イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 3月 20 日(水)付
イラク戦10年―政治は検証と反省を

 イラク戦争の開戦から、きょうで10年になる。
 「ついに戦争が始まった」
 そう書き出した当時の社説で、私たちは「この戦争を支持しない」と書いた。
 実際、米政府が開戦の「大義」とした大量破壊兵器は発見されなかった。武力行使を明確に容認する国連安保理決議はなく、国際法上の根拠を欠いていたことも明らかだ。
 「大義なき戦争」を、日本政府は支持し、自衛隊を後方支援や人道復興支援に派遣した。
 当時の小泉首相はどのような根拠で米国支持に踏み切ったのか。海外での武力行使を禁じた憲法に抵触するような自衛隊の活動がなかったか。当然、国民には知る権利がある。
 ところが、この10年、政府も国会も、ほとんど検証らしい検証をしてこなかった。その結果、誤った戦争に加担することになった経緯も責任の所在もあいまいなままだ。
 とても、まともな国のありようとはいえない。
 そのことの異様さは、各国の対応と比べても際だつ。
 米英やオランダでは、政府が独立調査委員会を設置し、徹底した検証をした。
 英国ではブレア元首相らが喚問され、オランダでも、イラク戦争は国際法違反だった、と断じた。
 米国ではブッシュ前大統領が批判にさらされた。オバマ大統領はイラクから米軍を撤退させたが、「負の遺産」である財政負担にいまも苦しむ。
 足かけ9年の戦闘で、死亡した米兵は4500人近く、イラク民間人の犠牲者は12万人以上にのぼるともいう。
 戦争とは、かくも重く、悲惨なものである。
 日本では、衆院特別委員会が07年に「政府はイラク戦争を支持した政府判断を検証する」という付帯決議を可決したが、放置されたままだ。
 開戦時、小泉首相は「米国による武力行使の開始を理解し、支持する」と言い切った。米国の情報をうのみにして、追従したというのが実情ではないのか。その真相は小泉氏に聞くしかない。
 政府や国会は、いまからでも第三者による独立の検証委員会を立ち上げ、小泉氏からの聴取もふくめ、調査に乗り出すべきではないか。
 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認や、国防軍の創設に意欲を示す。
 イラク戦争の反省もないままに、である。あまりにも無責任ではないか。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130320/plc13032003500006-n1.htmより、
産経新聞【主張】イラク開戦10年 完全復興へ関与を続けよ
2013.3.20 03:49 (1/2ページ)

 ブッシュ前米政権がサダム・フセイン独裁政権の打倒を掲げ、英国などとともに踏み切ったイラク戦争の開戦から10年がたった。
 最大時には17万人が駐留していた米軍は2011年末に撤収し、治安権限はイラク側に移譲されている。新憲法で2度の国会議員選挙を経て、議会制民主主義は確実に前進したと評価できる。
 だが、イラクはまだ復興の途上にある。テロの犠牲者が毎月100人以上にのぼる現状は尋常とはいえない。米国はもちろん、戦争を支援した日本など35カ国余の国々は完全復興に向けた関与を続ける責務を負う。
 国連の制裁にもかかわらず核開発をやめないイラン、内戦が泥沼化したシリア両国の間に挟まれたイラクの統治が揺らげば、中東全体の紛争に広がるからだ。
 イラク戦争の米軍戦費は総額約8千億ドルにのぼり、しかも計約4500人の戦死者を出した。ブッシュ政権が開戦理由としたフセイン政権による「大量破壊兵器の保有」の根拠が崩れたこともあり、「誤った戦争」との批判が米国内でもくすぶっている。
 しかし、自国民を虐殺し、国連安全保障理事会の決議を無視し続けた無法国家を民主国家に変えた戦争の意義を過小評価してはならない。米国はやはり、イラクの一層の安定に向けた支援国の先頭に立つべきではないか。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130320/plc13032003500006-n2.htmより、
2013.3.20 03:49 (2/2ページ)
 イラクの唯一の収入源といえる石油生産は現在ではイランを抜きサウジアラビアに次ぐ日量300万バレルとなり、20年までにはその倍増を予想されるほどになった。
 これには日本も貢献した。石油施設や火力発電所などの改修・新設、インフラ整備などに総額50億ドル以上の政府開発援助(ODA)を投入し、67億ドルの債務削減も実行している。イラクにおける日本の存在感は小さくない。
 イラクのマリキ政権は日本のさらなる支援に期待を示すが、イスラム教シーア派を母体にし、シリアのアサド政権を支援するイランに近いといわれる。日本はイラクが国際の平和への脅威となる勢力と同調しないよう、米国と連携して影響力を強める必要がある。
 中国の海軍力増強や北朝鮮の核・ミサイルによる威嚇への対応だけでなく、中東安定のカギを握るイラク復興への関与でも日米同盟は要だ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013032002000123.htmlより、
東京新聞【社説】イラク開戦10年 幻の「大義」が問うもの
2013年3月20日

