記者の目:いじめ対策法整備 千葉紀和氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130409k0000m070125000c.htmlより、
記者の目:いじめ対策法整備=千葉紀和(大津支局)
毎日新聞 2013年(最終更新 04月09日 00時58分)

 いじめ対策を巡る法整備の動きが進んでいる。政府の教育再生実行会議や各党の案では、警察への通報の義務化や加害生徒の出席停止の促進などが打ち出された。私は論議の契機となった大津市の中2男子自殺問題を昨年7月から取材してきたが、そうした一見明快な対策は実行が難しく、むしろ危険だと感じる。いじめ対策に特効薬はなく、地道な取り組みの積み重ねこそが「大津の教訓」ではないか。
 この問題は、いじめを受けていた生徒の自殺(2011年10月)から9カ月も過ぎて注目を集めた。「自殺の練習をさせられた」との情報を公表しなかった学校、チェック機能を果たさなかった教育委員会、遺族の再三の訴えに動かなかった警察と不手際が次々露呈した。この結果、焦点は肝心のいじめを防ぐ議論より事後対応に傾いていった。
 その中で、子どもの自殺など重大事案では当事者以外の調査が不可欠という点は明確になった。批判を受けて市が昨年8月に設けた第三者委員会は、市教委がうやむやにしてきたいじめと自殺との関連について、5カ月間の調査で「いじめが自殺の直接的要因」と報告書で明記し、学校側が自殺の要因を家庭環境に誘導したと踏み込んだ。遺族が願う真相究明に応え、教育現場の責任回避に警鐘を鳴らした意義は大きい。再生会議が提言で「第三者組織での解決」を挙げたのは当然だ。

 ◇公平性と透明性
第三者委が機能 大津の第三者委が機能したのには理由がある。まず公平性と透明性の確保だ。委員6人の半数に遺族推薦の識者を加え、調査過程も説明した。次に事実確認を重視し、生徒や教師らのべ56人から直接聞き取った。更に最も重要な点は、多くの内部資料を調べることができたことだ。学校への捜索で滋賀県警が押収した教師のメモ類のコピーが市から提供され、個人情報保護を名目に非公開だった生徒アンケートや市教委資料の黒塗り部分も市長が開示させた。
 裏を返せば、自治体側のさじ加減で「真相」が闇に葬られるという証左でもある。同時期に起きた愛知県刈谷市や鹿児島県出水市の生徒自殺では、第三者委員の氏名さえ非公開だった。第三者による調査の原則化と併せ、国として調査方法と情報開示の基準の確立も進めてほしい。
 一方で「なぜ自殺の要因とされた程のいじめを多くの教師が防げなかったのか」は、結局よく分からないままだ。この疑問は第三者委も重視し、いじめがひどくなった自殺直前の1カ月を時系列に調べて、教員の多忙など12の問題点を列挙した。多くは一般論で、いじめが「短期間に過激になった」と指摘しながら、周囲が気付かなかった理由として「日常化、透明化」を挙げるなど矛盾もあった。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130409k0000m070125000c2.htmlより、
 私が最も知りたかったのも、この点だった。学校側が自殺前にいじめを認識していたのではと疑い、教師メモなどを入手して独自に調べた。自殺直前に「イジメか?」と手帳に書いた教師もいたが、早急な対応が必要だと考えていた教師は少なく、危機感の乏しさに驚いた。

 ◇手間をかけて
状況の改善を 「仲良しグループからの急激な関係性の変化」。今回の特徴は、近年のいじめ研究で指摘される傾向と一致する。だからこそ「なぜ急に変わったのか」「微妙な変化をどう見抜けば良かったのか」を探ることが再発防止には必要だが、第三者委の設置が遅れたうえ、任意のため加害生徒や担任の聞き取りに限界があり、これも未解明のままだ。
 法案を巡る論議で「対策」とされている、出席停止や警察への通報が必要だとすれば今回そのタイミングはいつだったのか。改めて見極めの難しさが課題として浮かぶ。
 また、加害者とされた同級生3人のうち1人についての判断が、県警と第三者委で異なった点も無視できない。県警は昨年末、「いじめがあった」と3人を暴行容疑などで立件し、当時14歳のこの少年は書類送検されたが、第三者委は「(自殺した生徒と)力関係に差異がなかった」として、いじめと認定しなかった。警察と教育現場とでは立ち位置も目的も違う。学校不信の裏返しで安易に警察の介入を促せば、子どもたちが抱く不安も小さくない。
 大津市は今月から、いじめ対策専従教師の配置や第三者機関常設など多重の予防措置を講じた。第三者委の提言や市教委の反省を基に、コストも手間も必要と判断した。日本は10年に、国連子どもの権利委員会から「高度に競争的な学校環境」がいじめや自殺を助長していると指摘された。国が取るべき対策は、子どもへの厳罰化ではなく、いじめを生む状況の改善のはずだ。

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