南海トラフ被害想定(1~2) 減災の重要性、強調

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm003040112000c.htmlより、
クローズアップ2013:南海トラフ被害想定(その1) 大手企業、対策急ぐ
毎日新聞 2013年03月19日 東京朝刊

 ◇事業継続の計画も 「読みきれぬ被害」に悩む
 南海トラフ巨大地震は、関東から九州北部にかけての産業拠点「太平洋ベルト地帯」を直撃する。自動車や家電など基幹産業の生産拠点や物流網が損壊すれば、世界のサプライチェーン(部品供給網)は東日本大震災以上に寸断される。株価急落や長期金利急騰で日本発の金融不安が起こる可能性もあり、世界経済の大きなリスク要因となる。【久田宏、清水憲司、鈴木一也、宮崎泰宏、米川直己、高橋昌紀】

 中部地方に本拠を置くトヨタ自動車。沿岸部にある主力工場は東日本大震災後、鉄骨で屋根を補強した。津波が襲来した場合、1000人以上の従業員が屋上に逃れても屋根が抜け落ちないようにするためだ。トヨタは本社のコンピューターが使えなくなった場合、グループの日野自動車(東京都日野市)やダイハツ工業(大阪府池田市)がバックアップする仕組みも構築。東日本大震災で部品調達が滞り、減産を余儀なくされた教訓から、約1500の拠点に工場分散や十分な在庫確保を要請し、2週間以内に生産再開できるめどをつけた。
 家電などの生産拠点が集積する関西では、エアコン大手、ダイキン工業の堺製作所臨海工場(堺市)が想定する津波を2メートルから6メートルに引き上げ、高さ12メートルの工場3階以上に従業員約350人を避難させる計画を立てた。プラズマパネルを生産するパナソニック尼崎工場(兵庫県尼崎市)は、基幹設備を高さ10メートル以上のフロアに設置、「考えられる対策はすべて施した」という。
 ただ、「被害想定があまりに大きすぎる」(家電メーカー幹部)として、どれだけの対策を打てばいいのか戸惑いもある。
 日本自動車部品工業会は18日、日本政策投資銀行などと協力し、震災時に事業を継続するマニュアル(事業継続計画=BCP)作成の指針を発表した。代替生産拠点や在庫の確保といった震災対策を盛り込むものだが、「必要性は認識していても、何にどこから手をつけていいか分からない会社が多かった」(政投銀)という。部品メーカーは約2万5000社に及ぶが、震災対策に手つかずの中小・中堅企業が多いのが実情だ。
 こうした対策を講じても、従業員が被害に遭って人手が不足する可能性や、道路や電力、ガスなど経済インフラの復旧までは読み切れない。トヨタ幹部は「起きてみないと、本当の被害は分からない。ここまでやれば大丈夫という確証はない」と話す。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm003040112000c2.htmlより、
 生産機能が復旧しても、復旧・復興対策以外の生産活動が遅れる可能性もある。「震災の復旧活動を担う自衛隊ヘリコプターへの部品供給が最優先。民生品は後回しにせざるをえない」。三菱重工業幹部は、社内で決めている大規模災害時の対応策を明かす。同社の愛知県の工場は、米ボーイング社の最新鋭旅客機「787」の主翼を製造しているが、被災後しばらくは主翼生産にしわ寄せが生じそうだ。
 生産活動の低下や物流の寸断が長期化した場合、海外企業が調達先を日本企業以外に切り替えたり、生産機能が国外に流出したりして産業空洞化が進みかねない。第2次報告書は、震災による企業活動の低下で「わが国の国際競争力の不可逆的な低下を招く可能性がある」と指摘する。そうなれば、失業者の増加や賃下げなどで消費が減退し、深刻な景気低迷が長期化する懸念がある。

 ◇世界経済へ波及 財政破綻に現実味
 国内の生産・物流網がまひすれば、影響は海外にも波及する。国内では高度な生産技術を必要とする部品や材料を生産し、コストが安い新興国で完成品を組み立てたり、欧米企業に部品を輸出したりするサプライチェーンが構築されているからだ。
 完成品の材料となる「中間財」の輸出額は09年に3405億ドル(32兆円)に上り、20年間で2倍以上増えた。自動車や家電、生産機械など、日本が国際的な分業体制の中核となっている分野では、世界の生産が滞る懸念がある。
 東日本大震災では、半導体大手のルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災。世界シェア1位の「マイコン」と呼ばれる車載用半導体の生産がストップすると、国内外の自動車メーカーもマイコンを調達できずに生産が停滞した。
 米ゼネラル・モーターズやフォード・モーターなどの一部工場でも、日本製部品の供給遅れなどで稼働停止に追い込まれるなど、サプライチェーンでつながる世界経済のもろさを露呈した。
 影響は企業活動にとどまらない。南海トラフ大地震の経済被害は最悪の場合、国内総生産(GDP)の半分近くに上る。復興事業費は東日本大震災(15年度までに23・5兆円)の10倍になってもおかしくない。財務省幹部は「想像を超える被害だ」と絶句する。国・地方の政府債務残高が約1100兆円に上る中、財政破綻が現実味を帯びる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm003040112000c3.htmlより、
 金融市場が「日本政府はもう借金を返せない」と見なせば、長期金利の指標となる国債の金利は跳ね上がる(価格は暴落)。東日本大震災後2日間で日経平均株価は1600円(約16%)以上下落した。金融市場が大荒れになれば、大量の株式や国債を保有する金融機関の経営が揺らぎ、金融危機に発展しかねない。震災で日本発の金融危機や企業活動の低迷が広がれば、世界同時不況の悪夢が現実になる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm002040102000c.htmlより、
クローズアップ2013:南海トラフ被害想定(その2止) 減災の重要性、強調
毎日新聞 2013年03月19日 東京朝刊

