告発した選手15人の声明文を読んで胸を打たれた。自身の選手生命が絶たれるのではないか、人生をかけてきた愛する柔道が壊れてしまうのではないかという大きな苦悩と恐怖を抱えながら、未来の女子選手や女子柔道のために決死の思いで立ち上がったことが分かる内容だ。
叫びにも似たその声を、全日本柔道連盟(全柔連)も日本オリンピック委員会(JOC)も当初、真摯(しんし)に受け止めず、内部処理で済ませようとした。そのことが結果として、選手の相談を受けて調査や対策を進める第三者機関を設置するための法律改正が進むという状況を作り出したわけだが、スポーツ団体が自浄能力に欠ける組織であることを社会にさらしてしまったことについて関係者は猛省しなければならない。
暴力問題への対応が、国を挙げて取り組んでいる2020年オリンピック・パラリンピック招致とからめられていることに疑問を感じる。選手たちの声明文は招致活動への影響をおもんぱかって「まずもっておわび申し上げます」で始まっている。だが、スポーツ指導の現場から暴力やパワーハラスメントなどの不法行為を根絶するのは東京にオリンピックやパラリンピックを招致するしないにかかわらず、スポーツ界が率先して取り組むべき重要なこと。それが不十分だったため選手たちがやむにやまれず声を上げたのだ。
超党派のスポーツ議員連盟は第三者機関の新設を盛り込んだ日本スポーツ振興センター法の改正案をまとめ、今月中の国会提出を目指す方針だ。3月上旬に国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員会が視察に来るため「スピード感をもって取り組みたい」という。招致にとってマイナスになる暴力問題に一刻も早く決着をつけたいらしい。
「選手第一」の実現のために歓迎すべきことながら、作業を焦るあまり、形を取り繕うだけの組織にしてはならない。調査に応じない競技団体に対してどんな強制力を持つかについても議論を尽くしてほしい。
JOCの対応からも招致活動を最優先したことがうかがえる。暴力問題が1月下旬に報道で発覚するまでの約2カ月間、全柔連に調査を任せ切りにしていた。1月7日にIOCに提出した立候補ファイルへの影響を恐れたのではないか。問題が発覚すると、招致を推進する文部科学相の指導を受けて緊急調査対策プロジェクトの設置などを決め、翌日には海外メディア向けの声明を急きょ出した。招致のために、主役であるはずの選手の人権をないがしろにしているとしたら本末転倒であることを最後に指摘しておきたい。
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2013020101018より、
求められる意識変革=代表選考にも工夫必要-全柔連
暴力やパワーハラスメント行為で告発された園田隆二柔道日本代表女子監督の辞任が決まった。だが、ある関係者が「(監督退任は)告発の第一の目的ではないはず」と指摘する通り、全日本柔道連盟の体質改善や強化体制の見直しが今後の焦点となる。
全柔連は昨秋、暴力やハラスメント行為を禁じる倫理規定を策定し、選手の悩みなどを聞く相談窓口を設置した。斉藤仁強化委員長は「園田監督とも、新しいシステムを構築してやっていこうとスタートした」と振り返る。しかし、その矢先につまずいた格好だ。
ロンドン五輪の惨敗を検証し、選手の所属先との連携を深めるため、3月には実業団の強化担当を集めた会合も計画されている。実業団のある指導者は「4年前にも同様の会合はあったが(全柔連側は)聞く耳を持たず、という感じだった」
男子の監督には「これまでの指導法にとらわれずにやりたい」と口にする井上康生監督が就いた。いずれにしても、真摯(しんし)に外部の声を生かす姿勢が求められる。
五輪や世界選手権の代表選考が一発勝負ではないため、決定権を持つ監督らの顔色をうかがい、暴力にも堪え忍ばなければならなかった「絶対服従」の構図も、異例の告発の背景と指摘される。現行システムを全面的には否定できないが、「(成績を)点数化するなど、もう少し客観性があってもいい」と工夫が必要と主張する関係者もいる。(2013/02/01-21:00)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130201/k10015229191000.htmlより、
柔道女子 園田監督が辞任
2月1日 17時9分
柔道女子で暴力行為があったと選手から告発され、監督を辞任したいという考えを示した女子日本代表の園田隆二監督の辞任が決まりました。
全日本柔道連盟が明らかにしました。
この問題は、柔道女子の日本代表の強化合宿で園田監督やコーチが選手に対し、暴力行為やパワーハラスメントととられる行為をしたとして、ロンドンオリンピックの代表を含む選手15人がJOC=日本オリンピック委員会に告発する文書を提出し、指導体制の改善を求めたものです。
園田監督は選手への暴力行為を認め、全日本柔道連盟から先月19日付けで戒告処分を受けましたが、引き続き監督として指導することが決まっていました。
