「ボーイング787」運航停止 安全確保が最優先

http://mainichi.jp/opinion/news/20130215ddm003040090000c.htmlより、
クローズアップ2013:787運航停止1カ月 最新技術集積、調査に壁 熱暴走「犯人」見えず
毎日新聞 2013年02月15日 東京朝刊

 最新鋭中型旅客機「ボーイング787」がバッテリーなどのトラブルで運航停止して、16日で1カ月となる。日米当局が原因究明に当たるが、日米欧の複数のメーカーが開発に参加し、最新技術が集積していることもあって調査は難航。運航再開の見通しは立たない。米主要企業のボーイングをはじめ、世界に先駆けて787を導入した全日本空輸や日本航空、機体の約35%を担当した日本の部品メーカーの収益にも懸念が広がっている。【桐野耕一、宇田川恵、大久保陽一、宮崎泰宏、ワシントン平地修】

 ◇部品の生産、日米欧に分散
 787のメーンバッテリーは八つのリチウムイオン電池(LIB)をつないだ構造。国土交通省運輸安全委員会の調査によると、先月16日に高松空港へ緊急着陸した全日空機のバッテリー内部では、化学反応により制御不能な高熱を発する「熱暴走」が起きていた。また、バッテリーの容器に静電気がたまるのを防ぐアース線の断線も見つかり、大量の電流が流れた疑いも浮上した。熱暴走も断線も原因は不明だ。
 米ボストンの空港で同じバッテリー(補助動力装置用)から出火した日航機に関し、米国家運輸安全委員会(NTSB)は熱暴走のきっかけが一つのLIBの回線ショートだったことを突き止めたが、ショートの理由は分かっていない。
 究明が遅れている背景には「電気飛行機」とも呼ばれる787の特性と、バッテリー周辺部品のメーカーが日米欧にまたがるという特有の事情がある。
 787は、従来機で圧縮空気を使っていた客室の空調や油圧式だったブレーキを電気装置に変更。これに伴い旅客機で初めて大容量のLIBのバッテリーを採用したが、電気システムの回路は安全委幹部が「かなり勉強が必要だ」と漏らすほど複雑な上、今回はLIBの焼損も激しい。
 安全委は、バッテリー製造元のGSユアサ(京都市)で分解調査を進めている。だが、充電器など電源システムに関わる機器や部品のメーカーは仏タレス社をはじめ欧米にも分散しており、調査スタッフの派遣などにも時間を取られている。
 ボーイング社は今月、試験飛行を2回行い、バッテリーの稼働状況を調査するなど運航再開の準備を急ぐ。
 対してNTSBは、米連邦航空局による787の認可の前提になった「バッテリーからの出火の可能性は極めて低い」とする同社の試験結果を疑問視。「認可の前提を見直す必要がある」とまで言及し、「運航再開まで長ければ1年」(航空関係者)との見方も出ている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130215ddm003040090000c2.htmlより、
 東京理科大の駒場慎一准教授(電気化学)は「過充電や過放電を防ぐ制御システムに問題があった可能性もある。バッテリーにつながる全ての電気回路を調べる必要がある」と指摘する。

 ◇収益、経営戦略に影−−航空会社・国内メーカー
 主力航空機の長期にわたる運航停止措置は、79年の墜落事故をきっかけに米ダグラス社(現ボーイング)のDC10が、日米当局などから約1カ月間、停止させられたケースがある程度。今回の運航停止はこれを超える異例の長さとなる。
 787を現在17機保有する全日空は21年度までに計66機にする計画で、世界最大の787ユーザーだ。JR秋田新幹線に対抗し、秋田−羽田線で3月16日に予定していた787導入も延期し、対新幹線戦略に狂いが出た。
 このため、3月末に予定していた小型機の退役時期の延期などを調整し始めた。ただ、787に比べ燃費で劣るなど収益悪化の原因になりかねない。全日空では「運航停止が1年程度になるなら、機材導入計画を根本的に見直す必要が出てくる」と、運航計画の支障は拡大しそうだ。
 日航は787を7機保有し、国際線6路線で運航していた。成田−ヘルシンキ(フィンランド)線の新規開設も延期。乗り換え需要の開拓を狙っていただけに、延期は収益面に影を落とす。
 ボーイングの広報担当者は14日、「生産計画の変更はない」とするが、国内メーカーへの影響も心配される。
 787は機体軽量化のため、炭素繊維と樹脂を固めた複合材を主翼や胴体に採用。納入する東レの13年3月期の炭素繊維事業の売上高は750億円の見通しで全体の5%程度だが、生産が縮小した場合は「それなりの影響が出てくる」(深沢徹取締役)との懸念を示す。
 リチウムイオン電池を全量生産するGSユアサは「業績への影響はない」(中川敏幸取締役)とするが、ボーイングの生産計画に変更がないことが前提だ。

