再生医療 「推進と規制バランスを」

http://sankei.jp.msn.com/science/news/130304/scn13030403130000-n1.htmより、
産経新聞【主張】iPS細胞 再生医療の着実な一歩に
2013.3.4 03:12 (1/2ページ)

 再生医療の実用化に向けた確かな第一歩としてもらいたい。
 理化学研究所は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って目の網膜を再生する臨床研究の実施計画を厚生労働省に申請した。
 iPS細胞の生みの親である京都大学の山中伸弥教授は、「厚労省が慎重に審査し、iPS細胞を用いた治療が適切かつ着実に発展していくことを願う」と話した。
 厚労省の審査は数カ月はかかる見通しだ。了承意見を経て実施されれば、世界で最初の臨床応用になる公算が大きい。
 iPS細胞による再生医療の研究は、激しい国際競争が展開されている。自民党政権はiPS細胞を中心とする再生医療を成長分野のひとつに位置づけ、今後10年間に1100億円を拠出する方針を表明した。豊富な資金と人材を誇る米国をはじめとする海外勢と競い合うためには、国の継続的な支援は欠かせない。
 医療や創薬分野の研究開発で、日本は基礎研究の段階で優れた成果を挙げても、臨床研究や実用化では欧米に後れをとるという問題点が指摘される。iPS細胞の実用化で世界をリードし、「日本の再生」につなげるためには、制度や体制を抜本的に見直し、弱点を克服しなければならない。
 厚労省は再生医療に関する審査や承認手続きの迅速化を目指す。また、幹細胞を用いる再生医療の臨床研究や治療の届け出を義務づけ、信頼性の向上を図る方針だ。そのため、今国会で2つの法案提出を予定している。

http://sankei.jp.msn.com/science/news/130304/scn13030403130000-n2.htmより、
2013.3.4 03:12 (2/2ページ)
 どんな細胞にも成長するiPS細胞は、従来の医療技術では困難だった難病治療にも道を開く。病気や事故で臓器や組織の機能を失った多くの患者が、再生医療の実現を待ち望んでいる。
 その半面、皮膚細胞などに遺伝子操作を施すだけで生命を操れるという「怖さ」もある。例えば、同性間の子供や1人の遺伝情報だけを受け継ぐ命を生み出すことが技術的に可能になったとき、私たちの社会はそれを受け入れることができるだろうか。
 社会的合意が実用化の大前提であり、技術の恩恵を受ける私たちにも、iPS細胞を大きく健全に育てる責任はある。一人一人がiPS細胞の負の側面や倫理的課題にも向き合い、「適切かつ着実な発展」を促したい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030402000125.htmlより、
東京新聞【社説】iPS臨床へ 患者へ早く届けたい
2013年3月4日

 いよいよ人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、ヒトの治療に使われることになる。世界初の臨床研究に日本の研究機関が取り組む。道のりは長いが、治療を待ち望む患者たちに確実に届けたい。
 理化学研究所は、目の網膜を再生させる臨床研究の計画を厚生労働省に申請した。
 加齢などで網膜が傷み視力が低下する「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性」の治療法開発を目指す。国内の患者は約七十万人いる。研究ではiPS細胞で網膜を再生させる。
 厚労省が計画を認めれば二〇一四年には治療が実施され、数年にわたり安全性や効果を見る。
 ノーベル賞を受賞した京都大の山中伸弥教授が、ヒトでiPS細胞の作製を発表して五年ほどで、臨床現場での研究が始まる。
 山中教授は受賞記念講演で「iPS細胞の技術を患者さんに届けたい、届けなければならない」と語った。治療に使われてこその研究だとの思いが強い。確実に新しい治療法に結び付けてほしい。
 体の組織を再生させ病を治す再生医療は、難病に苦しむ患者や家族の期待が高い。
 ただ、未知の新技術なだけに安全性の確保が課題だ。今回の臨床研究では、目は治療後の観察が容易で仮に異常が見つかればレーザー治療が可能な点が治療の対象に選ばれた理由でもある。倫理的な審査も厳しく受けている。慎重さが求められるのは当然だ。
 だが、一部の医療機関で医師の裁量で未承認の細胞を使ったり、効果に疑問のある治療が行われている現状がある。厚労省は細胞治療を規制する新法をつくり、今国会に法案の提出を検討している。
 新法ではリスクに応じて細胞を三分類する。安全性が未確認のiPS細胞は高リスクに分類、厚労相や実施施設外の倫理審査委員会の承認を得ることを求める。
 細胞を作製したり加工する施設の品質管理基準、患者への治療リスクの説明などの対応も盛り込む。医療機関から定期的な報告を受け国民に公表する。違反した医療機関への罰則を設けたり、中止命令を出せるようにすることなどを検討中だ。
 重大な事故が起これば再生医療の進歩を阻みかねない。治療法が安全に実用化していくには、治療のルール化は必要である。
 国は治療の実態を把握し安全性が確保できる仕組みを整え、誰もが安心して受けられる再生医療に育てるべきだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年2月21日(木)付
再生医療―治療への法規制が要る