 イラク戦争の開戦から二十日で十年。幻の「大量破壊兵器」を口実に強行された戦争の傷痕は深く、むしろ核拡散の脅威は先鋭化している。武力行使の正当性は今後も繰り返し問われよう。
 バグダッド空爆で始まったイラク戦争は、二〇一一年末の米軍完全撤退まで少なくとも戦費八千億ドルを費やし、米兵死者は約四千五百人に及んだ。イラク側犠牲者は兵士、市民合わせて十数万人との民間試算はあるが、正確なデータすらまだない。
 国連を無視した「先制攻撃論」や、最先端軍事技術を駆使した「新しい戦争論」など、ブッシュ前政権の単独行動の背景には、冷戦後に唯一の超大国となった米国の突出した軍事力、アルカイダによる米中枢同時テロ以降高まった米国内の愛国主義の熱狂があった。
 ブッシュ前大統領が開戦で宣言した「大量殺人兵器による差し迫った脅威」なる大義が虚報だったことが判明した後、戦いの大義探しは、中東の脅威フセイン政権排除や、地域民主化へと移ったが、いずれも後付けだった。
 憲法制定、二度の選挙を経てイラクが民主的体制を整えた意義は大きい。しかし、多数を占めたシーア派と少数派スンニ派による宗派対立を背景に政府機能は混迷を続け、本格復興への道は遠い。
 また、「アラブの春」はチュニジアの一青年の抗議自殺に端を発するアラブ人による民衆革命だったことは忘れてはなるまい。
 オバマ大統領は、イラク戦争を終結させ、アフガン戦争終結に道を開いた。イスラム過激派による時代錯誤的なテロが発端だったとはいえ米国の暴走を米国自身が修正した実績は評価されよう。
 懸念されるのは、ブッシュ路線回帰を訴えた共和党候補を二度まで破り有権者の負託を得たオバマ大統領が、二期目就任に当たって内向き姿勢を見せていることだ。
 自国の国家再建に集中しなければならない事情は理解できる。しかし、中東の民主化は緒についたばかりだ。シリアの混沌(こんとん)、イランの核疑惑への対応は切迫した課題として残されたままだ。米国が果たすべき役割は依然小さくない。
 オバマ大統領は二期目の最初の訪問国としてイスラエルを選んだ。中東を含む国際社会の新秩序への端緒を示してほしい。破壊するだけではなく、国際社会の再建戦略を担ってこそ、大義なき戦争という負の遺産を受け継いだ米国の指導者にふさわしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130320k0000m070077000c.htmlより、
社説:イラク開戦10年 強靭な日本外交を望む
毎日新聞 2013年03月20日 02時30分

