安倍首相の施政方針演説(全文)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130228/k10015849971000.htmlより、
首相 「攻めの農政」「経済再生」を強調
2月28日 16時13分

安倍総理大臣は、衆参両院の本会議で施政方針演説を行い、農産品や食品の輸出拡大を目指す「攻めの農業政策」などを成長戦略に掲げて経済再生に取り組むことで働く人の所得を増やすことを目指す考えを強調しました。

日本経済再生への決意強調
この中で、安倍総理大臣は、東日本大震災からの復興を取り上げ「今を懸命に生きる人たちに復興を加速することで応えていかなければならない。若者たちが、『希望』に胸を膨らませることができる東北をつくりあげる」と述べ復興を推進していく決意を示しました。
そして安倍総理大臣は、経済政策について、「若者たちが『未来は明るい』と信じることができる、力強い日本経済を立て直すことが私たちの世代の責任だ。大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略の『三本の矢』を力強く射込む」と述べ、日本経済の再生に取り組む決意を強調しました。
そして、「健康的な日本食は、世界でブームを巻き起こしている。世界で豊かな人が増えれば増えるほど、人気が高まることは間違いない」と述べ、農産品や食品の輸出拡大を目指す「攻めの農業政策」を進めていく考えを示しました。

最先端の医療技術活用に技術革新推進を
さらにiPS細胞を利用した再生医療・創薬など、最先端の医療技術の活用や、イノベーション・技術革新を推進していく考えを示しました。
また、「活発でフェアな国際競争を確保するため、貿易や投資のルールを国際的に調和していかねばならない。日本はルールを『創る』国でありたい」と述べたうえで、TPP=環太平洋パートナーシップ協定については「今後、政府の責任において交渉参加について判断する」と述べました。
さらに、安倍総理大臣は来年のソチオリンピックに向けてボブスレーの「そり」を開発する東京・大田区の中小企業を紹介したうえで「世界一を目指す気概を持った皆さんがいる限り日本はまだまだ成長できると確信している。今こそ世界一を目指していこうではありませんか。それは働く意欲のある人たちに仕事を創り、頑張る人たちの手取りを増やすことにほかなりません」と呼びかけました。
一方、安倍総理大臣は「原発事故の反省にたち原子力規制委員会の下で新たな安全文化をつくる」としたうえで「安全が確認された原発は再稼働する」と述べるとともに再生可能エネルギーの導入を最大限に進めて、原発依存度をできるかぎり低減させる考えを示しました。

沖縄の負担軽減に全力・北朝鮮には断固たる対応
そして、安倍総理大臣は外交・安全保障について、「アメリカのオバマ大統領との首脳会談で緊密な日米同盟は完全に復活した」と述べたうえで、「在日アメリカ軍の再編は日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組む」と述べました。
また、中国や韓国との関係改善に取り組む姿勢を示すとともに、ロシアとの関係について「最も可能性に富んだ二国間関係のひとつだ」として年内に予定されているロシア訪問などを通じて関係強化に意欲を示しました。
そして北朝鮮について「核実験を強行したことは断じて容認できず、関係国と連携して断固たる対応を追求する。拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう強く求める」と述べました。
さらに沖縄県の尖閣諸島を巡る中国の動きを念頭に、「わが国の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続いており、安全保障環境は厳しさを増している」と指摘したうえで、イギリスのサッチャー元首相が1982年のフォークランド紛争を振り返って使ったことばを引用し、「『力の行使による現状変更』は何も正当化しないということを国際社会に訴えたい」と述べ、中国に強く自制を求めました。
そして最後に、安倍総理大臣は「われわれは『何のため』に国会議員を志したのか。政局に明け暮れたり、足の引っ張り合いをするためではなかったはずだ」と述べ、国会議員の定数削減や選挙制度改革に結論を出すことや、憲法改正に向けた議論を深めることを呼びかけました。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013022800501より、
