春闘スタート 「労使ともに発想変えよ」

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130219/biz13021903180008-n1.htmより、
産経新聞【主張】春闘と賃上げ 経営者の「覚悟」が必要だ
2013.2.19 03:17 (1/2ページ)

 春闘本番だが、経営側が賃上げに対して慎重なのが気がかりだ。安倍晋三首相が経済団体トップと会い賃上げを要請したものの、経済界は「最終的には個々の企業判断」として前向きな回答を示さなかった。
 従業員の賃金が増えない限り、個人消費の回復にはつながらない。業績が改善している企業の経営者は、積極的にボーナスを含めた賃上げに応じる姿勢を見せてほしい。それが、デフレ脱却の一歩にもつながるはずだ。
 今春闘に臨む経団連の基本方針は「ベースアップ(ベア)を実施する余地はなく、定期昇給の実施が主要な論点になる」と定昇の凍結などもあり得るとする厳しい立場だ。円高修正で業績が改善している企業でも、ボーナスの積み増し交渉にとどまっている。
 輸出企業の経営者からみれば、円安になっても海外需要が不透明な中で、どこまで自社の業績が回復するか確信が持てないのだろう。まして日本国内を中心とするサービス業などは、人件費の増加につながる賃上げには踏み切りたくないのが本音だ。
 しかし、名目賃金は平成9年以来、下落傾向が続いている。世界景気の回復と円安によって企業業績が回復した16~19年当時も、賃金はほとんど上がらなかった。雇用確保を優先し、賃上げに労使とも消極的だったためだ。消費者が景気回復を実感できなかったのは当然である。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130219/biz13021903180008-n2.htmより、
2013.2.19 03:17 (2/2ページ)
 安倍首相が経営者に積極的な賃上げを求めたのも、この時の思いがあるからではないか。
 大胆な金融緩和と積極的な財政出動、それに成長戦略の「三本の矢」でデフレ脱却を図るアベノミクスは、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費が回復しなければ実現できない。
 個人消費の動向の鍵を握るのが賃上げだ。中小企業などでは余裕のない面もあるだろうが、経営者には「日本経済の再生」という大きな観点でこたえてほしい。
 労組にも注文しておきたい。企業収益を継続して高めるための雇用制度の改革への協力だ。
 賃上げ確保のためには、収益を安定して向上させねばならない。硬直的な人事や賃金制度を排し、若年者の雇用増が不可欠だ。正社員の厳しい解雇規制の緩和も課題となる。労組側にも経営側と同じ覚悟が求められる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013021802000138.htmlより、
東京新聞【社説】企業と賃上げ 中間層復活の役割担え
2013年2月18日

 安倍晋三首相が経団連などに賃金を引き上げるよう求めた。労働者の懐を温めてデフレから脱却することが狙いだ。企業には所得増→内需拡大→企業業績好転の好循環を引き寄せる重い役割がある。
 ボーナスなど、すべての給与を合わせた二〇一二年の給与総額(月平均)は前年比0・6%減の三十一万四千二百三十六円で、一九九〇年以降の最低水準。ピーク時の九七年に比べ約五万七千円も減っている。
 厚生労働省の調査結果であり、懐の寂しさを象徴する数字といえる。十年以上にもわたって名目賃金が下がり続けているのは、先進国の中では日本だけだ。消費が縮んでデフレ・低成長が常態化するのも当然と言わざるを得ない。
 家計の年収の分布は六百五十万円台以上が減って、六百万円台以下が増える低層化が著しい。消費性向の高い中間層がすっかり傷んでしまった。中間層とは「自ら働いて、人間らしい生活を営める所得層」を指すが、深刻なのはその中間層だけにとどまらない。
 生活保護世帯の中で大幅に増えたのは母子世帯などではなく、就労可能層を含む「その他世帯」だ。三人に一人に膨らんだ非正規労働者を中心に、賃金を抑え込まれて食べていけなくなっている。これではデフレ脱却は望めない。
 安倍首相は経団連などに、業績が改善した企業から賃金を引き上げるよう要請した。賃上げは個別企業ごとに決めるべきものだが、デフレから抜け出すにはやむを得ないというべきだろう。
 その根っこにあるのが、現預金二百兆円をゆうに超える企業の内部留保だ。麻生太郎財務相も「企業は給料に配分せず、ため込んできた」と経済界に賃上げを迫っているが、経団連の米倉弘昌会長らは「景気がよくなれば」などと腰を引いている。今春闘も退職金などに反映される定期昇給やベースアップを拒み、一時金や賞与の増額で収拾を図りたいようだ。
 オバマ米大統領は一般教書演説で経済再生に向け中間層の底上げを最優先課題に掲げた。安倍首相も中間層復活を日本再生の原動力として明確に位置づけるべきだ。
 経団連は基本方針に「企業は雇用の維持・拡大を実現し、国民生活を豊かにする役割を果たしている」と明確に記している。ならば手元資金をため込む内向きの経営を排し、稼いだ富のうち労働者の取り分を示す労働分配率を引き上げる度量を示してほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130211k0000m070075000c.htmlより、
社説:13年春闘 働く人に希望を見せよ
毎日新聞 2013年02月11日 02時32分

