イタリア選挙 「借金と民主主義の相克」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130228k0000m070117000c.htmlより、
社説:イタリア総選挙 慢心への警鐘と捉えよ
毎日新聞 2013年02月28日 02時30分

 しばらく遠のいていた危機の足音が再び−−。混とんとした結果を生んだイタリアの総選挙は、浮かれ気味になっていた金融市場に、欧州の債務問題が依然として収束にほど遠いことを思い出させた。
 ベルルスコーニ前政権下で失墜した国家の信用回復を目指し、困難な改革を進めてきたモンティ暫定首相だったが、その中道勢力連合が大敗したのは何とも残念だ。モンティ氏は、もともと政治家ではなく経済学者、実務家だったが、緊縮財政を実行し、一時は危険水準にあった国債の利回りを大幅に好転させた。
 おかげで単一通貨ユーロの崩壊懸念は薄らいだが、皮肉なことに、これがイタリアの国民や政治家、欧州諸国の指導者らを慢心に導いたようである。有権者は改革に伴う痛みの緩和を求め、政治家は人気取りの政策になびき、ユーロ圏の指導者らも、危機感を緩めてしまった。その結果が今回の選挙だ。
 だが、緊縮財政を攻撃した新党「五つ星運動」の躍進を、反ユーロ、反改革の勝利と結論づけるのは誤りだ。イタリアでは、依然としてユーロ支持が高く、改革の必要性を認めている国民も少なくない。
 五つ星運動が予想以上の支持を得た原動力は、むしろ既成政党に対する有権者の不信と捉えた方がよい。国民に緊縮財政や構造改革を強いる一方で、不正やスキャンダルが絶えず、政治家自らが率先して痛みを受け入れようとしない現状への怒りをうまく吸収したのが五つ星運動といえる。インターネットを駆使して、「カネのかからない政治」の実現を訴え、特に若い世代から賛同を得た。
 政治への信頼なしに、国民に負担増や痛みが降りかかる改革は成功しないということを物語っている。
 選挙結果を受けて、新しい政権の枠組みがどうなるのか、予測するのは難しい。数カ月内に、再選挙となる可能性も低くないようである。それを視野に、各党が改革を更に緩めかねない人気取り策で競争するようでは、イタリア発ユーロ危機となって再び世界経済を混乱させよう。
 財政再建や労働市場改革などは、イタリアの将来のために先送りできない課題だ。これまでの路線から逆戻りすることなく、同時に政治の安定化、コスト削減につながる選挙改革、政治改革を実行していくしかない。
 イタリアでの選挙結果を受けて、スペインなど南欧諸国の国債利回りも久々に反騰したが、独仏をはじめとするユーロ加盟国は、慢心に対する警鐘と受け止めるべきだ。財政問題を抱えた国に緊縮を求めるだけでなく、ユーロ圏の財政統合など、単一通貨の信頼を高める歩みを加速させる必要がある。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月27日(水)付
イタリア選挙―借金と民主主義の相克

 イタリア政治が袋小路に入り込んでしまったかのようだ。下手をすれば、欧州発の金融危機が再燃しかねない。
 5年ぶりの総選挙で、民主党中心の政党連合が下院で勝利した。モンティ首相が進める財政緊縮と改革を引き継ぐという。
 しかし改革に反対する反緊縮派の諸政党が、上院で大きく議席を伸ばした。それにより、上院ではどの勢力も過半数を得ることができなかった。
 この国の問題は借金まみれの財政だ。市場は政治が再び混迷するとの見方から、動揺している。ここで財政再建が滞れば、不安は世界に広がりかねない。各政党は、最大限の努力で打開しなくてはならない。
 一昨年、ベルルスコーニ前首相と交代したモンティ氏は、政治家を含まない実務型内閣で立て直しを進め、国際金融市場から評価を受けた。だが国民に改革の意義を十分に示すことができず、批判にさらされた。
 今回、下院で勝利した民主党のベルサーニ書記長は新政権への意欲を見せている。しかし、この国では首相選びに上下両院の承認が必要だ。
 その上院では、反緊縮を訴えたベルルスコーニ氏の「自由の国民」と第1党を争っている。
 新首相を選ぶ見通しは立っていない。政党は根気よく話しあい、政権作りへの必要な妥協をまとめなければならない。
 第三の勢力として出現したのは、元コメディアンのグリッロ氏が率いる市民政党「五つ星運動」だ。国内を広く遊説して、左右の既成政党の特権と堕落ぶりを痛烈に批判した。
 ベルルスコーニ氏が減税による金のばらまきで国民の歓心を買おうとするのとは違い、五つ星運動は、インターネットを利用した政治参加やユーロの是非をめぐる国民投票を訴え、市民の共感を集めた。
 既成政党への市民の不信と怒りが、この新しい政党を後押ししたのだろう。しかし、新党が勢力を伸ばせば、政治が安定を取り戻すわけではない。
 市場の要求と選挙で示される民意が食い違いを見せることは少なくない。ギリシャやフランス、スペインでも緊縮を求める政党が批判にさらされた。
 国民に負担増を求めなければならない時代には、民主主義のあり方も常に刷新されなければならない。
 そのために政治家に求められるのは、政界の腐敗を正すことはむろん、失業や年金削減への国民の怒りの声から逃げず、財政の緊縮がなぜ必要なのかを誠実に説明することだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013022702000162.htmlより、
東京新聞【社説】イタリア総選挙 同じ失敗繰り返すのか
2013年2月27日

