福島第1原発 停電で燃料プール冷却停止、復旧中
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130319/k10013314721000.htmlより、
福島第一原発1・4号機 燃料プール冷却再開
3月19日 17時22分
東京電力福島第一原子力発電所で、18日夜発生した停電に伴い、使用済み燃料プールの冷却システムなどが止まっていたトラブルで、東京電力は、19日午後2時すぎ、1号機の燃料プールの冷却システムの運転を再開しました。
また、4号機の燃料プールについては、非常用の発電機につなぐなどして、午後4時すぎに冷却システムを復旧させました。
このほかの冷却システムについても、20日午前8時ごろまでに順次復旧する方針です。
福島第一原発では、18日午後7時前、事故の収束作業の拠点となっている免震重要棟で瞬間的に停電が発生したのに伴い、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールや、敷地内にある使用済み燃料を専用に保管している「共用プール」で、冷却システムが止まりました。
外部の送電線から電気を受けている3つの配電盤が停止していたことから、東京電力は何らかのトラブルが起きたとみて、調査を行うとともに復旧作業を進めていました。
その結果、19日昼ごろまでに2つの配電盤について復旧作業が終わったことなどから、1号機の燃料プールの冷却システムについては、トラブルの発生から19時間たった19日午後2時20分ごろに運転を再開しました。
また、4号機の燃料プールについては、残る1つの配電盤の代わりに非常用の発電機につなぐなどして、19日午後4時すぎに冷却システムを復旧させました。
このほか、3号機の燃料プールについても、別の配電盤に切り替えるなどして、19日午後8時ごろまでに冷却システムを復旧させるほか、共用プールの冷却システムについても、20日午前8時ごろまでに復旧させる方針です。
東京電力によりますと、異常があった配電盤は、目視したかぎり損傷などはないということで、引き続きトラブルの原因について調べています。
この影響で、燃料プールの水温は、最も高い4号機のプールで、トラブルの発生する前の18日午後6時には25度だったのが、19日午後4時30分には30度まで上がりましたが、東京電力の規定で定めている65度よりは低く、冷却には問題ないと話しています。
このトラブルで、1号機から3号機の原子炉への注水に影響はなく、原発の周辺で放射線を測定するモニタリングポストの値にも変化はないということです。
燃料プールの冷却システムなどのトラブルの原因について、東京電力の尾野昌之本部長代理は、「トラブルを起こした配電盤について、目視で確認したところ、目立った損傷はなかったが、現在も電気の流れ具合を評価するなどして、原因を調査している。今回は、設備を復旧するのに、ケーブルでほかの配電盤に切り替えたほうが早いと判断した」と説明しました。
また、復旧作業に時間がかかっていることについて、東京電力は「安定した冷温停止の状況を維持することに努めてきたが、今回、このようなトラブルでご心配をおかけしていることは、大変申し訳ございません」と謝罪しました。
そのうえで東京電力は、トラブルの公表が3時間ほど遅れたことに改めて謝罪するとともに、今後は早いタイミングでの連絡ができるよう取り組んでいきたいとしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130319/k10013302101000.htmlより、
福島第一原発で停電 原因特定できず
3月19日 12時23分
東京電力福島第一原子力発電所で、18日夜、停電が発生し、使用済み燃料プールの冷却システムなどが止まっているトラブルで、発生から17時間たった今も電源設備のトラブルの原因を特定できず、燃料プールの冷却を復旧できない状態が続いています。
福島第一原発では、18日午後7時前、事故の収束作業の拠点となっている免震重要棟で瞬間的に停電が発生し、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールや、敷地内にある使用済み燃料を専用に保管している「共用プール」で、冷却システムが止まりました。東京電力は、外部の送電線から電気を受けている3つの配電盤で何らかのトラブルが起きたとみて、調査を行い、これまでに2つの配電盤は復旧しましたが、残る1つの配電盤のトラブルの原因が特定できず、発生からおよそ17時間たった今も燃料プールの冷却を復旧できない状態が続いています。燃料プールの水温は、19日午前10時現在で16度から30度程度になっていますが、最も温度が高い4号機のプールで、社内の規定で定めている65度を超えるまでに4日程度かかると見込まれています。
東京電力は、トラブルが起きた配電盤を交換することや、燃料プールの冷却システムを別の配電盤に接続することを検討していて、燃料プールの冷却システムを19日中にも復旧させたいとしています。また、社内の規定で、2日以上電源が失われてプールの冷却システムが止まった場合、消防車などで注水する対策が行われるということです。
