サイバー攻撃 「備えを怠るな」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53037400R20C13A3PE8000/より、
日経新聞 社説 サイバー攻撃への備えを怠るな
2013/3/21付

 情報システムを破壊するサイバー攻撃が世界各地で頻発している。安倍晋三首相が所信表明演説でテロ対策に加え、サイバー攻撃への対策を強化すると表明したのは評価したい。だが見えない外敵から日本を守るためには、やるべきことがたくさんある。
 今週、サイバー攻撃に対する大規模な国際演習「サイバーストーム」が非公開で行われる。米国や日本など15カ国が参加し、電力などの重要インフラがサイバー攻撃を受けた場合を想定して、互いに情報を共有し被害を最小限に食い止めようというものだ。

米中間では「戦争」に
 主催は米同時テロを機に設立された米国の国土安全保障省で、他の米行政機関や民間企業、同盟国の関連機関などが演習に加わる。2006年に始まり、3年ぶりの大規模演習となる今回は、米中間でサイバー攻撃が多発している時だけに重要な意味を持つ。
 インターネットは商取引などの便利な手段だが、国境を越えたサイバー犯罪の温床にもなっている。他人のパソコンを経由して大量の情報を送り付け、システムを壊したり、特定の相手から機密情報を盗み出したりする「標的型攻撃」という手法も登場している。
 日本の防衛技術を担う三菱重工業などが2年前にサイバー攻撃を受けた際も、標的型攻撃の手法がとられた。最近は中国首脳の親族による蓄財疑惑を報じた米新聞社が攻撃されるなど、サイバー戦争の様相を呈しつつある。
 こうした状況を踏まえ、米国防総省は電子空間を陸、海、空、宇宙に次ぐ「第5の戦場」ととらえて、サイバー攻撃を通常の武力攻撃と同等にみなすと表明した。「サイバーコマンド」と呼ばれる専門部隊も大量に配備している。
 問題はサイバー攻撃がどこから来ているかだ。その一端を知る報告書が先月、米セキュリティー会社から公開された。被害を受けた新聞社から依頼された調査では、標的型攻撃の発信元は中国人民解放軍の専門部隊だったという。
 報告書はオバマ米大統領がサイバー防衛強化のための大統領令に署名した直後に公表されたため、名指しされた中国側は強く反発し、米中間のサイバー戦争に油を注ぐ形となった。
 米中の動きを受け、日本でも安倍首相が新しいサイバー防衛戦略をまとめるよう指示した。政府の情報危機管理を担う内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を中心に、夏までに新しい戦略をつくる。情報セキュリティー対策予算についても大幅な増額を予定している。
 だが、日本がサイバー防衛戦略を強化するためには、解決すべき課題も多い。まず外国からのサイバー攻撃に対して自衛権の発動をどう定義するかという問題だ。
 政府は武力攻撃などから国民を守る有事法制を定めているが、この中にサイバー攻撃は含まれていない。海外では中枢システムが攻撃された場合、多くの国が武力で反撃できるが、日本では武力攻撃の一環としてサイバー攻撃された場合しか自衛権は発動できない。
 日本は憲法で「通信の秘密」を保障しており、通信事業者は通信の内容を見てはならない。不審なウイルスなどが流れていても通信を遮断することはできない。犯罪捜査のための通信傍受法も目的が限定されており、サイバー攻撃に利用するのは難しい。

米国頼み変える必要
 法制度に加え、大きな問題はサイバー攻撃に対処できる技術や人材の不足だ。独立行政法人の情報通信研究機構や民間の連絡組織がサイバー攻撃を監視しているが、ウイルス解析や対策ソフトはほぼ外国企業頼みだ。日本には大手のセキュリティーソフト会社がなく、政府の安全対策も米企業の情報に依存している。この状況も変えていく必要があろう。
 有事の際の指揮命令系統にも課題がある。司令塔になるNISCは米国の国土安全保障省などに比べると陣容はケタ違いに少ない。
 不正アクセスの捜査は警察の所管だが、外国からの攻撃にすぐ対応できるのか、防衛省と円滑に連携できるのかといった疑問が残る。新戦略ではこうした点にもきちんと答えてほしい。
 もう一つ大切なのは国民自身の備えだ。安全対策を施さなければ知らないうちに自分の端末がサイバー攻撃に加わってしまうこともある。誤認逮捕に至ったネット上の爆破予告などは、ネットから侵入したソフトが原因だった。警察の捜査能力向上は重要だが、個人や企業にもサイバー攻撃から身を守る心構えが求められている。

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