日米首脳会談 「TPPは消費者視点で」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013022502000144.htmlより、
東京新聞【社説】日米首脳会談 同盟強化というけれど
2013年2月25日
安倍晋三首相の再登板後、初めて行われた日米首脳会談。首相は「日米同盟の信頼が完全に復活した」と宣言したが、安全保障分野で実質的な進展があったとは言えない。課題は残されたままだ。
首脳会談の中心議題は環太平洋連携協定(TPP)交渉への日本の参加問題だった。そのことは今回の会談を受けた唯一の共同声明がこの問題に関するものだったことからもうかがえる。
日本側はTPP交渉参加に反対する国内勢力を説得するために、「聖域なき関税撤廃」が前提ではないとの確約を取ろうとし、米側も日本の交渉参加を後押しするため、その旨を盛り込んだ共同声明の発表に応じた。
米側には経済規模の大きい日本の参加は対日輸出が増え、米国内の雇用増加につなげる好機だ。初顔合わせは双方の国内事情が前面に出た内向きの会談だった。
その分、安全保障問題は後景へと退いた感がある。
首相は大統領に「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」と胸を張った。首相就任前、民主党政権を「外交敗北」と攻撃していたことの延長線上での発言だろう。
しかし、民主党政権時代に日米関係が悪化し、自民党政権に代わって改善したという幻想を振りまくのは建設的ではない。
民主党時代も日米安全保障条約体制は機能していたし、東日本大震災の際、被災者救出・救援に駆けつけた米軍の「トモダチ作戦」にこそ、日米の絆の強さを感じ取った国民も多いことだろう。
首相が同盟の信頼を強めるというのなら、むしろ安保体制の脆弱(ぜいじゃく)性克服に力を入れるべきである。それは在日米軍基地の74%が集中する沖縄県の基地負担軽減だ。
会談では普天間飛行場の「移設」と嘉手納飛行場以南の土地返還を早期に進めることで一致したが、普天間返還は名護市辺野古への「県内移設」に拘泥する限り進展せず、県民の負担軽減にはつながらない。
国外・県外移設など抜本的な解決策を模索し始める時期ではないか。住民の反発が基地を囲む同盟関係が強固とは言えまい。
中国の台頭は日米のみならず、アジア・太平洋の国々にとって関心事項だ。首相が尖閣諸島をめぐる問題で「冷静に対処する考え」を伝えたことは評価したい。毅然(きぜん)とした対応は必要だが、緊張をいたずらに高めないことも、日米同盟における日本の重い役割だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年2月24日(日)付
日米首脳会談―TPPは消費者視点で
安倍首相がオバマ米大統領との会談後、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に加わる考えを事実上、表明した。
10年秋に当時の菅首相が交渉参加に意欲を見せてから2年半近く。農業団体をはじめとする国内の根強い反対を受けて迷走が続いた末、ようやく軸足が定まった。
首相の姿勢を評価する。
安倍政権は、デフレと低成長からの脱却を最優先課題に掲げる。そのためには海外との経済連携を強め、その成長を取り込むことが欠かせない。
ただ、すぐに交渉に入れるわけではない。TPPを主導する米国では、政府が通商交渉に入る場合、議会の承認を得るのに90日間かかる。一方で、オバマ政権は今年中に交渉を終えるとしている。日本に残された時間は多くない。
これから米国との事前協議が本格化する。米政府は議会の声を受けて、自動車と保険、牛肉の3分野で日本市場に関心があると表明済みだ。
米国との事前協議、その後の本交渉を通じて、政府が守らねばならない原則がある。
まず、情報をできるだけ開示することだ。通商交渉では手の内を全てさらすわけにはいかないが、TPPに不安を感じる国民は少なくない。丁寧な説明を心がけて欲しい。
米国との事前協議で、交渉に早く加わりたいからと理不尽な要求を秘密裏に受け入れるようでは、TPPへの反発を強めるだけである。
なにより大切なのは、特定の業界の利害にとらわれず、「消費者」の視点に基づいて総合的に判断していくことだ。
TPPのテーマは物品の関税引き下げ・撤廃にとどまらず、投資や知的財産、電子商取引、環境など20を超える。さまざまな分野で規制・制度改革が求められるのは必至だ。