しかし園田監督は先月31日、「これ以上、強化に携わっていくことはできない」と監督を辞任したいという考えを示し、1日、進退伺を全日本柔道連盟に提出しました。進退伺は受理され、上村春樹会長を含む全日本柔道連盟の執行部で扱いを話し合った結果、園田監督の辞任が決まりました。
上村会長“「育てる」には我慢が必要”
全日本柔道連盟の上村春樹会長は「残念なことだが彼は双方向の信頼関係を築くことができなかった。今後は選手たちが目標に向かって頑張れる強化体制を築きたい。『育てる』ことには我慢が必要であることを理解し選手の力を発揮させる人が後任の監督には望ましい」と話しました。
斉藤強化委員長“責任感じる”
また、全日本柔道連盟の斉藤仁強化委員長は、「強化の責任者として、深くおわびというか、責任を感じています」と話し、陳謝しました。監督不在のなか、ヨーロッパで国際試合が続く選手については、「選手の戸惑いを最小限にすることをいちばんに考え、試合に集中できる環境を作ってあげたい」と話していました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo&k=2013020100507より、
園田監督の辞意了承へ=全柔連・上村会長
柔道の日本代表を含む女子選手15人が、監督らの暴力、パワーハラスメントを受けていたと告発した問題で、全日本柔道連盟の上村春樹会長は1日、園田隆二日本代表女子監督の辞意を了承する考えを示した。「本人の意思が固いということなら慰留はしない」と話した。
今月の欧州国際大会は代行監督で臨み、新しい強化体制は3月以降に発足させるとした。(2013/02/01-13:37)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013020102000125.htmlより、
東京新聞【社説】柔道の告発 体質そのものを見直せ
2013年2月1日
柔道女子の暴力告発問題は、スポーツ界が抱えるゆがんだ体質の一端を象徴している。スポーツの本質は何か。文化としてのスポーツをどうとらえるか。あらためて見つめるべき時だ。
ロンドン五輪に出場した日本代表をはじめとする柔道女子のトップ選手十五人が、代表監督やコーチによる暴力、パワーハラスメントを告発するという前代未聞の出来事が起きた。告発では、強化合宿で選手を殴ったり、故障中の選手に大会出場を強要するなどの状況が続いていたとしており、全日本柔道連盟もそれを確認している。まさしく異常事態と言うほかはない。
ただ、そんな行為がまかり通っていたということも、一般的には「ああ、やっぱり」と受けとられているのではないか。以前は大会でも、衆人環視の中で指導者が平手打ちをする行為などがしばしば見られた。大阪・桜宮高の自殺事件からもわかるように、スポーツ指導での暴力、体罰は依然として存在しており、しかもけっして例外的なことではなさそうだ。となると、それは日本のスポーツ界全体の問題と言わざるを得ない。
本来、スポーツとは幅広いものだ。競技の目的は勝つことだが、最終的な勝負に至るまでのさまざまな過程や、そこから得る多様な経験こそがスポーツをひとつの文化として成り立たせているのもまた言うまでもない。幅広い意味で楽しみ、学ぶのがスポーツの本質なのである。
ところが日本のスポーツ界、指導者の多くは、長らく勝負の結果だけしか見てこなかったように思える。あるいはスポーツを就職や進学の手段としてのみとらえ、文化の視点から見る意識が乏しかったようにも感じられる。体罰や暴力が相次いで明るみに出たのは、そんな古い体質がいっこうに消えていない状況の象徴に違いない。
このことは選手も含めたスポーツ界すべての責任と言うべきだ。五輪でのメダル数にこだわり、国を挙げてのエリート強化を訴えるスポーツ界。その一方で真のスポーツ文化の醸成は置き去りにされがち。そうした体質そのものが、いまもなお暴力を生む土壌となっているのは否定できない。
スポーツがかつてなく注目を集め、もてはやされる時代。しかしその裏のゆがみもこうして表に出てきている。五輪代表選手まで巻き込んだ告発問題は、そのことを真摯(しんし)に、かつ根本的に見直す機会としなければならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51229800R00C13A2EA1000/より、
日経新聞 社説 監督辞任では落着しない
2013/2/1付
女子柔道のトップ選手に対する暴力などの問題で、園田隆二・日本代表監督が辞意を表明した。選手との信頼関係なしに厳しい指導はできない。辞任は当然だ。
しかし、これで一件落着というわけにはいかない。事実関係を徹底的に調べ、再発を防止するとともに柔道界の旧態依然とした体質を根本から改める必要がある。
