脱法ハーブの害 「中高生に知ってほしい」
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53966170U3A410C1PE8000/より、
日経新聞 社説 悪質運転をなくすために
2013/4/14付
無免許や飲酒、薬物使用といった悪質な運転による交通事故を、どうすればなくすことができるのか。政府はこうした行為に対する罰則を強化するための、新たな法案を閣議決定した。
現行法は悪質な事故に十分対応できていない。新法によって罰則を強化するのと同時に、社会全体で悪質運転をなくしていきたい。
現行の危険運転致死傷罪(最高刑・懲役20年)は、飲酒や薬物の影響で正常な運転が困難だったことや、車を制御できないほどの高速で運転していたことを立証しなければならず、適用の要件が厳しい。このため事故のほとんどは最高刑が同7年の自動車運転過失致死傷罪で起訴され、両者の量刑の開きが問題になっていた。
京都府亀岡市で昨年、無免許運転の車が小学生の列に突っ込み10人が死傷した事故も、「無免許運転を繰り返していたので運転技能があった」と判断され、危険運転は適用されなかった。遺族や被害者が納得できないのは当然で、市民感覚からもかけ離れている。
法案では交通事故に関する罪を刑法から抜き出し、新法にする。そのうえで危険運転致死傷罪を2つの規定に分け、飲酒や薬物使用などでは、従来の基準にあたらなくても最高刑が懲役15年となる新たな危険運転の罪を設ける。無免許運転はこうした規定にただちにはあたらないが、事故を起こした場合は罰則を加重する。
ただ、どういった運転が懲役15年の新たな規定にあたるかの基準はわかりにくく、必要以上に処罰対象が広がるとの懸念もある。国会審議などを通し、適用範囲を具体的に説明する必要があろう。
法案では病気の影響によって起きた事故にも、この新しい規定が適用できる。病気を持つ人が生活や雇用の面で不利にならないような、慎重な運用が求められる。
厳罰化による抑止効果には限界がある。危険な運転をしない、させないための環境づくりや、安全教育の徹底などを同時に進めていくことが重要だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040802000130.htmlより、
東京新聞【社説】脱法ハーブの害 中高生に知ってほしい
2013年4月8日
若者、それも中高生の君たちに知ってほしい。脱法ハーブと呼ばれ、たちまち広まった薬物の正体を。それがいかに危険か、学校はぜひ教えてください。知ることは有効な歯止め策なのです。
脱法ドラッグが中学生にも及んでいます。まとめて規制する「包括指定」に国(厚生労働省)は乗り出したが、すでに“抜け穴”を見つけ出した最新種が店頭に出回る始末です。
気になる調査結果も出ています。一つは国立精神・神経医療研究センター(東京)が全国の中学生に初めておこなった調査。回答した約五万四千人のうち百二十人(0・2%)が「使ったことがある」と答え、このうち約60%が大麻や覚せい剤などにも手を出していた。
首都圏の中高生約六千人に民間団体が聞いた調査では、13・2%が「使うかの判断は個人の自由」と回答。全体の0・6%、三十七人が実際に「試した」と答えた。
少数とはいえ「中学生も」と実証された事実は見すごせません。
幻覚や興奮作用があるのは知られていますが、意識喪失、呼吸停止で救急搬送される例だって少なくない。最悪の場合は死亡する。事故を起こし、人を殺傷させてしまうことも。どれも現実です。
国は当然対策を取ってきた。二〇〇七年以降、薬事法で違法薬物を個別指定し、規制。封じ込めの切り札として包括指定という方法に今回踏み切り、九十二種の指定薬物を一挙に八百五十一種に増やした。別に十三種を麻薬に指定した。昨春、全国に三百八十九確認されたハーブ店が三百近くに減るなど、むろん規制・罰則、取り締まり強化の効果は出ている。
名古屋市内の依存症専門医は、規制や罰則と併せて「地道だが、まず手を染める前の子どもへの教育に力を注ぐのが基本」と説いている。
一例に、愛知県の取り組みがあります。春から中学三年生になる県内の全生徒向けに脱法ハーブの危険性を訴えるリーフレットを作った。「子どもは好奇心が強い。興味本位で手を出してしまう恐れがある」といい、義務教育の中学生なら、ほぼ子ども全員に啓発できると考えたのです。
もう一度、あらためて若者と中高生の君たちへ。そして学校の先生、お父さん、お母さん方へ。
本物の麻薬にはまり依存性になると、後遺症に苦しみ続ける。脱法ドラッグは「毒物」と、真剣に学び、本気で教えてください。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012110702000110.htmlより、
東京新聞【社説】脱法ハーブ運転 後手が事故引き起こす
2012年11月7日
脱法ハーブを吸い車で女子高校生をはねて死亡させた愛知県の男が、ハーブ吸引では初の危険運転致死罪で起訴された。法や条例規制も強まり、売り買いの抜け穴は一段と狭まったと観念すべきだ。
恐れていたことが、ついに起きてしまった。脱法ハーブ吸引の異常運転が原因で、何の落ち度もない若い命が突然奪われたのだ。
事故があったのは十月十日朝。春日井市の路上で横断歩道を自転車で渡っていた高校一年の女子生徒(16)が、男(30)のライトバンにはねられ頭を強く打って死亡した。興奮して錯乱状態の男を警察が追及すると、運転の前に脱法ハーブを吸ったことを認め、車内からハーブの葉や吸引器具などが見つかったとされる。
葉からは大麻より数十倍強い幻覚作用のある成分が検出されたという。これでは麻薬“以上”だ。
脱法ハーブが広まり、その被害が指摘され始めてから、使った者の交通事故や人を傷つける事件が後を絶たぬ。重軽傷者を出した交通事故は、ことし大阪と京都で計三件あり、いずれも運転の男は危険運転致傷罪で起訴された。ハーブが原因とみられる本人死亡の事例も横浜や名古屋などであった。
このように命にかかわる危険な薬物なのに、国の規制は後手に回ってきた。事故の巻き添えとなった被害者の思いはいかばかりか。「歯がゆい」と苦々しく見ていた医療関係者も少なくない。
今回の死亡事故で、容疑者の男を危険運転致死罪(最高懲役は二十年)で名古屋地検が起訴したのは、その悪質性、常習性を重く見て、過失犯ではなく故意犯との判断を固めたからである。
国に先駆け二〇〇五年、独自に規制に乗り出した東京都に倣い、十月に愛知県、大阪府も販売側への罰則付きの「脱法ハーブ条例」を制定。大阪府は使う側にも罰則を設けた。和歌山県など他県にも条例制定の動きが広がっている。
厚生労働省もやっと懸案の(1)水際阻止=国内で未流通の物質を規制対象とし、新指定薬物の中に含める(今回は十七種のうち五種。十六日実施)(2)包括指定=一括してまるごと取り締まる規制で年明けにも導入-を行う。ネット販売の監視・指導も始めた。
持病などと違い、薬物常習の幻覚運転で命の危険にさらされる方はたまらない。容易に手に入るため若者を中心に広まっており、愛知県は中学生段階からの薬物教育を急ぐ。購入する側の啓発にも、もっと力を注ぐべきではないか。