当然、恩恵を受ける業界があれば、打撃が予想される分野もある。いかにプラスを増やし、マイナスを抑えるか。
高関税で守ってきたコメなどの農産物について、激変を避けるよう交渉するのは当然だ。
それと並行して、高齢化や耕作放棄地の増加など山積する課題への対策を急ぎ、体質強化をはかる必要がある。
むろん、TPP交渉の見返りに予算をばらまくのは許されない。コメの「聖域化」ばかりに目が向いて、他の分野が二の次になるのも論外だ。
TPP交渉で、安倍政権は外交、内政両面での総合力が問われる。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月24日(日)付
日米首脳会談―懐の深い同盟関係を
日米同盟強化に完全に一致できた。強い絆は完全に復活したと宣言したい――。
安倍首相は日米首脳会談のあと、高らかに成果をうたった。
日米同盟が大切であることには、私たちも同意する。
だからといって、中国との対立を深めては、日本の利益を損なう。敵味方を分ける冷戦型ではなく、懐の深い戦略を描くよう首相に求める。
首相は、軍事面の同盟強化に前のめりだった。
首脳会談では、防衛費の増額や、集団的自衛権行使の検討を始めたことを紹介し、日米防衛協力の指針(ガイドライン)見直しの検討を進めると述べた。
一方で、中国を牽制(けんせい)した。
会談後の演説で、日中関係は最も重要な間柄の一つとしつつ、尖閣問題について「どの国も判断ミスをすべきではない。日米同盟の堅牢ぶりについて、だれも疑いを抱くべきではない」と述べた。
そういう首相と、米国側の姿勢には温度差があった。
オバマ大統領は記者団の前で「日米同盟はアジア太平洋地域の礎だ」と語ったが、子細には踏み込まず、「両国にとって一番重要な分野は経済成長だ」と力点の違いものぞかせた。
ケリー国務長官は外相会談で、尖閣に日米安保条約が適用されることを確認する一方、日本の自制的な対応を評価すると述べたという。
背景にあるのは、日米同盟を取り巻く状況の変化だ。
東西冷戦期には、米国とソ連が敵対していた。米国には、日本を引きよせておく必要があったから、同盟は強固だった。
だがいまは、経済の相互依存が進み、米国は中国と敵対したくない。米中よりも日中のあつれきのほうが大きく、米国には日中の争いに巻き込まれることを懸念する声が強い。
だから米国が日本に求めるのは、いたずらにことを荒立てない慎重さだ。そこを見誤れば、日米の信頼も崩れてしまう。
そもそも、グローバル化が進むこの時代、世界を二つの陣営に分けるような対立は起こりにくい。アジアの国々も、どちらにつくかと踏み絵を迫られる事態は望まない。
日米同盟を大切にしつつ、いろんな国とヒト、モノ、カネの結びを深め、相手を傷つけたら自身が立ちゆかぬ深い関係を築く。日中や日米中だけで力みあわぬよう、多様な地域連携の枠組みを作るのが得策だ。
対立より結びつきで安全を図る戦略を構想しないと、日本は世界に取り残される。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130224/plc13022403070003-n1.htmより、
産経新聞【主張】日米首脳会談 「強い絆」復活を評価する TPP参加へ国内調整急げ
2013.2.24 03:07
日米両首脳が過去3年の民主党政権下で失われた信頼を回復し、「強い同盟」の再構築をめざす新たな出発点を確認した。
安倍晋三首相とオバマ大統領の初の日米首脳会談で、首相は「同盟の信頼と強い絆が完全に復活した」と宣言し、大統領は「日米同盟はアジア太平洋の安全の中心的基盤で、米国は強力かつ頼れるパートナーだ」と応じた。
中国が尖閣諸島問題で挑発と攻勢を強め、北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、日米同盟を名実ともに強化することで合意したことを高く評価したい。
≪最大の「障害」を越えた≫
両首脳はさらに、最大の焦点である環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉では「全ての関税撤廃を約束するものではない」との共同声明を発表、日本の交渉参加へ向け大きく踏み出した。
自民党の「聖域なき関税撤廃を前提とした交渉には参加しない」とした選挙公約を満たす内容で、交渉参加の決断を阻む最大の障害は越えたといえる。
