規制改革会議 解雇容易、受け皿課題

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52426850V00C13A3EA1000/より、
日経新聞 社説 経済再生と成長を労働政策でも後押しを
2013/3/5付

 日本経済の再生には労働政策の役割も重要になる。需要が伸びる分野に人が移りやすくし、人材がより高い技能や知識を身につけて付加価値をあげられるようにする。労働政策は成長戦略の柱のひとつといえる。
 大切なのは民の力を最大限引き出す視点である。どの企業で人材需要があるか見つけ、求職者との橋渡しをする職業紹介は、製品・サービスの市場動向をよく知る民間事業者をもっと活用した方が効率的になる。
 職業訓練も民が主体になれば、教育内容の編成が柔軟になる。グローバル化による競争激化と技術革新によって、働く人には専門性がますます求められている。そうした環境変化に対応して訓練の効果をあげる必要がある。
 官が中心に担っている職業紹介と職業訓練の民間開放を積極的に進めることが、経済の再生と成長に欠かせない。安倍政権が復活させた規制改革会議ではその点の議論も尽くしてほしい。
 規制改革会議は健康・医療やエネルギー・環境分野などと並んで雇用関係の規制の見直しを重要テーマに挙げた。
 論議する項目は労働時間規制や労働者派遣規制の見直し、労使双方の納得のゆく解雇ルールのあり方など、多岐にわたっている。働きやすい環境づくりや、別の企業や仕事に弾力的に移れる労働市場づくりなどのためだ。項目選びはおおむね妥当といえよう。
 もの足りないのはハローワークの職業紹介事業や公共職業訓練施設の運営を人材サービス会社などの民間企業に思い切ってゆだねる改革が、主要項目として挙がっていない点だ。
 民間開放にあたっては、公務員であるハローワークの職員の身分をどうするかなどの問題が出てくる。だがハローワークの職業紹介も公共職業訓練も、いまのままでは活発な競争がなく、人材紹介サービスや訓練メニューの質が高まらない。求職者や働く人自身のためにも、民間開放を推進して競争原理をはたらかせるべきだ。
 成長分野に人を移し、人材の能力を高めるには規制改革以外の手立ても重要だ。生活費を支給しながら職業訓練を施す求職者支援制度など、多彩な再就職支援制度があるが、利用者が伸び悩んでいるものもある。限られた予算で効果があがるよう、政府は制度の再設計にも取り組んでもらいたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52378400U3A300C1PE8000/より、
日経新聞 社説 成長のために規制改革が不可欠だ
2013/3/4付

 安倍晋三首相は農業を成長戦略の重要分野と位置づけた。日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に加わる道筋が見えてきた今こそ、貿易自由化に耐える強い農業を築かなければならない。
 農家の平均年齢は66歳に達している。耕作放棄地は40万ヘクタールと、農地全体の1割近くに及ぶ。このままでは自由化と関係なく、日本の農業は内側から崩壊してしまう。再生に残された時間は少ない。

コメと野菜は異業種
 産業として伸ばす政策と保護政策を混同してはならない。安倍政権は、品質や安全性を高める日本の技術力を生かし、意欲ある若者が集まる成長産業へ変える方向に政策のカジを切るべきだ。それには輸出を支援するだけでなく、思い切った規制改革が欠かせない。
 農業はコメや野菜、果物、畜産物などの分野ごとに事業環境や競争力が大きく異なる。農業という名前だけでひとくくりに扱うと問題の本質を見失うだろう。
 たとえば高関税に守られていなくても、多くの野菜生産者は自立している。過去3年で1000社を超えた企業の農業参入も半分近くが野菜だ。しかしコメや麦への参入は2割に満たない。
 供給カロリー(熱量)で計算すると39%しかない日本の食料自給率も、生産額ではじけば66%とけっして低くない。野菜や果物などは、穀類に比べて熱量は低くても付加価値が高いからだ。
 政府はこれまで、農業をことさら弱く見せる熱量自給率を示し、だからコメ市場を守らなければならない、と強調してきた。この姿勢を改め、競争力の高い「攻めの農業」に転換するときである。
 和牛や国産ワインへの評価は、海外でも高まっている。まず、限られた農地でも技術で強さを引き出せる分野を後押しする政策を強化すべきだ。
 一方、野菜などと違い、農地の大きさがコストを左右するコメは、全国横並びの生産調整を見直さなければ体質を強化できない。経営規模が大きいコメ産地や農家は生産量を増やし、潜在能力を最大限に引き出すべきだ。生産調整を続けながら経営規模を広げる政策には、そもそも矛盾がある。
 競争を避けて、小規模の兼業農家まで守るのが今の農政だ。その護送船団方式を見直せば、競争で行き詰まるコメ生産者が出てくるはずだ。こうした農家には、付加価値型の農業への転換や他の農家への農地の提供を促すべきだ。
 農地の規模拡大や集約を後押しするために、農地法は、企業による農地所有の解禁を含めて抜本的に見直す必要がある。農業に情報技術を導入したり、製造や販売と融合させたりする強化策の障害とならないためにも、思い切った改革を打ち出してほしい。
 農産物の収量は天候にも左右される。経営安定のために一定の所得補償は必要だ。ただ、所得補償も横並びではなく、生産性を引き上げる制度の設計が欠かせない。消費者にとって農業支援策はどのような利益に結びつくか、分かりやすい説明も求められる。