施政方針演説全文

 【1・はじめに】
 「強い日本」。それをつくるのは、他の誰でもありません。私たち自身です。
 「一身独立して一国独立する」
 私たち自身が、誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で、自ら運命を切り開こうという意志を持たない限り、私たちの未来は開けません。
 日本は、今、幾つもの難しい課題を抱えています。しかし、くじけてはいけない。諦めてはいけません。
 私たち一人ひとりが、自ら立って前を向き、未来は明るいと信じて前進することが、私たちの次の、そのまた次の世代の日本人に、立派な国、強い国を残す唯一の道であります。
 「苦楽を与(とも)にするに若(し)かざるなり」
 一身の独立を唱えた福沢諭吉も、自立した個人を基礎としつつ、国民も、国家も、苦楽を共にすべきだと述べています。
 「共助」や「公助」の精神は、単にかわいそうな人を救うことではありません。
 懸命に生きる人同士が、苦楽を共にする仲間だからこそ、何かあれば助け合う。そのような精神であると考えます。
 【2・被災者の皆さんの強い自立心と復興の加速化】
 「みんなで声を掛け合って、励まし合っている」
 首相就任以来、私は、毎月、被災地を訪問し、避難生活を強いられている方々の声を直接伺ってまいりました。
 仮設住宅の厳しい環境の下でも、思いやりの心が、そこにはありました。自立して支え合おうとする気概を感じるのです。
 一方、個人の意志や努力だけではどうにもならない問題が、今なお立ちはだかっています。高台移転は、ようやく動き始めたものの、土地の買収や、さまざまな手続きにより、大幅な遅れが目立ちます。
 仮設住宅暮らしの長期化による、先の見えない不安。お年寄りの方からは、「時間がない」という悲痛なお話も伺いました。
 「どんなに小さくてもいいから、自分の家に住みたい」
 今を懸命に生きる人たちに、復興を加速することで、応えていかねばなりません。解決すべき課題は、地域ごとに異なりますが、復興庁が、現場主義を徹底し、課題を具体的に整理して、一つ一つ解決します。
 福島は、今も、原発事故による被害に苦しんでいます。子どもたちは、屋外で十分に遊ぶことすらできません。除染、風評被害の防止、早期帰還に、行政の縦割りを排し、全力を尽くすべきは当然です。しかし、私たちは、その先にある「希望」をつくらねばなりません。
 若者たちが、「希望」に胸を膨らませることができる東北を、私たちはつくり上げます。それこそが、真の復興です。
 既に、再生可能エネルギー産業や医療関連産業など、将来の成長産業が東北で芽吹きつつあります。復興をさらに強力に進めるため、復興予算19兆円枠を見直し、必要な財源を確保することとしました。(
 今年も、間もなく3月11日がやってきます。厳しく長い冬が続いた東北にも、もうすぐ春が訪れます。冬の寒さに耐えて、春に咲き誇る花のように、「新たな創造と可能性の地」としての東北を、皆さん、共につくり上げようではありませんか。
 【3・経済成長を成し遂げる意志と勇気】
 さて、日本経済の将来に、今の若者たちは「希望」を持てるでしょうか。
 若者たちが、「未来は明るい」と信じることができる、力強い日本経済を立て直すことが、私たちの世代の責任であります。
 「三本の矢」を、力強く、射込みます。大胆な金融政策であり、機動的な財政政策。そして、民間投資を喚起する成長戦略です。
 今までと同じやり方では、激変している国際経済に、立ち向かうことはできません。
 日本の経済成長は、世界を覆う大競争の荒波に、ためらうことなくこぎ出していく、私たちの意志と、それから勇気にかかっています。
 (世界のフロンティアへ羽ばたく)
 まさにそうした勇気を示し、遠くアルジェリアの砂漠で働いていた方々が、犠牲となりました。
 彼らに非業の死を遂げさせたテロリストたちの卑劣と非道を、わが国は決して許しません。テロの犠牲を繰り返さないため、何をなさねばならないかを検証し、具体的な対策を進めます。
 私が恐れていることは、今回の事件によって、日本人が、世界に羽ばたく意志と勇気を失うことです。
 世界の成長センターは、アジアから、中南米、アフリカへと広がっています。今回犠牲となった方々の志を無にしないためにも、海外の成長を日本に取り込むべく、世界のどこへでも、フロンティアに果敢に飛び込んでいかねばなりません。
 そのかばんに詰め込むべき魅力ある商品は、たくさんあります。