園田監督らの暴力に関する情報が全日本柔道連盟(全柔連)に最初に入ったのは昨年9月。その後、12月には選手15人が体制刷新などを求めて日本オリンピック委員会(JOC)に告発文書を提出した。11月に同監督の続投が決まったことで選手が不信感を募らせ、ぎりぎりの行動に出たのだろう。
その間の全柔連の対応は甘いと言わざるを得ない。聞き取りに対し園田監督らは大筋で事実関係を認めたというが、処分は戒告にとどまり、問題が明るみに出た後の一昨日にも「続投」を明言した。選手をおびえさせるような人物に監督が務まるはずはなかろう。
選手は指導者に逆らえば代表を外されるという思いが強く、理不尽な行為にも耐えてしまいがちだ。暴力は選手のそんな心理につけ込んだ面もあったに違いない。
全柔連に再調査を求めたJOCにも疑問がある。仲間をかばいがちな身内でなく、利害関係のない第三者が調べなければ、信頼できる結果は得られまい。
ことし9月には東京が立候補している2020年夏季五輪の開催地が決まる。お家芸の柔道での不祥事は招致レースにも影響しかねない。その意味でも、誰もが納得できる厳しい対応が必要だ。
もとより、女子スポーツ選手に対する暴力やハラスメント行為は、日本だけの問題ではない。ロンドン五輪では、優勝した米国の柔道選手が元のコーチから性的虐待を受けていたと告白した。
指導の名のもとに、弱い立場に置かれた選手に暴力を振るったり暴言を吐いたりする。スポーツからそうした行為を一掃するのは、世界共通の目標でもある。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130201ddm003040132000c.htmlより、
クローズアップ2013:園田監督辞意 柔の心より金メダル
毎日新聞 2013年02月01日 東京朝刊
柔道全日本女子の園田隆二監督が、日本代表選手に対する暴力問題への責任をとって辞任する方向となった。1964年東京五輪で柔道が五輪競技に採用されて以来、柔道は日本スポーツを代表する競技として国際的に発展してきたが、実際には常に金メダルが求められる勝利至上主義の中で、強化現場のトップからも本来の精神は失われ、暴力行為がはびこっていた。今回の問題は外国通信社によっても海外に報道されており、2020年夏季五輪に立候補している東京の招致活動にも大きな影響を与えそうだ。
◇お家芸、指導者に重圧
記者会見で園田監督は「全日本の監督(という役割)を預かる以上、金メダル至上主義があるのは事実」「暴力という観点で選手に手を上げた認識はない。がんばってほしいという気持ちで手を上げていた」と主張した。日本のスポーツ界で、柔道は五輪で最も金メダルの期待が大きい競技だが、その分の重圧も大きく、勝利至上主義が知らず知らずのうちに暴力につながっていた点は否めない。
柔道が五輪競技に正式採用されたのは、1964年の東京五輪。この時は男子のみが実施され、日本は4階級中、3個の金メダルを獲得。柔道の発祥国として、その後も常に世界一の座を求められてきた。女子も92年バルセロナ五輪から正式競技となり、谷亮子(旧姓田村、現参院議員)らの活躍によって注目を浴びるようになった。
しかし、柔道が国際化されていく中で日本は簡単には勝てなくなった。また、国際柔道界での発言力も弱まり、カラー柔道着の導入など数々のルール変更によって日本の存在感は薄れていった。
全日本柔道連盟は「柔道の本来精神を取り戻そう」との理想を掲げ、01年から「柔道ルネッサンス」という人間教育を重視した活動を開始。柔道の創始者、嘉納治五郎(かのうじごろう)が提唱した「精力善用 自他共栄」(精神と力を正しく用いれば、自分も他人も栄える)という精神を大会やイベントで紹介していった。
活動の中心となった84年ロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕(やすひろ)さんは、今回の問題を受けて「柔道は人づくり、人間教育だという嘉納治五郎先生の精神はどこへ行ってしまったのか。勝ち負けだけがすべてではない。その思いでやってきたので、悔しい思いはある」との談話を出した。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130201ddm003040132000c2.htmlより、
園田監督を戒告処分にとどめ、4年後の五輪に向けて一度は続投方針を決めたように、全柔連に選手を守る意識は低かった。選手も全柔連を信用せず、日本オリンピック委員会(JOC)に告発文を提出したほどだ。この他にも泥酔状態の教え子に乱暴したとして、準強姦(ごうかん)罪に問われたアテネ、北京両五輪の男子柔道金メダリスト、内柴正人被告のように、人間性を尊重する精神が欠落したかのような事件も起きている。
金メダル至上主義と暴力問題について、JOCの市原則之専務理事は「柔道ではそう(金メダル至上)かもしれないが、どのメダルでもありがたいし、メダルだけでなく、(国際友好や平和を求める)五輪運動という点も重要だ」と話し、メダルばかりに突き進む現状に疑問を投げかけた。【滝口隆司、芳賀竜也】
◇東京五輪招致に影響?
