記者の目:マリ情勢 服部正法氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130322k0000m070134000c.htmlより、
記者の目:マリ情勢=服部正法(ヨハネスブルク支局)
毎日新聞 2013年03月22日 00時30分

 西アフリカ・マリにフランス軍が軍事介入して2カ月余りがたった。仏・アフリカ各国軍はマリ軍とともに、北部の都市のほとんどをイスラム過激派から奪還した。予想を上回る速さで人的被害も比較的少なく、フランスは来月、マリから撤退を開始する意向だ。だが、過激派は人海に潜むゲリラ戦を今後一層激しく展開するだろう。仏軍撤退後に現在潜伏している山岳部から都市部に再侵攻を図る可能性も捨てきれない。国境を超えて広範囲に浸透し拡散する過激派相手の戦いを楽観することはできない。

 ◇仏軍などが介入 ほぼ制圧したが
 マリでは昨年4月、世俗主義の反政府武装組織とイスラム過激派が国土の半分以上を占める北部を制圧し、「独立」を宣言した。その後、過激派は世俗派を都市部から放逐し、北部支配を固めた。国際テロ組織アルカイダと連携する過激派によってマリ北部が「テロの温床」と化すのを懸念した国際社会は介入を決定。1月10日に過激派が南進して首都バマコなどへの侵攻の恐れが高まったため、マリ政府から支援要請を受けた旧宗主国フランスが同11日に急きょ介入したのだ。
 マリのイスラム過激派とはどんな集団か。「イスラムの真の教えを分かち合うために来た」。1月に過激派に一時制圧された中部ディアバルの住民、ディアロさん(58)は過激派戦闘員に話しかけられた。戦闘員にはマリ人以外にパキスタン人やアラブ人が含まれていた。口調の穏やかさとは裏腹に逃げようとする人は捕まり、意に反した住民は射殺されたとも言われる。さらに「敵は西洋の追随者」と公言してキリスト教会を徹底的に破壊した。北部では音楽や飲酒、喫煙を禁じ、女性には頭部を布で覆うよう強制、窃盗容疑者の腕を切断した。
 こう記すと宗教に極端に固執した集団と映るかもしれないが現実はそう単純ではない。住民によると、ディアバルでは仏軍の空爆で死んだ過激派戦闘員の服のポケットからコカインが見つかり、政府軍兵士も確認したという。生産地の南米から一大消費地の欧州に密輸されるコカインの多くがマリなど西アフリカを通る。過激派はこの密輸に関与し利益を得ているとされる。
 過激派資金源として、外国人を誘拐して得る身代金も指摘される。03年以降、マリなどで60人以上の外国人を人質にし、約50億〜150億円相当を得たとの専門家の推計もある。アルジェリア人質事件で犯行声明を出した組織のベルモフタール司令官はこの麻薬や誘拐の中心にいるとされてきた人物だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130322k0000m070134000c2.htmlより、
 いかに宗教的な目的を言い募ろうと、資金源から見れば彼らの実態は犯罪集団と変わらない。「穏健なイスラム教徒の国」(マリ・イスラム高等評議会のハリル事務局長)で、民主主義の経験を持つマリ国民の大多数にとって、過激派の原理主義の押しつけや極端な反西洋志向は受け入れられず、何より国民は彼らの犯罪行為を知り尽くしている。だから、仏軍の介入が圧倒的に支持されたのだ。

 ◇背景に貧困、差別 国境超え連携も
 だが一方、過激派の浸透力があなどれないのも事実だ。バマコで2度、外国人を敵視する人に出会った。憎悪に満ちた視線は、穏健な国にも過激派拡大の素地があると感じた。過激派はマリ、ナイジェリア、ソマリアなどで資金を分け合い、共同で訓練しているとの指摘もある。ナイジェリアのイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」がマリ北部に侵入しているのは確実で、過激派は国境をまたいで拡散している。サヘル(サハラ砂漠南縁部)地域のマリ周辺国は「(過激派が)伝染するのではという恐怖と強迫観念を共通して持っている」(国連サヘル特使のプロディ元イタリア首相)状況だ。
 各地で過激派が侵食する背景には、貧困や差別、地域間の経済格差などさまざまな要因があると思われる。イスラム思想をベースに現状打破を目指す運動であることは共通しているが、元々は各地で独自に発達した組織だ。その各組織が、一国のみの体制変革でなく国境を超えた「聖戦」を唱えるアルカイダという「触媒」によって結びつけられ、より大きなネットワークの形成が進み、個々の組織も強化されているのが、今のアフリカの状況だと言える。
 取材で知る限り、仏軍の空爆は精度が高く効果的だった。仏軍なしに過激派を抑え込めるか疑問だ。仮に完全掃討できたとしても、過激派は国境を超えて逃亡し、「聖戦ネットワーク」は別の根拠地を新たに探すだろう。アフリカでの「テロとの戦い」は、先の見えない「長い戦い」のとば口に立ったばかりだ。

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