だが、首相が触れた集団的自衛権の行使容認の議論や普天間飛行場移設は何も具体化していない。TPP問題でも高いハードルが待つ。安保・経済の両面で日米の絆を完全に回復させるには、日本が率先して行動することが何よりも重要だ。首相にはスピードと実効性のある措置を進めてほしい。
とりわけ急がれるのは、オバマ氏も「両国経済の成長と繁栄の活性化がナンバーワンの優先課題」と述べたように、TPP問題を速やかに前進させることだ。
米国を中心にアジア太平洋の11カ国が交渉を進めるTPPは日本の成長戦略に欠かせず、地域の成長を取り込む上でも重要だ。中国が参加していない点で、安全保障面でも大きな意義を持つ。
日米共同声明は、全ての物品を関税撤廃交渉の対象とする原則を掲げる一方、日米双方に「センシティビティー(慎重な検討を要する重要な品目)がある」と明記し、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束させられるものではない」としている。
安倍首相も会談後の会見で「なるべく早い段階で決断したい」と交渉参加に意欲を示した。だが、交渉参加を決断しても、実際に交渉に加わるには米国内の承認手続きだけで3カ月程度かかる。他の参加国の承認も必要だ。
11カ国は「年内の交渉妥結」を目指している。参加が遅れるほど、日本の国益を満たすルールづくりの議論や交渉に参画する機会と時間が失われてしまう。
速やかに交渉参加を表明し、国益上守るべき例外品目の獲得などの実質協議に入らなければならない。国際競争力を持つ「強い農業」に向けた政策も打ち出す必要がある。
≪スピード感持ち行動を≫
首相はTPP反対論が根強い自民党の役員会で参加の一任を取り付ける考えだ。米国は農業だけでなく、自動車の対日輸出の拡大にも関心をみせている。実のある交渉にするためにも、首相自ら国民や党内の説得を急ぐべきだ。
両首脳は北の核・ミサイルに日米韓が連携し、「断固として対処する」ことで一致した。国連安保理の追加制裁決議の早期採択や独自の金融制裁で日米が協力する重要性を確認した。首相が日本人拉致問題解決に協力を求め、大統領が支持したことも評価したい。
尖閣諸島問題について、首相は「日本は常に冷静に対処してきた」と説明し、オバマ氏が「日米が協力して対応していく。日米協力が地域の安定につながる」と応じたことは重要だ。
同時に開かれた岸田文雄外相との外相会談でも、ケリー国務長官は尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲にあるとする米政府の「揺るぎない立場」を確認した。
ただ、米側には「重大な衝突に発展しないように」日中双方に自制を求める姿勢も強い。中国の行動や意図に対する共通認識を日米で深めていくと同時に、共同訓練などを通じて有事への備えを強化していくことが必要だ。日本は自らの力で尖閣を守り抜く態勢を固めるべきだ。
両首脳は普天間移設や嘉手納以南の米軍基地・施設返還の加速を確認した。首相は民主党前政権の「原発ゼロ」政策をゼロベースで見直すことも約束した。いずれも迅速に行動しなければ、同盟の信頼は回復できない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52081250U3A220C1PE8000/より、
日経新聞 社説 同盟強化へ首相が行動するときだ
2013/2/24付
「日米同盟の信頼、強いきずなは完全に復活した」。安倍晋三首相はオバマ米大統領と会談した後に、こう宣言した。
確かに、今回の訪米で日米関係を強める道筋を敷くことはできた。だが、それが実を結ぶかどうかは、今後の行動にかかっている。
その最たるものが、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加問題だ。
TPP参加へ改革急げ
両首脳は、日本のTPP交渉参加について「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することは求めない」と確認し、共同声明に盛り込んだ。この合意によって、安倍政権が交渉参加に踏み切る条件は整った。
安倍首相は、先の衆院選で「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」と訴えた。一方、米主導のTPP交渉は「全ての貿易品目で自由化を目指す」との目標を掲げている。