このトラブルで、1号機から3号機の原子炉への注水に影響はなく、原発の周辺で放射線を測定するモニタリングポストの値にも変化はないということです。
燃料プールの冷却システムなどの復旧作業について、東京電力の尾野昌之本部長代理は、「プールの温度は十分に低い状態で、温度の上昇にも時間的な余裕があるものの、このうち最も余裕の少ない4号機の燃料プールの冷却について、復旧を優先させたい」と話しています。
また、このトラブルの発表が発生から3時間以上遅れたことについて、東京電力は「設備の状況を確認したうえで発表しようとしたが、確認に時間がかかり、誠に申し訳ない」と話しています。
官房長官「対策講じている」
菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で、「原因究明に全力で取り組んでほしい。使用済み燃料プールの冷却装置については、まだ復旧していないのが事実だ。国民の皆さんがいちばん心配しているのは、4号機のプールの水温が65度に上昇することだと思うが、ここを越えるには4日間の余裕があるということなので、その間に全力で復旧したい」と述べました。そのうえで、菅官房長官は「最悪4日間で改修できなかったときのため、冷却のための代替手段も万全を期すよう対応する予定なので、全く心配のないような対策を講じている。原発周辺の放射線量の変化は全くないということだ」と述べました。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013031801002263.htmlより、
福島第1原発で停電 使用済み燃料プール冷却が停止
2013年3月19日 00時49分
東京電力は18日、福島第1原発で午後7時前に停電があったと発表した。1、3、4号機の使用済み燃料プール代替冷却システムなどが停止し、19日午前0時25分時点で復旧のめどは立っていない。事故対応に当たっている免震重要棟も一時的に停電したが、すぐに復旧した。
原子力規制庁によると、1~3号機の原子炉への注水に問題は生じていない。燃料6377体を保管する共用プールの冷却も停止した。
東電は「配電盤か、接続されたケーブルが原因の可能性がある」としているが、規制庁、東電とも原因を特定できていない。東電が停電を公表したのは、発生約3時間後の午後10時すぎだった。(共同)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013031800937より、
プール冷却システム停止=福島第1、一時停電-東電
原子力規制庁は18日夜、東京電力福島第1原発の免震重要棟で、一時的に停電が発生したと発表した。メルトダウン(炉心溶融)を起こした1~3号機原子炉の注水冷却には問題がないが、電源系の一部で異常が発生。1、3、4号機の使用済み燃料プールの冷却システムやセシウム吸着装置などが停止した。復旧のめどは立っていないという。
停電は午後7時ごろ発生した。同原発周辺の放射線量に変化はないという。停電の原因は不明で、東電と規制庁が調べている。
東電によると、プールの水温は18日時点で25度程度で、東電が保安規定で定める上限の65度になるには4日ほどかかるという。(2013/03/18-23:53)
http://mainichi.jp/select/news/20130319k0000m040098000c.htmlより、
福島第1原発:免震重要棟で一時停電 燃料プール冷却停止
毎日新聞 2013年(最終更新 03月18日 23時51分)
東京電力は18日、福島第1原発の作業拠点になっている免震重要棟で午後6時57分ごろ、一時停電したと発表した。その影響で1、3、4号機の使用済み核燃料プールの冷却装置などが停止した。復旧の見通しは立っておらず、停電の原因を調べている。
東電によると、発電所内の電源設備の一部が停止。使用済み核燃料プールの冷却装置のほか、1〜6号機の核燃料6377本を保管している共用プールの冷却装置や汚染水を処理するセシウム吸着装置などが止まった。
ただし、使用済み核燃料プールや共用プールの水温は18日現在で約13〜25度。仮に電源が復旧しなくても、保安規定の65度を超えるまでに、最も水温の高い4号機でも4日以上かかるという。
一方、1〜3号機の原子炉を冷却する注水設備に異常はなく、モニタリングポストの大気中の放射線量に目立った変化はなかった。
東電や原子力規制庁によると、電源施設のうち、高圧の配電盤につながるケーブル付近でトラブルがあったとみられるという。
使用済み核燃料プールの冷却装置が停止するなどのトラブルを引き起こす大規模な停電は、東日本大震災直後を除いては発生していなかった。
東電は停電の発生直後、福島県を含む第1原発周辺の計13自治体に対し、安全協定に基づきファクスで通報連絡したとしている。【奥山智己、神保圭作】
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130318/k10013290991000.htmlより、
福島第一原発で停電 冷却システム止まる
3月18日 23時50分
