日銀緩和策 「歯止めを壊すだけか」

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130409/fnc13040903080004-n1.htmより、
産経新聞【主張】長期金利と財政 市場に安心与える規律を
2013.4.9 03:07 (1/2ページ)

 国債市場が不安定で長期金利の動きがめまぐるしい。市場は日銀の新たな金融緩和を好感しつつも、財政への懸念を払拭できず、金利の先行きを見極めきれていない。政府は財政規律の確立を急ぎ、市場に安心感を与えねばならない。
 日銀が緩和決定後初めて長期国債買い入れを発表した8日、債券先物は制限値幅まで上昇し、一時売買停止になった。5日には、逆に急落が原因で2度売買停止になるなど荒い値動きが目立つ。
 日銀の新緩和策は円安株高をもたらした。その中での長期金利の乱高下は、新緩和策が抱えるリスクを見た市場の思惑による売買を呼んでいるためであるようだ。最たるものは日本財政が抱えるリスクだ。日銀の長期国債の買い入れ拡大で、財政規律への不安を覚える市場関係者は少なくない。
 日銀が毎月市場で購入する国債額は新規国債発行高の7割に相当する。長期国債保有残高を銀行券発行残高以下とする銀行券ルールの停止もあり、「日銀は財政赤字の穴埋め(ファイナンス)をするのか」との見方は根強い。
 財政への信頼が崩れると、国債の高値は裏付けを失い、価格の下落、すなわち金利上昇を招く。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130409/fnc13040903080004-n2.htmより、
2013.4.9 03:07 (2/2ページ)
 「デフレ脱却」「2年で2%の物価上昇目標達成」に取り組む今は有事だ。平時と異なる思い切った施策が必要である。その意味で日銀の緩和策は評価できるし、ひるまず大胆な緩和を続けねばならない。が、それが財政赤字の肩代わりと受け止められると、日銀の足を引っ張ることにもなる。
 長期金利が不安定では企業も経営計画を定めにくいし、何より常に金利急騰リスクにさらされる危うさがある。このため、黒田東彦総裁は「財政ファイナンスの意図はない」と強調し、麻生太郎財務相らは改めて財政健全化の重要性を訴えた。ただ、もはや言葉や意思表示だけでは十分ではない。
 政府は、社会保障に切り込むなどの制度改革を進め、公共事業の優先順位をはっきりさせ、ばらまき批判を封じねばならない。
 求められているのは、財政健全化目標である平成27年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字の国内総生産比半減、32年度の黒字化に向けた工程表を早急に示すことだ。財政規律を形にして、日銀を後押しすることが今、重要なのである。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 4月 5 日(金)付
新たな緩和策―歯止めを壊すだけでは

 日本銀行が、年2%のインフレを2年で達成するために「やれることは何でもやる」という黒田東彦新総裁のもと、新たな金融緩和を決めた。
 「量・質ともに次元の違う金融緩和」を掲げ、政策の指標を金利水準ではなく、市中に出回る現金と銀行の日銀への預金を合わせた金額(マネタリーベース)に変えた。
 国債などを大量に買うことでマネタリーベースを年間60兆~70兆円増やす。14年末には270兆円と、昨年末のほぼ倍になる見込みである。
 問題は、その実現のために、これまで日銀が設けてきた決まりを一挙に取り払ったことだ。
 たとえば、買い入れる長期国債は満期まで3年以内のものに限るとしてきたが、その制限を撤廃する。
 さらに、金融緩和のために国債などを買い入れてきた基金を日銀本体に統合する。そのうえで、日銀本体が国債を買う際には、お札の発行残高を上限にするというルールを一時凍結し、日銀本体でいくらでも国債を買えるようにする。
 確かに過去の決まり事は「金融緩和に消極的な日銀」という印象を与えてきた面がある。
 しかし、一連の措置は日銀が政府の財政赤字の尻ぬぐいをしていると疑われ、国債が暴落するような事態を招かないよう、中央銀行としての意思を示す役割があった。
 日銀が長期国債を買いすぎることで、日々の金融調節に支障が出たり、結果的に長期金利が乱高下したりするのを避ける手立てでもあった。
 黒田日銀に、これらに代わる歯止めを設ける姿勢が見られないのには、危惧を感じる。
 金利が上昇する際の対応など、今後予想される困難な局面への基本姿勢もあらかじめ示しておく責任がある。
 過去の経験では、マネタリーベースが増えてもデフレは解消しなかった。民間経済に有望な投資先がなければ、資金需要は増えないからだ。
 そうしたなかで金融緩和ばかりに依存する経済運営では、円安に伴う輸入物価の上昇だけがもたらされる「悪いインフレ」や不動産バブルなど、いびつな現象が広がりかねない。
 賃金の上昇や雇用の拡大を通じた実体経済の改善に向けて、思い切った規制改革をするなど政府の役割は大きい。
 黒田総裁は大胆な緩和の効果がきちんと引き出されるよう、財政規律の確保や改革への努力を、政府や民間に促す責任も果たしてほしい。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130405/fnc13040503260000-n1.htmより、
産経新聞【主張】日銀金融緩和 「2%」達成へ決意見せた 黒田流の発信力を評価する
2013.4.5 03:25 (1/3ページ)