農政の壁を突き破る
 1993年にコメの部分開放が決まった際には、農業対策だけでなく、市場での需給調整を通じ農業を強化していく対策に取り組んだ。ところが供給過剰が露呈し、取引価格が急落すると農業協同組合が抵抗を強め、2011年にコメの公設現物市場は廃止された。
 企業は消費者の動きに絶えず目をこらし、商品や売り方を工夫している。農業を産業として成長させるためには、需要の変化をかぎ取り、経営意識を高める市場の存在は不可欠だ。
 生産者が農産物の販売を農協組織に委ね、売り上げは平均価格で精算する共同販売という仕組みで創意工夫は生まれにくい。競争力強化の視点から農協制度の改革も進めてもらいたい。
 農協や農業に関係が深い議員は、これまで通りの農政の枠組みを守る姿勢に傾きがちだ。その発想の壁を突き破り、農業の再生につなげられるか。農政改革の成否は、安倍首相の政治指導力にかかっている。
 日本経済の復活を目指すアベノミクスは、「3本目の矢」である成長戦略が最も重要だ。日本の農業は、成長産業として生まれ変わってほしい。そのための改革が本物でなければ、安倍政権への国民と市場の期待は失望に変わる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130304k0000m070107000c.htmlより、
社説:混合診療 全面解禁には反対だ
毎日新聞 2013年03月04日 02時32分

 政府の規制改革会議や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する議論で混合診療が注目されている。混合診療の一部は現在も認められており、必要性に応じて慎重に広げるべきだが、患者の安全や負担の面から全面解禁には反対だ。
 病気で治療を受けると公的医療保険から治療代や薬代が支払われる。どの治療や薬を保険適用とするかは値段も含めて国が決めており、それ以外の自由診療は患者の自己負担となる。混合診療とは保険適用の治療と自由診療を併用することで、この場合は保険適用分も含めてすべて患者が負担しなければならない。重い自己負担を課すことで、実質的に自由診療を制限しているのだ。
 海外で使われているのに国内では未承認の医薬品、先進的な医療技術を用いることに意欲のある医師は少なくない。希望する患者も多いはずだ。自由診療の拡大は製薬企業や医療機器メーカーだけでなく民間保険会社も歓迎するだろう。
 しかし、一般の商品やサービスと医療は違う。消費者の立場である患者より医師の方が圧倒的に専門知識がある「情報の非対称性」、医療が本質的に持つ不確実性を考えねばならない。もしも大事な家族が病気となり、未承認で費用もかかるが効くかもしれない治療法があると医師に言われたら、借金をしても頼みたくなるのが人情ではないか。有効性や安全性の判断は最終的に医師に委ねるしかなく、効果や副作用を後で患者が検証することも容易ではない。
 国内外で承認された薬でさえ不適切な使用で多くの副作用被害を出した例はいくらでもある。市販後に新たな副作用や不具合が確認された薬や医療機器も珍しくない。そのために公的な審査機関で何重ものチェックをしているのだ。
 現在、100種類以上の高度先進医療が混合診療を認められているが、国が指定する医療機関で行われ、有効性や安全性が確認されれば保険適用となり、そうでなければ混合診療から外される。その枠を広げることは検討すべきだが、個々の医師の判断にすべてを任せるのは無謀だ。最高裁も安全面などを考慮し現行制度を認める判決を出している。
 高齢化や医療技術の革新に伴って公的医療費は年々増えている。医療費抑制への圧力が強まる中で混合診療を解禁したら、患者負担の自由診療が広がるのは目に見えている。毎日多数の患者を診察して疲弊している現場の医師にとっても高収益の自由診療は魅力的なはずだ。今でさえ医師不足や医療崩壊が叫ばれているのだ。保険診療しか受けられない患者は医師探しに苦労することになりはしないだろうか。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130226/k10015789711000.htmlより、
厚労相 国民皆保険の維持に全力を
2月26日 14時1分

