WBC ドミニカ共和国初制覇 岸本悠氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403k0000m070141000c.htmlより、
記者の目:WBC ドミニカ共和国初制覇=岸本悠
毎日新聞 2013年04月03日 00時36分

 ◇大きな大会に育てよう
 野球の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、日本が3連覇を逃し、残念な結果となった。しかし、大会そのものに目を向ければ、今後に大きな可能性を感じさせるものだった。特に、カリブ海の小国・ドミニカ共和国という新王者の誕生が、そうだ。

 ◇想像を超える誇りかけた戦い
 決勝戦直後の記者会見。ドミニカ共和国のペーニャ監督は予定時刻を過ぎてから会場に現れた。しかも、携帯電話で会話をしながらだった。その姿に思わずまゆをひそめたが、「メディナ大統領からの電話でした。すみません」という謝罪に驚かされた。ドミニカ共和国は人口約1000万人。観光や農業が主で、国民総所得は1人当たり約5240ドルと、決して豊かな国ではない。しかし、野球に関しては才能あふれる選手が多く、米大リーグの昨季の開幕時出場登録選手数は95人で外国人選手の中では最大派閥だ。WBCでは06年第1回大会が準決勝敗退、09年第2回大会は1次ラウンド敗退と成績は芳しくないが、大リーガーを輩出するだけに、ホスト国・米国同様、シーズンを重視するあまり、大会を軽視しているのだと思っていた。だが、今回は違った。選手は大会中「自分たちの国では野球がすべて」という言葉を繰り返し、1番打者として活躍したレイエス選手(ブルージェイズ)は、プエルトリコとの決勝戦の一回、二塁打で出塁した時のことを「ヒットの瞬間、僕の脳裏に浮かんだのは、国旗であり、国民全てだった」と振り返った。WBCの未来を考えるうえで、印象に残る言葉になった。
 大会の利益配分が米大リーグ機構(MLB)とMLB選手会による主催者団体に偏っていることや、1次・2次ラウンドの開催地・時期にずれがあることなど、大会のあり方に疑問点は多い。しかし、まだ3回を数える若い大会で見直しは毎回続けられている。長く国家的イベントとして培われてきた近代五輪やサッカーのワールドカップ(W杯)の歴史と単純に比較し、批判すべきではない。参加費用のかなりの部分は主催者が負担している。そのために、財政基盤の弱い国や地域が参加できていることも事実だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403k0000m070141000c2.htmlより、
 大会は今回から予選を実施し、参加国・地域は16から28に拡大した。サンフランシスコでの決勝戦は動員力のある日本、韓国、米国が絡まないにもかかわらず、約3万5000人を記録。大会を通じても前回から約1割多い約88万人が来場し、スポンサーも最多の66社がつくなど興行的にも徐々に拡大している。ブラジルが初の本大会出場を果たし、オランダが4強入り、イタリアも2次ラウンドにたどりつくなど、野球の普及面でも大きな成果があった。日本を破り決勝に進んだプエルトリコも米国の自治領だ。準決勝にすら進めなかった米国にとって悔しさは大きかっただろうが、これらの国々の真剣な取り組みは私にはとても新鮮に映った。

 ◇日本の出場継続選手にもプラス
 昨年、労組日本プロ野球選手会の反対により、日本の参加が危ぶまれる時期があった。大会運営のありように声を上げることは参加者として当然の権利だし、積極的に意見を出すのも素晴らしい。日本野球機構(NPB)の取り組みに失望や不信感が募った側面もあったろう。私も当時は、必ずしもWBCに参加する必要はないと考えていた。しかし、想像以上にプライドを懸けて戦う大会を実際に取材して、考えが変わった。日本は出場を続けるべきだ。
 そもそも、野球が五輪競技から外れている今、プロ選手が代表となる最高峰の戦いはWBCだ。スポンサー収入や観客収入の面で大きく寄与している日本が参加しないなら、大会の存続は難しくなる。しかし、この灯火を消す選択肢はあり得ない。日本代表の長野久義選手(巨人)が「クライマックスシリーズでも日本シリーズでも味わえない緊張感だった」と話したように、国内の試合とは全く違う重圧下で、日本と異なる野球と戦うことは、日本の選手たちの成長にもつながるはずだ。
 4年後の17年、そして、それ以降の大会をどこの国が制覇するかはわからない。しかし、優勝経験国・地域がさらに増えれば「野球の母国」というプライドを持つ米国も、より本気で取り組むようになるだろう。そうすれば必然的に、日本をはじめ各国の大リーガーの参加率も上がり、WBCは最強のメンバーで編成されたチーム同士が戦う、真の意味での世界一決定戦へと進化する。それを実現するためにも、この大会を長い目で育てていこう。

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