 事故で切れた神経を再びつないだり、がんで失った臓器を取り戻したりできたら――。からだの組織を再生させて病気やけがを治そうという再生医療は、現在の医療では快復が望めない患者やその家族から、熱い期待を集めている。
 血液関係など一部を除き、まだ動物実験の段階だが、安倍政権の緊急経済対策も研究の加速をうたう。山中伸弥・京都大教授の開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)など、幹細胞と呼ばれる特殊な細胞を使うのが代表的な手法だ。
 その再生医療の安全さを確保して実用化を進めるには、一定の法規制が必要だ。
 現在、厚生労働省の専門委員会が議論している。一番の狙いは、街の病院や診療所など一般の医療機関が先行して始めている「細胞を使った医療行為」にも守るべきルールを定め、健全さを保つことだ。
 大学などの研究機関が幹細胞をヒトで試す場合(臨床研究)は厚労省の指針があり、国の承認なしには実施できない。
 ところが一般の医療機関が、治療の名の下に患者本人の幹細胞などを使う場合は、医師の裁量に任されて実態も不明だ。
 そこで、研究か治療かによる違いをなくし、どちらもリスクに応じた手続きを法で義務づける考えが話しあわれている。
 iPS細胞を使うなど安全性が確かめられていない高リスクのものは、事前にしっかりした施設外の倫理委員会と国の承認を求める。一方、ヒトで実績が積まれてリスクが低いものは、施設内倫理委員会の了承と国への届け出でよしとするなど、区分けしようという案だ。
 再生医療はまだ手探りの段階で、どんな幹細胞を患者のどこにどのくらい注入するか、単独か薬剤と一緒かなど、やり方が無数に考えられる。多くの試行錯誤から、有望な方向を早く見つけることが大切だ。一般医療機関もふくめ、年1回の結果報告を法で義務づけて情報を集めれば効率がいいだろう。
 患者や家族が医療機関を選ぶのを助けるため、どこがどんな再生医療を試み、成績はどうか公開する案もある。
 欧米や韓国はすでに何らかの法規制をかけている。
 日本では、あたかも確立した医療かのように宣伝して患者を集めるクリニックなどがある。自由診療なので何百万円も請求された例や、因果関係は不明だが患者が死亡した例もある。
 いい加減な医療行為を締め出し、安全な再生医療を実現する仕組みが要る。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51832390Y3A210C1PE8000/より、
日経新聞 社説 安全確かめ再生医療を前へ
2013/2/18付

 神戸市にある医療機関がiPS細胞を使った世界初の治療を試みる臨床研究を承認した。国の承認が得られれば、2013年度中にも目の難病の患者を対象に治療を行う見通しだ。
 iPS細胞を用いた再生治療は、これまで有効な治療法がなかった難病の治療法として期待が大きい。世界で前例のない取り組みであるだけに安全をしっかり確認しながら進めてもらいたい。
 「加齢黄斑変性」と呼ばれる目の病気は主に中高年以上で発症し失明の恐れがある。今回は6人の患者を対象に、患者自身のiPS細胞からつくった網膜の細胞を病気で傷んだ細胞と移植手術で取り換えて視力の回復を目指す。
 iPS細胞は移植後にがん化するリスクが指摘される。目の細胞はがんになりにくいとされるが、手術後の経過をよく観察する必要があるだろう。安全と信頼の確保は再生医療を普及させるうえで欠かせない。
 臨床研究として治療を行うには国の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく承認も必要で、治療を目指す医療機関は3月にも厚生労働省に審査を申請するという。
 厚労省では今、指針とは別に再生医療の本格的な普及に向けた法制度づくりの議論を進めている。患者へのリスクが大きい治療は高度な技術を備えた医療機関に限定する安全確保策のほか、細胞の培養を民間企業が受託し治療費の抑制につなげる規制緩和などが検討されている。
 制度づくりでは、適正な規制を通じ社会にイノベーションをもたらす視点が大切だ。新しい医療を社会に根付かせるには健康被害を避けるため規制や監視が必要だが、ただ厳しいだけの規制では創意工夫の芽がつまれ医療技術の改良や普及が進まない。
 iPS細胞は京都大学の山中伸弥教授が世界に先駆けてつくった。それを応用し世界に貢献するうえでも未知への挑戦と安全を両立させる日本の知恵が問われる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130205k0000m070133000c.htmlより、
社説:再生医療法規制 実態把握のためにも
毎日新聞 2013年02月05日 02時31分

