自殺者3万人下回る 若者対策は置き去り

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040102000129.htmlより、
東京新聞【社説】自殺を防ぐ やり直せる社会作ろう
2013年4月1日

 昨年の自殺者は十五年ぶりに三万人を切った。とはいえ、二万七千八百五十八人は交通事故死者の六倍に余る多さだ。生きる支えを手厚くし、もっと希望を見いだせる社会に変えていかねば。
 名誉を守る。責任を取る。借金を返す…。その究極の手段として自殺は自ら進んで選ぶ道と思われてきた。そうではなく、社会的に追い込まれ、強いられる悲劇だ。
 自殺の多くは社会のひずみが生み出す。だから適切な援助があればきっと防ぐことができる。二〇〇六年に自殺対策基本法ができ、そんな意識が広く根づいてきたのは大きな成果だ。
 だが、楽観論は戒めたい。一日に平均七十人余が自殺する現実はやはり厳しい。日本の自殺率は米国の二倍を、英国やイタリアの三倍を上回り、主要国でトップだ。
 自殺対策支援のNPO法人ライフリンクが公表した自殺実態白書には、貴重な教訓が収められている。遺族五百二十三人への聞き取り調査が土台となっている。
 自殺の背景には七十近い要因が潜んでいた。うつ病、失業や負債、過労、職場の人間関係、家族の不和、いじめ…。自殺者は平均四つの要因に苦しんでいた。
 意外なのは、七割の人は命を絶つ前にどこかの専門機関に相談していたことだ。なのに、なぜ自殺を食い止められなかったのか。
 役所の縦割り構造に似て、異分野の専門家が連携していない問題が浮かんだ。例えば、精神科医は患者が抱えている職場や家庭、金銭などの悩みに気づきながら労働や福祉、法律といった専門家に橋渡しするという発想に乏しい。
 東京都足立区は多分野の専門機関のネットワークを充実させている。相談に訪れた人の情報をカルテ式の「『つなぐ』シート」に記録し、区役所と専門機関で共有する仕組みは参考にしたい。
 心配なのは二十代だ。国の統計では自殺者が初めて三万人を突破した一九九八年に比べ、自殺率は二割も高い。就職失敗による自殺は五年前の二・五倍に及んだ。
 ライフリンクが最近実施した就職活動中の学生百二十一人の調査で浮かんだのは、日本の社会に対する不信感だ。
 いざという時に何もしてくれない。やり直しが利かない。正直者がバカを見る。あまり希望を持てない。六割前後の人がそんな冷たい社会像を抱いていた。
 新卒一括採用のような一発勝負の社会はやめて、いつでも学び直し、働き直せる社会にしたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130401k0000m070107000c.htmlより、
社説:新卒者の就職 冷たい春にしないよう
毎日新聞 2013年04月01日 02時31分

 今日が入社式という企業も多いだろう。大学生や高校生の就職内定率がこの2〜3年連続して上昇し、超氷河期に薄日が差すようになった。ただ、初めから就職活動をしない学生は多く、就職後すぐに離職する人も後を絶たない。中には組織的に若い社員を退社に追い込む悪質な企業の存在も指摘されている。若い世代がよい仕事に就けなければ社会保障の土台が先細るばかりだ。中高年にとっても人ごとで済む話ではない。
 安倍政権の経済政策で業績が回復している企業はあるが、学生側の意識の変化が内定率の改善に影響しているとの見方が強い。かつては大企業ばかりに人気が集中していたが、将来性のある中小企業にも目を向けるなど現実的な学生が多くなったという。大学側は個々の学生に合ったきめ細かい就職活動の支援に努め、ハローワークも新卒者向けの相談窓口を開設して実績を上げている。
 ただ、せっかく就職しても1年未満で約1割が辞めていく。2年で約2割、3年で約3割が離職するというのが近年の傾向だ。「辛抱がきかない」「ひ弱だ」と若者を嘆く言葉はよく聞かれるが、最近は新卒者を大量に採用して厳しい研修を課し、その結果「使い物にならない」と決めつけ、離職に追い込む悪質なケースが指摘される。若くてコストの低い労働力を確保した上で、選別して早々に使い捨てるのである。
 新卒者にとっては入社後にもう一度採用試験を課されるのと同じだ。ひどい言葉で人格を否定するパワーハラスメント、本来の職務と関係のない長時間労働によって、退社してからも長く心身を病む若者が多い。会社組織を挙げて計画的に行う事実上の強制退社は若い人材の社会的損失をもたらし、労働現場をすさませるだけだ。
 企業にとっては、人件費が安く法人税も軽い新興国の企業との競争にさらされ、国内需要も伸びない中で生き残るため、やむを得ずに行っている面はあろう。ただでさえ日本の雇用規制は厳しい。従業員の解雇が認められるためにはいくつもの条件があり、内定を取り消すと社名公表というペナルティーを受ける場合もある。現在、政府が解雇規制の緩和、正社員とは賃金体系など待遇の異なる「準正社員」の創設などを検討しているのも、人件費の軽減や機動的な人材確保策を求める企業側の要望が強いからだ。
 将来的には現在の硬直した雇用制度を柔軟なものに変えていくことは避けられないが、暮らしの安心や会社への信頼がなければ働く人々の不安は募るばかりだ。従業員は企業の財産である、と若者が実感できる世の中にしなければならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130330ddm003040040000c.htmlより、
クローズアップ2013:年間自殺、3万人下回る 若者対策は置き去り
毎日新聞 2013年03月30日 東京朝刊

