普天間移設 日米合意「強行は最悪事態だ」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 3月 5 日(火)付
普天間問題―見切り発車の愚犯すな
沖縄の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた手続きが、動き出そうとしている。
防衛省は名護漁協に埋め立て工事への同意を求める要請書を提出した。同意が得られれば、安倍内閣は3月中にも、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事に辺野古の埋め立て申請をする方針だ。
事務的な手続きを、淡々と進める姿勢である。
だが、沖縄県民の圧倒的多数が県内移設に反対しているなかで申請しても、かえって問題をこじらせるだけではないか。安倍首相はよく考えてほしい。
首相は、施政方針演説で「普天間飛行場の固定化はあってはならない」と強調した。住宅地に隣接する普天間の危険性を考えれば、移転をはかるべきなのは言うまでもない。
ただ、私たちが社説で繰り返し指摘してきたように、県内移設は現実味を失っている。
県と県議会、全市町村長と全市町村議会が辺野古案に反対し、県外移設を求めている。首相に普天間の閉鎖、撤去を求める「建白書」も提出した。
垂直離着陸機オスプレイの強行配備や、米兵による相次ぐ犯罪も重なって、県民の国への不信は頂点に達している。
だからこそ、首相もきのうの国会答弁で「沖縄の方々の声に耳を傾け、信頼関係を構築しながら移設を進めたい」と語ったのではないか。
埋め立て申請をすれば、この発言と矛盾する。
首相が移設に向けた手続きを急ぐ背景に、米政府への配慮があることは間違いない。
先の日米首脳会談で、オバマ大統領は、環太平洋経済連携協定(TPP)とともに、この問題の進展にも関心を示したという。
「日米同盟は完全に復活した」と宣言した首相にしてみれば、早期に同盟のトゲを抜きたいとの思いだろう。
だが、このままでは作業の進展を演出するだけのアリバイ作りに終わり、普天間の固定化につながりかねない。
鳩山政権が「最低でも県外」を掲げて迷走したことからも分かるように、県外移設が難しいことは確かだ。
それでも、日米同盟が重要だというなら、日米両政府で辺野古に替わる選択肢がないか改めて検討すべきだ。本土への基地の分散移転も、真剣に探るべきではないか。
民意の支えなくして、安全保障は成り立たない。
見切り発車の愚を犯すべきではない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130303/plc13030303140002-n1.htmより、
産経新聞【主張】辺野古埋め立て 県は普天間移設の容認を
2013.3.3 03:14 (1/2ページ)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題で、防衛省は地元の漁業権を持つ名護漁業協同組合に対し、文書で埋め立てへの同意を要請した。
安倍晋三首相も日米首脳会談でオバマ大統領に「移設の早期推進」を約束し、施政方針演説でもそれを確認した。北朝鮮や中国の挑発や攻勢が強まる中で日本の安全と日米同盟の抑止力強化にとって、移設は不可欠かつ緊急の課題といえる。
漁協への同意要請は、移設の大前提となる仲井真弘多県知事への埋め立て申請に向けた環境整備の一環としても重要だ。漁協側が示した前向きな対応と併せて評価したい。安倍政権は、そうした地元の声を大切にしつつ、粛々と作業を進めてもらいたい。
要請を受けた名護漁協の古波蔵廣組合長は「99%同意が出ると思う」と語り、3月中に役員一任を取り付けたい構えを示した。
漁協の同意は、県知事に埋め立て申請を行う際に必須ではない。だが、知事が埋め立てを許可する際には必要になる。また今回のように、地元の同意を事前に得ておくことは、県民の声が決して「移設反対一色」ではない事実をアピールする上でも有意義だ。
