外資の森林買収 「世界見据え水源保全を」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130401/plc13040103300012-n1.htmより、
産経新聞【主張】外資の土地買収 「安全と水」守る法整備を
2013.4.1 03:29 (1/2ページ)
防衛拠点の周辺や水源地のある森林などが、中国をはじめ外国の資本に相次ぎ買収されている。安倍晋三首相が、そうした買収に規制の網をかける新たな法整備に取り組む姿勢を表明した。
事はわが国の安全保障の問題である。首相には実効性ある対策を早急に講じてもらいたい。
安倍首相は参院の質疑で、外国人や外国資本を理由にした土地取得制限は困難としつつも、国防や水資源確保のための制限は必要とし、「新たな法整備に向けてしっかり研究していく」と述べた。
私有財産である土地の取引は原則自由である。だが、国土の安全を損なったり、国防や公共秩序を阻害したりする恐れがある場合、その取引に歯止めをかける制度が必要なのはいうまでもない。
北海道で自衛隊施設近くの広い土地を外資が所有していたほか、平成23年末までに全国で49件、計760ヘクタールの森林が外資に買収された。転売が繰り返されて、所有者不明の土地も広大だという。
国は昨年4月、森林所有者に届け出を義務づける森林法改正を行った。しかし、取引自体に歯止めをかけたとはいえず、水源周辺の公有地化や独自の条例で規制の強化を図る自治体も現れている。
日本の脅威といえる中国が動いたりその影がちらついたりする取引もある。中国大使館は都心の一等地を購入して国会で批判され、名古屋の国有地などの買収に出て地元に反対されている。日本は中国で土地を取得できないのに中国は日本の土地を所有できる。相互主義に反している。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130401/plc13040103300012-n2.htmより、
2013.4.1 03:29 (2/2ページ)
米国は包括通商法で、国家安全保障を脅かす懸念がある場合、事後でも土地取引を無効にできる権限を、大統領に与えている。
実際、昨秋、中国系企業がオレゴン州の米軍施設近くの風力発電関連企業4社を買収したところ、オバマ大統領は安全保障上の理由で、それに待ったをかけた。
米国は世界貿易機関(WTO)にも、土地の自由取引に多くの例外を設けて加盟している。
日本は土地取引に条件を付けず加盟した。外資規制を難しくしているのは、WTO規定に抵触しかねないためでもある。
しかし、国防や公益を阻害する取引を外資か否かを問わず認めない法整備なら可能だ。国家として喫緊の課題である。米国の例などを参考に実現してほしい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012073102000100.htmlより、
東京新聞【社説】外資の森林買収 世界見据え水源保全を
2012年7月31日
外国資本による森林買収に自治体の自衛策が相次いでいる。水資源保全が目的だ。国会も超党派で水循環基本法案をまとめた。深刻化する世界的な水不足も見据えながら、速やかな成立を求めたい。
林野庁によると、外資による国内の森林買収は二〇〇六年以降に限っても、七道県六十件、七百八十五ヘクタールに上る。うち九割以上が北海道だ。日本の森林は農耕地のように地籍調査が進んでおらず、所有者が地元に住んでいない事例も目立つ。
なぜ、森林買収が増えているのか。最も件数が多いのは中国企業で、目的は資産保有、別荘用、商業施設など幅広い。明らかに森林の地下に眠る水資源獲得が目的の取引は確認されていないが、自治体の多くが「狙いは水資源」といぶかっているのが現実だ。
北海道、埼玉県は全国に先駆けて、森林売買に事前届け出を義務づける条例を定めた。北海道は市町村の提案を受けて水資源の保全地域を指定し、売り主が契約の三カ月前までに売却先を届けなければならない。だが罰則はなく、対抗措置は名前の公表だけだ。
実効性が伴わなければ森林保全は危うくなる。そんな心配から、神奈川県のように自ら森林を買ってしまう自治体も続出している。
自衛策を急ぐ自治体に対し政府の対応はいかにも遅い。今年四月施行の改正森林法で、すべての森林所有者に移転届を義務づけたばかりだ。国が保全基準を示し、自治体の森林買収などを後押しする政策を用意すべきではないか。
民主党も先行する自治体に背中を押されたのだろう。自民、公明党とともに水循環基本法案をまとめた。水を「国民共有の貴重な財産」と位置づけ、水資源行政を統括する水循環政策本部を設置して水資源を守るための規制、財政措置を講じるよう明記している。延長された今通常国会に提案し、会期内成立を目指すべきだ。
併せて世界的な水不足にも目配りしてほしい。国連推計では、現在約七十億人の世界人口はアジアやアフリカを中心に増え続け、二〇五〇年には九十億人に達する。今でも半数近くが生活に不便を感じる「水ストレス」にさらされており、さらなる水不足が避けられない。
日本は水の分野で世界最大の援助国だ。自らの水源地保全にとらわれず、浄水や海水の淡水化など、世界最高水準の技術力を生かして水ストレスを和らげる国際貢献も積極的に担うべきだ。