 内閣府と警察庁が今月公表した昨年の自殺統計で、自殺者総数が15年ぶりに3万人を下回り2万7858人となった。自殺防止策を自治体の責務と位置づけた2006年の自殺対策基本法施行後、大都市を中心に打ち出された予防策、そして同じ年に成立した改正貸金業法など多重債務対策の2本柱が奏功したとみられる。だが、対策が手薄だった若年層は就職難で自殺する大学生が増加。深刻な状況は依然続いている。【井崎憲、苅田伸宏】

 ◇「就活失敗、全否定された」
 「採用選考に落ちると、自分の全てを否定された気分になる」。富山大の「学生なんでも相談窓口」には、就活生のこんな声が寄せられている。08〜09年に学生の自殺が相次いだことを受け、10年4月に相談窓口を設置。相談員が学生の悩みに耳を傾け、病院につなぐこともある。
 若者の自殺を考える上で、特に見逃せない要因が大学生を中心とした就職難だ。内閣府によると「就職失敗」を理由とする10代と20代の自殺は07年に60人だったが、景気が悪化した08年のリーマン・ショックを挟み12年は158人へと急増した。
 職業別に見ると、「学生・生徒等」は90年代後半の600人台から00年代に入ると800人前後となり、昨年までの5年間は1000人前後で推移。長期的には増加傾向にあるが、富山大のような取り組みは一部にとどまっている。
 政府や自治体の対策は中高年層に重点が置かれていた。昨年の39歳までの自殺者数は全体の3割弱の7368人。前年から1000人以上減ったものの、内閣府担当者は「景気動向や雇用状況に左右される。今後も予断を許さない」と話す。
 危機感の背景には、日本の若者の自殺による死亡率の高さがある。内閣府の12年版の自殺対策白書によると、15〜39歳の各年代(5歳ごと)の死因の1位はいずれも自殺。比較可能な15〜34歳で見ると、先進7カ国で日本にしか見られない傾向だ。更に20代の死亡者全体の半数は自殺で、深刻さが際立っている。
 就職後に低賃金や重労働などに直面することも少なくない。厚生労働省のまとめでは、精神障害による11年度の労災請求件数は1272件と3年連続で過去最高を更新。請求者のうち202人が自殺し、30代以下が過半数の108人を占めた。昨年見直された国の自殺総合対策大綱には、ハローワークの窓口で心の悩みの相談に対応することや、ニート状態にある人の自立支援が盛り込まれた。ただ、大学生や若手社会人に特化した有効な対策は見いだせていない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130330ddm003040040000c2.htmlより、
 若者の労働問題に詳しい森岡孝二・関西大教授(企業社会論)は「リーマン後は厳選採用の流れが続き、乱暴な働き方や辞めさせ方をする企業も増えている。行政や大学は対策を取るべきだ」と話している。

 ◇経済苦が理由、減少
 神戸市のNPO「多重債務による自死をなくす会」理事長の弘中照美さんは、バブル崩壊で元夫の事業が行き詰まり、消費者金融など14社からの借金が約400万円に膨らんだことで自殺を考えた。なんとか返済したが、04年に母が自殺。病気の兄の治療費に充てるため、4社から約200万円の多重債務を抱えていたことを後で知った。
 07年にNPOを設立すると、ピーク時は1日50本の相談電話が来た。しかし、上限金利の引き下げや借入残高を年収の3分の1までとする改正貸金業法が10年に完全施行されたのを機に相談は大きく減ったという。
 警察庁によると、自殺の原因・動機で昨年最も減ったのが「経済・生活問題」。前年の6406人から18・5%減の5219人となった。金融業者の過酷な取り立てが社会問題化し、自殺者が過去最悪(3万4427人)となった03年の8897人から約4割減少。日弁連多重債務問題検討ワーキンググループの新里宏二(にいさとこうじ)弁護士は「法改正が命を救った」と評価する。
 ただ、弘中さんは「相談1件ごとの深刻度は増している」と感じている。親戚や知人を連帯保証人にしているため破産できない個人事業主からの相談が長期化する傾向にあり、緊急の食料支援が必要な貧困層からの電話も目立つからだ。「必ずしも生活が良くなっていない。自殺者はまだ『3万人を切ったばかり』という感じ」と弘中さんは話す。

 ◇都市部でケア手厚く
 法改正による債務問題対策と並ぶ、もう一つの原動力が自殺対策基本法施行を機にした大都市での取り組みだ。減少幅が大きかった上位は東京都358人▽神奈川県208人▽千葉県201人▽大阪府184人▽愛知県180人。3大都市圏だけで1500人近く減った。
 東京都荒川区は10年から、区内の自殺未遂者が多く運ばれる日本医科大学(文京区)と提携。リストカットなどによる外傷治療後にフォローするため、本人の同意を得た上で病院が区に連絡し、派遣された保健師が精神的なケアをしている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130330ddm003040040000c3.htmlより、
 10年9月〜12年3月、区は自殺未遂者32人を把握。継続支援できなかった9人のうち4人は自殺したが、残る23人のうち19人はその後自殺を図ることがなく、未遂を繰り返した4人も大事には至らなかった。また、足立区はほとんどの職員に自殺を予防するゲートキーパー(門番)研修を受けさせ、各種相談窓口の情報を一元化。大阪府警は今年、未遂者情報を保健所などに提供する試みを始めている。

 ◇苦しい時の相談先は−−
 ◆就活の悩みなど社会で孤立した人の相談に応じる24時間無料の相談
「よりそいホットライン」 電話0120・279・338
 ◆悩みや居住地ごとに相談先を検索できる「いのちと暮らしの相談ナビ」があるライフリンクのホームページhttp://www.lifelink.or.jp

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