原発防災計画 「福島の経験をくみ取れ」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130411k0000m070115000c.htmlより、
社説:放射線監視体制 まだ住民を守れない
毎日新聞 2013年04月11日 02時33分

 どんなに出来のよい原発防災計画を作っていても、放射線の影響を監視するモニタリング体制が整っていなければ、絵に描いた餅になる。
 原子力規制委員会が、緊急時の放射線モニタリング体制を盛り込んだ原子力災害対策指針の再改定案をまとめた。監視体制は強化されたが、具体性に欠けたり、検討を先送りしたりした部分も残る。これで住民を守ることができるか心もとない。
 福島第1原発事故後の指針見直しで、防災の重点地域が原発周辺8〜10キロから30キロに拡大され、放射線測定施設(モニタリングポスト)の設置範囲もあわせて拡大された。立地道府県が国の交付金を受け、原発を中心とした16方位で10キロメッシュごとに整備している。緊急時はこれらに可搬式測定器などを加え、2キロ間隔程度で測定することが望ましい。規制委の検討チームで議論されたが、人員や機材繰りの問題もあり、指針には書き込まれていないのだ。
 モニタリングポストの複合災害対策も不安なままだ。福島第1原発事故では、福島県が周辺に設置した24台のポストのうち23台でデータを送れなくなった。津波による流失や地震に伴う通信回線の途絶などが原因だ。そうした事態に備え、回線の多重化や非常用電源の強化を図るべきだが、ポストにはそのような技術基準はない。仕様は自治体の裁量に任されているのが実情だという。
 原発から離れていても、福島県飯舘村のように、風に乗って放射性物質の雲(プルーム)が飛来する恐れがあるが、その防護対策については検討が先送りされている。
 予算不足から、ポストの整備が遅れている自治体もあるという。このような現状で、福島第1原発事故の教訓を生かしたと言えるのか。規制委は整備状況を関係自治体に照会しているが、ポストの仕様も含め、不備があれば改善を指導すべきだ。
 再改定案では、事故発生後直ちに国主導のモニタリングセンターを現地に設置し、データの集約や分析、公表は国が一元管理することになった。これまではあいまいだった国、自治体、事業者の役割分担を整理し、責任体制を明確化したことは評価したい。しかし、放射線モニタリングが機能しなければ意味がない。
 甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤については、服用法や副作用を周知する説明会を開いた上で、原発5キロ圏内の住民に戸別配布することにした。住民の不安に応えるためにも説明会は重要だ。5キロ圏外への戸別配布も引き続き検討してほしい。
 規制委は、7月に施行される原発の新規制基準案も同時に公表したが、防災体制が整わない限り、再稼働の議論などあり得まい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53615510V00C13A4EA1000/より、
日経新聞 社説 東電は原子力安全の改革急げ
2013/4/5付

 東京電力は福島第1原子力発電所事故を教訓に、社内体制を見直す「原子力安全改革プラン」を公表した。原子力部門から独立した「原子力安全監視室」を設けるなどして安全強化に取り組む。大事なのはプランをしっかり社内に浸透させ誠実に実行することだ。形だけに終わらせてはならない。
 「これは長い旅の始まりにすぎない」。東電の原子力改革を監視する第三者委員会のクライン委員長(米原子力規制委員会の元委員長)は改革プランをそう評した。世界最高の安全を目指す改革にこれで十分という終わりはない。しかし一方で改革は待ったなしだ。迅速、確実に社内の制度や意識の変革にあたる必要がある。
 改革への議論がまさに進んでいた時に福島第1原発で停電が発生し、その公表や対応が遅れた。多くの国民が東電の体質は以前と変わっていないと感じたに違いない。そんな不信を生む素地を徹底してなくすよう努めるべきだ。
 新設の監視室は海外の専門家を室長に登用、原子力部門の取り組みに問題があれば取締役会に直接報告できる。東電社内でも「内向き」とされてきた同部門の意識改革を狙う。効果をあげるには室長に真に改革意欲のある人を選ぶのはもちろん、縦割り組織の弊害が濃い東電全体の意識改革が要る。
 改革プランは福島事故を改めて総括し、「事前の備えによって防ぐべき事故」だと「人災」の側面を強調した。事故の背景に危機意識、技術力、対話力の不足があったとも分析した。
 電力会社の技術者は「電話エンジニア」と皮肉られる。メーカーに電話すれば必要な技術的作業はすべてやってくれる。本当の技術力が社内に薄い。自前の技術力強化にはメーカーとのもたれ合いの関係を改める必要もある。
 長く続いた社内外の慣習や文化を変革できるか。経営陣の危機意識と実行力が問われる。
 他の電力会社も似た課題を抱えているはずだ。他山の石としてほしい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 3月 28 日(木)付
原発防災計画―福島の経験をくみ取れ

 原発の事故に備え、立地地域や周辺自治体がつくる防災計画が遅れている。
 大きな地震や津波がまたいつ起こるかわからない。備えは大切だ。ただ、拙速では意味がない。福島の経験を十分にくみ取り、実効性のある対策を講じる必要がある。
 防災計画を備えておくべき重点区域は、国の指針改定で従来の半径8~10キロ圏から30キロ圏へ広がった。対象の自治体は21道府県136市町村に及ぶ。
 このうち、当初の期限だった3月18日までに計画をまとめたのは13県57市町村。3割は4月以降にずれ込みそうだ。
 策定が進まない原因のひとつは、計画のもとになる原子力規制委員会の作業の遅れだ。
 大まかな指針は昨年10月に決めたが、避難の基準となる放射線量の数値などの決定は今年2月までずれこんだ。
 いまも、緊急時の放射線量の計測方法、甲状腺への被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤の服用手順など詳細は決まっていない。
 ヨウ素剤は薬事法上、内部被曝を防ぐ薬として明確に位置づける手続きも要る。この春にも認められる方針だが、政府全体で、こうした指針の詰めと必要な法整備を急ぐべきだ。
 むろん防災計画は、いざ重大な事故が起きてしまった際に、きちんと実行できなければ意味がない。
 たとえば、放射線量が高い地域から住民を避難させるバスをどう手配するのか。県外から支援してもらう場合、運転手の確保や被曝回避に誰が責任をもつのかといった細部が大切だ。
 自治体側は、実践的な訓練を重ねたりして、問題点を洗い出しながら改定を重ねていくことが求められる。
 とはいえ、新しく対象地域に指定された自治体をはじめ、ノウハウがない地域も多い。福島県の被災自治体の経験を共有する場を設けてはどうだろう。
 事前の計画と実際の避難とでどんな違いが生じたのか。県外避難や広域連携にはどのような課題があるのか。
 福島県内の市町村は、避難先での行政機能やコミュニティーの維持、除染問題など、いまなお困難な課題に直面し続けている。そうした生の体験に直接触れることで、学べるものは多いはずだ。
 そのうえで、周辺人口が多かったりして、避難が実質的に不可能な原発については閉鎖・廃炉の対象にすべきだ。
 最大の防災対策が、できるだけ原発を減らしていくことであるのは、言うまでもない。

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