 イタリア総選挙は、モンティ政権の財政緊縮策に厳しい審判を下す結果となった。欧州信用不安再燃を回避するためにも、政治空白を長引かせるようなことがあってはならない。
 ギリシャに次いで財政危機に晒(さら)され国債金利が急騰、スペインと並び債務不履行の瀬戸際に追い込まれたのは僅(わず)か一年半ほど前だ。
 その危機を乗り切ったのは、政治家の経験がない国際金融のプロ、モンティ氏をあえて首相に迎え、党派性を超えた緊縮政策を敢行する政治意思を示したからだ。
 モンティ政権は、退職年齢や年金支給年齢の引き上げ、不動産増税などの財政再建政策を実行。欧州連合(EU)によるユーロ救済にも沿い、金融市場の信認回復に通じるものだったが、そのモンティ氏の中道連合は惨敗した。
 条件付きながら緊縮財政継続を掲げた民主党ベルサーニ書記長率いる中道左派連合は、僅差で下院の過半数を制する票を得たものの、上院では過半数獲得に至らず、安定政権への道は今後の連立交渉に委ねられることになった。
 買春事件や汚職疑惑など、醜聞まみれだったベルルスコーニ氏の中道右派連合は、財政緊縮策を批判し不動産税還付をうたうなど、大衆迎合的戦術で脱緊縮への庶民感情をとらえるのに成功した。
 明確な勝者がいたとすれば、コメディアンのグリッロ氏が率いる「五つ星運動」だろう。既成政治家への不満を吸い上げ、いきなり上下両院で第三勢力の地位を確保した。主要メディアに頼らずネット発信を基本とし、ユーロ圏離脱を問う国民投票、反腐敗、環境重視を掲げ若い世代、女性票を引きつけるパターンは、他の欧州諸国でも広がる傾向だ。
 欧州の金融危機は、新財政条約の合意、欧州安定メカニズム(ESM)発足などで一応の安定を回復しているが、加盟国で政治的混乱が深まれば、いつ国際的な信用不安の再燃につながってもおかしくない脆弱(ぜいじゃく)さを脱していない。
 ギリシャとユーロ圏第三位の経済大国イタリアでは、同じ政局の混乱でも持つ意味合いは全く違う。緊縮政策への批判を受け、EUは域内総生産(GDP)の1%相当を景気刺激にあてる政策でも合意しているはずだ。政党指導者には、欧州の観点に立った責任ある議論を望みたい。
 政治は政治家抜きで初めてまともに機能する-。不名誉な前例をイタリアがつくってはなるまい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52186680X20C13A2EA1000/より、
日経新聞 社説 イタリア再生に「ねじれ」の壁
2013/2/27付

 イタリア総選挙の結果、安定的な政権の誕生が絶望的となった。議会下院では、これまで通り緊縮財政と構造改革の継続を掲げる中道左派が過半数を確保したが、上院では改革路線に反対するベルルスコーニ前首相の中道右派が第1勢力となる見通しだ。
 日本にとっては、残念な結果といわざるを得ない。金融市場ではイタリアの改革が足踏みし、欧州の債務危機が再燃する懸念が高まっている。ユーロが売られたため大幅に円高が進み、株価も日米欧で大きな下げ幅を記録した。
 上下両院で結果が分かれて「ねじれ現象」が生じたのは、イタリアの特異な選挙制度が原因だ。下院は全国で、上院では州ごとに、得票率が第1位の政党にボーナス議席を与える仕組みがある。
 これはベルルスコーニ前首相が率いる前政権が、自陣を有利にするために導入した制度である。だが、結果的に極めて不安定な政治状況が生まれてしまった。これから首相の指名権を持つナポリターノ大統領が音頭をとり、連立協議を進めることになる。
 下院で過半数を占めた改革路線の中道左派が政権を樹立するためには、ベルルスコーニ前首相の中道右派との大連立が前提となる。緊縮財政をめぐり真っ向から対立する両陣営が協調できるかどうか、予断を許さない。連立交渉が不調に終われば再選挙となり、市場の不安は一段と高まるだろう。
 ユーロ危機の混乱の中で2011年11月に発足したモンティ政権は、痛みを伴う改革を進め、その結果、金融市場はかろうじて安定を取り戻した。その努力をここで無駄にしてはならない。連立協議で各党の指導者が、現実的で冷静な判断を下すことを期待したい。
 選挙の結果から、イタリア国民の「改革疲れ」が大きいことは明らかだ。経済再生と市場の信頼回復を果たすために、労働市場や年金制度などの改革は避けて通れないが、こうした構造改革と景気の刺激策を組み合わせる方策を工夫する必要がある。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中