 健康的な日本食は、世界でブームを巻き起こしています。四季の移ろいの中で、きめ細やかに育てられた、日本の農産物。世界で豊かな人が増えれば増えるほど、人気が高まることは間違いありません。そのためにも、「攻めの農業政策」が必要です。日本は瑞穂の国です。息をのむほど美しい棚田の風景、伝統ある文化。若者たちが、こうした美しいふるさとを守り、未来に「希望」を持てる「強い農業」をつくってまいります。
 健康は、誰もが求める、世界共通のテーマです。日本発の技術であるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用した再生医療・創薬など、最先端の医療技術を積極的に活用して、世界に先駆けて健康長寿社会を目指します。世界に誇る国民皆保険制度が育んだ、わが国の医療技術とサービスに、さらに磨きを掛け、国際的な医療協力なども通じて、世界に積極的に展開してまいります。
 日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを引き付ける観光立国を推進することに加え、「クール・ジャパン」を世界に誇るビジネスにしていきましょう。
 それから環境技術です。資源制約を抱える世界で、その解決策を、日本は持っています。ここにも、商機があります。最先端の技術で、世界の温暖化対策に貢献し、低炭素社会を創出していくというわが国の基本方針は不変です。
 詰め込むかばんの中身が、技術、サービス、知的財産など多様化する現代では、活発でフェアな国際競争を確保するため、貿易や投資のルールを国際的に調和していかねばなりません。
 わが国は、受け身であってはなりません。グローバルなレベルでも、地域レベルや2国間レベルでも、日本は、ルールを「待つ」のではなく、「つくる」国でありたいと考えます。
 アジア・太平洋地域、東アジア地域、欧州などとの経済連携を、戦略的に推進します。わが国の外交力を駆使して、守るべきものは守り、国益にかなう経済連携を進めます。
 TPP(環太平洋連携協定)については、「聖域なき関税撤廃」は、前提ではないことを、先般、オバマ大統領と直接会談し、確認いたしました。今後、政府の責任において、交渉参加について判断いたします。
 意欲のある全ての日本人が、世界の成長センターで、存分に活躍できる環境を整えます。
 (日本が世界の成長センターになる)
 一方で、日本から世界へという流れだけでなく、世界から日本に、優れた企業や人を集め、日本をもう一度成長センターにしていく気概も必要です。
 優れた人たちは、今、日本で能力を発揮したいと考えるでしょうか。
 日本での研究環境に満足できない研究者たちが、海外にどんどん流出しています。
 「世界で最もイノベーションに適した国」をつくり上げます。総合科学技術会議が、その司令塔です。大胆な規制改革を含め、世界中の研究者が日本に集まるような環境を整備します。
 その萌芽(ほうが)とも呼ぶべき「希望」に、私は、沖縄で出会いました。
 「非常に素晴らしい研究機会が与えられると考えて、沖縄にやってきた」
 アメリカから来たこの学生は、かつてハーバード大学やエール大学で研究に携わってきました。その上で、昨年開学した沖縄科学技術大学院大学で研究する道を選びました。
 最新の研究設備に加え、沖縄の美ら海(ちゅらうみ)に面した素晴らしい雰囲気の中で、世界中から卓越した教授陣と優秀な学生たちが集まりつつあります。沖縄の地に、世界一のイノベーション拠点を作り上げます。
 世界初の海洋メタンハイドレート産出試験、世界に冠たるロケット打ち上げ成功率、世界最先端の加速器技術への挑戦など、日本は、先端分野において、世界のイノベーションをけん引しています。
 将来の資源大国にもつながる海洋開発、安全保障や防災など幅広い活用が期待できる宇宙利用、テレワークや遠隔医療など社会に変革をもたらし得るIT活用。
 日本に「新たな可能性」をもたらすこれらのイノベーションを、省庁の縦割りを打破し、司令塔機能を強化して、力強く進めてまいります。
 世界の優れた企業は、日本に立地したいと考えるでしょうか。
 むしろ、わが国は、深刻な産業空洞化の課題に直面しています。
 長引くデフレからの早期脱却に加え、エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減に向けて、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。
 東京電力福島第1原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化をつくり上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。