 日銀が黒田東彦総裁就任後初の金融政策決定会合で量的・質的緩和を導入した。
 黒田氏は会合後の記者会見で、「現時点で必要と考えられる措置は全て投じた」と語った。2年間で物価上昇目標の2%を達成する決意を金融政策で示したことを評価したい。
 さらに、新たな金融緩和で供給する資金量は「常識を超えて巨額だ」とも述べた。物価目標とデフレ脱却という重い課題を達成するには、あらゆる手法を動員し、一刻の猶予も許されないという危機感、切実感が伝わってくる。

 ≪歓迎したい「方針転換」≫
 軸となるのは、効果を見ながら徐々に緩和を進めてきた日銀の方針の大転換だ。氏は、それまでの日銀の緩和策を「不十分」で「量的にも質的にもさらなる緩和が必要だ」と述べていた。その考えをかたちにしたといえる。
 今回のメニューは多様だ。金融緩和目標を無担保コールレート翌日物の金利をゼロ近くに抑えることから、日銀の市中への資金供給量(マネタリーベース)を昨年末の138兆円から2年間で約2倍の270兆円まで増やすことに変更した。
 同時に白川方明前総裁時代に金融緩和目的で国債などを買い入れるために設置された基金を廃止し、日常の金融市場調節で使う国債購入と一本化した。
 このほか、日銀が購入する長期国債の対象を全種類とし、「満期まで平均3年弱」から「7年程度」に広げた。元本割れリスクのある上場投資信託や不動産投資信託などの購入も大幅に増やす。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130405/fnc13040503260000-n2.htmより、
2013.4.5 03:25 (2/3ページ)
 指摘したいのは、今回盛り込まれた施策は、黒田氏や岩田規久男副総裁が国会や記者会見などで幾度となく、それも明確に言及していたことだ。
 例えば、長期金利の上昇を抑える目的で、購入国債の範囲を拡大し、満期までの残存期間を限定しないことや、金融緩和姿勢をわかりやすくするために日常的な金融調節での国債購入と基金での国債買い入れを統合することについて国会で発言していた。
 このように総裁や副総裁が金融政策の狙いや具体的手法を決定前に語る例はこれまでほとんどなかった。市場の思惑が生まれるのを防ぎ、サプライズ(驚き)効果を狙ったからだ。
 しかし、近年のデフレ局面で、こうした手法はほとんど効果を生まなかった。それどころか、市場に日銀の意図が浸透するまで時間がかかり、狙いが伝わる頃には、緩和効果自体が薄れることも多かった。白川氏が常に緩和策のリスクを注意喚起していたことと相まって、市場が日銀の真意を測りかねる場面さえあった。
 それが今回は、あらかじめ黒田氏らが考えられる緩和策やその狙い、効果などを積極的に語ったため、日銀の意図や狙いが十分伝わっていたといえる。

