悪質自転車 「隣り合う危険を知ろう」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130223k0000m070123000c.htmlより、
社説:自転車事故対策 安全教育を広めたい
毎日新聞 2013年02月23日 02時30分

 信号無視など自転車で悪質な違反を繰り返した人に対し、安全講習を義務づける道路交通法の改正試案を警察庁が公表した。自転車に講習制度が導入されれば初めてだ。
 こうした制度が提言された背景には、自転車をめぐる事故の状況がある。交通事故全体の件数が減少傾向にある中で、自転車事故は全交通事故の約2割を占め、その割合は増加傾向だ。また、事故に関与した自転車運転者の3分の2に何らかの法令違反があった。だが、自転車には免許制度がなく、警察が運転者の交通知識や技能を確認するすべはない。
 特に自転車が歩行者をはねる事故は10年前の約1・5倍に増え、死亡事故も起きている。ブレーキの付いていない自転車で公道を走る悪質な違反の摘発も増加している。歩行者にとっては危険極まりない行為だ。
 子供から高齢者まで利用できる手軽な乗り物ではあるが、「交通ルールを守る」という規範意識が薄い人も少なくないのではないか。
 講習は悪質な違反を2回以上繰り返した人を想定している。法案化に当たり受講条件はさらに詰めなければならないが、ルールを守る意識を身に着けさせる仕組みは必要だ。
 東日本大震災の影響もあり、都市部で自転車利用者が増えている。
 警察庁は一昨年、歩道は歩行者優先であり、例外的に自転車が通行する場合は交通ルールを徹底することなどの総合対策をまとめ、都道府県警察に通達した。また、東京地検は今年から悪質なルール違反を繰り返す人については略式起訴するなど積極的に刑事罰を科し始めた。
 ただし、警察や検察が厳しい姿勢で自転車利用者に対応するだけでは問題解決につながらない。自転車の交通安全教育をもっと社会に広げていくことが肝心だ。
 小学生、中学生、高校生については警察と教育委員会が連携して学校などで自転車教室を開いている。問題は大学生や高齢者を含めた社会人だ。大学や企業、あるいは地域の中で安全講習を受ける機会は少ない。
 だが最近、一部ではあるが注目される取り組みも始まった。自転車通勤を許可する条件として警察が実施する講習への参加を企業が義務づけたり、やはり自転車通学の学生に大学が講習や賠償責任保険への加入を義務づけたりしているというのだ。
 自治体が講習を受けた人に駐輪場利用の優先権を与えるといった取り組みもあるようだ。こうした動きがさらに広がることを期待したい。
 今回の試案には、自転車の路側帯通行を道路左側に限る内容も盛り込まれた。自転車専用レーンや駐輪場の整備など自転車を利用しやすい環境作りも一層大切になる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013022202000147.htmlより、
東京新聞【社説】悪質自転車 隣り合う危険を知ろう
2013年2月22日

 危険な運転を繰り返す自転車は歩行者には凶器そのものだ。警察庁は、悪質な利用者に講習を義務づける方針を打ち出した。“暴走”を食い止める対策になるのか、実効性を十分に見極めたい。
 赤信号なのに交差点に突入してくる自転車は、青信号で横断中の歩行者にはとても危険だ。酒酔い運転も周囲には脅威になる。利用者本人も危険にさらす。
 自転車は道路交通法上の「軽車両」で、当然こうした危険な行為は違反である。
 自転車が絡む事故は年間十四万件を超える。全交通事故の約二割を占め、増加傾向だ。特に歩行者との事故は一昨年までの十年間で約五割増え、違反による摘発は昨年で五千件を超えた。
 警察庁は対策となる道交法改正の試案を公表した。危険な運転で二回以上摘発された利用者(十四歳以上)に安全講習を義務づける。被害者遺族の手記の朗読などを検討している。受講の命令になかなか従わない場合は、罰金刑などを科す。
 自転車は免許制度がない。その利用者に罰則付きの義務を課すだけに慎重さが求められる。受講対象となる違反の基準や、安全意識につながる講習内容など実効性を吟味する必要がある。
 ただ、運転マナーについては体系的に学ぶ機会がほとんどないことも事実だ。子どもたちへの教育や、自動車の運転免許更新時の講習などの機会を利用すべきだ。
 各地で開かれている競技会などの自転車イベントも活用できる。
 安全教育や取り締まりと合わせ安全に走行できる道路の整備も重要だ。試案では、双方向での通行を認めている路側帯を左側通行に限ることを盛り込んでいる。
 路側帯は車道と線で区切られた道路脇の部分だ。自転車は車道左側を走るルールだが、車道に隣接する路側帯が双方向のため、正面衝突やすれ違い時の接触事故の危険がある。
 車道と同じ左側通行に限れば危険性が減る。必要な対策で対応が遅すぎたくらいだ。規制の隙間にこうした危険が潜んでいないか、今後も点検が要る。
 厳罰化は進んでいる。これまでは摘発されても前科がつかないよう不起訴が大半だったが、東京地検は今後、略式起訴して五万円以下の罰金刑を求める姿勢だ。
 自転車の魅力はその手軽さだ。悪質自転車が厳罰化を招く。まず利用者が安全意識を持つことが事故の抑止につながる。

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