木語:第2次朝鮮戦争? 金子秀敏氏
http://mainichi.jp/opinion/news/20130411ddm003070182000c.htmlより、
木語:第2次朝鮮戦争?=金子秀敏
毎日新聞 2013年04月11日 東京朝刊
<moku−go>
第2次朝鮮戦争が起きるのではないかという不穏な観測が流れている。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記は本気で南北武力統一を考えているという。
これがミサイルの標的とされた米国や韓国からの情報なら過剰反応だろうとたかをくくるところだが、今回は中国とキューバからの発信だ。気になる。
中国共産党中央党校の朝鮮問題専門家、張〓瑰(ちょうれんかい)教授が「このところの北朝鮮の動きははったりではない」と注意を喚起している。発言は中国の通信社が流した。中央党校は党の研修機関だが、同時に党のシンクタンクのひとつでもある。
張教授はこう言う。金正日(キムジョンイル)総書記は2009年5月の第2回核実験後、南北の平和統一路線を放棄し武力による「聖戦統一」に転換した。後継者となった金正恩第1書記は、当然、武力統一を目指している−−。
若い第1書記は、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が女性であり韓国軍を指揮する能力はないと思い込み、またとない聖戦のタイミングが到来したと考えている−−。
北朝鮮の幹部たちも、抗日戦争では日本に勝ち朝鮮戦争では米国に勝ったと教え込まれた世代が主流になり、3度の核実験成功もあって自国が無敵の軍事強国であると信じている。米国はやっと警戒し始めた。韓国は本気にしていないが、危うい−−。
一方、キューバ共産党機関紙「グランマ」のサイトは、カストロ元議長署名の「朝鮮半島開戦の責任を避けよ」という一文を掲載したという。カストロ氏は「いまの朝鮮半島危機はキューバ危機以来、最も核戦争の起きる可能性がある」とし、北朝鮮の友好国としての責任から「地球の7割の人々が影響を受けるということを忘れるべきではない」と忠告したそうだ。
ふたつの見解はほぼ同じタイミングで出された。中国が友好国キューバに頼んだ可能性もあるが、それにしても異常な事態だ。
北朝鮮から、軍首脳を指導する金第1書記の写真が次々に配信されてくる。わずか就任1年で、すっかり自信をつけたように見える。
兵士の軍事訓練の映像では兵士たちが「逆賊を許すな」と声を上げている。「逆賊」という以上、米国人ではなく、同じ民族の韓国人を仮想敵としているのだろう。射撃訓練の標的もオバマ大統領の顔写真ではなく韓国国防相が使われている。信じられないが、韓国侵攻の準備のように見える。(専門編集委員)