 ≪成長戦略がより重要に≫
 緩和策が、事前の発言から大きく踏み込んだものではなかったにもかかわらず、株価は上昇した。国債も値上がりして長期金利が過去最低水準まで低下するなど市場が好感したのは、黒田日銀の「市場との対話戦術」が奏功したといってよいだろう。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130405/fnc13040503260000-n3.htmより、
2013.4.5 03:25 (3/3ページ)
 もちろん、毎回こうした手法が有効とは限らない。ただ、今回のような新体制発足直後はさまざまな思惑が生じ、市場の波乱要因となりかねないだけに、事前の情報発信には大きな意義があった。
 黒田日銀は順調に船出したといってよい。今後、物価上昇目標達成に向けて日銀がどんなシナリオを描くのか、早急に国民に示し、逐次検証していく必要がある。
 強調したいのは日銀の積極緩和姿勢が際立つだけに、政府の役割が一段と重要になっている点だ。日本経済はアベノミクス効果や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加表明などで景気回復期待が高まっている。
 しかし、それも、まだ円安、株高といった市場頼みの域を脱していない。今月1日に公表された日銀企業短期経済観測調査(3月短観)で大企業製造業の設備投資計画が前年度比マイナス、鉱工業生産は早くも一服感が出ている。
 実体経済への波及の遅れを解消するには、民間需要を掘り起こし、企業の国際競争力そのものを強化するしかない。そのカギとなるのは、やはり政府が策定を進めている成長戦略である。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040502000138.htmlより、
東京新聞【社説】黒田日銀始動 「市場との対話」綿密に
2013年4月5日

 黒田東彦(はるひこ)総裁ら日銀新体制が初の金融緩和策を決めた。市場の予想を上回る大胆な内容で、好感して円安株高が一気に進んだ。ただ、円安による値上げラッシュなど生活者への目配りもほしい。
 アベノミクスの第一の矢である「大胆な金融緩和」でどんな具体策を打ち出すかが注目された金融政策決定会合である。黒田総裁は国会答弁などで「質、量ともに次元の違う緩和を打ち出す」としてきた。その言葉どおりの、だが、予想をはるかに超えた大胆な中身である。
 購入する国債の満期までの残存年限を長期化することや、上場投資信託(ETF)などのリスク資産の買い増しなどは市場の事前予想内だった。驚かせたのは、金融緩和の指標を市中に流通しているお金である「マネタリーベース(資金供給残高)」に変更したことだ。さらにそれを二年で二倍にする強力な「量的緩和」方針は、市場にとって大きなサプライズだったはずだ。長期国債の毎月の購入額七兆円強への拡大とともに「常識を超えた巨額の資金供給」(黒田総裁)は、「小出しで遅すぎた旧体制」からのレジームチェンジ(体制変革)を十分に感じさせるものだろう。
 今回大きな意味を持つのは「やれることはすべてやる」と言ってきたことを実際に打ち出す「有言実行」を印象づけたことである。しかも、ほぼすべてを決定会合の全員一致で決めた。旧体制から残った六人を含め短期間でまとまったことは今後の安定的な政策運営も予想させる。アベノミクスは市場の「期待」に働きかける政策のため、こうした市場の信認を得る政策運営は不可欠である。
 もっとも、この「期待」をどこまでつなぎ留められるかが最大のリスクともいえる。黒田総裁は「2%の物価目標を二年で達成するために必要な措置はすべて講じた」と述べたように、政策の出尽くし感もある。
 市場は欲張りで、絶えず次の材料を求め、時として「催促の反乱」を起こす厄介な存在だ。それをいかにコントロールするか、「市場との対話」が問われるとは、そういうことだ。
 足元では株高の資産効果で高額商品やゴルフ会員権などが売れている。半面、円安で輸入品価格が上昇、乳製品など生活必需品の値上げラッシュでマイナス効果もある。最低賃金の引き上げなど生活困窮者への目配りも、金融政策と併せて求められているはずだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53615480V00C13A4EA1000/より、
日経新聞 社説 黒田日銀は柔軟で規律ある量的緩和を
2013/4/5付