両首脳はこうした互いの立場を踏まえ、ぎりぎりの線で折り合ったといえる。全品目を交渉の机に載せるが、最終的に関税を撤廃するかどうかは交渉の結果次第――。共同声明にはこんな認識を書き込んだ。
安倍首相が参加を決断できるようにするため、オバマ大統領が「高水準の自由化」というTPPの看板を損いかねないリスクをとって、共同声明の文言を練ったと考えるべきだ。
次は安倍首相が行動しなければならない。実際の交渉参加までに、まだ多くの関門が残っている。7月の参院選を控えて自民党内には反対の声が根強く、決断すれば党内で批判が高まるだろう。
自由化への不安を取り除くには、農家への一時的な補償措置や、国内農業の競争力を高める抜本的改革が欠かせない。だが自民党と農林水産省、農業協同組合には農業に関連した既得権益の構造が色濃く残っている。TPPの交渉に向け、安倍首相はこうした壁も突き破らなければならない。
そもそも、日米両国にとっての最大の課題は、台頭する中国にどう向き合い、協力を引き出していくかである。TPPはそのための経済の枠組みだ。両国は同様に、外交・安全保障面でも協力の足場を固めなければならない。
今回の会談はその意味でも成果があった。日米が結束し、中国に責任ある行動を促していく体制づくりで一致したからだ。
特に尖閣諸島をめぐり、オバマ大統領から「日米が協力して対応していく」との言質を取りつけた意味は大きい。
こうした米側の支持が揺らがないよう、安倍首相は緊密に連携を保ってほしい。それには日本が冷静に対応し、決して中国を挑発しない姿勢を貫くことが前提だ。
日米同盟を深めるためには、言葉だけでなく、行動が必要だ。米国の国防予算は大幅に削られようとしている。米軍のアジア関与が息切れしないよう、日本として支えていく努力が大切だ。
では、どうすればよいのか。まずは、安倍首相が会談でも約束した日本の防衛力強化だ。日本を守るための負担が減れば、米軍はアジアの他の地域に余力を回せる。
政府は民主党政権下でつくられた防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直し、年内に新たな大綱を策定する。集団的自衛権の行使に向け、有識者による議論も再開した。米側とも調整しながらこれらの作業を急ぎ、防衛体制の充実につなげてもらいたい。
日米韓の連携も急務
同時に避けて通れないのが、米軍普天間基地の移設問題だ。安倍首相は会談で、早期に移設を進めると伝えた。市街地にある普天間の危険を取りのぞくうえで、移設は不可欠だ。地元の理解を得られるよう、真剣に努力してほしい。
安倍首相がこれらの課題に取り組み、日米関係が強化されていったとしても、日本の国益を守るにはなお十分とはいえない。日本の周辺には、日米だけでは対処できない危機が起きているからだ。
その筆頭が北朝鮮による核兵器とミサイルの開発だ。北朝鮮に圧力を強めるには、日米と韓国などの協力が急務だ。だが日韓関係は竹島や歴史問題でささくれだったままだ。これには米政権も強い懸念を抱いているという。
安倍首相は、25日に発足する韓国の朴政権と安定した関係を築くよう、最善の努力を払ってほしい。それに失敗すれば、日米関係にも悪い影響が及びかねない。
鳩山元政権下で傷ついた日米関係は、1回の会談で元通りになるはずがない。安倍首相の指導力が試されるのはこれからだ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130224k0000m070073000c.htmlより、
社説:日米首脳会談 TPPで早く存在感を
毎日新聞 2013年02月24日 02時30分
日米首脳会談で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加問題が、大きく前進した。共同声明で、全ての関税撤廃を前提とするものではないことが確認され、安倍晋三首相が示していた参加を阻害する条件が除かれたからだ。
もっとも国内には、農業団体を中心に強硬な反対論がある。政府は速やかに交渉参加を決めるとともに、そのメリットをしっかり説明し、国民の理解を得る必要がある。
米国にとってTPPは、アジア太平洋戦略の要といえる。台頭する中国をけん制する意味からも、日本の参加を強く期待しているはずだ。