 日本はイラク開戦を支持し、非戦闘地域という名目ではあっても限りなく紛争地に近い場所に自衛隊を派遣して米国主導の戦争を支援した。そして中東の国に敵対する戦争に協力した結果、アラブ世界における日本の「中立」イメージを変えた。いずれも戦後の日本外交の分水嶺(ぶんすいれい)となる出来事であり、今日の安保政策にも大きな影響を与えている。
 にもかかわらず、その総括がきちんとなされたとは言えない。国会は07年、開戦支持の判断などについての検証を政府に求めたが、内容に乏しい簡略な報告がまとまったのは昨年末である。独立した調査委員会が開戦時の首脳・閣僚の喚問などを実施し検証結果を明らかにした英国やオランダとの違いは大きい。
 イラク開戦後、自衛隊派遣を決断した小泉純一郎首相は「どこが非戦闘地域かと聞かれても分かるわけがない」「自衛隊の活動する地域が非戦闘地域」などの乱暴な理屈で国会論戦を切り抜けた。結局、日本の開戦支持もその後の自衛隊派遣も、国際法や憲法とのかかわりについて精緻で突き詰めた議論を踏まえた結論とは言いがたいものだった。
 日本の今後の外交や安保政策を考えるにあたっては、そうしたあいまいさの背景にあったものを改めて見つめ直してみる必要がある。
 小泉氏のイラク開戦支持は、いざという時に最優先されるのは日米同盟だという姿勢を明確にさせたものだった。それは、米国が北朝鮮の脅威から日本を守ってくれる唯一の同盟国だから、という小泉氏の言葉に集約される。危機における、多分に直感的な政治判断でもあったと言えよう。事実、日本の安全保障は米国の軍事力抜きには確保できない。北朝鮮の核やミサイル開発のスピードを考えるなら、現在の日米同盟の重要性は、10年前のイラク戦争開戦時よりもさらに高まっている。
 しかし、日米同盟が強固になる一方で、小泉政権下では中国や韓国との関係はなおざりにされた。現実は「日米さえよければ日中、日韓もよくなる」という小泉流の見立て通りにはならず、東アジアにおける協調と連携の枠組み作りの停滞と、今日に至る不協和音にもつながっている。
 イラク開戦時と比べて、日本が直面する外交課題は困難さを増している。日米同盟基軸は同じでも、日米同盟さえよければすべてがうまくいくという単純な時代環境ではない。米国も日本と近隣諸国との関係安定化を望んでいる。強い日米同盟にプラスした複眼的で強靱(きょうじん)な外交がいま求められていることを、イラク開戦10年の節目に考えてみたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130320k0000m070078000c.htmlより、
社説:イラク開戦10年 米は真の脅威を見つめよ
毎日新聞 2013年03月20日 02時32分

 歴史にif(もしも)はない。とは知りつつ「もし、あの戦争がなければ」と、米国民と世界が自問し続けた歳月ではなかったか。03年3月20日(日本時間)にイラク戦争が始まって10年。米紙ワシントン・ポストなどが今月上旬、米国市民約1000人を対象に行った調査では「イラク戦争は戦う価値がなかった」と答えた人が全体の58%に達した。開戦時、8割の人が戦争を支持したことを思えば隔世の感がある。
 何が間違っていたのか−−。ブッシュ前大統領は、イラク戦争で大義名分とした大量破壊兵器関連の情報収集に問題があったと言う。だが、イラクの生物・化学兵器は、前大統領の父親(ブッシュ元大統領)の時代から、国連がイラクを査察しては解体していた。この種の兵器を戦争の理由とするのは無理があった。
 前大統領は戦争の真の動機を語っていないのではないか。米国は同盟国イスラエルのためにフセイン政権打倒を決めたという説がある。当否は不明である。だが、今また米国がイスラエルと同調してイラン攻撃を検討していることを思えば、そう考えたくなるのも無理はなかろう。
 10年後の現実を直視したい。フセイン後のイラクでは親イランのシーア派イスラム教勢力が権力を握り、対米関係が険悪なイランが得をするというパラドックスが生じた。イランの貨物機がイラク領空を通ってシリアのアサド政権に武器を運んでいるとの情報もある。イラク戦争は、シーア派が政権を握るイラン、イラク、シリアの連携を強め、中東の宗派対立をあおる結果になった。
 イラク戦争には「中東民主化」の狙いもあった。民主化を望むのはいい。だが、くしくも「アラブの春」で親米の独裁政権が倒れたアラブ諸国ではイスラム主義が力を増し、80年代の東欧民主化とは逆に、反米機運が全体的に強まった。これもまた、米国にとって想定外のイスラム社会のパラドックスといえよう。
 イラクの反米武装勢力は中東全域に散らばり、米同時多発テロを実行したアルカイダ系の組織はアフリカにも根を張った。これが「テロとの戦争」の到達点とは思いたくないが、オバマ政権はリーマン・ショック後の財政難もあって、対応に苦しんでいる。
 米国の不作為と共に人道主義の陰りも気になる。深刻なシリア情勢を静観しているオバマ政権の姿勢は問題なしとはしない。東アジアをはじめ中東以外にも脅威や危機が存在することも言うまでもない。米国が中東偏重の外交を見直し、真の脅威と向き合うことこそ、イラク戦争の最大の教訓の一つではなかろうか。

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