 再生医療などの目的で細胞を人に投与する医療行為には、推進と規制の両方が必要だ。厚生労働省は先月末、安全確保をめざした法案の枠組みをまとめた。広く意見を聞き、バランスのよい規制の実現をめざしてほしい。
 ひとことで再生医療といっても、その中身はさまざまだ。多くの人がイメージするのは人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)を使った医療だと思われるが、自分の体から取り出した体性幹細胞を使う方法もある。一般的な医療となっている骨髄移植も幹細胞の移植だ。がん治療の目的で免疫細胞を投与する方法も、細胞移植という点では同じ範ちゅうに入る。
 法案の枠組みでは、こうした細胞治療全体を臨床研究まで含めて規制の対象とし、細胞ごとに区分けして規制する方針だ。iPS細胞やES細胞のように、これまで臨床応用されたことのない加工細胞については、厚労相の承認制とする。一定の安全性が確立した体性幹細胞の移植やがん免疫療法などについては、第三者委員会の審査を経た上で、届け出を義務付けるという。
 それぞれ、リスクも、データの積み重ねも異なることを考えれば、細胞に応じて規制を適用することは妥当だろう。具体的な規制の中身については、さらに検討を進めてもらいたい。
 再生医療をめぐっては、福岡市のクリニックで韓国人を対象に本人の幹細胞投与を多数実施していることが明らかになっている。韓国内では禁じられている医療行為で、日本では安全性や有効性が確認されていない。美容クリニックでも、アンチエージングなどの名目で幹細胞投与が行われているとみられる。
 こうした医療行為が自由診療として野放しになったままだと、事故が起きる恐れがある。結果的に、再生医療を育てていく上でマイナスになりかねない。
 法案の枠組みでは、福岡のようなケースにも審査や届け出を義務づける方針だ。医療機関には定期的な報告を求め、違反があった場合には改善命令や中止処分などの罰則を科すことも検討する。細胞培養や加工施設にも基準を設け、チェックする。規制強化を懸念する声もあるが、これまで法律がなかったために実態把握も後手に回ってきたことを思うと、一定の歯止めは必要だ。
 再生医療や細胞治療の実態を調べ、国民に情報提供する仕組みの構築も重要だ。さまざまな再生医療・細胞治療の存在を明らかにし、国民自身が判断できるようにすることは、安全確保と再生医療育成の両方に役立つはずだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130115k0000m070105000c.htmlより、
社説:再生医療 推進と規制バランスを
毎日新聞 2013年01月15日 02時30分

 iPS細胞のノーベル賞受賞に後押しされ、再生医療への期待が高まっている。難病治療や生活の質の改善に幹細胞を使った新しい医療が役立ってほしい。多くの人が抱いている願いだろう。
 そんな期待に水を浴びせるような医療行為が日本国内で行われていたことが、昨年末、明らかになった。福岡市のクリニックが、研究段階にある幹細胞投与を多くの韓国人に実施していたケースだ。韓国のバイオ企業が患者から取り出した幹細胞を培養・保管し、これを本人に注射や点滴で投与していたという。
 問題は、この手法の効果や安全性が、日本では確認されていないことだ。しかも、韓国では幹細胞の投与は薬事法で規制され、このバイオ企業が扱う幹細胞は承認を受けていない。韓国内で禁じられている医療行為を、規制の届かない日本で実施していたという点でも衝撃だ。
 再生医療研究については、日本の規制が厳しく、実用化へのハードルが高いと指摘する声が強かった。にもかかわらず、なぜ、こんなことが起きるのか。問題は、規制に抜け道があることだろう。
 通常、日本で幹細胞を人間に投与する場合には、国の指針に従い、「臨床研究」を実施する必要がある。そこで時間をかけ、安全性や効果を確かめる。日常的な医療として患者に届けられるまでには、いくつものハードルを越えなくてはならない。
 大学などが実施している再生医療研究は、こうした手順を踏んで行われる。ところが、福岡のケースのように、手順を踏まずに幹細胞を投与することもできる。日本の医師法が定める「医師の裁量」の下で、自由診療が認められているからだ。こうした自由診療に基づく幹細胞の投与は、美容クリニックでも実施されているとみられる。
 こうしてみると、再生医療に対する日本の規制は決して厳しいとはいえない。米国でも、今回のようなケースは規制の網にかかるはずだ。日本がこうした状況を放置すれば、医療事故が起きる恐れもある。その結果、本来の再生医療にブレーキがかけられることがあれば本末転倒だ。
 厚生労働省は再生医療の安全性を確保する新法を準備しているが、安易な幹細胞投与によって患者が不利益を被らないようにしてほしい。医師の裁量を制限することはむずかしいが、許可制や登録制などを導入し、違反者への罰則を設けることも必要だろう。
 国内での自由診療による幹細胞投与の実情も、法規制の枠外にあるため、はっきりしない。その実態把握にも自治体や国が連携して取り組んでもらいたい。

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