 ■ことば
 ◇リチウムイオン電池
 正極にコバルト酸リチウムなど、負極に炭素を用い、乾電池のような使い捨てではなく充電して繰り返し使える。リチウムは軽いため小型化しやすく、携帯電話や電気自動車などに採用。ただし、電解液は可燃性の有機溶媒のため、過充電や過放電があると高熱を発し、発火や爆発の恐れもある。ボーイング787ではエンジンの力で発電された電気を蓄え、起動時の電源などとして使用。バッテリー容器内などに二重の制御装置があり、充電が満たされると供給が止まる。

 ◇ボーイング787トラブルの主な経緯
12年 7月28日 米チャールストン空港で試験飛行中にエンジン火災
http://mainichi.jp/opinion/news/20130215ddm003040090000c3.htmlより、
   10月23日 山口宇部空港で全日空機が燃料配管結合部の不具合で燃料漏れ
13年 1月 7日 米ボストン・ローガン国際空港で日航機の補助動力装置用バッテリーから出火
    1月16日 全日空機のメーンバッテリーが発煙し高松空港に緊急着陸。米連邦航空局(FAA)が運航停止を命令
    1月21日 国土交通省とFAAが合同でバッテリー製造元のGSユアサ(京都市)に立ち入り検査
    2月 9日 ボーイングがデータ収集のため米国で試験飛行を実施

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年1月20日(日)付
787型機―日米で信頼を取り戻せ

 ボーイング787型機が、しばらく空を飛べなくなった。日米の航空当局が命じた。
 事態を重くみている表れだろう。通常、トラブル時の点検は運航に支障がないように数機ずつ順繰りに止めて調べる。全機一斉、というのはまれだ。
 命令の理由になったのは、バッテリーからの発煙や出火だ。燃料漏れも続いた。
 洋上を飛んでいるときだったら、火災や燃料不足で大事故につながりかねない。
 大ごとにならないうちに全機を止める。言われる前に自らふみきった全日空、日本航空もふくめ、妥当な判断だった。
 原因を調べ再発を防ぐには、製造国の米国との連携がこれまで以上に大切になる。
 787は新しい発想で設計された。燃費を抑えるため、従来はエンジンからの圧縮空気を使っていたものを電気で動かす。翼やブレーキの操作も油圧から電気に置きかえた。
 リチウムイオン電池式のバッテリーが採用されたのも、旅客機で初めてという。
 トラブルは同機の特徴である電気系統で起きた。新鋭機だけに国内の知識の蓄積は十分ではない。ボーイングと情報交換を密にする必要がある。
 いつになれば運航を再開できるか、見通しは立っていない。
 問題はバッテリーそのものにあるのか。配線や、配線につながる装置なのか。設計段階で想定していなかった負荷がバッテリーにかかったのか。まず、そこを運輸安全委の調査で見きわめるのに時間がかかる。
 仮にバッテリーの問題だとすれば、対策に数カ月かかることもあるとメーカーは言う。
 長期化すれば、航空会社の受ける影響は大きい。
 いま世界にある約50機の半分は全日空と日航が使っている。低燃費で小ぶりな787は遠い海外の中都市にも路線を張りやすく、使い勝手がよい。今後の主力機としても期待している。
 しかし、あまり停止が続くようなら、いずれは機種や路線の見直しが必要になりかねない。パイロットも操縦できる機種が決まっていて、簡単に他へ回せない。
 機体の35%は日本製だ。そのメーカーの株価が下がるなど、産業界も影響を受けている。
 ただ、ここは我慢のしどころだ。これ以上深手を負わないためにも、しっかり安全な飛行機になおす必要がある。
 運輸安全委だけでなく、航空会社やメーカーも積極的に米側と情報を共有し、787の出直しに力をあわせてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013011802000120.htmlより、
東京新聞【社説】B787運航停止 信頼回復に技術の粋を
2013年1月18日