日米合意に基づく移設計画は、政府の環境影響評価書に対する県の公告・縦覧手続きが1月末に終わり、公有水面の埋め立て申請はいつでも可能となっている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130303/plc13030303140002-n2.htmより、
2013.3.3 03:14 (2/2ページ)
安倍政権は年明け以降、首相や岸田文雄外相、小野寺五典防衛相らが沖縄入りし、県が求める那覇空港第2滑走路の工期短縮を含め沖縄振興予算に手厚い措置を講じるなど、誠意を尽くしてきた。
安倍首相が民主党前政権の迷走で崩壊した地元との信頼修復を最優先してきたのは当然だ。
だが、周辺情勢は待ちの姿勢を許さない。北の核・ミサイル開発に加え、尖閣諸島への中国の攻勢は強まる一方だ。国の守りを不備のまま放置してはなるまい。
米国でヘーゲル国防長官が指名承認されたが、国防費削減圧力などいくつも難題を抱えている。同盟強化に向け、今こそ日本の率先した行動が求められている。
仲井真知事と県側にも、そうした全体情勢や日本の平和と安全を守る大局的見地で移設に向き合ってもらいたい。一部の反対論に流されているようでは、県民の繁栄も国の主権も守れない。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203462-storytopic-11.htmlより、
琉球新報 社説 女性暴行致傷判決 地位協定真剣に見直す時だ
2013年3月3日
米海軍兵による集団女性暴行致傷事件で、那覇地裁は上等水兵に懲役10年(求刑同12年)、3等兵曹に懲役9年(求刑同10年)の実刑判決をそれぞれ言い渡した。
判決は「同種の事件でも比較的悪質な部類」と指摘する。被害女性は供述調書で犯行時の恐ろしさ、悲しさ、悔しさや絶望感が今でも残っていることを訴えた。
被害女性の肉体的、精神的苦痛は察するに余りある。女性に寄り添った実刑判決は評価できる。日米両政府は判決を真摯(しんし)に受け止め、被害女性に謝罪し、補償と心のケアにも誠意を尽くしてほしい。
「厳しい判決と思っているかもしれないが、被害者の気持ちや裁判員の県民としての気持ち、感情はもっと厳しい」。判決を言い渡した後、裁判員、裁判官からのこんなメッセージが読み上げられた。
被告らは何の落ち度もない女性の首を強く絞めて押さえ付け、暴行に及んだ。その上、現金まで奪うなど犯行は卑劣極まりない。
裁判員らは「米兵だからと差別的に見ず、公平に判断した」と述べた。米兵を特別視することなく、犯行の悪質性を重視し判決を下したという。冷静な判断と言えよう。
量刑判断とは別に、メッセージは不条理な状況に置かれた沖縄県民の率直な気持ちを代弁したものとして評価できる。
沖縄では、この事件後も米兵犯罪が後を絶たない。メッセージは、沖縄との向き合い方や再発防止策で真剣みが乏しい日米両政府にも向けられたものと言えよう。
被告らは事件当日、グアムに移動する予定だった。被告の3等兵曹は「暴行しても捕まらないと安易な気持ちで犯行に至った」と述べている。集団女性暴行致傷という人間の尊厳を踏みにじる犯罪の重大性がまったく分かっていない。こうした兵士を生みだした隊員教育にも強い疑問を禁じ得ない。
あらためて言うが、沖縄は占領地でも植民地でもない。米軍人・軍属は、日米地位協定に守られていることをいいことに「特権」を振りかざしてはならない。
裁判員らのメッセージを、日米両政府は想像力を働かせて受け止めるべきだ。地位協定の「運用改善」でお茶を濁している間に、事件事故が再発し、日米関係への信頼がむしばまれている。不平等な地位協定の異常性を率直に認め、改定を真剣に検討する時だ。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-02-28_45856より、
沖縄タイムス 社説[漁協へ同意申請]将来世代を考え判断を
2013年2月28日 09時20分
沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の辺野古移設に向け、名護漁協に対し、埋め立ての同意を求める申請書を提出した。名護漁協は28日に理事会を開き、賛否を問う総会の日程を決める。