 省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます。同時に、電力システムの抜本的な改革にも着手します。
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指します。
 「国際先端テスト」を導入し、聖域なき規制改革を進めます。企業活動を妨げる障害を、一つ一つ解消していきます。これが、新たな「規制改革会議」の使命です。
 行政や公務員制度の在り方も、これまでの改革の成果に加え、国際的な大競争時代への変化を捉え、改革します。公務員には、誇りと責任を持って、世界との競争に打ち勝つ国づくりを、それぞれの持ち場で能動的に進めるよう期待します。
 魅力あふれる地域をつくります。その鍵は、地域ごとの創意工夫を生かすための、地方分権改革です。大都市制度の改革をはじめ、地方に対する権限移譲や規制緩和を進めます。また、「地域の元気づくり」を応援します。
 (世界一を目指す気概)
 小さな町工場から、フェラーリやBMWに、果敢に挑戦している皆さんがいます。
 自動車ではありません。東京都大田区の中小企業を経営する細貝さんは、仲間と共に、ボブスレー競技用「そり」の国産化プロジェクトを立ち上げました。
 「世界最速のマシンをつくりたい」
 30社を超える町工場が、これまで培ってきた、ものづくりの力を結集して、来年のソチ五輪を目指し、世界に挑んでいます。
 高い技術と意欲を持つ中小企業・小規模事業者の挑戦を応援します。試作品開発や販路開拓など、新しいチャレンジを応援する仕組みを用意します。
 ひたすらに世界一を目指す気概。こういう皆さんがいる限り、日本はまだまだ成長できると、私は、確信しています。
 いま一度、申し上げます。皆さん、今こそ、世界一を目指していこうではありませんか。
 (家計のための経済成長)
 なぜ、私たちは、世界一を目指し、経済を成長させなければならないのか。
 それは、働く意欲のある人たちに仕事をつくり、頑張る人たちの手取りを増やすためにほかなりません。
 このため、私自身、可能な限り報酬の引き上げを行ってほしいと、産業界に直接要請しました。政府も、税制で、利益を従業員に還元する企業を応援します。
 既に、この方針にご賛同いただき、従業員の報酬引き上げを宣言する企業も現れています。うれしいことです。
 家計のやりくりは、大変なご苦労です。日々の暮らしを少しでも良くするために、私たちは、「強い経済」を取り戻します。
 【4・世界一安全・安心な国】
 経済だけではありません。さまざまなリスクにさらされる国民の生命と財産を、断固として守る、「強靱(きょうじん)な国づくり」も急務です。
 旅行で、仕事で、普段何気なく通るトンネルで、その事故は起きました。笹子トンネル事故です。
 私の育った時代、高速道路が次々と延びていく姿は、「成長する日本」の象徴でありました。しかし、あの頃できたインフラが、老いつつある。人の命まで奪った現実に、向き合わなければなりません。
 命を守るための「国土強靱化」が、焦眉の急です。首都直下地震や南海トラフ地震など、大規模な自然災害への備えも急がなければなりません。徹底した防災・減災対策、老朽化対策を進め、国民の安全を守ります。
 治安に対する信頼も欠かせません。ネット社会の脅威であるサイバー犯罪・サイバー攻撃や、平穏な暮らしを脅かす暴力団やテロリストなどへの対策・取り締まりを徹底します。
 悪質商法によるトラブルから、消費者を守らねばなりません。地方の相談窓口の充実や監視強化などによって、消費者の安全・安心を確保します。
 「世界一安心な国」「世界一安全な国、日本」をつくり上げます。
 【5・暮らしの不安に一つ一つ対応する政治】
 さて、今、この演説を聞く国民一人ひとりが、悩みや不安を抱えておられます。
 家計のやりくり、教育、子育て、介護。こうした不安に目を向け、一つ一つ対応することも、政治の使命です。
 「車座ふるさとトーク」を始めました。皆さんの声を直接お伺いするため、閣僚が、地方に足を運びます。一人ひとりの思いを、直接、具体的な政策につなげていきます。
 (子どもたちが主役の教育再生)
 子どもを持つ親は、常に子どもの教育に頭を悩ませています。
 いじめや体罰を背景に、子どもの尊い命が絶たれる事案が発生しています。「子どもの命は何としても守り抜く」との強い意志と責任感を、私たち大人が持って、直ちに行動に移さねばなりません。
