予防接種制度 「重要な子育て支援策だ」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040602000120.htmlより、
東京新聞【社説】予防接種制度 重要な子育て支援策だ
2013年4月6日
予防接種は、子どもたちを感染症から守る医療である。費用やワクチン接種の機会はどの子どもにも等しく与えられるべきだ。命を守る重要な子育て支援との視点で接種制度の充実を求めたい。
風疹の患者が急増している。国立感染症研究所によると、今年の全国の患者数は二千四百人を超えた。二〇〇四年以来の大流行が懸念されている。
患者の多くは二十~四十代の男性だ。それには理由がある。
妊娠初期に妊婦が風疹に感染すると胎児に重い障害が残る可能性がある。そのため一九九四年度以前は中学生女子のみが接種対象だった。予防接種を受けた男性が少ないことが感染を広げている。
感染症予防にはワクチンで免疫をつくることが基本になる。
感染を広く防ぐには多くの人が接種を受けることが重要だ。それには国が接種を勧め費用を公費で賄う定期接種に加えるべきだ。
三月に成立した改正予防接種法で四月から子宮頸(けい)がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の三ワクチンが加わった。接種者が増え予防に役立つはずだ。
接種率を上げるには費用の無料化が大切だが、負担する自治体のなかには財政事情から一部自己負担を求める事態が懸念される。接種を受ける機会に格差がでかねない。無料化努力を求めたい。
水痘やおたふくかぜなど海外で接種が行われているのに国内では定期化されていないワクチンが他にもある。水痘は症状が軽いと思われがちだが、死亡する子どももいる。甘く見ないでほしい。
感染後の医療費より接種費用の方が安いとの試算がある。定期化でワクチンの健康被害への補償も厚くなる。政府は残るワクチンの定期化に取り組むべきだ。
ただ、接種の普及には慎重さが求められる。子宮頸がんワクチン接種を受けた女子中学生に副反応を疑われる被害が出ている。全身に強い痛みが出たり、歩行困難や寝たきりになっている。他のワクチンに比べ副反応が出る頻度が高いと厚生労働省は認めた。
副反応情報は医療機関から厚労省への報告ルールがあるが、改正法で義務づけた。安全に関する情報なのに、義務化されていなかったことは遅すぎたくらいだ。
被害を訴えている人たちは副反応の情報を求めている。政府は正確な情報を迅速に集め開示する責任がある。誰もが安心して利用できる制度に改善していくべきだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53656330W3A400C1EA1000/より、
日経新聞 社説 風疹の正しい知識を持とう
2013/4/6付
風疹の患者数が急増している。目立つのは20代~40代の男性と、20代の女性だ。特に妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんが白内障や先天性心疾患などの病気になる可能性がある。社会全体に風疹についての正確な知識を浸透させることが必要だ。
患者数は例年、春から初夏にかけて増える。だが国立感染症研究所によると、今年は3月24日までに累計2418人にのぼり、昨年1年分をすでに超えた。年初は首都圏が中心だったが、全国に広がっている。
流行しているのは予防接種を受けていない人が多いためだ。現在は男女とも幼少期に2回の接種が定められているが、例えば1979年4月1日以前に生まれた男性は、子供のころ定期接種の機会がなかった。
それより若い世代も、学校での集団接種から医療機関に出向く個別接種になったことなどから、接種率が低い層がある。
とりわけ妊娠・出産する女性への感染を防ぐために、行政などにはきめ細かな情報提供が求められる。婚姻届を提出する夫婦にチラシを配布する自治体もある。妊婦は予防接種を受けることができないが、妊婦の夫や家族が接種を受ければ、間接的に感染から守ることができる。
風疹に限らず、予防接種は体に思いがけない影響が出るリスクがゼロではない。効果とリスクを一緒に考えられるよう、国や自治体は分かりやすく伝える努力が不可欠だ。
一方、感染症への関心が低下していることはないだろうか。例えば、自分が過去にどんな予防接種を受けたか、きちんと把握していない人は少なくない。
予防接種の種類は増え、海外に赴任するときなど記録の確認が必要になる場面も増えている。母子健康手帳は2012年度から予防接種の記録欄が拡充された。予防接種の記録の電子化を進め、だれもが記録を把握しやすくする仕組みをつくることも必要だろう。