 日銀が前年比2%の物価上昇率目標を達成するため、新たな量的金融緩和に動くことを決めた。長期国債や上場投資信託(ETF)などの購入を増やし、資金供給量を2年間で2倍に拡大する。
 「量・質ともに次元の違う金融緩和」に踏み切り、デフレからの脱却を目指すという黒田東彦新総裁の判断を尊重したい。その効果を最大限に引き出し、日本経済の再生につなげる必要がある。
 同時に大胆な金融緩和の副作用にも細心の注意を払わざるを得ない。政策運営の柔軟性を確保するとともに、国債の買い増しが財政赤字の穴埋めと受け止められない規律ある対応も工夫してほしい。
 黒田総裁が初めて率いた金融政策決定会合では、長期国債の保有額も2年間で2倍に増やすことを決めた。購入の方法を簡素化し、満期までの残存期間が長い国債も買い増すという。
 ETFや不動産投資信託(REIT)といったリスクの高い資産の購入も拡大する。物価上昇率目標の達成は2年程度を念頭に置き、必要な時点まで新たな量的緩和を続ける方針も表明した。
 安倍政権の経済政策の効果もあって、市場では円安・株高の流れが続き、企業や個人の心理も好転している。だが実体経済が大きく改善しているわけではなく、先行きにも慎重な見方が残る。
 日本が10年越しのデフレから確実に脱却するには、やはり大胆な金融緩和が欠かせない。日銀が従来の政策運営を転換し、より強い姿勢で市場心理や実体経済の改善を目指すのは意味がある。
 問題は物価上昇率目標の運用だ。金融緩和を進める過程で経済情勢や市場環境が変わり、投機マネーの膨張といった弊害が出てくる可能性もある。2%の水準に向かって機械的に金融緩和を続けるのではなく、状況を見極めながら弾力的に対応すべきだろう。
 もちろん金融緩和だけで日本経済を再生するのは難しい。政府も日銀と歩調を合わせ、自由貿易の推進や規制緩和、法人税減税などに取り組む必要がある。
 日銀が保有する長期国債の残高は年50兆円のペースで膨らむ。当初予算の新規国債発行額を上回る規模である。日銀が政府の尻ぬぐいをしているような印象を与えれば、日本の経済運営に対する信用を保てない。政府も消費増税や社会保障改革に責任を持ち、強い覚悟で財政再建に取り組むべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130405k0000m070103000c.htmlより、
社説:黒田日銀始動 危険伴う大きな一歩だ
毎日新聞 2013年04月05日 02時33分

 日銀が、黒田東彦総裁就任後初の政策決定を下した。予告通り、あるいはそれ以上の大幅な金融緩和である。株式市場は好感し、国債市場でも、国債が買い進まれて価格が上昇、10年物の利回り(長期金利)は史上最低水準を更新した。市場の期待に十分応えた形だ。
 一見、結構な滑り出しのようだが、極めてリスクの高い賭けが始まったと言わざるを得ない。
 「レジームチェンジ(体制変換)」などと大げさな言われ方がされるが、新しく決まった金融政策の手段自体に新味はない。最大の変更点は、日銀が供給する資金の量を2年で倍増させ、それをもって「物価は必ず上がる」との予測が浸透するのを狙っていることだ。
 日銀が金融機関から国債などを大量に買う。その結果、金融機関が日銀内に持っている当座預金の残高が膨らむ。その量が1年目に60兆円、2年目に70兆円増える、と示すことにより物価上昇予測を高め、デフレから脱却する−−とのシナリオだ。
 そのために日銀は、価値が目減りする恐れのある資産を今までと比較にならないペースで買うことになる。中心となる国債は日銀の保有残高を毎年50兆円も増やす計画だ。政府が毎年新たに発行する国債の額を超える規模である。しかも、これまで買い控えてきた、償還までの年数が長い国債も買っていく。国の借金の穴埋めをしていると見なされても不思議はない。
 今でさえ、国債市場はバブル状態だと指摘されている。さらに価格が上昇すると、ひとたび下落に転じた際、銀行や保険、年金基金などが大変な損を抱え、金融不安となる危険がある。投資家の運用や市場機能に支障をきたす恐れも否定できない。
 計画通り、インフレ予測が順調に広がって、その結果、給料や雇用が改善し、成長率が高まると、危険な政策も早期に手じまいできる。だが、本当にインフレ予測が高まるのか、高まってもそれが成長率の上昇に結びつくのか、やってみなければわからない。
 もし改善が続かなければ、日銀は追加の大胆な緩和を市場や永田町から催促されるだろう。
 今回の決定で驚かされたのは、ほとんどの内容について、9人で構成する政策委員会が全会一致の合意となったことである。これほどの政策転換にもかかわらず、1回の会合で足並みがそろってしまうことに危うさを感じる。
 政権の大号令に背き難い空気を作った側にも責任はあろう。だが、金融政策の政治からの独立は法律だけで守れるものではない。決定に携わる一人一人の心が信用のとりでとなることを強調しておきたい。

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