再犯防止 「福祉との連携を深めて」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041102000142.htmlより、
東京新聞【社説】再犯防止 福祉との連携を深めて
2013年4月11日

 生活に困って万引などで逮捕された高齢者や知的障害者を、福祉の支援につなぎ、立ち直りを図る試みが続けられている。セーフティーネットから漏れた人を再び犯罪に追い込まない社会にしたい。
 東京地検は今年、社会福祉士を一人、非常勤職員に採用した。役割は、万引など比較的軽い罪を犯した知的障害者や高齢者のケースで助言し、釈放の場合は福祉施設に入所できるようにしたり、生活保護を受けられるように調整することだ。二カ月で四十人を福祉に橋渡しした試みは四月、「社会復帰支援室」として本格化する。専門家の意見を聞きながら、起訴して裁判にかけ、罰を受けさせるだけでなく、福祉の支援によって再犯防止の道を整えようとしている意義は大きい。
 法務省の近年の統計によると、新規受刑者の作業能力をみる検査で、二割程度に知的障害があるのではとみられている。だが、療育手帳を持っている人は少ない。また、高齢受刑者は十年前の二倍。多くが窃盗や詐欺だが、窃盗といっても食べ物の万引、詐欺も無銭飲食や無賃乗車。頼る人がないために満期で刑務所を出て、家も仕事もない。貧困と孤立から服役を繰り返す「累犯者」が増えている。同じパターンで十回以上も服役を繰り返している人もいる。
 何ら援助を受けられなかったために、再犯に及んでいるのなら、必要なのは刑罰ではなく社会的な支援ではないか。司法が福祉との連携を模索してきた背景には、こうした問題意識がある。
 刑務所で受刑者にかかわってきた専門家は言う。知的障害のある人は罪を理解できなかったり、コミュニケーションが取れない場合がある。高齢者も体が不自由になり、所内で亡くなる人が増えている。現場の職員も刑務所が社会的に弱い人たちの最後の居場所になっていることに戸惑っている。
 この数年で服役後に帰る先のない人を支援する「地域生活定着支援センター」が全国にできた。長崎の福祉事業所「あいりん」は個別の再犯防止プログラムを組み合わせて成果を上げている。刑務所での服役よりも、社会的コストもかからない。各地の検察官も起訴猶予にした容疑者や、執行猶予判決になった被告を福祉の支援につないできた。東京地検の試みを全国のモデルとして広げていってほしい。
 弱者がこぼれおちる社会であってはいけない。人が人らしく生きられる社会にしたい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2012年8月4日(土)付
求刑超え判決―障害への偏見が過ぎる

 姉を殺した42歳の男性被告の裁判員裁判で、大阪地裁は被告を発達障害の一つアスペルガー症候群と認定し、懲役20年の判決を言い渡した。
 アスペルガー症候群は脳の機能障害が原因と考えられ、相手の気持ちをくみ取るのが苦手で、対人関係に支障をかかえやすい。
 懲役16年とした検察側の求刑を上回り、有期刑の上限である量刑を選択した。
 その理由について河原俊也裁判長は次のように述べた。
 社会に被告の障害に対応できる受け皿が何ら用意されておらず、再犯のおそれが強い。許される限り長期間刑務所に収容して反省を深めさせ、それが社会秩序の維持にもつながる――。
 母親らが同居を断っており、家族の支援が得られない。ならば刑務所に閉じ込めておこうといわんばかりの判断である。
 この障害だからといって反社会的な行動に必ずしも結びつくわけではなく、すぐにも再犯に走るような発想は差別を助長するものだ。偏見が過ぎる判決としかいいようがない。
 判決によると、被告は小学5年ごろから不登校になり、自宅に引きこもっていた。自立を促した姉に恨みをつのらせ、昨年7月に包丁で刺殺した。
 本人も家族も発達障害には気づかず、検察側の精神鑑定でわかった。公判で弁護側は責任能力を争わず、障害の影響を考慮して執行猶予を求めた。
 「受け皿がない」という判決の指摘も大いに疑問だ。
 発達障害をめぐっては2005年に支援法が施行され、各都道府県に支援センターが開設された。本人や家族を支える拠点として、情報提供や相談にあたる態勢が整ってきた。
 矯正施設から出所した障害者や高齢者の社会復帰を助け、再犯を防ぐための地域生活定着支援センターもできている。
 そうした実情も見据えて、裁判員の市民や裁判官が「受け皿がない」としたのだろうか。弁護側も社会での更生が可能との立証を尽くしたとは言い難い。
 裁判員の判断は重いが、前提を誤った判決は控訴審で是正してもらいたい。
 アスペルガー症候群のほか、学習障害、注意欠陥多動性障害など発達障害の多くは知的な遅れがなく、障害があることがわかりにくい。一人ひとりで症状も異なり、療育プログラムづくりも簡単ではない。
 その現状を踏まえ、罪を犯した障害者の更生をどう進めるのか。じっくりと考えるきっかけにしたい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012080402000122.htmlより、
東京新聞【社説】大阪の殺人判決 障害に無理解過ぎる
2012年8月4日