埋め立てによって消滅する漁業権は法律で定められた漁協・漁業者の財産権ではあるが、今回の埋め立ては沖縄の将来を決める重大な意味を持つことを忘れてはならない。判断に当たっては次の事実を考慮に入れてもらいたい。
埋め立てる予定海域は県の「自然環境の保全に関する指針」で、最も高い評価の「自然環境の厳正な保護を図る区域」のランク1である。埋め立てはその評価に逆行する。
環境影響評価(アセスメント)もずさんの極みである。オスプレイ配備をひた隠しにし、最終段階の評価書になって初めて記載した。仲井真弘多知事は膨大な「不適切事項」を指摘し、「生活環境、自然環境の保全を図ることは、不可能」との意見を付した。
辺野古移設については、自公を含め県議会のすべての会派が反対し県外移設を求めている。地元の北部市町村会(12市町村)だけでなく全41市町村・市町村議会も同様だ。
名護漁協には沖縄が大きな転機に立っていることを認識してもらいたい。
子や孫の世代に自らの判断の根拠を自信をもって説明できなければ、顔向けができないはずである。
名護漁協には全県的、長期的な視点に立って、慎重な判断を望みたい。
仲井真知事は県議会2月定例会で所信表明演説を行い、「地元の理解が得られない移設案の実現は事実上不可能」との姿勢をあらためて強調した。その上で、日米合意を見直し「一日も早い県外移設」を実現するよう訴えた。
従来、主張していたことであり、知事の姿勢は終始一貫している。
ただ、気になるのは、仲井真知事が安倍晋三首相や関係閣僚と第三者を交えずに「密談」を繰り返し、埋め立て申請があった場合、書類を受理する考えを明らかにしていることだ。
知事は会談で「辺野古移設」の話は出ていないと否定するが、普天間問題で何らかの話があったのではないかとの疑念が消えない。政府が知事と会談を重ねるのは、辺野古移設に対する知事の翻意を促す狙いがあるからだ。
3月1日から始まる代表・一般質問で辺野古移設について知事の主体的な表現で県民に説明してもらいたい。
安倍首相は日米首脳会談で辺野古移設を早期に進展させることをオバマ大統領に約束した。
漁業補償問題が片付けば、後はどの時点で埋め立て申請をするかという時期の判断だけが残ることになる。
普天間の移設・返還を実現した故橋本龍太郎首相は「地元の頭越しに進めない」と繰り返し強調していた。
しかし、現行の辺野古案は県と事前の相談を一切せずに日米が勝手に決めたものだ。沖縄の民意を無視して手続きを一方的に進めることは許されない。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203289-storytopic-11.htmlより、
琉球新報 社説 埋め立て同意申請 「県内ノー」の民意は不変
2013年2月27日
日米首脳会談での約束は空手形ではないとのアピールなのだろうが、県民からすれば民意無視以外の何物でもない。防衛省は米軍普天間飛行場の移設を予定している名護市辺野古地域の漁業権を持つ名護漁業協同組合に、埋め立てへの同意を求める文書を提出した。 政府は3月中にも仲井真弘多知事に辺野古の埋め立てを申請する方向で調整している。知事が許可を出すには名護漁協の同意が不可欠だ。政府としては、名護漁協の同意を得れば、許可へ大きく前進するとの目算なのだろう。
目的達成のために、一本釣りでじわりじわり外堀を埋め、県民の不協和音をあおっていく。政府の常とう手段に、どれほど県民が怒りを蓄積させているか、そろそろ気付くべきだ。
県内では県議会、全市町村議会が県内移設に反対を決議し、全首長、議長らが上京して安倍晋三首相宛てに普天間の閉鎖、撤去を求める「建白書」も提出している。こうした中、手続きを進めるのは、安倍政権が「建白書」の重みを全く理解できないと宣言したに等しい。極めて遺憾だ。
懸念されるのは、名護漁協の古波蔵廣組合長が、同意の可能性に言及していることだ。子々孫々受け継がれてきた宝の海を、漁業補償と引き替えに失ってもいいのだろうか。漁協には海を守るという基本的な役割があるはずだ。同意するかどうかの検討は、目先の利害だけにとらわれず、慎重にも慎重を期してもらいたい。