 賃金は15年前から下がり続け、非正規雇用は全体の3分の1を占めるまでになった。春闘の存在感が薄くなったと言われて久しい。しかし、今年はデフレ脱却を目指す安倍政権の経済政策で企業業績に薄日が差し、連合は非正規社員の待遇改善を初めて前面に掲げての春闘だ。ちょっと期待してみたい。
 経営側の財布のひもが固いのは、日本の給与水準がすでに世界トップレベルで、賃上げは社会保険料も連動するため国際競争力の足を引っ張るとの考えが根強いからだ。円安・株高が続いたとしても具体的な成果が表れるのは先で、すぐに賃上げなどできないという。
 連合は今春闘で定期昇給の維持に加え、賃上げ・労働条件の改善として給与総額の1%を目安に配分を求めている。デフレ脱却には内需の6割を占める個人消費が増えなければならず、それには所得増が不可避だ。円安は輸出型産業には追い風だが、エネルギーや食料品は値上がりし、国民生活には打撃となる。物価だけ上がって賃金が置き去りにされたのではデフレ脱却など絵に描いた餅に終わる、というのだ。
 安倍晋三首相も「業績が改善している企業には報酬の引き上げを通じて所得の増加をお願いしていく」と踏み込み、日本銀行審議委員も「物価2%上昇を目指すには4%程度の賃金の伸びが必要」と語るなど、賃上げを求める声は強まっている。
 それでも経営側が慎重なのは、4月から雇用関係の改正法が相次いで施行され人件費増に対応する必要に迫られるからでもある。改正高年齢者雇用安定法では企業に希望者全員の65歳までの雇用確保が義務付けられる。また、改正労働契約法では非正規社員の通勤手当などをめぐる差別待遇禁止や無期雇用への転換が促されるようになる。少しくらい業績が改善しても賃上げする余裕はないというのが本音だろう。
 連合は大手と中小企業の格差是正、非正規の正社員化へのルールや昇給制度の明確化、社会保険適用拡大なども今春闘の重点要求項目に掲げた。大企業の正社員中心の連合が非正規の改善に本格的に取り組む意味は大きい。社会全体から見た優先課題はここだ。個人消費が拡大しないのは低賃金とともに将来不安から少ない収入を貯蓄に回しているからでもある。経営側も協力して非正規社員の改善に取り組むべきだ。
 これまで春闘をリードしてきた企業が国際競争で苦戦するのは分かるが、業績を伸ばしている企業まで横並びで賃金を抑制するのは納得できない。企業の内部留保はこの数年膨らみ続けてもいる。働く人に将来の希望を実感させてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013020402000124.htmlより、
東京新聞【社説】春闘スタート 労使ともに発想変えよ
2013年2月4日

