テレビ60年 「世界で見られる番組を」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130219k0000m070102000c.htmlより、
社説:視点…還暦のテレビ=論説委員 重里徹也
毎日新聞 2013年02月19日 02時30分

 ◇顔が見える作り手を
 日本でテレビ放送が始まって今年2月で60年になった。
 このところ、「テレビ離れ」の声をよく聞くが、NHK放送文化研究所の調査では昨年11月の週平均1日当たりのテレビ視聴時間は3時間47分(録画含まず)。横ばいから漸減傾向とはいえ、日本人は相変わらず長時間、テレビを見ている。
 一方で、録画視聴が増えているのが近年の特徴だ。同研究所の調べでは、日常的にテレビ番組を録画再生して見ている人は40%にのぼる。若い世代で、この傾向は強かった。
 通信技術や受像機の発達など、取り巻く環境が大きく変化しているが、創造的な番組を制作するためには何が必要か。三つの論点を挙げたい。
 まず、人気のあるマンガやミステリーを原作にしたものが多く、テレビドラマからオリジナリティーが失われているのではないかといわれることだ。もちろん、優れた物語があるのなら、テレビが使うことは一向にかまわない。ただ、山田太一、倉本聰、向田邦子、市川森一の各氏らの仕事を思い返せば、テレビから独自の物語を生みだすこともぜひとも必要だろう。
 丹羽美之・東大准教授(メディア論)は「リーガル・ハイ」の古沢良太さんや「カーネーション」の渡辺あやさんを挙げ、「才能のある脚本家は出てきている。放送局がおおいに育ててほしい」と要望する。
 ドラマの作り手の顔が見えにくくなっているのではないか。個性的な作り手が求められるのはドラマに限らない。バラエティーにもドキュメンタリーにも、もっとほしいところだ。
 ネットとテレビの関係もしばしば論じられる。ツイッターなどの投稿を生かせば、視聴者の参加も容易で双方向の放送ができる。ただ、投稿にばかり目がいって、出演者の会話がはずまないならば、本末転倒だ。ネットに使われるのではなく、多くの投稿を活用して、ネットを使いこなすことが必要だ。
 テレビ番組への本格的な批評が求められているという意見もよく聞く。他の表現(文学や美術、演劇、音楽)と比べても、全く物足りない。批評のないジャンルは衰退するだろう。録画が盛んになった現在、すでに放送された番組への批評はますますニーズがあると考えられる。
 中身への批評がほしいと指摘するのは放送作家の石井彰さんだ。番組の面白さや深さ、美点や貧しさがもっと論じられるべきだろう。活字メディアもテレビ番組の批評を増やしたい。優れた番組を評することは、時代を語ることに通じるはずだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51275500S3A200C1EA1000/より、
日経新聞 社説 4Kテレビを成功させるには
2013/2/2付

 日本のテレビが放送開始60年を迎えた。白黒からカラー、ハイビジョンへと進化してきたが、総務省は還暦にあたり、「4K」と呼ばれる次世代放送を来年7月から始める方針を示した。しかし日本では地上デジタル放送への移行を終えたばかりであり、新技術導入には周到な準備が必要だ。
 4Kテレビはフルハイビジョンの4倍の解像度を持ち、水平画素数が約4000あることからそう呼ばれる。もともと2016年の放送開始を予定していたが、インターネットで視聴できるスマートテレビが登場したことなどにより、2年前倒しを決定した。
 4K放送は現在の地上波では送れないため、スカパーJSATが管理するCS放送の基盤を利用する。受信するには高精細の次世代テレビを新たに購入する必要がある。日本の家電メーカーは4K技術で世界に先行しており、新しいテレビ市場が期待されている。
 総務省は14年夏にブラジルで開かれるサッカーのワールドカップ(W杯)を4K中継する計画で、次世代放送を立ち上げるには格好の機会だと判断した。技術開発や推進母体の設立に向け、12年度補正予算で31億円を計上した。
 だが国内テレビ市場はデジタル化に向けた家電エコポイント制で需要が大幅に先食いされている。地デジ移行で空いた電波を使って始めた携帯向け放送も離陸していない。業績不振のメーカーには新放送は魅力的だが、視聴者の需要をどう喚起するかが問われる。
 海外では韓国が4Kの試験放送を始めており、技術の国際標準化やスマートテレビとの技術融合も重要だ。NHKはより高精細のスーパーハイビジョン放送を20年から始める計画だったが、総務省はそれも4年前倒しを求めており、放送局側の入念な準備が要る。
 ネットによる動画配信の普及で最近は若者などのテレビ離れが指摘される。4Kテレビを成功させるには、放送だけでなく、ネットと連動した魅力ある番組作りができる環境整備が求められる。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月1日(金)付
テレビ60年―世界で見られる番組を

 国内でテレビ放送が始まってから、2月1日で60年になる。
 若者のテレビ離れがいわれて久しい。だが、NHKの調査で国民全体では平日に平均3時間28分と、今も最も見られているメディアだという。
 テレビが放送される電波は周波数に限りがある公共財だ。国から免許を得て電波を使っている放送局には、それを役立たせる社会的な責任がある。
 だがチャンネルをかえても、毒舌のゲストやお笑い芸人、若いタレントがならぶ番組ばかりじゃないか。そんな不満が世間に広がっている。
 テレビ局の収入増につながる視聴率にあまりにとらわれる現状は、いびつと言うしかない。
 「視聴率と性別・年代別のターゲットに振り回されている」「(人気ものをそろえる)吉本興業のタレントを出演させないぐらいの決断をしないと、変わらない」
 評論家の言葉ではない。民放キー局の役員たちから漏れ出る本音だ。一方で、高齢の視聴者が多く、若者に見てもらいたいNHKには「民放化している」「番組の宣伝が多すぎる」という批判が根強い。
 一番見られているメディアとはいえ、調査会社によると、午後7~10時の総世帯視聴率(関東地区)は昨年、63・9%に減った。10軒に4軒近くは見ていない計算だ。
 茶の間で家族そろって同じ番組を見る。そんなかつての生活のあり方が様変わりした。本を読んだり、スポーツで汗を流したり。思い思いの時間をすごせるのは豊かさともいえる。
 日本が世界2位という新聞や雑誌、ゲーム、映画、音楽などのコンテンツ市場で、売り上げが最も多いのは地上テレビ番組だ。国内で満足していたテレビ局が番組輸出に力を入れだしたのは、広告収入が落ちこんだ最近になってだ。
 2010年度の番組輸出額は63億円で、うち半分近くをアニメが占める。国をあげて支援する韓国は05年に日本を逆転し、10年には165億円になった。
 日本の番組輸出で最近の成功例といわれるのが、80カ国・地域に販売されたTBSのドラマ「JIN―仁―」だ。日本で好評だった作品が、外国の視聴者に届く王道をいった。
 補正予算で、番組の海外への普及に前例のない170億円が計上された。字幕や吹き替えを半額ほど補助し、国をこえる共同制作を支援する。番組の輸出は日本への理解も増す。そんな番組を作る力をつけることが、質の向上にもつながる。

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