東京電力福島第一原子力発電所で18日夜、停電が発生し、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールの冷却システムなどが止まっています。
東京電力は原因を調べていて、原因が特定されしだい使用済み燃料プールの冷却システムの復旧作業に入ることにしています。
18日午後7時前、福島第一原発の事故の廃炉作業の拠点となっている免震重要棟で瞬間的に停電が発生し、東京電力が調べた結果、敷地内にある電源設備の一部が停止していることが分かりました。
1号機から3号機での原子炉への注水に影響はないということですが、1号機と3号機、それに4号機の使用済み燃料プールで冷却システムが止まっています。
1号機と3号機、4号機の燃料プールでは、使用済み燃料が合わせて2100本余り入っていて、水温は18日午後4時現在で、最も温度が高い4号機で25度となっています。
また、温度の上昇は1時間当たり0.1度から0.3度程度で、東京電力の社内の規定で定めている65度を超えるまでに最も温度が高い4号機の燃料プールでは4日程度と見込まれています。
このほかにも6300本余りの使用済み燃料が保管されている原発の敷地にある「共用プール」の冷却システムや一部の汚染水の処理設備も停止しているということです。
このトラブルで、原発の周辺に設置されている放射線の値を測定するモニタリングポストの値に変化はないということです。
東京電力は原因を調べていて、原因が特定されしだい使用済み燃料プールの冷却システムの復旧作業に入ることにしています。
国の原子力規制庁によりますと、電源設備のうち、高圧の配電盤につながるケーブルの付近でトラブルがあった可能性があるということです。
東京電力は発表が遅れたことについて「設備の状況を確認したうえで取りまとめて発表しようとしていたが確認に時間がかかってしまった。大変申し訳ない」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130315/k10013238101000.htmlより、
原発専用港の魚から74万ベクレル
3月15日 22時57分
東京電力福島第一原発の専用の港の中で採取された「アイナメ」から、これまでで最大となる1キログラム当たり74万ベクレルの放射性セシウムが検出され、東京電力は魚の駆除を続けるとともに、魚が港の外に出ないようにする対策を進めることにしています。
福島第一原発の専用の港に生息する魚からは、非常に高い濃度の放射性セシウムが検出されるケースが相次いでいて、東京電力は魚の駆除を続けています。
東京電力は先月19日から21日にかけて駆除した5種類13検体の魚の放射性セシウムの測定結果を15日公表しました。
それによりますと、「アイナメ」1匹から1キログラム当たり74万ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。
これは、これまで最大だった51万ベクレルを上回る値で、国の一般食品の基準の100ベクレルの7400倍に当たります。
このほかに採取した魚は、750ベクレルから34万ベクレルでした。
東京電力は魚の駆除を続けるとともに、港と海をつなぐ入り口の部分に網を設置するなどして、魚が港の外に出ないよう対策を進めることにしています。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013031501002046.htmlより、
アイナメにセシウム基準7千倍超 第1原発港湾で捕獲
2013年3月15日 20時36分
東京電力は15日、福島第1原発の港湾内でとったアイナメから、魚類では過去最大値となる1キログラム当たり74万ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。国が定める一般食品の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)の7400倍に相当する。
2月21日に1~4号機の取水口付近で捕れたもので、全長約38センチ、重さ564グラム。東電が湾内で進めている魚の駆除作業で見つかった。このアイナメを1キログラム食べた場合の内部被ばく線量は約11ミリシーベルトと推定される。(共同)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013031500974より、
アイナメから74万ベクレル=福島第1の港、過去最大-東電
東京電力は15日、福島第1原発の港内で捕獲されたアイナメから、1キロ当たり74万ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。食品基準値の7400倍で、原発事故後に捕獲された魚で最も高い。
アイナメは2月21日、1~4号機の取水口付近で捕獲された。この場所は、事故直後に高濃度汚染水が流出し、拡散を防ぐため「シルトフェンス」と呼ばれる水中カーテンで区切られた内側という。これまでは51万ベクレルが最大だった。(2013/03/15-19:56)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130315/k10013213841000.htmlより、