田村厚生労働大臣は閣議のあと記者団に対し、TPP=環太平洋パートナーシップ協定について、「公的医療保険に影響が出ることは何としても避けなければならない」と述べ、政府が交渉参加を決めた場合には国民皆保険の維持に全力を尽くす考えを示しました。
この中で田村厚生労働大臣は、自民党の役員会がTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉参加の判断やその時期を安倍総理大臣に一任したことに関連し、「TPPでの大きな問題は公的医療保険の制度だ。これに影響が出ることは何としても避けなければならない」と述べました。
そのうえで、「影響があるならばわれわれは了承できない。そうならないよう交渉の中で言っていかなければならない」と述べ、政府が交渉参加を決めた場合には国民皆保険の維持に全力を尽くす考えを示しました。
また、田村大臣は、政府の規制改革会議がインターネットを使った市販薬の販売規制を最優先で見直すとしていることについて、「ネット販売の新たなルールは、厚生労働省の検討会が一定の方向性を示すことになっている。規制改革会議の意見はその中で参考意見として検討することになる」と述べました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130226/k10015781541000.htmlより、
薬のネット販売 議論活発化も
2月26日 4時26分

インターネットを使った市販薬の販売規制を巡って、政府の規制改革会議で規制を全面的に解禁すべきだという意見が相次いだのに対し、厚生労働省は、行き過ぎた規制緩和は、薬害の危険性を招きかねないとして慎重な姿勢を示しており、今後、議論が活発化しそうです。
インターネットを使った市販薬の販売を巡って、厚生労働省は、一部の販売を省令で禁止していましたが、最高裁判所は、先月、「国の規制は無効だ」とする判決を出し、ネット販売は、事実上、解禁されました。
これについて、25日に開かれた政府の規制改革会議では、ネット上の市販薬の販売規制を最優先に見直すことを確認しました。
そして、出席した委員から、「ネット販売を全面的に解禁すべきだ」などという意見が相次ぎ、安全性を確保するための方策を検討していくことになりました。
これに対して、厚生労働省は、行き過ぎた規制緩和は、薬害の危険性を招きかねないとして、慎重な姿勢を示しています。
また、自民党の有志の議員も、「国民の健康が脅かされかねない」として、販売を規制するための法改正を目指すことも検討しています。
規制改革会議は、ことし6月までに規制緩和の具体案をまとめることから、今後、ネット上の市販薬の販売を巡る議論が活発化しそうです。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2501I_V20C13A2PP8000/より、
薬のネット販売を優先議論 規制改革会議、全面解禁を要求へ
2013/2/25 20:22