日本にとってもアジア太平洋地域の貿易・投資ルールを決めるTPP交渉は、経済を成長させるために避けて通れない。日中韓自由貿易協定(FTA)などの貿易交渉で主導権を握るためにも、TPPで存在感を示す意味は大きい。
異例の共同声明で関税撤廃に例外があり得ることを認めたのは、安倍、オバマ両首脳のTPPに対する意欲の表れと考えられるだろう。
「聖域なき関税撤廃が前提であれば交渉に参加しない」と説明してきた安倍首相はこれで、最大の障壁をクリアしたといえる。今後は交渉に日本の意向を反映させるため、参加の決断を急ぐべきだ。
一方で、国内の反対論や慎重論にも耳を傾け、参加が国益につながることに理解を得る必要もある。
反対派の急先鋒(せんぽう)は、農業団体だ。輸入障壁がなくなることで農産物輸入が急増し、国内農業が深刻な打撃を被ると主張する。農水省がコメの9割、農業生産全体では半分近くが失われるという試算を公表したことも、そうした不安を増幅している。
TPPの影響は、経済産業省、内閣府もそれぞれ異なる試算を示している。政府内がばらばらでは説得力はない。政府は足並みをそろえ、合理的な理由を挙げて「損得勘定」を示す必要がある。
農業への影響は避けられないだろうが、現状でも高齢化や担い手不足は深刻だ。国内に欠かせない重要品目については、直接支払いなどで激変緩和を図りながら、農業改革を急ぐ必要がある。安倍首相は産業競争力会議で農業を成長産業と位置付け、改革を加速させる考えを示した。「聖域」化ありとの思惑から、その手を緩めてはなるまい。
国民皆保険制度の形骸化や食品安全基準の切り下げなどを心配する声も根強い。交渉の中で守るべき課題であり、政府は交渉の情報をできる限り開示し、こうした不安の払拭(ふっしょく)にも努めるべきだ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130224k0000m070074000c.htmlより、
社説:日米首脳会談 「安全運転」を外交でも
毎日新聞 2013年(最終更新 02月24日 10時15分)
久しぶりに多岐にわたる重要なテーマを論じ合った日米首脳会談だった。安倍晋三首相とオバマ米大統領の初会談は日米同盟強化で一致し、安倍氏は強力な同盟の絆の復活を強調した。日米同盟を基軸に「強い日本」を目指すという安倍外交が、本格的なスタートを切った。
日米だけではない。日露関係も改善の兆しが見えてきた。週明けには韓国で朴槿恵(パク・クネ)新大統領の就任式があり、来月は中国の習近平総書記が正式に国家主席に就任する。日本を取り巻く東アジアの国際政治が大きく動き出しているのである。
北朝鮮の核開発や尖閣諸島をめぐる中国との対立など深刻な不安定要因を抱える日本にとって、今ほど外交力が試される時はない。その基盤となるのが米国との連携であることは言うまでもないだろう。必要なのは、「強固な日米同盟」を背景にした賢明で注意深い外交だ。
首脳会談では、オバマ氏が「あなたの在任中、(自分という)力強いパートナーがついている。安心してもらっていい」と安倍氏に語りかけた。尖閣諸島の問題を念頭に置いた発言だろう。安倍氏も尖閣で冷静に対処する考えをオバマ氏に説明し、記者会見では「エスカレートさせるつもりはない」「習総書記といろいろなことを話す機会があればいい」と対話への意欲をみせた。
日本から対立をあおるようなことはしない。領土をめぐる問題は力ではなく対話で解決する。この2点を日米両首脳が世界に向かって発信したことを、中国は重く受け止めるべきだ。領海侵犯などの度重なる挑発をただちにやめ、対話と外交で問題を処理する姿勢に転換する道を探るよう、改めて強く求める。
一方、日米同盟強化は他国とことさら対立するためではなく、アジアに安定をもたらすためのものでなければならない。中国や韓国との関係がこじれたままでは、米国の思い描く同盟の形とは矛盾するし、日本の国益にもならないはずだ。
安倍政権の高い支持率は、慎重な外交姿勢を保っていることも大きな要因だろう。安倍氏には歴史認識問題でのタカ派色を抑制しながら、現実主義的な外交をこれからも続けてもらいたい。外交の「安全運転」は、米国が望んでいることでもある。
そして日米同盟をテコにしっかりした外交を展開していくには、日本の政治の安定が欠かせない。毎年のように交代し、自己紹介から始まるような首相が相手では、オバマ氏もまともに日米同盟を考える気にはならないだろう。日本の政治家すべてが考えるべき問題である。