記者の目:防災教育 吉田卓矢氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130305k0000m070109000c.htmlより、
記者の目:防災教育=吉田卓矢(大阪科学環境部)
毎日新聞 2013年03月05日 00時37分

 ◇備えと教訓生かす必修科目に
 東日本大震災で改めて重要性が認識されたのが防災教育だった。私は、その優れた取り組みを顕彰する「ぼうさい甲子園」(毎日新聞社と兵庫県など主催)の取材を通して、自分の命は自分で守るという意識を育てるだけでなく、子供たちと地域住民との絆を深める役割も担うものだと知った。南海トラフ巨大地震や首都直下地震への備えに欠かせない地域防災力の向上のためにも、防災教育を必修科目にして全国に取り組みを根付かせてはどうだろうか。

 ◇聞き取りで学び住民に提言発信
 実例を挙げたい。大震災による津波で517人の死者・行方不明者が出た岩手県宮古市にある市立鍬ケ崎(くわがさき)小学校の児童は、強い揺れを感じるとすぐさま校庭に集まり、高台の神社への避難を始めた。それまでの避難訓練で何度も行き来したところだ。津波は住み慣れた町をのみ込み、校庭に押し寄せたが、全員無事だった。

 同校は、今年度のぼうさい甲子園で最高のグランプリを受賞した。担当の井口道子教諭は「子供は冷静でした。普段の取り組みが生きた」と語る。将来起きるとされた宮城県沖地震の津波被害を想定し、同校は05年から防災教育を始め、避難訓練のほか、防災かるたや避難マップを作って備えの意識を高めていた。

 大震災後の取り組みにも感心した。児童は何度も集会を開いて「鍬ケ崎にこれからも住む人たちに、この経験を伝えるのが使命」と考えた。当時の5年生が住民に発生から避難までの行動を聞き取り、「地震がきたら迷わず高台へ逃げるべし」「命を優先し、何があっても戻らぬべし」など五つの提言を冊子にまとめた。被災地の支援に来たボランティアにも送って全国に教訓を発信したのだ。

 災害は学校にいる時に起きるとは限らない。優秀賞だった岩手県釜石市立釜石小学校は、どこにいても自分で判断して逃げることができるよう下校時の避難訓練を08年度から続けていた。大震災の時は全員が帰宅し、海の近くで遊んだりしていたが、個々の判断で高台に避難した。

 奨励賞の宮城県女川町立女川第一中学校は、生徒の8割が津波で自宅を流された。生徒は教訓を残そうと社会科の授業で地域を歩き、過去の津波の到達点を示した石碑が道路工事で海抜の低い土地に移されていたことを知った。「役に立っていない」と今回の津波が来たところに石碑を設置する計画を保護者とともに進めている。津波で母と祖父母を亡くした鈴木智博さん(13)は「最初は津波のことを考えるのも嫌だったけど、将来のために必要だと思い直した」と話す。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130305k0000m070109000c2.htmlより、
 4年連続で大賞を受賞した徳島市津田中学校は海岸に近く、南海トラフ地震の被害想定では津波が44分後に到達し校区が水没する。3年生は昨年の夏休み、住民1356人に地震が起きた後の住まいをどうするかなどを尋ね、被災後のまちづくり計画を作成した。結果はコンビニエンスストアや食堂に張り出され、住民に防災意識を浸透させるのに役立っている。

 高齢者への聞き取りや避難の際に各戸に掲げる安否札の配布なども防災教育だ。そうした活動を通じて、子供たちが町の歴史や過去の災害も学び、古里への愛着を深める効果があると言えるだろう。

 ◇予算と時間かけ地域と連携して
 だが、こうした取り組みはまだ一部の学校にとどまっている。防災教育を取り入れることができる「総合学習の時間」は新学習指導要領で、小学校が11年度から年間105〜110時間が70時間に、中学校は12年度から70〜130時間から50〜70時間に減った。また、休日や放課後の活動も多く、担当教諭の負担も大きい。津田中の小西正志教諭は「後継者が育たないのが悩み」と話す。熱心な担当教諭が異動した後、活動が縮小することは珍しくない。

 ぼうさい甲子園の応募校には、道徳の時間を使って災害時の行動を考えたり、家庭科で防災ずきんを作ったりするなど工夫を凝らした授業をするところがあった。毎日新聞の調査では、全都道府県と政令市の9割近くが防災教育事業を実施している。都立高校では宿泊防災訓練で救護や炊き出しを体験し、西日本では自主防災会や防災士と連携して高校生を地域の防災リーダーに育成する自治体がある。

 昨年改正された災害対策基本法に防災教育の強化が新たに明記された。台風、集中豪雨、大雪、火山の噴火なども深刻な被害をもたらす。地域ごとにきめ細かい減災の取り組みが必要だ。命を守るための教育に十分な予算と時間をかけることが「3・11」の教訓を生かし、伝えることにつながるはずだ。

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