くしくも、辺野古の南方で漁を営む宜野座漁業協同組合は、埋め立て工事や完成後の訓練で漁場環境が悪化するとして、3月中に移設反対を決議する漁民大会を開くことを決めた。
埋め立てによって、宜野座だけでなく周辺の東海岸一帯の漁場が影響を受ける。漁業従事者にとって大切な生活基盤が失われては死活問題となる。名護漁協も苦しい選択だろうが、独自の道を歩むのか、近隣のウミンチュや多くの県民と共に歩むのか、じっくり考えてほしい。
今回の政府の同意申請には仲井真知事も不快感を示している。県は埋め立て申請を受けてから、約1年をかけて承認の是非を判断する見通しだ。県民意志は「県内移設ノー」だ。仲井真知事は、これまで同様ぶれることなく「県外移設」の主張を貫いてもらいたい。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-02-24_45701より、
沖縄タイムス 社説[日米首脳会談]移設強行は最悪事態だ
2013年2月24日 10時00分
「日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信をもって宣言したい」
就任後初めてオバマ米大統領との首脳会談に臨んだ安倍晋三首相は記者会見で、最大級の表現を用いて交渉の結果を自画自賛した。
同じ一つの事象を見ていながら、見る側の立ち位置によって、全く違って見えることがある。今回のケースはその典型例だ。
米軍普天間飛行場の移設問題について両首脳は、日米合意に沿って早期に進めることを確認した。埋め立て申請の時期には言及していないものの、これによって3月中の埋め立て申請の可能性が強くなった。
だが、辺野古への強引な移設作業によって「日米同盟の強い絆が復活する」と考えるのは、あきらかな誤りだ。希望的観測に浸るのではなく、厳しい現実を直視すべきである。
日米安保体制は、米国が人(軍隊)を提供し、日本が物(基地)を提供する「人と物の協力関係」で成り立っているといわれるが、沖縄は復帰後も、物の大部分を負担し続けてきた。
辺野古への移設計画は、当初の海上ヘリポート構想と違って、普天間よりも高機能の基地を建設し、そこを拠点にしてオスプレイを運用するというもので、基地の過重負担を半永久的に沖縄に強いるものだ。
超党派の県民大会や、東京要請行動などに示された沖縄の切実な民意を、新基地建設のために踏みつぶすようなことがあってはならない。
■ ■
沖縄の声を無視して移設作業を強行すれば、沖縄社会全体に取り返しのつかない亀裂が生まれ、深刻な社会的混乱を引き起こすだろう。
現実を直視すべきだというのはそういう意味である。日本本土でできないものは沖縄でもできないのだ。
日米首脳会談で浮かび上がったのは、尖閣諸島をめぐる国益の違い、安倍政権の外交姿勢に対する米国の懸念である。
米議会調査局は最近、「米国が(日中の)軍事衝突に巻き込まれる可能性がある」との報告書をまとめた。米国で「巻き込まれ」を懸念する声が拡大している。
訪米中、安倍首相が尖閣問題で「冷静な対処」を繰り返し強調したのは、米側の懸念を打ち消すためだ。
米国は、領有権問題や歴史認識をめぐる日中、日韓のきしみを懸念し、日本の右傾化を警戒している。安倍政権はそのことにもっと敏感になったほうがいい。
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環太平洋連携協定(TPP)について米側は、関税撤廃の例外を事実上認めた。安倍首相は帰国後、自公両党から政府一任を取り付けた上で早期に交渉参加を決断する見通しである。
安倍訪米の最大の成果だという声もあるが、農業団体などはまだ納得していない。
影響を受ける農業団体などの懸念に丁寧に向き合い、影響の度合いと対策を各省ごとにではなく、政府として統一的に、早急にまとめ、国会論議を深める必要がある。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-02-21_45574より、
