「イレッサ」訴訟 副作用情報徹底に教訓

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041302000139.htmlより、
東京新聞【社説】抗がん剤訴訟 副作用情報徹底に教訓
2013年4月13日

 肺がん治療薬「イレッサ」訴訟は、最高裁が国と輸入販売元の製薬会社の法的責任を認めず幕を閉じた。だが、「夢の新薬」が患者らにもたらした悪夢は消えない。薬事行政に重い教訓を残した。
 イレッサは二〇〇二年七月、副作用が少なく肺がんに効くとの評判とともに登場した。錠剤で飲みやすい。厚生労働省は承認申請から五カ月で世界初の承認をした。
 患者の期待も高かったが、使用が広がると間質性肺炎など副作用が原因と疑われる死亡例が続出した。販売開始から昨年末までに八百六十二人が亡くなった。現在も使われている。
 患者や遺族が問題にしたのは、重篤な副作用の情報を医師向けの添付文書で十分に提供できていたのか。医師が副作用の重大性を認識せず患者への説明も不十分だったのではないかという点である。
 患者の遺族が損害賠償を求めた東京の訴訟では、添付文書の記載方法や国の行政指導の妥当性が争点になった。
 東京地裁は国、製薬会社とも責任を認めた。東京高裁は一転、添付文書に欠陥はなかったと判断した。最高裁もそれを支持した。大阪で起こされ上告中だった別の訴訟も最高裁は同じ判断をした。
 だが、国と製薬会社はいかに副作用情報を的確に医療現場に伝えるか、その責任はなくならない。
 承認前に重篤な副作用は分かっていた。新薬への期待が、重要な負の情報を隠してしまった面があるのではないか。
 実際、厚労省は販売開始三カ月後に、添付文書での記載を目立つように変えた。医療機関へ注意を喚起するための緊急情報を出すと、健康被害の件数は減った。
 現場では現在、患者や投与を行う医療機関を限定し副作用情報の説明の充実に努めるようになった。厚労省は添付文書への監視・指導の強化や副作用被害への救済制度創設を検討中だ。動きは鈍いが、これまでの対応では不十分だったということだろう。
 こうした対応が市販時にできなかったものか、患者や遺族の思いはそこにある。
 薬には副作用がある。患者が納得して治療を受けるにはリスクを正確に伝える体制が欠かせない。
 再生医療が新しい医療として注目を集めている。メリットばかりに光が当たり、リスクを軽視して健康被害が起こっては医療の進歩を妨げる。新薬承認の迅速化は必要だが、この教訓を幅広く生かす姿勢は忘れてはならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130413k0000m070133000c.htmlより、
社説:医療とカネ イレッサが残した課題
毎日新聞 2013年04月13日 02時30分

 肺がん治療薬イレッサの副作用で死亡した患者の遺族らが起こした訴訟の上告審判決で最高裁は製薬企業に賠償を求めた遺族側の上告を棄却した。国に対する訴えも退けられており、原告の全面敗訴が確定した。患者や遺族には納得できない結果だろうが、国は抗がん剤の承認審査を厳しくし、イレッサを投与できる患者も限定してきた。提訴が改善の実現に少なからぬ影響を与えたことは明らかだ。
 残された課題を指摘したい。販売当初、重大な副作用情報が「使用上の注意」の目立たない所に記されていたことが被害拡大につながったと指摘されるが、この点について国の指導権限や責任はあいまいなままだ。マイナス情報を医療現場に伝えることを企業任せにしていいのか。また、製薬企業の拠出金で副作用の被害を救済する制度はあるが、抗がん剤は除外されている。がん患者の救済も早急に検討すべきだ。
 看過できないのはカネについてもだ。イレッサの承認審査などに携わったり、訴訟で製薬企業側の証人に立ったりした医師の中に、同企業から寄付や講演料を受け取っている人が複数いた。一般的に研究助成のための奨学寄付金、学会開催の費用、講演や原稿執筆料など製薬企業から医療現場にはさまざまなカネが提供されている。産学協同は必要だが、もしもカネで専門的な判断がゆがめられる疑いが持たれたら、患者の安全がおびやかされるだけでなく、医療の信頼は失墜するだろう。
 京都府立医大のチームによる降圧剤の臨床試験論文が国内外の学会誌から「データに重大な問題がある」として撤回された問題でも、製薬企業は論文を製品のPRに使う一方で、多額の奨学寄付金を論文作成に携わった側に提供していた。
 政府からの研究資金が限られ、現行ルールでの新薬の治験を考えると企業活動と医師の研究を分離することは難しい。信頼を保つためには情報開示と外部からのチェックが不可欠だ。日本医学会が企業からの寄付など医学研究における「利益相反」を自己申告することなどの指針を策定したのはそのためだ。
 製薬企業の団体である日本製薬工業協会も資金提供を公表するガイドラインを今春施行した。ところが、医師らの個人名を明示しての原稿料や講師謝礼の公開は1年延期された。「医師会や医学会から、まだ十分に周知徹底されていないとの要望があったため」と同協会はいう。
 国の成長戦略に医療が位置づけられ、患者数の多いがんなどの新薬に巨費が投じられる時代だ。副作用などの危険情報やカネについてもっと透明性を高めるべきではないか。

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