原発新基準案 「骨抜きは許されぬ」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130412/plc13041203320003-n1.htmより、
産経新聞【主張】原発「規制」基準 真の安全が遠のくだけだ
2013.4.12 03:32

 7月以降、原発再稼働の審査を行う際などに使われる新規制基準の最終案が原子力規制委員会によって示された。
 だが、原発の安全性を高めて活用していこうという健全な精神が伝わってこない内容だ。
 そもそも名称自体が不適切だ。これまでは「安全基準」とされていたものが、4月になって「規制基準」に変更されている。
 反原発色が鮮明な新聞社に寄せられた読者の声が改称のきっかけであったというから驚きだ。
 たとえ内容が同じであっても「安全」と「規制」では、運用の姿勢そのものが違ってくる。極めて重要な基準の名称を安易に変更する規制委の常識を問いたい。
 原発の安全性は、段階を踏んで着実に向上させていくのが本来の道筋だが、これまでの検討で、そうした見直しが加えられた節は見当たらない。
 活断層の取り扱いが、その一例だ。最大で40万年前まで遡(さかのぼ)って有無を詮索することに、どれだけ現実的な意味があるのだろうか。
 それだけの時間とコストをかけるなら、他になすべきことがあるはずだ。また、原発の運転期間を原則40年としているのだから、そもそも安全を考える上での時間の物差しが違う。
 活断層かどうかの議論の入り口で立ち続けるよりも、万一に備えて施設の耐震性を高める方向に進んだ方が賢明だ。安全に資することは自明である。
 また、新基準の規制下では、事故を起こした福島第1原発と同タイプの沸騰水型原発の再稼働は、当面望めない。再稼働の可能性があるのは、国内全50基の原発中、約半数の加圧水型の原発に限られる。沸騰水型が多い東日本での電力安定供給への不安は強まる。
 それに加えて原発の長期停止がもたらす人材養成難と技能低下が避けられない。この点を規制委が無視しているなら、原子力利用で最も尊重しなければならない「安全文化」への背反行為だ。
 規制委の取り組みは、断層やフィルター付き排気施設といったハード寄りの対策に偏っている。
 原発を支える人々による自発的な改善努力などを、絶えず促すようなソフト面での充実策を優先すべきである。硬直的な「規制」を振りかざしていると、真の安全性は遠のいていく。それを忘れるようでは落第だ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 4月 11 日(木)付
原発新基準―廃炉への枠組みを早く

 原子力規制委員会が、原発の新しい規制基準案を公表した。これで、安全上動かすべきではない原発の具体的な候補が見えてきた。
 だが、今のままでは廃炉は進まない。政府はリスクの高い原発から着実に閉めていくため、必要な制度の整備に早く着手しなければならない。
 新基準案は意見公募を経て、7月に施行される。活断層の疑いなどで基準を満たせない原発が出るのは確実だが、電力業界は全原発で再稼働を目指す構えを崩していない。
 問題は、事業者以外に廃炉を決定できないことにある。
 規制委は新基準を満たさない限り「稼働を認めない」が、廃炉判断はしない方針だ。一方、安倍政権は「規制委が安全と認めた原発は動かす」としつつ、基準を達成できない原発については言及を避けている。
 このままだと、閉めるべき原発が「休炉」にとどまる。追加対策の費用は電気料金で回収すればいいという発想のもと、本来は必要のない原発にまで巨額の投資を重ねる行為を止めるすべもない。
 電力会社が再稼働にこだわるのには理由がある。原発の代わりに動かす火力発電の燃料代がかさんでいるうえ、廃炉を決めた途端、「資産」に計上していた施設や核燃料が「負債」に変わり、廃炉費用とともに経営にのしかかるからだ。
 昨年6月に経産省がまとめた粗い試算では、すべての原発を即時廃炉にすると、業界全体で4・4兆円の損失が発生し、4社が債務超過に陥る。
 一方、原発は動かなくても全体で年間1兆円以上の経費がかかる。どっちつかずの状態が続けば、じりじりと企業体力を奪う。決算期ごとに電力業界の経営不安が取りざたされては、経済全体に影響する。
 電力への参入を狙う企業にとっても見通しを立てにくい。投資が進まなければ、電力供給にも支障が出かねない。
 政府は、事業者任せにせず、「だめな原発」を処理する枠組みづくりを急ぐべきだ。
 前倒し廃炉に伴う負担の軽減策を含め、早期の廃炉や他の電源整備を促す手立てを講じなければならない。必要な費用をだれがどう負担するか、廃炉で影響を受ける地元自治体をどう支援するかも、重要な課題だ。
 原発に頼らず、効率的で創意工夫が生きるエネルギー社会への転換は、経済再生を掲げる安倍政権にとっても不可欠な要素だろう。
 ためらっている余裕はない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041102000143.htmlより、
東京新聞【社説】原発新基準案 骨抜きは許されぬ
2013年4月11日