 6年前に改正した教育基本法を踏まえ、現場での具体的な改革を進めます。まずは、先般、「教育再生実行会議」が取りまとめた、道徳教育の充実をはじめとする、いじめ対策の提言を実行します。
 教育現場で起きる問題に、的確で速やかな対応が行える体制を整えます。現行の教育委員会制度について、責任体制を明確にすることをはじめ、抜本的な改革に向けた検討を進めます。
 学力の向上も、公教育に求められる重要な役割です。世界トップレベルの学力を育むため、力ある教師を養成し、グローバル化に対応したカリキュラムなどを充実していきます。「大学力」は、国力そのものです。大学の強化なくして、わが国の発展はありません。世界トップレベルとなるよう、大学の在り方を見直します。
 私も、子どもの頃、野球選手や警察官などと、いろいろな「夢」を見ました。教育再生とは、子どもたちが、「夢」を実現する意志を持って、自分たちの道を歩んでいけるよう手助けするためのものにほかなりません。
 その主役は、子どもたちです。
 6・3・3・4制の見直しによる「平成の学制大改革」をはじめ、教育再生に向けた具体的な課題について、今後検討を進めます。
 (子育て・介護を支える社会)
 子育てに頑張るお父さんやお母さんが、育児を取るか仕事を取るかという二者択一を迫られている現実があります。
 待機児童の解消に向けて保育所の受け入れ児童数を拡大します。多様な保育ニーズに応えるためには、休日・夜間保育なども拡充していかねばなりません。放課後児童クラブを増設し、地域による子育て支援も力を入れてまいります。
 仕事との両立支援と併せ、仕事への復帰を応援します。両立支援に取り組む事業者への助成、マザーズハローワークの拡充に取り組みます。
 年老いた親の介護と仕事の両立にご苦労される方も、増えつつあります。
 介護と仕事も、両立しやすい社会をつくっていかねばなりません。まずは、その第一歩として、両立するための知識やノウハウを、働く方々や職場に周知して、さまざまな支援を受けられるようにします。地域のお年寄りの皆さんに、質が高く、必要な介護が行われる体制も整えます。
 全てを家庭に任せるのではなく、社会も共に子育てや介護を支えていきます。
 (女性が輝く日本)
 他方、家庭に専念して、子育てや介護に尽くしている方々もいらっしゃいます。皆さんのご苦労は、経済指標だけでは測れない、掛け替えのないものです。
 皆さんの社会での活躍が、日本の新たな活力を生み出すと信じます。皆さんが、いつでも仕事に復帰できるよう、トライアル雇用制度を活用するなど、再就職支援を実施します。
 仕事で活躍している女性も、家庭に専念している女性も、全ての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、輝けるような国づくりを進めます。皆さん、女性が輝く日本を、共につくり上げていこうではありませんか。
 (誰もが再チャレンジできる社会)
 老いも若きも、障害や病気を抱える方も、意欲があるならば、世のため人のために活躍できる機会をつくります。その先に、活力あふれる日本が待っています。
 個々の事情に応じた就労支援を、きめ細かく行います。「若者・女性活躍推進フォーラム」の場を通じて、さらなる課題を抽出し、具体策を検討していきます。
 一度の失敗で烙印(らくいん)が押され、「負け組」が固定化するような社会は、「頑張る人が報われる社会」とは言えません。何度でもチャレンジできる社会をつくり上げてまいります。
 (持続可能な社会保障制度の構築)
 しかし、どんなに意欲を持っていても、病気や加齢などにより、思い通りにならない方々がいらっしゃいます。
 こうした方々にも安心感を持っていただくため、持続可能な社会保障制度をつくらねばなりません。少子高齢化が進む中、安定財源を確保し、受益と負担の均衡が取れた制度を構築します。
 自助・自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人には、しっかりと援助の手を差し伸べます。自由民主党、公明党、民主党による3党間での協議の進展も踏まえ、社会保障制度改革国民会議においてご議論いただき、改革を具体化してまいります。
 国・地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)について、2015年度までに10年度に比べ赤字の対GDP比の半減、20年度までに黒字化、との財政健全化目標の実現を目指します。
 【6・原則に基づく外交・安全保障】
