原子力災害対策指針 「福島の教訓を生かして」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53023080Q3A320C1EA1000/より、
原子力防災は時間かけても実効性重視で
2013/3/20付

 原子力発電所ごとに周辺の地方自治体が用意する原子力防災計画の作成が遅れている。事故への備えが必要な自治体の数が増えたことに加え、原子力規制委員会が計画づくりに不可欠な避難基準などを示すのが遅かったためだ。
 計画は原発事故の際、周辺の住民を速やかに避難させ放射線被曝(ひばく)から守るのが目的だ。作成は早いほうが望ましいが、何より大切なのは実効性だ。住民が確かな情報に基づき混乱なく避難するにはどうしたらよいか。地域ごとに異なる課題もあるはずだ。
 「これならできる」と住民が納得できる計画が求められる。緊急時に本当に機能しうる、しっかりした計画を時間がかかってもつくり上げていくことが大事だ。
 実効性の観点で気になるのが避難のルールだ。原発5キロ圏内は放射性物質の放出前に避難するのに対し、5~30キロ圏内の住民は毎時500マイクロシーベルトの放射線量が観測されたら逃げる。5キロ圏の人々が先に逃げるのを見て30キロ圏の住民は心穏やかではいられないだろう。しかし大人数が同時に動けば道路渋滞などで混乱を招く。
 秩序ある避難を促すには放射線情報の迅速な提供と避難路の確保の2つが少なくとも欠かせないが、現状では放射線を測るモニタリングポストの数も、陸や海の輸送手段の確保も十分でない。
 モニタリングポストを補うのに福島事故では活用されなかった放射性物質の拡散予測システム(SPEEDI)を併用してもよいのではないか。
 道路や港湾、病院、避難所など利用可能なインフラが限られるなかで、計画作成に手を焼く自治体があるのもうなずける。
 防災計画は常に改善の余地があると考えるべきだ。机上の議論だけで一分のすきもない計画をつくるのは無理だ。実地の防災訓練など通じて課題を見つけ改良を続ける必要がある。
 政府は中長期のエネルギー戦略に基づき原発を再稼働させる方針だ。であるなら自治体に防災計画づくりを丸投げにしないで、防災上の課題の洗い出しや、実効性をより高めるインフラ充実の支援に責任を持ってあたるべきだ。
 規制委が示した指針にもなお不十分な要素がある。例えば住民に配る安定ヨウ素剤について服用指導の手順などが決まっていない。規制委は厚生労働省と協議して早く明確にすべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130303k0000m070086000c.htmlより、
社説:原子力防災指針 福島の教訓を生かして
毎日新聞 2013年03月03日 02時31分

 過酷事故が起きうることを前提に、具体的な避難基準などを盛りこんだ「原子力災害対策指針」を原子力規制委員会がまとめた。昨年10月に防災の重点地域を原発から30キロ圏に拡大することを決定していたが、「重大事故は起きない」という過去の幻想から脱却するには、きめ細かい対策が必要だ。
 防災対策は原発が持つ危険な放射性物質から人々を守る「5層の防護」の最後のとりでである。指針を強化するのは当然のことだが、実際に事故が起きた時に住民を被ばくから守るには、地域の対応こそが重要だ。指針を基に原発周辺の21道府県135市町村が防災計画を策定しているが、指針改定に時間がかかったこともあり、作業は遅れている。
 指針は複雑で、対応しなくてはならない課題は多い。これまで原子力の防災計画を作ったことのない自治体もある。計画の策定期限は3月だが、多少時間がかかっても、規制委などが十分に支援した上で、実効性のある計画作りにつなげてほしい。
 従来の指針との違いのひとつは、原子炉から放射性物質が放出される前から防護措置を取ることだ。原発から5キロ圏内の住民は原子炉が深刻な状態になったことがわかれば、すぐに避難する。甲状腺被ばくを防ぐヨウ素剤は事前に戸別配布しておく。いずれも、基本的には妥当な措置だろう。
 一方、5キロ圏の外では、放射線の空間線量が毎時500マイクロシーベルトになったら避難指示を出し、避難が難しい人には屋内退避を求める。ヨウ素剤は自治体が備蓄し、状況に応じて配布・服用するという。500マイクロシーベルトという数値の妥当性については批判的な意見もあり、その根拠について丁寧な説明が必要だ。この地域でもヨウ素剤の戸別配布が必要かどうかも、引き続き検討してほしい。
 ほかにも、積み残された重要な課題は多い。空間線量に応じた避難のためには、緊急時のモニタリング体制がしっかりしていることが前提となる。これをどう整備するのか。30キロ圏外でも福島県飯舘村のように放射性物質の雲(プルーム)によって被ばくする恐れがある。その防護対策をどうするか。ヨウ素剤を戸別配布するにしても備蓄するにしても、服用の具体的な手順をどうするのか。
 福島第1原発の事故を思い返すと、さまざまな対応が後手に回り、情報は住民に伝わらず、避難にも屋内退避にも問題が生じた。将来、事故が起きることがあっても、防災対策の不備によって住民を被ばくさせたり、生命の危険にさらしたりしてはならない。福島の教訓を最大限に生かし、指針の更新と地域の計画作りを進めてほしい。

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