 日米の運輸当局が、トラブル続きの米ボーイング社製「787」に運航停止を命令した。多くの日本メーカーが技術を注いだ「準国産機」だ。信頼回復に向け、いま一度総力を挙げてほしい。
 世界でいち早く、一昨年秋から日本の航空会社に登場した最新鋭の中型旅客機ボーイング787は「ドリームライナー(夢の旅客機)」の愛称で呼ばれてきた。
 金属より軽くて強い炭素繊維複合材を機体に用いたことで、航空会社にとっては燃費が二割も向上し、乗客には快適な乗り心地になったためだ。機体の強度が増すと機内の気圧を従来よりも高くできるので、耳が痛くなるのを防げるとともに、疲労感も軽くなる。「乳児が泣かない」ともいわれ、わざわざ787を選ぶ乗客が多く、全日本空輸や日本航空は今後の主力機と位置付け、計百機以上も発注している。
 しかし、ハイテク機ゆえに開発段階からトラブルが頻発していた。一号機の納入は予定より三年も遅れた。就航後も米国ボストンの空港に駐機中の日航機でバッテリーから出火したり、離陸前に燃料漏れが見つかるなど全日空、日航合わせて十件以上のトラブルが発生した。
 新型機の導入時は、ある程度の初期不良が起こるのはやむを得ないと専門家はいう。しかし、それまでとは違い、飛行中にトラブルが起きて高松空港に緊急着陸した十六日の全日空機のケースは、一つ間違えば大惨事になっていた。遅きに失した感もあるが、日米当局による運航停止命令は当然であろう。
 すでに世界の航空会社から八百機以上の受注があるといい、機体の設計から製造までを含め原因を徹底的に調べ上げ、万全な安全体制を確立する必要がある。
 この最新鋭機を支えてきたのは、日本のものづくりの力だ。東レが炭素繊維複合材を開発し、三菱重工業が主翼、川崎重工は前胴部など、富士重工は主翼と胴体をつなぐ中央翼を造る。過熱したリチウムイオン電池はGSユアサ製など、日本企業の製造比率は35%に及んでいる。
 大切なのは、こうした日本の最新技術への信頼が、今後も揺らぐことのないようにすることだ。ボーイング・ジャパンは機体部品に問題はないとしている。だとしても、細心の注意を払いたい。不断の見直しを続け、持ち前の「カイゼン」につなげてきたのが、日本のものづくり発展の礎だからだ。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130117/dst13011703160000-n1.htmより、
産経新聞【主張】B787緊急着陸 日米で連携し安全確保を
2013.1.17 03:16 (1/2ページ)

 トラブルが続いていた最新鋭の中型旅客機ボーイング787型機が、今度は機器が異常を示して緊急着陸し、乗客がシューターで脱出する騒ぎを起こした。
 国土交通省が事故につながりかねない「重大インシデント」に認定し、本格調査に乗り出したのは当然だ。日米の航空当局は連携して原因を解明し、安全を守り抜いてほしい。
 山口宇部空港から羽田に向かう全日空機が、離陸直後からバッテリー関係の不具合を示し、途中の高松空港に着陸した。不慣れな脱出によるけが人も出た。
 B787機は今月だけでも、日本航空機も含め、日本や米国で計7件ものトラブルを起こしている。米連邦航空局(FAA)も、機体の設計や製造の過程を含めた包括的調査に乗り出した。
 航空業界では、新しい機体を導入した初期には不具合が相次ぐことが多い。燃料漏れや出火など、これまで発生した787のトラブルは単純で、すぐ改善できるものかもしれない。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130117/dst13011703160000-n2.htmより、
2013.1.17 03:16 (2/2ページ)
 しかし、大きな事故が起きるまでには小さなトラブルが続くという「ハインリッヒの法則」の警告もある。一連のトラブルを詳細に分析し、対策を練ることによって、大事故を未然に防がなくてはならない。
 787はコンピューター制御など、現代の航空技術の粋を集めたハイテク機だ。三菱重工業や川崎重工業、富士重工業など日本の企業が部品の製造に参画し、機体の3分の1以上が日本製である。世界が注目している。
 とくに東レの炭素繊維の複合材を使って機体を軽量化した結果、燃費が従来機の8割程度で済むまで向上した。大型機では定員割れとなる長距離路線でも効率よく対応できるため、全日空が17機、日航が7機をすでに保有しているほか、世界各国から発注が舞い込む人気となっている。
 ただし、安全面では開発段階からつまずきがあった。全日空への1機目の引き渡しが予定より3年以上遅れた経緯もある。こうしたことと、今回の一連のトラブルと関係があるかどうかも見極める必要がある。
 トラブルが続けば、世界の航空会社の運航計画にも大きな影響を与えかねないし、生産にも響く。その意味でも、早期の原因解明と適切な対応が欠かせない。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO50638560W3A110C1EA1000/より、
日経新聞 社説 787の安全確保が最優先だ
2013/1/16付