沖縄タイムス 社説[アセス訴訟却下]住民参加を軽んじるな
2013年2月21日 09時29分
原告は中身を問うているのに、判決は中身の議論に入るのを避け、訴えそのものを却下した。門前払いに等しい。
原告にとっては、想定した中で最悪の判決だ。
判決は、アセス手続きの問題点には一切触れていない。アセス手続きの違法性を問う裁判であるにもかかわらず、判決はその点についての判断を避けているのである。 その意味では今回の判決は原告敗訴とはいえない。問うべきことが問われないまま、依然として宙づり状態になっているからだ。
米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う環境影響評価(アセスメント)の手続きに不備があるとして621人の市民が、国を相手に、アセスのやり直しなどを求めていた裁判で、那覇地裁(酒井良介裁判長)は、原告の訴えを全面的に退けた。
オスプレイの配備は、環境アセスを進める上で最も重要な要素の一つである。それなのに事業者である沖縄防衛局は、オスプレイ配備の事実を方法書でも準備書でも伏せ続け、環境アセスの最終段階である評価書にようやく記載した。
オスプレイ配備だけではない。集落上空での飛行やヘリパッド建設など、本来、方法書の段階で開示すべき重要な情報の多くが「米軍の運用上の理由」で明らかにされず、情報開示が後回しになった。
原告が主張したのは、こうしたアセス手続きの違法性である。情報開示が不適切であったために、意見陳述の権利が奪われた-というのが原告の主張だ。
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判決は、原告が主張する意見陳述権について、「意見を述べる個々人に対し、独自の手続き上の地位を与えているとは言い難い」「事業者は、住民意見に『配意』すれば足り、個々の意見に応答する義務も負わない」と指摘し、原告の主張を却下した。
この主張には正直、驚いた。事業者はいちいち住民の意見に振り回される必要はなく、形だけ聞いて形だけの応答をしていれば事足りる、と言っているようにも聞こえる。
アセス手続きのさまざまな問題には触れず、意見陳述の法的性格を限定的に解釈して済まそうとするのは、いかがなものか。残念ながらこの判決には、環境アセスの原則である住民参加と情報公開をいかに充実させるかという問題意識が感じられない。
原告の主張を門前払いしたことによって、逆に、アセス手続きの「違法性」「強引さ」が未解決の問題として残った、とみたほうがいい。
■ ■
辺野古アセスの手続きの問題点は国会でも学会でも、もっと問われるべきだ。環境行政を預かる環境省が黙っていてはいけない。
原子力規制委員会ができるまで、原発の規制は資源エネルギー庁の原子力安全・保安院が担っていた。原発推進組織の中に規制組織があったのである。
米軍の演習や事件事故から県民を守り環境を守るのは、どの機関か。推進組織である防衛省、外務省は限界を抱えており、住民サイドに立った別の機関が必要だ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203044-storytopic-11.htmlより、
琉球新報 社説 アセス住民敗訴 法の正義に背を向けた
2013年2月21日
日本の環境影響評価(アセスメント)制度の後進性と、軍事基地をめぐる不都合な情報を隠す国の体質は不問に付された。あまりに形式的で、本質からずれた、法の正義に背を向けた司法判断だ。 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、国の環境影響評価に不備があるとして、原告621人がアセスやり直しや損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁は訴える権利さえ認めず、門前払いした。
原告が主張した手続きの不備やアセスの違法性に言及せず、国の主張ばかりを追認している。
最大の争点は、アセス手続きの中で、住民が意見を述べる権利があるか否かだった。