 政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は25日、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売など4項目の最優先議題を決めた。成長戦略をまとめる6月までに規制改革の方向性で結論を出す。会議では「薬のネット販売は全面自由化を前提にすべきだ」との意見が多数で、ネット販売に慎重な厚生労働省をけん制する内容になりそうだ。
 認可保育所の設置基準の緩和、株式会社などの参入を含めた保育サービスの規制緩和、石炭火力発電所の新設を促進する環境への影響評価の緩和も最優先の議題にした。電力自由化など法制化が進む電力システム改革も検証する。
 本会議の傘下に4つの作業部会を置いたうえで合計で37項目の検討課題を改めて示した。親書の取り扱いを日本郵政以外にも認める信書便法の見直しなどを新たに盛り込んだ。各部会は次回の会合までに検討課題の中で重点的に議論する項目を決める。
 同日の規制改革会議では、大田弘子議長代理(元経済財政相)が「規制内容が国際比較されていないのはおかしい」と述べ、薬のネット販売規制を説明した厚労省の担当者に追加の資料を求める一幕もあった。大田氏は、企業活動の妨げになる規制を国際比較したうえで抜本的に見直す「国際先端テスト」の先行的な事例にしたい考えだ。
 大衆薬のネット販売規制は1月に最高裁が違法との司法判断を下した。厚労省は検討会を設置して新たなルール作りを急いでいる。数カ月以内に結論を出し、今国会に薬事法改正案を提出する考えだが、規制改革会議は同省の結論を待たずに規制改革の方向性を打ち出す方針だ。
 同省の検討会では、ネット通販業者が副作用の危険性が高い第1類(育毛剤や胃腸薬など)の販売を認めるよう要求する一方で、薬剤師団体は対面販売が基本だと反論。2月の初会合で議論は平行線に終わった。薬のネット販売に慎重な自民党の議連も「1類販売は禁止すべきだ」との意見が多い。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130216ddm003010037000c.htmlより、
クローズアップ2013:規制改革会議 解雇容易、受け皿課題
毎日新聞 2013年02月16日 東京朝刊

 政府は15日、規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)の第2回会合を開き、混合診療の対象拡大や解雇規制の見直しなど、59項目の検討課題が事務局から提起された。今月中にも開く次回会合で項目を絞り込んで具体的な検討に入り、政府が6月にも策定する成長戦略に盛り込む方針だ。規制改革は、経済再生を目指す安倍晋三政権の最優先課題だが、業界団体や関係省庁の強い抵抗も予想され、政権のリーダーシップが問われる。

 ◆雇用
 ◇解雇容易、受け皿課題
 規制改革会議では、海外に比べて厳しいとされる解雇規制の緩和や、労働時間管理の柔軟化などが俎上(そじょう)に載った。正社員の解雇のハードルが下がれば、正社員重視や終身雇用などの雇用慣習が崩れる。労働者の企業間の異動が進み、若年雇用の拡大にもつながる効果が期待されるが、失業者の増加なども懸念される。
 日本で企業が正社員を解雇するには、解雇が必要なほど経営が悪化していたり、解雇を避けるためのさまざまな対策を打ったりする必要がある。これらは判例で示されたものだが、具体的にどうすれば要件を満たすかは不明確だ。経済界は、どんなケースが不当解雇にあたるのか明確化するとともに、欧米などで一般的に行われている一定のお金を支払って労働契約を解消する仕組みを作るよう要望。労使が納得できるルールを作り、解雇規制の緩和につなげる。
 しかし、電機産業や外資系企業では昨年ごろから、強引な退職勧奨や会社への出入り禁止など乱暴な解雇が指摘された。連合幹部は「企業は実質的に解雇を自由にやっているようなもの。これでルールまで変えられたら雇用安定の底が抜ける」と警戒する。
 また、非正規労働者の比率が35%を超え、年収200万円以下の「ワーキングプア」と呼ばれる労働者が1000万人を超える中、解雇規制の緩和が不安定雇用をさらに拡大する恐れもある。規制緩和と並行し、中途採用の拡大など、解雇の受け皿をどうするかの議論も進める方針だ。
 労働時間の規制緩和では、勤務時間などを労働者の裁量で決められる裁量労働制の拡大を議論する。現在は一部の業務しか認められていないが、対象を広げれば、女性や高齢者ら短時間の勤務を望む人にも就労機会が広がるとされる。しかし、仕事が長くなっても残業代などが出ないため、「時間外手当の削減が目的ではないか」などの反対が根強い。【東海林智、久田宏】