 新型旅客機ボーイング787のトラブルが相次ぎ、日米当局が調査に乗り出した。
 787は日本航空や全日本空輸が合計100機以上発注し、日本企業が開発段階から参加している。期待を集める新鋭機だからこそ、原因を徹底的に調べ、安全を確認してほしい。
 787は全日空が2011年秋に初めて商業運航に使い始めた。従来機より燃費性能が2割良く、騒音を小さくするなど機内の快適度も高めた。三菱重工業が主翼を受け持つなど、日本企業が機体全体の35%を製造している。
 すでに800機以上の受注がある人気機種だが、米国ボストンの空港に駐機中の日航機で発火事故が発生した。主翼から燃料が漏れるトラブルも連続して起きた。
 新型機の導入初期には、ある程度トラブルが起きるのはやむをえないとされる。これまでも電気部品の不具合などの問題が起きている。しかし、機内での発火や燃料漏れは一歩間違えば大惨事につながりかねない。初期トラブルと見過ごすわけにはいかない。
 米連邦航空局(FAA)は787について、機体の設計や製造を含む包括的な調査を始めた。日本の国土交通省も専門職員らによる調査チームを設置した。日米政府は連携して原因を明らかにしてもらいたい。
 日航や全日空は省エネ旅客機の導入を、国際競争を勝ち抜くための戦略の一つに位置付けてきた。FAAの調査次第でボーイングは設計や製造方法の変更を求められ、航空会社への引き渡しが遅れる可能性がある。
 787は炭素繊維で作った複合材で機体を軽量化するなど、日本の最新技術を多数盛り込んでいる。発火事故が起きた補助動力装置に組み込むリチウムイオン電池は日本企業が供給している。
 日本の航空会社や航空機メーカーは負担が一時的に増すとしても、再発防止への協力をためらってはならない。787の信頼を保つことが最優先の課題である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130113k0000m070075000c.htmlより、
社説:B787トラブル 調査は安全向上の好機
毎日新聞 2013年01月13日 02時31分

 最新鋭の中型旅客機「ボーイング787」でトラブルが相次ぎ、事態を重くみた米当局が、包括調査に乗り出す。結果次第では、米ボーイング社はもちろん、将来の主力機と重視している日本の航空大手も重大な影響を受ける恐れがある。それでも、安全を何より優先し、徹底的に問題を解明してもらいたい。
 「ドリームライナー」の愛称が付いたB787は11年秋、商業運航が始まった。機体の軽量化で燃費が大幅に改善、大型機並みの長距離飛行が可能になったほか、地上の状態に近い気圧、湿度といった機内環境、軽減された騒音など、夢の旅客機として期待を集めた。
 日本との関係も密接だ。世界で初めて就航させたのは全日本空輸だが、これまで航空8社に引き渡された計50機の約半数を全日空と日本航空の2社が保有する。製造にも多数の日本企業がかかわった。軽量化を可能にした炭素繊維複合材を東レが開発したほか、主翼や胴体部分から、タイヤ、電子部品まで、日本企業の製造分担比率は35%に及んだ。
 しかし、ハイテク機であるだけに開発段階から問題が多発し、1号機の納入は3年も遅れた。改良費用や遅延に伴う航空会社への賠償などでボーイングの負担は大幅に膨らんでしまった。
 今回決まった調査の期間中、B787機は通常の運航を続けることになっているが、設計の見直しなどに発展すれば今後の生産計画に影響が及び、追加費用も強いられよう。B787の投入で新たな路線の就航が可能になった航空会社も、計画に修正を迫られる可能性がある。
 B787に限らず、新型機には当初トラブルがつきものだという。とはいえ、補助電源の発火やブレーキの不具合など安全にかかわる問題を看過することはできない。そうした意味で、約20万時間もかけた審査の末、商業飛行の承認を与えていた米連邦航空局(FAA)が、設計や製造工程も含む包括調査を決断したのは評価できる。
 ボーイングは787の信頼性を引き続き強調しているが、安全に十分はない、という前提で、当局との調査に全力を挙げてもらいたい。
 一方、発火事故が起きたリチウムイオン電池は日本企業が製造している。日本の国土交通省や製造者、さらに航空会社が米側と情報を共有しながらチームプレーであたることが早期解決につながるだろう。
 時間がかかったとしても、わからない問題を取り除くことこそ、乗客や投資家からの信頼を高める早道となる。改良に努めることで、次世代機の開発に役立つ新技術も得られる。前向きにとらえたい。

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