 デフレ脱却を掲げる安倍政権が積極的な経済政策を打ち出す中で、今年の春闘が始まった。物価上昇だけでなく賃金や雇用の改善も伴う望ましい景気回復に向け、労使が議論を深めてほしい。
 先進国で十年以上も平均賃金(名目)が下落基調にあるのは日本だけである。この間、企業は利益が出ても賃金を抑えてきた。それが消費市場を一段と縮め、企業の値下げ競争を激化させ、デフレと低成長が常態化している。
 連合は今春闘で「個人消費を拡大させるには賃上げが必要だ。それがデフレ脱却につながる」として、定期昇給とは別に、給与総額の1%引き上げを要求している。
 対する経団連は「雇用確保が最優先でベースアップの余地はない」と反論し、定昇すら「凍結や延期もあり得る」と強硬で、労使の主張に隔たりは大きい。
 ここ数年は「雇用か、賃金か」の二者択一を迫られ、労働側は賃下げを受け入れてきた。しかし、今春闘はそんな従来型の労使交渉から抜け出すべき時である。安倍晋三首相は緊急経済対策を発表した先月の会見で「企業収益を向上させ、雇用や賃金の拡大につなげたい。経営者にも協力いただきたい」と経営側に要請した。賃上げや雇用を増やした企業には法人税を軽減する制度もつくった。
 政府・日銀は2%のインフレ目標を決めており、物価上昇に賃上げや雇用の改善が続かないと国民生活は苦しくなるだけだ。そこで今春闘で議論すべきは、単年の賃上げ交渉に加え、企業の成長や業績拡大に向けた労使協調である。
 グローバル競争の激化を直視し、勝てる分野に事業を選択集中する。これまでは「社内失業」などを抱え、非効率な事業も温存させてきたが、教育訓練などで労働の有効活用や流動化に力を入れる。業績が好転すれば賃金を引き上げるルールも明確にする。
 四月に始まる希望者全員の六十五歳までの再雇用についても、労使は経営改善につながるよう知恵を絞ってほしい。
 旧態依然の春闘はほころびが目立つ。例えば、円高やアジア諸国の追い上げで国際競争力が落ちた金属・機械産業が相場形成をリードする方式はもはや限界であろう。
 正社員中心にも無理がある。働き手の三割以上となった非正規の待遇改善にもっと力を入れるべきだ。消費拡大など強い経済の実現には、非正規も含めた労働者全体の底上げが必要だからである。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130201/biz13020103140008-n1.htmより、
産経新聞【主張】春闘 デフレ脱却に労使連携を
2013.2.1 03:14

 春闘が事実上、開幕した。労働組合側が定期昇給を含めた賃上げを求め、経営側は雇用の維持を優先して賃上げに厳しい姿勢で臨む構図は今年も変わらない。
 業績格差が広がる中で、業界横並びでの賃上げが見込めないのは当然だ。しかし、経済再生を掲げる安倍晋三政権は、デフレからの脱却を最重要課題として位置付けている。そのためにも、個人消費を活性化させなければならない。
 業績が堅調で、賃上げできる余力のある企業まで消極的な姿勢にとどまるとすれば見逃せない。デフレ脱却に向け、労使で何ができるかを協議する「実のある交渉」を進めてほしい。
 連合は、毎年賃金が上がる定期昇給の維持や手当の増加などで「給与総額の1%アップ」を要求している。これに対し、経団連は雇用確保のためには各社の業績に応じ、定期昇給の実施延期や凍結などもあり得るとの立場だ。双方の隔たりは大きい。
 安倍政権が日銀と2%の物価上昇率目標を設定し、円高の是正や株価上昇が続くなど景気回復期待が高まっている。連合の古賀伸明会長が「デフレ脱却には賃金の引き上げが欠かせない」と強調するのも、こうした機運をとらえて経営側から賃上げ回答を引き出したいとの思惑からだろう。
 安倍首相も経営者に対し、賃上げで協力するよう期待している。来年度の税制改正大綱には、賃金や雇用を一定程度増やした企業に対する減税措置なども盛り込まれた。先行きの不透明感は拭えないが、経営者は従業員の士気を高めるためにもボーナスを含め適切な賃金配分に努めてもらいたい。
 一方で、企業の競争力を高めるには年功型賃金や人事の見直しに取り組む必要がある。女性や高齢者の活用も欠かせない。多様な働き方を導入することで生産性を高め、企業業績を向上させてほしい。これには、組合側の積極的な協力が不可欠だ。
 今年4月には、企業に希望者全員を65歳まで雇用することを義務づけた「改正高年齢者雇用安定法」が施行される。経団連は人件費の上昇を理由に中高年の賃金や新卒採用の抑制が必要としている。不毛な世代間対立を生まないためにも、労使は今回の春闘を独自の成長戦略を打ち出す契機とすべきである。

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