暴力問題は20年夏季五輪の東京招致活動にも影を落とす。国際オリンピック委員会(IOC)は1〜2月に立候補都市の地元支持率を覆面調査しているとみられ、関係者は「五輪競技へのイメージ悪化で支持率が下がるのでは」と不安を漏らす。
東京五輪招致委員会は年末年始から国内外のPR活動を本格化させ、ライバル都市に後れを取っている支持率アップに努めてきた。都民を対象にした1月中旬の調査では「賛成」が初めて7割を超えるなど、ようやく成果が表れてきただけに、都庁の幹部は「タイミングが悪い」とため息をつく。「現地視察のため3月に来日するIOC評価委員からも、聞かれるだろう。他の競技でも同じことが発覚するようなら、影響は大きくなる」と懸念した。
招致委の水野正人専務理事は「日本のスポーツ界が毅然(きぜん)とした態度で暴力を否定するという当たり前のことをしっかり進めることで、緩んだ信頼を早く立て直したい」と話す。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんは「15人もの選手が告発した事態は非常に重い。国のトップ選手に対して暴力があったことは五輪を招致する以前の問題だ」と手厳しい。「都民や国民も『五輪招致どころではない』と思うのではないか。五輪憲章にも抵触し、(評価委員とは別で、開催地決定の投票権を持つ)IOC委員の心証に大きく影響するだろう」と語った。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130201ddm003040132000c3.htmlより、
また、菅義偉官房長官も31日午後の記者会見で柔道での暴力行為を「決して認められない。極めて遺憾だ」と述べ、「IOCの評価委員会が東京に来た際に懸念をもたれないよう、JOCは迅速に対応すべきだ」と指摘。同日午前にはJOCの竹田恒和会長らが下村博文文部科学相を訪れて事情を説明したが、海外のメディアも一連の動きを報道。フランスのAFP通信は東京五輪招致への影響について「文科相がスキャンダルを消し去るよう迅速な行動を命じた」などと伝えた。【柳澤一男】
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130201/k10015213501000.htmlより、
国際柔道連盟が声明“暴力行為を非難”
2月1日 5時11分
柔道女子の日本代表の強化合宿で暴力行為があったとして、監督やコーチが選手からJOC=日本オリンピック委員会に告発された問題について、国際柔道連盟は公式ホームページで暴力行為を非難する声明を出しました。
この問題は、柔道女子の日本代表の強化合宿で、園田隆二監督やコーチが選手に対し、暴力行為やパワーハラスメントととられる行為をしたとして、ロンドンオリンピックの代表を含む選手15人がJOC=日本オリンピック委員会に告発する文書を提出し、指導体制の改善を求めたものです。
この問題について、国際柔道連盟は、31日、柔道の発展に尽くした嘉納治五郎の名前を挙げ、「暴力行為は柔道の精神と関係はない。柔道は肉体と精神の能力を向上させるものであり、これに反する行為は禁止されている。国際柔道連盟は必要な措置を取る」として、いかなる暴力行為も非難するという声明を出しました。
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2013020100015より、
国際柔道連盟、日本のパワハラ問題非難=柔道監督暴力
国際柔道連盟(IJF)は31日、公式ホームページで、日本の女子選手が監督やコーチによる暴力、パワーハラスメント行為を告発した問題について「IJFはそのような行為を断固認めないと強調する」との声明を発表した。
声明ではビゼールIJF会長が「(暴力などの行為は)柔道の創始者、嘉納治五郎師範の教えである精神や哲学とかけ離れたもの」と厳しく非難。「柔道は肉体や精神を成長させるための手法であり、その原理に反する行為はすべて禁じられ、(それらを排除するための)あらゆる手段をIJFとして取っていく」などとしている。(時事)(2013/02/01-00:20)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013013101002104.htmlより、
国際柔道連盟が声明 「断固非難する」
2013年1月31日 23時53分
【ロンドン共同】国際柔道連盟(IJF)は31日、女子日本代表チームでの暴力、パワーハラスメント問題を受けて「IJFはそのような行為に対しては断固非難することを強調する」との声明を発表した。
ビゼール会長は「(暴力は)われわれのスポーツの礎を築いた嘉納治五郎師範が説いた精神と理念では決してない」と批判。倫理規定に反する行為は罰せられ、必要なあらゆる措置を講じると声明で述べた。IJFの広報担当者は「パリで開かれる大会(2月9、10日)に関係者が集まるので、それまでに情報を集めたい」と語った。