国はアセスの第1段階である「方法書」で、米軍機が辺野古などの集落上空を飛行することなど、住民生活に重大な影響を与える情報を記さなかった。6カ月後の追加資料で明記したが、住民意見は募らなかった。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備情報は、住民が意見を述べる機会がない評価書段階で盛り込んだ。
「後出し」そのものである。
判決は「配備の可能性は1996年ごろから日米当局間の交渉で米国側が説明していた」と認めたが、方法書から外した不作為には触れていない。なぜ、国民の知る権利を無視し、アセス制度の根幹である透明性をないがしろにする行為に厳しく注文を付けないのか。
判決は「意見陳述権を個人の権利として想定していない」とし、「事業者は住民意見を個々に反映させることや応答する義務を負わない」と、狭義の解釈に終始した。
方法書などの公告縦覧の手続きに関し、判決は「地域の環境情報を集めるためのもので、国は住民の意見に配慮すれば足りる」とした。国の大規模事業によって、生活環境を脅かされる住民の切実な意見は聞き置く程度にとどめればよいというに等しい見解だ。
米国では、オスプレイ配備に向けた環境アセスで、住民の懸念が噴き出し、訓練計画の停止や飛行経路の変更がなされている。住民意見を反映する回路が乏しい日本のアセスの後進性は際立つ。アセスにも主権在民の精神が確立されるべきだ。
今回の判決で、国は辺野古移設強行の環境が整ったと勘違いしてはならない。裁判を通してずるい手法を連ねる国の醜態も照らし出された。判決はお墨付きではない。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-202772-storytopic-11.htmlより、
琉球新報 社説 日米首脳会談 民意無視の惰性なくせ
2013年2月19日
安倍晋三首相とオバマ米大統領は22日、日米首脳会談を米ワシントンで行う。核実験を強行した北朝鮮への対応が中心議題となる。米軍普天間飛行場返還など懸案も多い。両首脳は、国民や過重負担に苦しむ県民の信頼に根差した、日米関係を再構築すべきだ。これを自らの歴史的使命と心得たい。
北朝鮮は国際社会の非難を受け入れておらず、新たな核実験や長距離弾道ミサイル発射実験の懸念が拭えない。対抗措置として、日本政府は国際金融市場から北朝鮮への資金流入を遮断する厳しい制裁を視野に米国との連携強化を目指す。今のままでは制裁は不可避だ。
北朝鮮は、金正恩(キムジョンウン)体制になっても他国を軍事挑発し譲歩を狙う「瀬戸際外交」を踏襲している。自国民のことを思うなら制裁の具体化前に核開発を放棄すべきだ。
両首脳は、普天間飛行場の名護市辺野古移設計画や米海兵隊輸送機MV22オスプレイ配備の撤回についても真剣に話し合うべきだ。
1996年の普天間返還合意から17年。この間、日本政府の閣僚が知事に県内移設への理解を求める沖縄詣を繰り返している。もう無意味な“儀式”はやめにしよう。時間を空費し、これ以上、県民を危険にさらしてはならない。
認識を改めるべきは、辺野古移設の軍事的合理性を説明できず、沖縄の民主的要求を理解しようともしない、日本政府の方である。
県議会議長や県内41市町村長らが先に首相に提出した「建白書」は、普天間の閉鎖・撤去を求めた。事の重みを知るべきだ。政府に染みついた対米追従、民意無視の体質こそ、日米関係を損ねている元凶だと気付いていいころだ。
歴代首相は避けたが、安倍首相は民意に反する普天間県内移設の見直しをオバマ氏に提起してほしい。それでこそ民主主義国家だ。
尖閣諸島問題について米国は直接の当事者ではないが、日中の良き仲介者として、武力衝突を回避するメカニズム強化など外交的解決を側面支援してもらいたい。
アジア太平洋戦略を重視するオバマ氏は環太平洋連携協定(TPP)へ日本の参加を迫り「同盟深化」を求めるだろう。首相は国民合意のない代物について安請け合いは禁物だ。憲法上の制約や国民の利益、東アジア地域の真の平和と安定を念頭に、できること、できないことを慎重に判断すべきだ。