 ◇不燃化、備蓄、早期避難…
 中央防災会議の作業部会は南海トラフ巨大地震の経済被害が最悪で220兆円に上ると試算する一方で、人的被害などを出した第1次被害想定と同様、事前の取り組み次第で大幅に「減災」できることを強調した。試算によると、直接被害額は約半分に、間接被害額は約7割にまで減らすことができる。
 現在79%の建物の耐震化率や感震ブレーカーの設置率を100%にした場合、169・5兆円の直接被害は80・4兆円に、生産の低下による間接被害は44・7兆円から31・8兆円にまで減少する。
 更に被害額を減らすためには建物やライフラインの耐震化、不燃化などに加え、企業では事業継続計画を策定・充実しておくことが求められる。サプライチェーンを一つの流れだけに頼らないよう、枠組みを構築しておくことも必要とされる。
 個人レベルの対策としては、まず耐震化や津波からの早期避難が重要だが、被災後のことを考えて食料や水など家庭内の備蓄を充実させることが有効。非常持ち出し品と備蓄品に分け、必要なものと量をリストアップしておくと便利だ。備蓄は3日間分以上が基本となる。
 今回の想定では停電や下水道支障、回線不通、医療支障なども甚大とされており、懐中電灯や簡易トイレ、携帯電話用バッテリー、常備薬などが必要とのイメージが湧く。
 作業部会の委員からは「『日本はハイリスク・ローリターンな国』という印象を与えかねない」と懸念する声も聞かれた。それでも被害額の公表に踏み切ったのは、いつ起こるかわからない巨大な災害を想定することで「危機管理」に対する強い姿勢を見せる狙いもあったからだ。この日公表された報告は「安全への意識が高い国であることを世界に示す必要がある」としている。
 内閣府の藤山秀章参事官は「不安をあおることが目的ではない。少しでも地震防災を進めていくための想定なので、冷静に受け止めてほしい」と説明している。【池田知広】

 ◇対策関連法の成立急ぐ考え−−防災担当相
 古屋圭司・防災担当相は18日、作業部会トップ(主査)の河田恵昭(よしあき)・関西大教授と記者会見し、南海トラフ巨大地震対策特別措置法と国土強靱(きょうじん)化基本法などの法案を早期成立させる方針を示した。自民党の石破茂幹事長も同日の記者会見で、同党が今国会に提出する予定の同特措法案について「被害額を最少に抑えるため、投資する法案をなるべく早く成立させる必要がある」との考えを強調した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm002040102000c2.htmlより、
 同法案には、首相の指定する緊急対策区域で避難路や避難施設などを整備するため、防災事業の国の負担割合を引き上げたり、港湾工事を国が代行したりするなどの特例措置が盛り込まれている。
 古屋担当相は「時期を明示するプログラムが大事だ」と述べ、南海トラフ巨大地震に対する対策大綱や、減災の具体的な目標となる地震防災戦略を策定する意向も表明。事業継続計画を策定した企業などを優遇する案も検討するとした。
 古屋担当相は「これより小さな地震が起こる可能性の方が高い。正しく恐れてほしい」と強調。河田主査は「国民の半数がこの災害に巻き込まれるかもしれない。人ごとではない、という危機感を持ってもらいたい」と訴えた。【中井正裕】

 ◇原発事故・長周期地震動、数値化できず
 東日本大震災では、東京電力福島第1原発事故が重なり、住民は生活基盤を根こそぎ奪われた。環境省の放射性物質の除染費用だけでも11〜13年度で計1兆696億円とされ、経済的な損失は膨大だ。だが今回の想定には、こうした原発事故による影響は数値化されていない。
 想定対象域には▽日本原子力発電の東海第2(茨城県)▽中部電力の浜岡(静岡県)▽四国電力の伊方(愛媛県)の3原発がある。また、中国電力は上関原発(山口県)の建設を計画中だ。
 中央防災会議の作業部会は昨年8月、南海トラフ巨大地震が起きた場合、浜岡原発に最大19メートルの高さの津波が襲う可能性があるとした。
 しかし、今回は「原子力災害の発生は別のテーブルで考えるべきだ」との考え。この日の報告には「いずれも地震発生と同時に運転停止する」「原発に何らかの異常が発生した場合、緊急的な対応が必要となる」と盛り込んだだけで、原発トラブルによる経済被害は考慮されていない。
 浜岡原発の10キロ圏に入る静岡県牧之原市の西原茂樹市長は「福島の事故が収束しない中、原発事故による被害があまりに深刻で想定すら不可能であることを示している。浜岡は速やかに永久停止すべきだ」と主張。同じく10キロ圏の同県菊川市の担当者は「原発で問題が起きた場合の想定も今後出せるなら出してほしい」と話した。
 また、作業部会は今回、遠隔地の超高層ビルを大きく揺らす「長周期地震動」の影響も数値化しなかった。「内閣府の有識者会議が南海トラフ巨大地震による影響を検討中だから」との理由だ。85年のメキシコ地震では、長周期地震動によって震源から約350キロ離れたメキシコ市でビル500棟以上が全壊し、多くの死者が出ている。【鳥井真平、樋口淳也、山本佳孝】

 ◆被害最小化対策の骨子
 ◇行政・個人
・建物等の耐震化
http://mainichi.jp/opinion/news/20130319ddm002040102000c3.htmlより、
・出火対策、延焼防止対策
・海外への的確な情報発信

 ◇企業
・事業継続計画の策定と充実
・サプライチェーンの複数化
・物流拠点の複数化

 ◇インフラ・ライフライン
・新幹線に脱線防止装置設置
・主要交通施設の耐震化
・ライフラインの耐震化
※作業部会の報告による

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