 さて、外交・安全保障について、お話しいたします。
 私の外交には、原則があります。先般のASEAN(東南アジア諸国連合)諸国訪問の際には対ASEAN外交の5原則を発表しましたが、私の外交は、「戦略的な外交」「普遍的価値を重視する外交」、そして国益を守る「主張する外交」が基本です。傷ついた日本外交を立て直し、世界における確固とした立ち位置を明確にしていきます。
 その基軸となるのは、やはり日米同盟です。
 開かれた海の下、世界最大の海洋国家である米国と、アジア最大の海洋民主主義国家である日本とが、パートナーを成すのは理の当然であり、不断の強化が必要です。
 先日のオバマ大統領との会談により、緊密な日米同盟は完全に復活いたしました。政治、経済、安全保障だけではなく、アジア・太平洋地域、さらには国際社会共通の課題に至るまで、同じ戦略意識を持ち、同じ目的を共有していることを確認したのであります。緊密な日米同盟の復活を内外に示し、世界の平和と安定のために、日米が手を携えて協力していくことを鮮明にすることができました。
 日米安保体制には、抑止力という大切な公共財があります。これを高めるために、わが国はさらなる役割を果たしてまいります。同時に、在日米軍再編には、現行の日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組みます。特に、普天間飛行場の固定化はあってはなりません。沖縄の方々の声によく耳を傾け、信頼関係を構築しながら、普天間飛行場の移設および嘉手納以南の土地の返還計画を早期に進めてまいります。
 北朝鮮が核実験を強行したことは、断じて容認できません。安保理決議にも明確に違反するものであり、厳重に抗議し、非難します。北朝鮮が平和と繁栄を求めるのであれば、このような挑発的な行動を取ることが何の利益にもならないことを理解させるべく、米国、韓国をはじめ、中国、ロシアといった関係国と連携して、断固たる対応を追求します。
 拉致問題については、全ての拉致被害者のご家族がご自身の手で肉親を抱き締める日が訪れるまで、私の使命は終わりません。北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保および即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの3点に向けて、全力を尽くします。
 拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう、北朝鮮に強く求めます。
 尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明白であり、そもそも解決すべき領有権の問題は存在しません。
 先般のわが国護衛艦に対する火器管制レーダー照射のような、事態をエスカレートさせる危険な行為は厳に慎むよう、強く自制を求めます。国際的なルールに従った行動が必要であります。
 同時に、日中関係は、最も重要な2国間関係の一つであり、個別の問題が関係全体に影響を及ぼさないようコントロールしていくとの「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻るよう、求めてまいります。私の対話のドアは、常にオープンです。
 韓国は、自由や民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国です。朴槿恵新大統領の就任を心より歓迎いたします。日韓の間には、困難な問題もありますが、21世紀にふさわしい未来志向で重要なパートナーシップの構築を目指して協力していきます。
 もう一つの隣国であるロシアとの関係は、最も可能性に富んだ2国間関係の一つであります。本年に予定されているロシア訪問を、日ロ関係の発展に新たな弾みを与えるものとしたいと考えています。アジア・太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築すべく、日ロ関係全体の発展を図りながら、最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結すべく、腰を据えて取り組みます。
 緊密な日米関係を基軸として、オーストラリアやインド、ASEAN諸国などの海洋アジア諸国との連携を深めてまいります。G8(主要8カ国)、G20(20カ国・地域)やわが国で開催する第5回アフリカ開発会議(TICAD)などの国際的枠組みを通じ、貧困や開発といった国際社会に共通する課題の解決に向け、わが国は、世界の大国にふさわしい責任を果たしていきます。