  殺人罪に問われた発達障害の四十代の男に大阪地裁で懲役二十年の判決が出た。再犯の恐れが強いとして求刑を四年上回る厳罰に傾いた。“隔離優先”の発想では立ち直りへの道が閉ざされないか。
 大阪地裁での裁判員裁判で被告はアスペルガー症候群と分かった。生まれつき脳の機能に問題を抱える広汎性発達障害の一種だ。
 言葉や知能に遅れはない。だが相手の気持ちや場の空気を読み取ったり、自分の思いを表現したりするのが難しい。
 裁判官はこうした特性をしっかり理解し、裁判員に分かりやすく説明したのか大いに疑問だ。判決を見ると、障害を理由に刑を重くしたとしか考えられない。
 被告は小学五年生で不登校になり、約三十年間引きこもっていた。それを姉のせいと思い込み、恨みを募らせて包丁で殺害した。
 判決は「許される限り長く刑務所に収容し、内省を深めさせる必要がある。それが社会秩序の維持にも資する」と述べた。再犯の恐れが心配されるからだという。
 根拠としてまず「十分に反省していない」と指摘している。反省心を態度で示すのが苦手といった被告の事情をどれほど酌んだのかはっきりしない。
 さらに家族が同居を拒み、加えて「障害に対応できる受け皿が社会に用意されていない」と断じている。なぜ幼少のころから支援を欠いたまま孤立状態にあったのかを問わず、社会の無策を被告の責任に転嫁するのはおかしい。
 裁判員の市民感覚はなるべく大切にしたい。けれども、再犯をどう防ぐかという観点にとらわれ過ぎて、犯罪に見合った刑罰を越えて保安処分の色彩の濃い判決になったのは深く憂慮される。
 発達障害者の自立を支援する仕組みは一歩ずつだが、着実に整えられてきている。
 二〇〇五年に発達障害者支援法が施行され、障害を早期に見つけたり、福祉や教育、就労につなげたりする支援センターが全国にできた。刑務所を出た障害者らの社会復帰を促す地域生活定着支援センターも裾野を広げている。
 立ち直りには特性に応じて社会性を身につけたり、コミュニケーションの技能を伸ばしたりする専門的な支援が欠かせない。逆に刑務所には発達障害者の矯正の手だてはないに等しいとされる。
 親の愛情不足や悪いしつけが障害の原因という間違った考えも根強くある。判決を他山の石として正しい理解を深めたい。

http://www.asahi.com/national/update/0803/OSK201208030077.htmlより、
2012年8月3日22時11分
発達障害者への求刑超す判決、支援団体「認識に誤り」

 発達障害と認定した男性被告(42)を、懲役16年の求刑を上回る懲役20年とした大阪地裁判決に対し、触法障害者らの支援活動にあたる「共生社会を創る愛の基金」は3日、「障害の認識に重大な誤りがある」とする意見を発表した。同基金は、郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんの寄付などで設立された。
 地裁は先月30日の判決で、姉への殺人罪に問われた被告に求刑を超える判決を出した理由を「被告の障害に対応できる受け皿がない」「長期間の刑務所収容が社会秩序の維持につながる」とした。これに対し、同基金は、刑務所などを出た障害者を支える地域生活定着支援センターが全国にできた点などを指摘。「受け皿をつくる取り組みは進んでいる。障害を理解した上での矯正が必要だ」と訴える。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120801k0000m070114000c.htmlより、
社説:発達障害者判決 厳罰より社会支援を
毎日新聞 2012年08月01日 02時30分

 姉を殺害したとして起訴された42歳の男の裁判員裁判で大阪地裁は、被告を広汎(こうはん)性発達障害の一つ、アスペルガー症候群と認定したうえで、殺人罪の有期刑の上限となる懲役20年を言い渡した。検察側の懲役16年の求刑が軽いと判断したものだ。
 判決は、家族が同居を断っており、「社会に障害に対応できる受け皿が何ら用意されておらず、その見込みもない」との理由で「許される限り長期間刑務所に収容し、内省を深めさせる必要がある」と述べた。家族の支援が望めないならば刑務所に入れという結論で「それが社会秩序の維持にも資する」とも指摘した。
 被告は不登校から引きこもりとなった。それを姉のせいだと思い込み、恨みを募らせての犯行に、アスペルガー症候群が影響したと判決は認めた。一方で、最終的に被告の意思で犯行に踏み切ったとして、障害の影響を考慮すべきだという弁護側主張を退け、計画的で残酷な犯行であり刑事責任は重大と判断した。
 発達障害者の社会支援は05年の法施行以降、各都道府県に支援センターが設置された。福祉サービスを受けて地域で暮らしている発達障害者は大勢いる。罪を犯した障害者についても地域生活定着支援センターが全都道府県に設置されている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120801k0000m070114000c2.htmlより、
 長崎県雲仙市の社会福祉法人は罪を犯した発達障害者・知的障害者を受け入れ、社会復帰の訓練が検察庁や裁判所から評価されている。そのため懲役刑ではなく、その更生保護施設での処遇を求める求刑や判決が出ている。判決の「受け皿が何ら用意されておらず、その見込みもない」というのは間違っていないか。
 また、国内の刑務所には発達障害の特性に合った矯正プログラムがほとんどない。アスペルガー症候群の特徴として、相手の感情や周囲の空気を読み取るのが苦手で、自ら深く反省する気持ちがあってもそれを表現することがうまくできないことが指摘される。刑務所に長期間収容するだけでは内省を深めることが期待できず、むしろ再犯リスクが高まり、社会の秩序維持にとってもマイナスだ。受刑することの意味を真に理解し内省を深めるためには、障害の特性に合ったコミュニケーションや心理的アプローチが必要だ。
 「発達障害は伝統的な子育てで予防できる」と指摘した家庭教育支援条例案を議員提出する動きが5月に大阪市議会であった。内容に根拠がなく偏見を助長するとの抗議を受け撤回したものの、障害への誤解も後を絶たない。
 地域の施設で立ち直りを図ることが結果的に社会の安全につながる。ケアが再発防止に有効という意識が不可欠だ。

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