原発汚染水 専用港に流出し続けていた可能性
3月15日 4時15分
東京電力福島第一原子力発電所の専用港で、海水の放射性セシウムの濃度がほとんど下がらなくなっていることについて、東京海洋大学の研究グループが試算したところ、汚染水の流出が止まったとされるおととし6月以降も、1年間で事故前の排出限度の73倍に当たる放射性セシウムが専用港に流れ出た可能性があることが分かりました。
研究グループは、詳細な調査を実施すべきだ、としています。
東京海洋大学の研究グループは、福島第一原発の専用港で海水に含まれるセシウム137の濃度が、去年春以降、高いところで、国の基準を上回る1リットル当たり100ベクレル前後からほとんど下がらなくなっていることから、原因の究明に役立てるため独自に試算を行いました。
試算では、専用港の海水は、海流や潮の満ち干で1日に44%が入れ替わると推定され、セシウム137が公表されている濃度になるには1日当たり80億から930億ベクレルが流れ込んでいる計算になる、としています。
その結果、汚染水の流出が止まったとされるおととし6月以降の1年間では、事故前の保安規定で定められた排出限度の73倍に当たる16兆1000億ベクレルが専用港に流れ出た可能性がある、ということです。
専門家によりますと、1年間に排出限度の73倍に当たる放射性セシウムが流出したとしても、外洋の生物にはほとんど影響はありませんが、港の中に生息する魚介類が体内に取り込むおそれがあるということです。
東京海洋大学の神田穣太教授は「海水の測定データから、原発の敷地内の土が雨で流れ込んだ影響とは考えにくく、地下水や壊れた配管などを通じて汚染水が漏れ出している可能性がある。詳細な調査を実施し、原因を特定すべきだ」としています。
これに対し東京電力は「さまざまな調査の結果から、発電所の敷地から放射性物質が海に流出しているとは考えていない。ただ、専用港の海水で放射性セシウムの濃度が下がらない原因は分かっていないので調査を続けたい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130311/k10013109521000.htmlより、
原子力規制委 「2度と事故起こさせない」
3月11日 12時16分
東京電力福島第一原子力発電所の事故から2年の11日、事故をきっかけに発足した国の原子力規制委員会の田中俊一委員長は、職員を前に訓示し、「原発事故で苦痛の生活をしている国民がいることを改めて思い起こし、事故を二度と起こさせないために、最善を尽くすことを国民に約束したい」と述べて、事故の再発防止を誓いました。
おととしの原発事故では、当時の原子力安全・保安院などの国の規制機関が十分な役割を果たせず、その反省から去年9月、「原子力規制委員会」と事務局の「原子力規制庁」が発足しました。
未曽有の原発事故から2年となり、11日は午前10時から、原子力規制委員会の田中委員長が原子力規制庁の職員およそ300人を前に訓示しました。
この中で田中委員長は、今なおすべての住民が避難を続けている福島県浪江町の小学校の校長から届いたメールを紹介し、「浪江の子どもたちはこの2年間、自分のふるさとを見ることさえできずにいる。原発事故の罪がいかに重いかを改めて感じざるをえない」と述べました。
そのうえで、「原発事故で苦痛の生活をしている国民がいることを改めて思い起こし、原発事故を二度と起こさせず、人の健康と環境を守るために、最善を尽くすことを事故の被災者と国民に約束したい」と述べて、事故の再発防止を誓いました。
規制委員会は、原発敷地内の断層の検証を続けているほか、電力会社に新たに義務づける安全基準の策定など、規制強化に向けて取り組んでいるで一方で、事故の教訓となった人材の育成など課題の多くはこれからで、実効性のある規制の実現が問われています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130311/k10013103111000.htmlより、
福島 原発事故の収束作業続く
3月11日 7時52分
およそ2万人が犠牲となった東日本大震災の発生から11日で2年となります。
原発事故の影響で、立ち入りが禁止されている警戒区域の福島県富岡町へと続く国道では、震災から2年の11日も午前6時ごろから原発事故の収束作業を行う作業員らを乗せたバスや乗用車が次々と現場に向かう様子が見られました。
富岡町と楢葉町の境界に設けられた検問所では、およそ10人の警察官が通行車両のチェックを行っていました。
福島第一原発では、毎日、およそ3000人の作業員が事故の収束作業に当たっているほか、原発周辺の地域でもふるさとを取り戻そうと放射性物質を取り除く除染作業に大勢の作業員が取り組んでいます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130310/k10013096131000.htmlより、
3号機に注水の半分以上漏出か
3月10日 18時57分
