憲法96条改正議連は戦略的にも間違いだ 小林節氏

http://www.nnn.co.jp/rondan/ryoudan/index.htmlより、
一刀両断 -小林 節-
憲法96条改正議連は戦略的にも間違いだ
日本海新聞 2013/3/19の紙面より

 憲法9条に起因する憲政の困難と矛盾を直視した結果、今、憲法改正をタブー視しない議員の数は、国会内の過半数に達しているように見える。

 実際に憲政の現場にいる人々(政治家たち)にとっては、尖閣諸島での苦しい対応やアルジェリアでの人質殺害事件で直面した邦人救出の問題等、憲法が障害となっている問題も多く、改憲は急務だと感じられるのであろう。

 ところが、憲法改正には、衆参各院の3分の2以上の賛成がなければ発議もできない(96条)。それは、事実上、3分の1の護憲派(守旧派?)が拒否権を持っているに等しい。つまり、それでは3分の1の少数派が憲政を支配している「少数決」で、民主的ではないことにもなる。

 そこで、現状にいら立った改憲派議員の一部が、まず改憲の第一例として96条という「障害」を除去しようという運動を起こした。

 しかし、私は、その気持ちはよく分かるが、それは、憲法原則に反する上に、現実の戦略として賢明ではないと思う。

 まず、主権者・国民大衆が国家権力担当者(政治家とその他の公務員たち)を縛って権力の乱用を予防する法としての憲法は、改正がし難いいわゆる「硬性」であることが当然なのである。現に、民主政治の先例国・アメリカの憲法改正には、上下各院の3分の2以上による発議(日本と同じ)に加えて、全米50州の4分の3以上(日本より重い)の州の各別の同意が必要である。

 加えて、現行憲法下で96条を改正しようとする以上、それにも、まだ、頑固な3分の1の拒否権は有効である。

 そして、護憲派が主張することは決まっており、「憲法に拘束されるべき権力者たちが、憲法から自由になろうとしている。これは立憲主義を否定する暴挙である」しかも、「9条、新しい人権等の具体的な改憲提案ではなく、この改憲条件緩和の提案は、権力者たちから改憲の白紙委任状を求められているに等しい、実に危険なことである」

 こう言われてしまったら、選挙制度のおかげで与党が両院の3分の2以上で改正を発議することはできたとしても、その次の国民投票で否決されてしまうことは確実であろう。

 そうしたら、その先、もはや何十年も改憲論議はタブーになってしまう。その上で、現実の必要に迫られて憲法を無視した政治が続くことになる。恐ろしい話である。
(慶大教授・弁護士)

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