 ◆医療
 ◇混合診療、格差拡大の懸念
 健康・医療では13項目の検討課題が示された。このうち、公的医療保険が適用される保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」の解禁が、引き続き規制緩和の議論の焦点になりそうだ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130216ddm003010037000c2.htmlより、
 厚生労働省は現在、混合診療を原則禁止しており、併用すれば保険診療分も含め全額自己負担になる。しかし、保険外診療となる先端医療が必要な患者にとっては、経済的負担が大きいため、一部の医療技術では同省が安全性を審査したうえで併用を認めている。
 規制改革会議は「先進的な医療技術全般」を混合診療の対象に広げるべきか検討する方針。実現すれば、患者の負担減につながるほか、高度医療の技術を持つ病院の利益が増える可能性もある。ただ、病院間の格差も広がりそうで、医師会などは「富裕層と低所得層で、受けられる医療の水準が異なりかねない」などと反対している。田村憲久厚労相は15日の記者会見で「現行制度で対応できている」と述べ、見直しは必要ないとの認識を示した。
 一般用医薬品のインターネット販売は、規制を無効とした最高裁判決を受け、厚労省の検討会が新ルール作りの議論を始めている。検討会では、通販業者が中心となり「ネットは添付文書も閲覧でき、安全性で対面販売に劣らない」と規制緩和を主張するが、日本薬剤師会や薬害被害者らは「患者の症状を確認して売るべきだ」と慎重姿勢を崩さない。【井崎憲、佐藤丈一】

 ◆エネルギー
 ◇原発代替電源、「環境」の壁
 エネルギー分野では11項目の検討課題を提示。国立・国定公園内での地熱発電や、農地での大型太陽光発電、石炭火力発電の導入拡大に向けた規制緩和を掲げた。福島第1原発事故後に原発再稼働が進まない中、再生可能エネルギーなどの代替電源の確保は急務で、経済産業省が積極的だが、環境保護の観点から環境省などが慎重姿勢を見せている。
 地熱発電は、火山が多い日本での潜在力が高く、太陽光や風力などに比べて出力が安定しているメリットもある。しかし、有力な候補地である自然公園内は、昨年3月に一部地域で規制が緩和されたものの、生態系や景観への配慮など開発に向けたハードルはなお高く、新規建設がほとんど進んでいない。隣接する温泉業者が「地熱発電の開発で、温泉の湯量が減少しかねない」と反発するケースもある。
 石炭火力の新増設を巡っては、地球温暖化につながる二酸化炭素(CO2)の排出増を嫌う環境省が、環境影響評価で厳しい注文を付けるケースがあり、事業者などが「CO2の排出規制などの環境基準が明確でなく、行政の裁量で石炭火力の建設が進まないリスクを抱える」との不満が出ていた。石炭火力は発電コストが安く、電力会社の「頼みの綱」になっている。会議では、環境基準をあらかじめ明確化することを目指す。ただ、どの程度基準を厳しくするかで、環境、経産両省の対応が分かれる可能性もある。【小倉祥徳】

http://mainichi.jp/opinion/news/20130216ddm003010037000c3.htmlより、
 ◇緩和、成長戦略の要
 安倍政権は、成長戦略を「大胆な金融緩和」や「機動的な財政政策」と並ぶ経済再生の「三本の矢」と位置づける。規制改革はその要だが、業界団体や関係省庁が慎重だったり、規制緩和の副作用に対する懸念が強かったりするケースも多く、議論は曲折も予想される。
 安倍政権は日銀に追加金融緩和のレールを敷き、国費負担10兆円超の経済対策を決定したが、これらは景気を一時的に良くする「カンフル剤」。成長戦略は、経済の体質を強くする役割を担う。政府が6月にも取りまとめる戦略では、特定の産業に政府が集中投資する「市場創造プラン」などが柱となる。
 しかし、政府が成長分野を決めて国費を投入すると「(関係業界に)モラルハザード(倫理の欠如)を生むのでは」(政府の産業競争力会議メンバーの三木谷浩史楽天会長兼社長)との懸念がある。どの産業が成長するかの見極めも難しく、支援の成果が出ないと財政悪化に拍車がかかる。
 規制改革は直接的な財政措置を伴わないうえ、どんな改革が必要かの議論も80年代から重ねてきた。あとは「政治のリーダーシップ次第」(岡素之議長)で、稲田朋美行政改革担当相も15日の会議で「規制改革は成長戦略の一丁目一番地。可能なものは随時取り組みたい」と意欲を示した。
 ただ、今回提示された59項目は、省庁や業界団体の利害が衝突するものも多い。安倍政権が長年の課題に踏み込む突破力を見せないと、成長戦略は「絵に描いた餅」に終わりかねない。【久田宏】

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