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、1号機に続いてメルトダウンした3号機について、当時、消防車から緊急に原子炉に向けて注入した水の半分以上が、別の装置に漏れ出し、冷却に必要な量の水が原子炉に入っていなかった可能性の高いことが、NHKが専門家と共に行った解析や実験で分かりました。
消防車は、事故のあと、安全対策の要として全国の原発に配備されていますが、原子炉に確実に水が入るのか、事故から2年になる今も十分な検証が進んでいない実態が浮かび上がりました。
おととし3月の福島第一原発の事故では、1号機から3号機まで次々にメルトダウンし、建屋が水素爆発するなどして、大量の放射性物質が外部に放出されました。
事故から2年、なぜメルトダウンを防げなかったのか、十分な解明が進まないなか、NHKは、当時緊急に行われた消防車からの原子炉への注水に注目し、なすすべなく最初に水素爆発した1号機のあとに危機を迎えた3号機で検証しました。
消防車による注水を巡っては、一部が原子炉以外のどこかに漏れているのではないかという指摘が専門家からあり、NHKは、独自に入手した3号機の配管の図面などを基に、専門家と共に詳しく分析しました。
その結果、消防車から原子炉までの配管ラインの途中に水の抜け道があり、ここを通って、原子炉とは別の装置に水が漏れ出る可能性のあることを見つけました。
この抜け道の先には、発電に使われた蒸気を再び水に戻す「復水器」と呼ばれる装置があり、通常はその途中にあるポンプが動いていて水がせき止められるため、復水器に水が流れ込むことはありません。
ところが、専門家の協力を得て実験すると、ポンプが止まった場合、素通りして水が先に流れることが分かり、すべての電源を失った福島の事故の際には復水器側に水が漏れ出る可能性が高いことが分かりました。
当時、3号機の復水器は通常ではあり得ない満水状態だったことが、事故直後に東京電力が行った記者会見で明らかにされていて、今回の実験結果を裏付けています。
さらに、消防注水した際の当時の3号機の水の流れを実験で再現し、その結果を基に専門家が解析すると、原子炉に入らずに漏れた量はおよそ55%に上り、この量ではメルトダウンを防げなかったという結果になりました。
一方、漏れた量が25%までなら、メルトダウンは防げるという結果になっています。
消防車は、事故のあと、安全対策の要として全国の原発に配備されましたが、原子炉に確実に水が入るのか、事故から2年になる今も十分な検証が進んでいない実態が浮かび上がりました。
法政大学の宮野廣客員教授は、「消防車を配備すれば終わりではなく、本当に核燃料を冷やすのに十分な量の水が入るのかを確かめなければ、意味がない。事故の検証は不十分だ」と指摘しています。
「放射性物質漏らさない」構造が落とし穴に
原子炉に向けて注水した水がポンプから復水器に漏れ出した背景には、放射性物質を外に漏らしてはいけないという、原発特有の“落とし穴”がありました。
水が漏れる原因となった、「復水器」につながるポンプは、1時間に2500トン近くの水を送り出す能力があり、猛スピードで回転するため、通常、軸の部分に少量の水を送り込んで熱の発生を抑える工夫が凝らされています。
一般のポンプであれば、水は送り込んだあと、そのまま外に排出しますが、原発で使うポンプの場合、放射性物質を含む水を外に漏らしてはいけないため、水でふたをする「封水」と呼ばれる特殊な構造をしています。
「封水」は、ポンプの羽根が回転する際に発生する水の圧力によって、ポンプに流れ込む水をせき止めます。
ところが、福島の事故では、すべての電源が失われてポンプが止まってしまったため、ポンプを素通りして、復水器に水が流れました。
緊急時に原子炉に注水する際、本来、水の漏れがあってはいけません。
ポンプの構造に詳しい東京海洋大学の刑部真弘教授は、「原発のように汚染水を絶対に漏らしてはならない状況では非常によくできた仕組みだが、電源が失われた今回は、大きな盲点になった。似たようなケースはほかにもある可能性があり、どこに弱点が存在するのか、徹底的に検証すべきだ」と指摘しています。
原子力規制委はまだ検証できず
消防車を使った原子炉への注水の検証が十分進んでいないことについて、国の原子力規制委員会で、原発の新安全基準作りを担当している更田委員に聞きました。
更田委員は「当然、漏れることは考えられるし、消防車やポンプ車で期待した量がすべて原子炉にいくわけではないと考えてもらっていい。安全基準や注水の手順で足りないところを見つけることは、事業者と個別の原子炉を対象に図面を基に議論しようとしているが、今の時点ではほとんどやっていない」と述べ、現状では規制委員会としても検証ができていないことを認めました。
そのうえで、今後の対応について更田委員は、「弱点探しや、実際に事故が起きたときにどうしようかという議論は、基準とは別の話だ。消防車による代替注水で十分な能力なのか、十分な手順なのか、万一事故が起きたときに実際に対応する人たちと私たちが向かい合って議論することになると思う」と述べ、消防車による注水のように、事故が起きたときの対応については、安全基準とは別に、事業者と直接議論をして対応策を検討する考えを示しました。