 原子力規制委員会が原発の新しい規制基準案をまとめた。大幅強化とはいえ、一部に猶予期間を設けるなど骨抜きになりかねない内容もある。フクシマの現状をみれば、猶予など許されないはずだ。
 基準案は、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえて、過酷事故対策をはじめ地震や津波、火災、航空機テロなども含む網羅的な内容である。基準に適合させるには膨大な対策費がかかるため、厳格な運用に徹すれば再稼働の歯止めとなるはずだ。
 例えば、津波対策では各原発で起こりうる最大級の津波を想定し、それに耐えられるような防潮堤の建設を求める。原子炉が冷却できなくなるような過酷事故対策では複数の電源車の配備を求めるほか、大量の放射性物質が大気中に放出されるのを抑えるフィルター付きのベント(排気)設備を義務づける。
 活断層の調査対象を広げたり、原子炉建屋内の膨大な量の電気ケーブルを燃えにくいものへ交換させる、などだ。一発電所当たり数百億円の対策費が予想され、コストや時間、ゼロとはならないリスクを考えれば「割が合わない」とみるのが普通の感覚である。
 しかし、電力会社の感覚は違うらしい。円安の進行で液化天然ガス(LNG)など燃料費の一段の高騰もあって、原発再稼働に前のめりだ。安倍政権が民主党政権時代の「二〇三〇年代に原発ゼロ」方針を白紙にした追い風もある。
 問題なのは、肝心の規制委の田中俊一委員長がぶれだしたことだ。委員長は先月、基準案の運用に関して唐突に私案を示し、運転中の大飯原発3、4号機には即時適用しないこと、一部については「五年の猶予」を認める考えを明らかにした。実際、基準案ではテロに備えた第二制御室など「バックアップ施設」の設置には五年の猶予期間が設けられたのである。
 そもそも規制委は、既存の原発にも最新の安全対策を求める「バックフィット」の仕組みを規制の目玉としていたはずだ。それなのに大飯原発に適用しないのであれば看板倒れも甚だしい。
 目前で起きている福島第一の汚染水問題や、ネズミによる炉心冷却装置停止を直視すれば、バックアップ施設だからといって猶予を認めるのは危機意識が甘すぎる。
 規制委の発足当初、田中氏は「科学的な判断だけをする」と言い切った。政権におもねると見られないためには、初心に立ち返ることである。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53845780R10C13A4EA1000/より、
日経新聞 社説 新規制基準は原発安全向上の出発点だ
2013/4/11付

 原子力規制委員会は7月から導入する原子力発電所の新規制基準の条文案を決定した。東京電力・福島第1原発事故を踏まえ炉心溶融など重大事故に備えた安全強化策を電力会社に義務付ける。また、国内の原発がこれから目指していく「安全目標」も決めた。
 新基準は津波や火災対策の強化を原発再稼働の必要条件とする一方で、テロに備えて原子炉建屋から離れた場所に置く「第2制御室」などについては設置まで5年の猶予を与えた。安全確保と早期再稼働のバランスをとった判断だ。世界最高水準の安全を目指す規制の第一歩と受け止めたい。
 電力会社は基準を順守するのはもちろん、その達成で事足りたとせず、より安全な原発を目指し改善を続ける姿勢が求められる。5年の猶予がある施設整備を前倒しで実現するくらいの、強い安全への意欲を示す時だ。
 原子力規制庁には、科学的な根拠に裏打ちされた納得のいく安全審査が求められる。着実な審査で早期の再稼働につなげてもらいたい。規制庁は人員や専門能力不足が指摘される。政府は必要に応じて陣容を厚くする手立てを講じるべきだ。
 一方、安全目標は、大量の放射性物質を放出する重大事故の発生確率を「1基あたり100万年に1回以下」にするとした。
 世界の原発保有国は安全目標を決めたうえで個別の対策をどれほど厳重にすべきか体系的に議論し実行してきた。日本は過去に議論はしたものの決めていなかった。今回の決定は一歩前進といえる。
 疑問もある。安全の最終目標は国民の生命や健康を守ることだ。それなら原発事故による死亡や健康被害のリスクをどこまで小さくするかを目標とするのが自然だ。
 例えば米国は重大事故を「100万年に1回以下」としつつ、事故に伴う住民の急性死亡リスクが「原発事故以外の事故による国民一般の急性死亡リスクの0.1%を超えない」との目標も掲げる。
 福島事故で住民の避難が続くなか、こうした議論に抵抗感があるかもしれない。しかし原発を使い続けるには、議論を尽くし、わかりやすく、国民の多くが受け入れ可能な目標を見いださねばならない。規制委にはその責務がある。
 電力会社や経済産業省も早期の再稼働を望むなら、目指すべき目標について自ら語り、国民と話し合っていく必要がある。

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