 【7・今、そこにある危機】
 わが国の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続いており、わが国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しております。
 先般、沖縄を訪問し、最前線で任務に当たっている、海上保安庁や警察、自衛隊の諸君を激励する機会を得ました。その真剣なまなざしと、みなぎる緊張感を目の当たりにしました。彼らを送り出してくれたご家族にも、感謝の念でいっぱいです。
 私は、彼らの先頭に立って、国民の生命・財産、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜く決意であります。
 11年ぶりに防衛関係費の増加を図ります。今後、防衛大綱を見直し、南西地域を含め、自衛隊の対応能力の向上に取り組んでまいります。
 わが国の外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議」の設置に向けた検討を本格化します。同時に、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」において、21世紀の国際情勢にふさわしいわが国の立ち位置を追求してまいります。
 危機にあって、大切なことは、大局を見失わないことです。
 わが国の国益は、万古不易です。わが国の存立基盤である「海」を、徹底してオープンなものとし、自由で平和なものとすることであります。
 「全世界にとっての基本的に重要な原則、すなわち何よりも国際法が力の行使に勝たなくてはならないという原則を守ろうとしていた」
 フォークランド紛争を振り返って、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相は、こう語りました。
 「海における法の支配」。私は、現代において、「力の行使による現状変更」は、何も正当化しないということを、国際社会に対して訴えたいと思います。
 安全保障の危機は、「他人ごと」ではありません。「今、そこにある危機」なのです。
 今、この瞬間も、海上保安庁や警察、自衛隊の諸君は、強い意志と忍耐力で任務に当たっています。荒波を恐れず、乱気流を乗り越え、極度の緊張感に耐え、強い誇りを持って任務を果たしています。皆さん、与野党を超えて、今、この場から、彼らに対し、感謝の意を表そうではありませんか。
 【8・おわりに】
 江戸時代の高名な学者である貝原益軒は、ボタンの花を大切に育てていました。ある日、外に出ていた間に、留守番の若者が、その花を折ってしまいました。怒られるのではないか、と心配する若者に対して、益軒は、こう述べて許したといいます。
 「自分がボタンを植えたのは、楽しむためで、怒るためではない」
 「何のため」にボタンを植えたのか、という初心を常に忘れず、そこに立ち戻ることによって、寛大な心を持つことができた益軒。
 私は、この議場にいる全ての国会議員の皆さんに、呼び掛けたいと思います。
 われわれは、「何のため」に、国会議員を志したのか。
 それは、「この国を良くしたい」「国民のために力を尽くしたい」、との思いからであって、間違っても、政局に明け暮れたり、足の引っ張り合いをするためではなかったはずです。
 全ては国家、国民のため、互いに寛容の心を持って、建設的な議論を行い、結果を出していくことが、私たち国会議員に課せられた使命であります。
 議員定数の削減や、選挙制度の見直しについても、各党各会派で話し合い、しっかりと結論を出していこうではありませんか。
 憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深めようではありませんか。
 政権与党である自由民主党と公明党が、政権運営に主たる責任を負っていることは言うまでもありません。その上で、私は、各党各会派の皆さんと丁寧な議論を積み重ね、合意を得る努力を進めてまいります。
 この議場にいらっしゃる皆さんには、ぜひとも国会議員となったときの熱い初心を思い出していただき、どうか建設的な議論を行っていただけますよう、最後にお願いして、私の施政方針演説といたします。
 ご清聴ありがとうございました。
(2013/02/28-13:51)

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中